作者がこしらえた野菜を頂戴したことがある。プロの作った
野菜には上質な甘みがあり、さすがにものが違うと感じた。精
魂込めて作られるこれら上等な作物も、クマ、シカ、サル、カ
ラスなどの野生鳥獣に狙われたらひとたまりもない。「うしか
ひ座」(牛飼座)は春の星座の代表格で、主星は「熊の番人」
という意味を持つアルクトゥールス。オレンジの光を放つ一等
星だ。ギリシャ神話には、うしかい座の巨人が、そばに位置す
るりょうけん座の猟犬二匹を引いて、その隣のおおぐま座の熊
を追いかけている姿とある。神話の時代でも熊は忌み嫌われて
いたようだ。作者は偶然、うしかい座を見つけたのではない。
「木の枝を透かして」の言葉から、少しの間、首を回して熊の
番人を捜天したことがうかがえる。下句「春のうしかひ座」の
ゆったりと余裕のある詠みは、捜しあてた安堵感から生まれた
もの。悪さばかりするおおぐま座の熊を、オレンジの光で威嚇
するうしかい座の巨人に祈りを捧げて、今年も作物の成長と無
事を願う。(石母田星人)
野菜には上質な甘みがあり、さすがにものが違うと感じた。精
魂込めて作られるこれら上等な作物も、クマ、シカ、サル、カ
ラスなどの野生鳥獣に狙われたらひとたまりもない。「うしか
ひ座」(牛飼座)は春の星座の代表格で、主星は「熊の番人」
という意味を持つアルクトゥールス。オレンジの光を放つ一等
星だ。ギリシャ神話には、うしかい座の巨人が、そばに位置す
るりょうけん座の猟犬二匹を引いて、その隣のおおぐま座の熊
を追いかけている姿とある。神話の時代でも熊は忌み嫌われて
いたようだ。作者は偶然、うしかい座を見つけたのではない。
「木の枝を透かして」の言葉から、少しの間、首を回して熊の
番人を捜天したことがうかがえる。下句「春のうしかひ座」の
ゆったりと余裕のある詠みは、捜しあてた安堵感から生まれた
もの。悪さばかりするおおぐま座の熊を、オレンジの光で威嚇
するうしかい座の巨人に祈りを捧げて、今年も作物の成長と無
事を願う。(石母田星人)