しろみ茂平の話

郷土史を中心にした雑記

真備町「岡田更生館事件」その5・・・「ゆうれい人口撲滅せよ」

2023年05月21日 | 昭和21年~25年

真備町岡田は、静かな田園都市だが、けっこう全国的にも知られている。
その訳は、名探偵・金田一耕助氏がこの地で横溝正史により誕生したから。

横溝正史は、昭和20年4月から約3年半、真備町岡田に疎開し、家族とともに暮らした。
そしてかの有名な名探偵・金田一耕助が真備町岡田で誕生した。

「岡田更生館事件」が起こった時と2年間重なっている。
”金田一さん”も、この事件を見ていたのかもしれない。

 

・・・

 

(角川文庫「犬神家の一族」)

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「続・ぼっこう横丁」  岡長平 岡山日日新聞社 昭和47年発行

捨子
捨子も大流行した。
食うために肉を売ったその因果の報いよりは、
痴情のはてのテテ(父)無し子が多いので、問題になっている。

刑務所
強盗が馬鹿に増えてきた。
とらえてみれば、ほとんどが引揚者の旧軍人ばかりである。
食う物も着る物もないのでつい出来心の俄強盗なんだ。
刑務所は満員だと新聞は報じている。

性の恐怖
闇の女のばら蒔く病毒で岡山でも一か月に千人以上の罹患者が現れだした。
とうとう9月1日から性病予防法が実施されることになった。
性病中の売淫は2年以下の懲役、1万円以下の罰金。
性病者はキッス厳禁。
・・・どれだけ利き目があったか。

岡山駅前には浮浪者が横臥
終戦後三度目の正月を迎えた。
6月29日の戦災記念日には、その後のたくましい再建岡山の歩みを発表している。
昭和20年5月 戸数 38.500、人口 164.000
昭和20年戦災直後 戸数 13.500 人口 88.300
昭和23年5月 戸数 28.400 人口 140.000
六・三制への整備費(新制中学)の起債は各学区の割り当てでまとまった。

8月22日の山陽新聞に「岡山の玄関から浮浪者群一掃」という見出しで、
駅前広場、車道、植込み、安全地帯へかけて毎晩、数百名の浮浪者が足の踏み込めぬほど横臥し、無料宿泊所になっているので一斉検挙を行った。
家出娘、街の与太者、不良少年、スリなどの多数前科者を連行しているが
これらは中筋を背景とする悪の温床なのだった。
そのうえ5月6日の新聞には岡山駅へ毎日数人の戦災孤児の流れ込む日本版「家なき子」の記事を載せている。

この浮浪者や戦災孤児は、むろん前記の「常住人口」の中にはおらない。
あの人口は「米穀通帳」によったものと思われる。
そうすると全然アテにならない。
5月7日の新聞に「ゆうれ人口撲滅せよ」と農林省が全国へ指令した旨を書いている。
その推定人口は60万人を越え、東京だけでも悠に10万人以上の見込みだと言っている。

 

・・・

 

「戦後教育史」  小国喜弘 中公新書 2023年発行

 

焼け跡

街を放浪する浮浪児は、1947年時点で全国で約7.000名いた。

一般的に浮浪児は戦災で身寄りをなくした孤児とされるが、

家出児童も多かった。

背景には戦争で兵士としての心の傷を負った父親たちによる家庭内虐待があったとされる。

さらに、親たちによる少年少女の身売りも1950年代を通じてしばしば新聞を賑わした。

家庭があっても栄養状態すらままならなかった。

子どもたちは弁当を持っていける子どもばかりでなく、

弁当泥棒・弁当強盗に気をつけなければならなかった。

 

浮浪児たち

靴磨き、新聞売り、煙草巻き、闇屋の使い走り、街頭売春婦の客引きなどに従事する彼らは

「成人の給料生活者の何倍かにおよぶ」収入を得

「外食券の闇買して白米の上に車エビの天麩羅の載った天丼を食べ」

あるいは、

「ほんもののチョコレエト、チューインガムの類を間食」を間食し、

児童保護施設に収容されても繰り返し脱走する者もいた。

 

(戦災孤児たち 東京・上野 1948.5)

 

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1 コメント

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岡田更生館 (killy)
2023-05-21 16:29:47
横溝正史は知っていたでしょう。
しかし、横溝正史の文には真備町のことや子息が通っていた矢掛町のことは書かれていません。
疎開先と更生館は目と鼻の先です。今年2月郷土史家の中山薫氏が逝去され、横溝正史の逸話を語る人がいなくなりました。
岡田更生館跡地は、小野医院という内科がありましたが現在は団地になり、場所がわかりづらくなりました。
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