「滝」の俳句~私の心に見えたもの

220728 佐々木博子(「滝」瀬音集・渓流集・瀑声集 推薦作品より)

わが影を濡らして行きし春の潮 平川みどり 「滝」4月号<渓流集>

2015-04-15 04:33:44 | 日記
 少し行けば海に出合う小さな島国の日本。この時季、わが
影の行く先々には、澄んだ藍色の海面、ゆたかにふくれあが
る海光、波音、海風、潮の香が待ち受けている。掲句、波打
ち際の吟詠ではない。少し離れた高台から海を見下ろしてい
る。眼前に広がる春の潮がわが影を濡らして行った、と述べ
ているが、実際に濡れてはいない。では嘘かというとそうで
はない。たしかに濡れた。句に存在する詩の中で、春の潮を
感受した詩嚢がわが影を濡らして行ったのだ。掘り下げて述
べると、「春の潮」と「わが影」が、潜在意識下で呼応して
響き合い「濡らす」という心象を生んだ。(石母田星人)