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わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

素朴な疑問 11 酸化と還元

2014-10-19 20:15:41 | 素朴な疑問
疑問 11 酸化と還元焼成では、釉の発色が違う理由は?

 焼き物を焼成する場合、酸化と還元焼成の方法があります。酸素を十分供給して焼成するのが

 酸化で、酸欠状態で焼成するのが還元です。その他どっち付かずの状態の炎を中世炎と呼びます。

1) 地球上のほとんど鉱物は、空気中の酸素の影響で酸化物として存在します。地表のみでなく

  水中にも酸素は存在し、その影響を受け酸化される事になります。

  粘土や釉の原料も例外ではありません。

2) 釉の発色に関わる物質は主に金属類が多いです。

  鉄、銅、亜鉛、チタン、錫(すず)、マンガン、コバルト類等はほとんどが金属です。

  金属が酸化するのを、一般に錆(さび)ると言います。例えば、鉄などは赤錆となり、銅は

  赤銅色から緑色に変化します。電気窯をそのままで使用すれば、必ず酸化焼成に成ります。

3) 還元とは、元々の(金属)元素に戻すこ為に、酸素を奪い取ることです。

  元素の状態では、酸化物とは異なる色をしています。

 ① 奪い取る方法は、一酸化炭素(CO)を発生させ、酸素を剥ぎ取り二酸化炭素(CO2)にし、

   窯の外に排出させます。

 ② (CO)を発生させる為には、炭素を含む燃料(薪、炭、ガス、灯油など)を不完全燃焼させ

   るのが一般的です。

 ③ (CO)は猛毒です。人が吸い込むと血液中の酸素を運ぶ、「ヘモクロビン」から酸素を奪い

   人は酸欠状態に陥り、窒息死します。それ故、屋外の窯か換気が十分に行われる部屋以外では

   行う事が出来ません。実際に、換気不十分で窯焚きで死亡事故も起きています。

 ④ 還元された金属類は、一般に目にする事は少ないですので、釉として発色すると斬新な

   イメージに見えます。それ故、陶芸では還元焼成された作品の評判が良いようです。

   但し、還元の強弱によって、色は微妙に変わります。

4) 温度上昇と酸化、還元の関係。

  窯の温度を上昇させる最適条件は、弱還元焼成又は中性炎の時と言われています。

  強酸化や強還元焼成では温度上昇は鈍り、場合によっては温度が降下します。

  この為、燃料や空気の供給を調節したり、煙突があれば煙突の引きの強さを調整し、温度上昇に

  なる様に操作する必要があります。

5) 還元焼成は釉の熔け始める、950℃~1,200℃程度の範囲で行います。

  1,200℃以上では釉の表面がガラズ化し、(CO)も釉の中に入れず還元の機能が無くなります。

  無理に還元を掛けると、釉の表面に炭素が入り込み釉面を黒く汚す事に成ります。

  それ故。1,200℃以上では、酸化焼成に切り変え、炭素分を燃焼させます。

6) 釉だけではなく、赤土など鉄分を含む粘土も還元の影響を受け、グレーに変色します。

  鉄分を含まない透明釉も、酸化と還元焼成では異なる発色に成ります。特に石灰系の透明釉で

  顕著です。又土灰釉には、微量な金属が含まれる為、差が出易いです。

7) 藁(わら)や糠(ぬか)を使った白い釉では、酸化と還元の発色に差が無い物もあります。

  更に鉄を大量に使う釉では、還元の効果が薄く、両方の発色の差は少ない様です。

以下次回に続きます。
  
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