「滝」の俳句~私の心に見えたもの

220728 佐々木博子(「滝」瀬音集・渓流集・瀑声集 推薦作品より)

春昼や池の底より小さき泡 谷口加代 「滝」4月号<渓流集>

2015-04-14 04:14:40 | 日記
目を凝らし、じっと観ることでインスピレーションが湧い
てくる。この句は昼の池を見ていたら、普段は気がつかなか
ったが、春になって小さな泡があったとする写生句。ただ、
写生に留まらず、読み手にとって、この泡は何だろうか。詩
的想像が湧いてくる。春の光が池の底までとどいて、泥が化
学変化したのだろうか。いや、私は宮沢賢治の「やまなし」
を思い出した。川底の子蟹の兄弟たちが泡比べをしているの
ではないだろうか。この池でも。小さき泡の正体を証してい
ないが、「小さき泡」は春らしさを一段と強調している。冷
静に見つめる写生句の良さを感じる。(八島 敏)