La douce vie

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映画「たそがれ清兵衛」

2024-04-01 | cinema/観劇/舞台
当時、寅さんシリーズを終えた直後の山田監督作品と記憶しています。

原作は藤沢周平先生の短編のいくつかを元に脚本が作られています。

幕末の庄内地方。海坂藩の下級武士である井口清兵衛は妻を病気で亡くし、幼い娘2人や年老いた母と貧しくも幸せな日々を送っていた。家族の世話や借金返済の内職に追われる彼は、御蔵役の勤めを終えると同僚の誘いを断ってすぐに帰宅してしまうため、“たそがれ清兵衛”と陰口を叩かれていた。ある日、清兵衛は幼なじみの朋江を救ったことから剣の腕が立つと噂になる。

職場も親戚も清兵衛の苦境に思いを寄せる事もなく、暴言ばかり。ちなみに丹波哲郎さんが本家の叔父で丹波さんらしい演技がぴったりで、思わず笑ってしまった。清兵衛はストレスフルな状況が続くなか、幼馴染の朋江との再会は清兵衛に明るい兆しを感じさせますが、その再会によって、清兵衛の剣の腕が知れ渡り、上意討ちの藩命が下されます。

最後に朋江に頼んで、身支度をしますが、月代は伸ばしっぱなしのまま。何故かと思ったのですが、時間とお金がないというのが理由でしょうが、月代を剃ったら、スター真田広之が眩く現れ、必ず勝つだろう、という気持ちになったからがしれない、などと思いました。

田中泯さんの言い回しは耳が惹きつけられ、最後、命が尽きるシーンを見て、これは舞踊だ、何故、舞踊家の田中さんがキャストされたか、これでわかりました。

当時、衰退の一途を辿った時代劇のこの作品はアカデミー賞にノミネートされます。

その後、「ラスト・サムライ」が日本でヒットした事は周知の事実ですが、さらにその後、ラッシュ・アワー3の撮影でジャッキー・チェンと「眺めのいい部屋」で知られるジェームズ・アイボリー監督の作品の撮影を行き来した、という、嘘みたいなホントの出来事があったそうです。

しかもジャッキーは真田さんのアクションが思っていた以上に上手かった事や動きの映りの良さを気に入り、撮影中に次の作品をオファー(ジャッキー談)し、ジェームズ・アイボリー監督も撮影中に次の作品のオファー、しかも、真田さんをキャストするために、わざわざ日本人に設定を変えたそうです。(真田さんは日本人役しか引き受けないと言われている。しかし、それは別のルーツを持つアジア人に対する敬意でもあると思う)
ちなみにアイボリー監督は「最初のオファーでは「たそがれ清兵衛」の演技を気に入ったとのことでした。周囲から英語でもいい演技をすると聞いてオファーしたとのことでした。
こんな俳優は世界広しと言えど、真田さんだけではないでしょうか?

今、振り返ってみれば、この「たそがれ清兵衛」には真田さんの役者としてのプロフィールが凝縮された映画なのかもしれません。

そして、日本で衰退の一途を辿っている時代劇で、世界の扉を開き続ける稀有な役者でもあります。