松井氏は1970年代の「嘯裂」「象裂」などの亀裂文様の練り込み技法から、1980年代の絵画的な
表現の「堆瓷(ついじ)」などの作品を経て、1990年代に玻璃光(はりこう)、 萃瓷練上(すいじねり
あげ)の技法で新境地を開きます。
3) 堆瓷文方壺 「春の松」
① 堆瓷(ついじ)とは、泥漿(でいしょう)化した色土で、模様を描く方法の様です。
同様に泥漿化した色土で模様を描いた陶芸家に楠部彌弌(くすべ やいち、1897~1984年)氏
がいます。彩埏(さいえん)と名付け た釉下彩磁は独自の技法です。
尚、埏とは良く練られた土との事です。
② 両者とも、磁土に顔料を入れて化粧土を作りますが、楠部氏が白い磁器の上に一つの絵柄を
丁寧に描いているのに対し、松井氏は、同じパターンの模様の繰り返しです。特に磁器の白さ
には拘りが見られません。
③ 堆瓷文方壺 「春の松」などの作品があります。
4) 萃瓷練上(すいじねりあげ)
① 「萃」とは、花などを集めるという意味だそうです。それ故、同じ花模様が途切れる事無く連続
的に連なって表現されています。
② 金太郎飴風に作った多数の磁土の色土を模様が表に出る様に積み上げ作品にします。
萃瓷練上陶筥、萃瓷練上大壺「烈日」などの作品があります。
5) 練上玻璃光(はりこう)
① 「玻璃(はり)」とは水晶やガラス等の事だそうです。磁土の練り込みで萃瓷練上の技法で
作った作品を釉を掛けて焼き上げ、更に、その表面をダイヤモンド粉末(ダイヤモンド・パウダー)
で磨き、強い光沢を出し宝石状の輝きを持たせます。ダイヤモンド粉末は、硬度が高く作品の
表面を磨く際に作品を傷つける恐れもあります。どの様な方法で研磨しているのか不明です。
② 代表的な作品に、練上玻璃光(はりこう)大壺 1999年 東京国立近代美術館蔵があります。
尚、ダイヤモンドの粉末は色々の粒度(粒子の粗さ)のものが市販されていますので、入手は
比較的容易です。
練上技法は手間隙の掛かる技法であり、土の無駄も多く、割れ等の失敗する事多い方法です。
しかし、出来上がった作品は、見た人に感動を与える作品となります。どの様に作った物か、考えさせ
られる作品も多い様です。工夫や努力次第で、新たな模様の美と造形の輝きのある作品を制作する
事も可能です。挑戦する価値はあるはずです。
以上にて、化粧土と色土の話を終わります。
次回より、新しいテーマでお話したいと思います。