「滝」の俳句~私の心に見えたもの

220728 佐々木博子(「滝」瀬音集・渓流集・瀑声集 推薦作品より)

薄氷やあかあかと透命あり 小林邦子 「滝」4月号<瀑声集>

2015-04-17 04:38:23 | 日記
 「薄氷は日が高くなれば解けてしまうくらい儚い」。こんな
ふうに言えば、重さも厚みもないようだがそうではない。持ち
上げてみればその偉大さが分かる。氷の張った状態をよく見る
と、外の空気にさらされている側は、ただ風が通り過ぎるだけ
の無機質。けれども、水中側の面は、とじこめられた空気が踊
っていたり水底の枯れ葉やあかい実がゆらいでいたりする。薄
氷に表裏があるとすれば、表は水中側の面をさすのだろう。こ
の句はその表でのものがたり。作者はうつりゆく朝日の下、薄
氷の表がかすかにあかい息をしたのを感じた。かすかな息とは
春の兆しのことだ。(石母田星人)