疑問 11 酸化と還元焼成では、釉の発色が違う理由は?
焼き物を焼成する場合、酸化と還元焼成の方法があります。酸素を十分供給して焼成するのが
酸化で、酸欠状態で焼成するのが還元です。その他どっち付かずの状態の炎を中世炎と呼びます。
1) 地球上のほとんど鉱物は、空気中の酸素の影響で酸化物として存在します。地表のみでなく
水中にも酸素は存在し、その影響を受け酸化される事になります。
粘土や釉の原料も例外ではありません。
2) 釉の発色に関わる物質は主に金属類が多いです。
鉄、銅、亜鉛、チタン、錫(すず)、マンガン、コバルト類等はほとんどが金属です。
金属が酸化するのを、一般に錆(さび)ると言います。例えば、鉄などは赤錆となり、銅は
赤銅色から緑色に変化します。電気窯をそのままで使用すれば、必ず酸化焼成に成ります。
3) 還元とは、元々の(金属)元素に戻すこ為に、酸素を奪い取ることです。
元素の状態では、酸化物とは異なる色をしています。
① 奪い取る方法は、一酸化炭素(CO)を発生させ、酸素を剥ぎ取り二酸化炭素(CO2)にし、
窯の外に排出させます。
② (CO)を発生させる為には、炭素を含む燃料(薪、炭、ガス、灯油など)を不完全燃焼させ
るのが一般的です。
③ (CO)は猛毒です。人が吸い込むと血液中の酸素を運ぶ、「ヘモクロビン」から酸素を奪い
人は酸欠状態に陥り、窒息死します。それ故、屋外の窯か換気が十分に行われる部屋以外では
行う事が出来ません。実際に、換気不十分で窯焚きで死亡事故も起きています。
④ 還元された金属類は、一般に目にする事は少ないですので、釉として発色すると斬新な
イメージに見えます。それ故、陶芸では還元焼成された作品の評判が良いようです。
但し、還元の強弱によって、色は微妙に変わります。
4) 温度上昇と酸化、還元の関係。
窯の温度を上昇させる最適条件は、弱還元焼成又は中性炎の時と言われています。
強酸化や強還元焼成では温度上昇は鈍り、場合によっては温度が降下します。
この為、燃料や空気の供給を調節したり、煙突があれば煙突の引きの強さを調整し、温度上昇に
なる様に操作する必要があります。
5) 還元焼成は釉の熔け始める、950℃~1,200℃程度の範囲で行います。
1,200℃以上では釉の表面がガラズ化し、(CO)も釉の中に入れず還元の機能が無くなります。
無理に還元を掛けると、釉の表面に炭素が入り込み釉面を黒く汚す事に成ります。
それ故。1,200℃以上では、酸化焼成に切り変え、炭素分を燃焼させます。
6) 釉だけではなく、赤土など鉄分を含む粘土も還元の影響を受け、グレーに変色します。
鉄分を含まない透明釉も、酸化と還元焼成では異なる発色に成ります。特に石灰系の透明釉で
顕著です。又土灰釉には、微量な金属が含まれる為、差が出易いです。
7) 藁(わら)や糠(ぬか)を使った白い釉では、酸化と還元の発色に差が無い物もあります。
更に鉄を大量に使う釉では、還元の効果が薄く、両方の発色の差は少ない様です。
以下次回に続きます。
焼き物を焼成する場合、酸化と還元焼成の方法があります。酸素を十分供給して焼成するのが
酸化で、酸欠状態で焼成するのが還元です。その他どっち付かずの状態の炎を中世炎と呼びます。
1) 地球上のほとんど鉱物は、空気中の酸素の影響で酸化物として存在します。地表のみでなく
水中にも酸素は存在し、その影響を受け酸化される事になります。
粘土や釉の原料も例外ではありません。
2) 釉の発色に関わる物質は主に金属類が多いです。
鉄、銅、亜鉛、チタン、錫(すず)、マンガン、コバルト類等はほとんどが金属です。
金属が酸化するのを、一般に錆(さび)ると言います。例えば、鉄などは赤錆となり、銅は
赤銅色から緑色に変化します。電気窯をそのままで使用すれば、必ず酸化焼成に成ります。
3) 還元とは、元々の(金属)元素に戻すこ為に、酸素を奪い取ることです。
元素の状態では、酸化物とは異なる色をしています。
① 奪い取る方法は、一酸化炭素(CO)を発生させ、酸素を剥ぎ取り二酸化炭素(CO2)にし、
窯の外に排出させます。
② (CO)を発生させる為には、炭素を含む燃料(薪、炭、ガス、灯油など)を不完全燃焼させ
るのが一般的です。
③ (CO)は猛毒です。人が吸い込むと血液中の酸素を運ぶ、「ヘモクロビン」から酸素を奪い
人は酸欠状態に陥り、窒息死します。それ故、屋外の窯か換気が十分に行われる部屋以外では
行う事が出来ません。実際に、換気不十分で窯焚きで死亡事故も起きています。
④ 還元された金属類は、一般に目にする事は少ないですので、釉として発色すると斬新な
イメージに見えます。それ故、陶芸では還元焼成された作品の評判が良いようです。
但し、還元の強弱によって、色は微妙に変わります。
4) 温度上昇と酸化、還元の関係。
窯の温度を上昇させる最適条件は、弱還元焼成又は中性炎の時と言われています。
強酸化や強還元焼成では温度上昇は鈍り、場合によっては温度が降下します。
この為、燃料や空気の供給を調節したり、煙突があれば煙突の引きの強さを調整し、温度上昇に
なる様に操作する必要があります。
5) 還元焼成は釉の熔け始める、950℃~1,200℃程度の範囲で行います。
1,200℃以上では釉の表面がガラズ化し、(CO)も釉の中に入れず還元の機能が無くなります。
無理に還元を掛けると、釉の表面に炭素が入り込み釉面を黒く汚す事に成ります。
それ故。1,200℃以上では、酸化焼成に切り変え、炭素分を燃焼させます。
6) 釉だけではなく、赤土など鉄分を含む粘土も還元の影響を受け、グレーに変色します。
鉄分を含まない透明釉も、酸化と還元焼成では異なる発色に成ります。特に石灰系の透明釉で
顕著です。又土灰釉には、微量な金属が含まれる為、差が出易いです。
7) 藁(わら)や糠(ぬか)を使った白い釉では、酸化と還元の発色に差が無い物もあります。
更に鉄を大量に使う釉では、還元の効果が薄く、両方の発色の差は少ない様です。
以下次回に続きます。