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ウィンザー通信

アメリカ東海岸の小さな町で、米国人鍼灸師の夫&空ちゃん海ちゃんと暮らすピアノ弾き&教師の、日々の思いをつづります。

海の災難

2025年04月22日 | 家族とわたし
家猫の弟分、海(KAI)が体調を崩してから2週間が経ちました。
リサイタルが近づいていた頃から、1日に数回嘔吐をするようになり、獣医に連絡をしなければと思いつつ、予約を取ることができないまま日が過ぎて、ついには便が緩くなってきました。
嘔吐も下痢も、数日経ったら自然に治っているという今までのパターンは、ただの幸運に過ぎなかったのでした。
そしてそんな飼い主の身勝手な希望的観測のせいで、不快で苦しい症状を持ち続けなければならなくなった海は、体重が2キロ近くも落ちてしまい、撫でると背骨や頭頂骨がコリコリと手に当たります。

わたしはだから、ごめんねごめんねと心の中で謝りながら、彼の体から噴き出される汚物の処理をし続けているわけなのですが、彼の便がとうとう完全な液状になってしまった夜は、まさしく悪夢そのものでした。
まだその頃は、近いうちに発生するであろう最悪の状況を想定し、対策を練り、対処する方法を予め準備しておく、という考えがありませんでした。
悪化する、というふうに考えたくなかったのかもしれません。
病院に連れて行かなければと思いながら、ぐずぐずしていた我々のせいで、海の容態はどんどん悪化していったのでした。

海は猫です。
猫は訓練しなくても排便は必ず猫用トイレで行い、した後は丁寧に、徹底的に、猫砂(我が家では紙を棒状に圧縮したもの)を足で掻いて隠します。
なのに彼は、それができなくなってしまいました。
液状になった便は、彼の意思とは関係なく、時と場所を選ばずに垂れ落ちてしまうからです。
そのことに彼はとても動揺し、困惑し、わたしに叱られると思うのか、部屋の隅に行ってすまなさそうに俯くのです。
その姿を見ると余計に申し訳なくなり、全く怒っていないし、あなたは悪くないんだということを伝えたくて微笑みながら話しかけるのですが、なかなか伝わりません。
もちろん、その刺激臭といったらもう、半端ではありません。
一瞬クラクラするほどの悪臭にたじろぎますが、さっさと拭き取って密閉してしまわないと、家中に臭いが充満してしまいます。
その夜はだから、一滴のブツも見逃すまいと、ありとあらゆる所を懐中電灯で照らしながら(うちの床は全て板貼りなので保護色になって見つかりにくいのです😅)、見つけては拭き、また見つけては拭き、という作業を続けました。
相手は猫だから、どんな狭い所でも通り抜けるし、階段の上り下りもするわけで、特に腹に力が入る動作をしたであろう場所を念入りに調べていきました。
その作業をする間、辛くて、申し訳なくてたまりませんでした。
散々な夜をほぼ徹夜で過ごしたわたしは、心身ともにボロボロになってしまいました。
そんな姿を見た夫が、ホリスティック治療をする獣医の予約を取り、海を連れて行ってくれました。
それが壮大なるカオス第一夜。

夜が明け、ヘロヘロの頭で考えたのは、もう2度と同じことは繰り返したくないの一点のみ。
海を抱き上げると必ず衣服にブツが付くので、抱き上げは禁止。
カウチ全体をビニールシートで覆い、その上に洗濯しやすい薄手の布と大きめサイズのバスタオルのお古を敷きました。
朝ご飯の後は外に出るので、家の中が汚れることにはなりませんが、夜ご飯の後は外には出られません。
食べ終わって2時間ばかり経つとカオスの始まりがやってきます。
2日目の夜は夫が前半を手伝ってくれたものの、やはり後半はわたしだけの作業になり、再び寝不足に。
今回ばかりは獣医に即効性の下痢止めを処方してもらってとお願いしたのですが、獣医も夫もその考えには賛成してくれず、このままではまた眠れないと思ったわたしは、思い切って海を台所に軟禁しようと提案しました。

3日目は、2階の洗濯室に置いてある猫トイレを1階に降ろし、海を台所に閉じ込めました。
海は台所を拠点とし、台所の窓に取り付けられた猫窓から裏庭に出ることができます。
午後6時以降は台所のみになりますが、夕飯後に例のカオスが始まった直後に、すっかり暗くなった外に出してみました。
粗相は外で、という提案を海は理解してくれるかどうかの実験です。
普段は夕方の6時に、季節柄まだ明るくても家に戻るというルールを守らせてきたのですが、今は非常事態なので仕方がありません。
でも猫たちは大いに混乱し、一体全体どうなってるのかわからなくなり、だからルールも常識も吹っ飛んでしまったところにようやく春がやって来たので、毎日の決まりもいつもの暮らしもどこかに消えてしまいました。
そんなこんなの大混乱の中、海が無理矢理こじ開けた猫窓のレバーがおかしなことになってたからか、2匹とも朝まで部屋の中に入れずにいたのが今朝の出来事。
今日は空を台所に入れなくして、2匹を完全に隔離しました。

4日目の明け方の便は完全な液状ではなく、少しですが固まりが混じっていました。
全体重の4分の1を失ってしまい、一時期深刻な状況に陥っていた海ですが、昨日あたりから少し元気が戻ってきたようです。
夫が処方した漢方薬と獣医からの漢方薬を混ぜた餌の味にも慣れてきて、食べる量も少しずつ増えてきました。
2週間以上もの間、あれだけ吐いてあれだけ出してきたのだから、お腹の中はずいぶん荒れてしまっているでしょうし、すぐに前みたいな状態になれるとは思っていませんが、彼の食欲が途絶えることがないことが唯一の支えになっています。

思えば液状便になったあの夜がどん底だったと思います。
わたしの人生にはいろんなどん底が目の前に現れては消えていきましたが、その度に必ず思うことがあります。
ああ、これが一番底だなあ。もうこれ以上落ちることはないなあ。これからはずっと昨日よりはマシ、今日よりはいい感じ、みたいな日が続いていくんだなあ。
今回もどん底が見えたので、今はもう這い上がっていくのみ、希望がふつふつとわき上がってきました。
海、しんどい思いさせてほんとにごめんね。

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