わ! かった陶芸 (明窓窯)

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新釉の話46 自分で釉を作る15 ゼーゲル式6(計算3)

2013-09-25 21:52:02 | 新釉(薬)の話

6) 既存の釉の配合例(重量比)から、その配合例のゼーゲル式を求める。

   多くの陶芸関係の本や、ネット上でも色々な釉の配合例(レシピ)が掲載されています。

   大いに参考に成るのですが、レシピ通りに調合したとしても、必ずしも望む色や艶が出る訳では

   有りません。その原因として、レシピに載せていない、何か隠された物が有るのではないかと

   感じるかも知れません。当然の事ですが、実際釉を研究している人は、その技術は秘密

   (公にしていない事)にしているのも事実です。

   しかし、実際には、窯詰めや窯の状態、更には窯の焚き方などの諸条件によって、変化する

   事の方が多いと思われます。但し、この条件を持ち出すと、話が進みませんので、ここでは

   棚上げする事にします。

 ① 公表されているレシピは、ほとんどが一般的な釉です。それ故、釉に大きな狂いは無い事が

   多いはずです。但し、この釉を自分好みの釉に改良する為には、何処をどの様に変えれば

   良いか、試行錯誤的に実行するよりも、理論的裏付けに基づく実施の方が確実かも知れません

   その為には、与えられたレシピをゼーゲル式に当て嵌め、式から向かう方向を決めるのも

   良い方法ではないかと思います。

 ② 一般的な調合例は、各釉の材料をグラム(g)単位で表示しています。

   次の様な調合例を元に、ゼーレル式に直す計算をしたいと思います。

    正長石 50g、珪石 20g、石灰石 30g、タルク 20g  合計100g

  ) 釉の三要素に分ける。

    a) 正(かり)長石には、カリ(KO2)、アルミナ(Al2O3)、シリカ(SiO2)が含まれています。

    b) 珪石にはシリカ(SIO2)のみが含まれます。

    c) 石灰石には、CaOと CO2(炭酸ガス、熱分解して発散します。)が含まれます。

    d) タルク(3MgO ・ 4SiO2 ・ H2O)には、MgOとSiO2が含まれています。

    以上の事から、媒熔剤は、長石、石灰石、タルクの一部から採る事になります。

    アルミナは長石から、シリカ成分は、長石、珪石、タルクの一部から採ります。

  ) 各材料の量を三要素の重量gに分けまする。

    a) 前回述べた様に、正長石の1モルは556.8gで、カリ成分の1モル94.2gとアルミナ成分の

      1モルの102.0g、シリカ成分1モル360.6gで構成されています。50gの長石は以下の

      様な重量になります。

     イ) K2O(カリ成分)=(94.2x50)/556.8=8.5g

     ロ) Al2O3(アルミナ成分)=(102.0x50)/556.8=9.2g

     ハ) SiO2(シリカ成分)=(360.6x50)/556.8=32.4g

   b) 珪石はほぼ100%SiO2ですので、20gはそのままです。

   c) 石灰石の1モルは100.1gで、CaOが56.1g、残りがCO2となります。

      石灰石10g中には、CaOが(56.1x10)/100.1=5.6g入っている事になります。

   d) タルク(3MgO ・ 4SiO2 ・ H2O)の1モルは379.3gです。

      MgOの1モルは40.3gで、3MgOでは120.9gとなります。

      タルクの20g中には、MgOが(120.9X20)/379.3=6.4g入っています。

      同様にしてSiO2の1モルは60.1gで、4SiO2では240.4gですので、タルク20gでは

      (240x20)/379.3=12.7gとなります。

     以上まとめると、RO(媒熔剤)=K2Oが8.5g、CaOが5.6g、MgOが6.4gとなります。

     Al2O3=9.2g。SiO2=32.4g+12.7g=45.1gです。

  ) 重量g数をモルに換算します。

    a) K2Oの8.5g=(1X8.5)/ 94.2=0.090 モル

       CaOの5.6g=(1X5.6)/56.1=0.100 モル

       MgOの6.4g=(1X6.4)/403= 0.016 モル

    b) Al2O3の9.2g。=(1X9.2)/.120=0.077 モル

    c) SiO2の45.1g=(1X45.1)/60.1=0.750 モル

  ) ゼーゲル式に変換する。

     式ではRO(媒熔剤、アルカリ成分)は1モルとしています。それ故上記 a)の合計が1になる

     様に書き換えます。即ち 0.090+0.100+0.016=0.206 モル 

     1/0.206=4.854倍します。

    ・ K2O=0.090X4.854= 0.437 モル  ・ CaO=0.100X4.854=0.485モル

    ・ MgO=0.016X4.854= 0.078 モル

    ・ Al2O3=0.077X4.854=0.374 モル

    ・ SiO2=0750X4.854=3.640 モル

    結論  以上の事から、配合例の釉のゼーゲル式は以下の様になります。

          RO ・ 0.374 Al2O3 ・ 3.640 SiO2 となります。

       MgOを若干含んでいますが、透明系の釉になると思われます。

尚、ゼーゲル式は面倒な計算に成りますが、ゼーゲル式の計算ソフトが存在しています(有料、無料)

ので、興味のある方は、ネットで検索して下さい。

以上でゼーゲル式の話を終わります。

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