「滝」の俳句~私の心に見えたもの

220728 佐々木博子(「滝」瀬音集・渓流集・瀑声集 推薦作品より)

どの雛も私を見てはをらぬなり 長岡ゆう 「滝」4月号<瀑声集>

2015-04-21 03:44:22 | 日記
 雛も抱き人形も人形の目は、決して視線が合わないように作
られている。こどもは目が合うと恐怖心や圧迫感を覚える。そ
れを防ぐため瞳の位置を少しずらしてよそ見をしているよう
に描かれている。安心して遊べるようにという製作者の配慮の
ようだ。けれどもたまにはこちらを見て欲しい時もある。心の
うちを語りかけようとしても、よそ見をしているのだから気持
ちが届くことはない。視線を合わせようと人形を動かし、前後
左右または上下とあらゆる角度から何度も見つめても無理。句
座の「をらぬなり」が気持ちの伝わらないもどかしさを語る。
(石母田星人)