ウィンザー通信

アメリカ東海岸の小さな町で、米国人鍼灸師の夫&空ちゃん海ちゃんと暮らすピアノ弾き&教師の、日々の思いをつづります。

一介のピアノ教師より

2012年12月16日 | 日本とわたし
朝起きて一番に、日本の衆院選の結果をツィートで読んだ。
がっかりした。
けども、こんなもんやろ、とも思た。
そやかて、変わらなあかん、変えよやないか!って思う人が、やっとちょろちょろ出てき始めたとこやってんもん。

システム側は狡賢い。
市井の市民の側にも人を送って、日々の様子を逐一観察してる。
たいていのことは鼻にもかけんけど、なんやしらん、今回の、変えたい言うてる連中はしぶとそうでヤバい、
そういう報告も上がってたんやろと思う。
そこへもってきて、使うだけ使た操り人形らを、お払い箱にするにはもってこいの機会にもなる。
選挙や選挙、選挙やってまえ。
宣伝部隊も言いなりで、派手に洗脳してくれてるし、なんも心配することない。
笑いが止まらんっちゅうのはこのことや。
おかげで、聴衆の前でちょっと浮かれ過ぎて、危うくバレてしまうとこやった。


わたしは一介のピアノ教師。
この仕事をし始めてから、37年になる。
教師になって最初の5年はひどいもんやったけど、教えもって教えてもらい、失敗を重ねて迷惑もかけながら、今に至ってる。

最近、ふと、ぼんやりと思うことがある。
ひとりの人を前にして、音楽やピアノのことについて教える時に、一番大事なことは結局、待つということちゃうかと。

子どもにせよ大人にせよ、その人が、自分の意志で、覚えたり挑んだりしとうなる時が来るのを待ちながら、
それまでの間は、ただただコツコツ、音楽やピアノの知識や、身体的かつ精神的な動きの表現や、技術の基本を教えていく。
あきらめず、やけにならず、過度な期待もせず、そやけど希望と情熱をもって続けていく。
まあ、こんなふうにええかっこ言うてるけど、凹むことは多々あるし、ヤケになりそうなこともある。

続けていくには、わたしだけやのうて、その人も続けてくれな話にならへん。
なんで自分はこんなことせなあかんのん?と、わたしが熱心に伝えてる姿を、首を傾げて眺めてる人もいる。
ちょっとは話がわかってきた人でも、たまに、聞いたってもええけど鬱陶しい、というような顔をする人もいる。

自分が善かれと思てることでも、全く別の人に、それを伝えて分かってもらうということが、どんねん難しいか、時間がかかるか、
わたしはこの37年間で、ピアノ教師という仕事を通じて、いやというほど学んできた。
けど、性懲りも無く、年に一回ぐらいは「もうイヤや!どっか離れ島に行って寝る!」とか言いとうなる時もあるけど、これからもまた教えていくやろ。
ほんで、教えた子達が大人になり、同じピアノ教師になったり、別の楽器を楽しそうに演奏してる姿を見させてもらう。
全く関係の無い職業についた、「せやけど音楽は暮らしの中にあるから心配せんとって」と、背がうんと高うなった元生徒から言うてもらう。


世界はずっと、こんなふうに、市民は運動をしては叶わず、めげずにしてはまた叶わず、それでも引き継ぐ人がいて、何十年という月日が流れ、
ある日急に、あれよあれよというほどに急激に、バトンを渡してくれた人達が心待ちにしていた時を迎える。
けれども、その輝かしい晴れの日は、走り続けては亡くなっていった人達の気持ちが通ったバトンと、それを受け継いでくれる人がおらんかったら叶わん。

2011年の3月11日に、とてつもない地震を津波が起こり、その後原発が何基も爆発した。

そのことでやっと気がついた。
それまでに、とっくに気づいてた人達の言葉を聞き、活動を知り、遅ればせながら自分も、大人としての社会参加を始めたつもり。
この2年にも満たん月日の間に、いろんなことをさらに知り、呆れたり途方に暮れたり怒ったりした。
自分が生きて、子どもも生んで育ててきたこの世の中が、いったいどこまで腐ってたんか……。

けども、人間の世界はずっとずっと、何千年も前からこんなやったやないか。
物事の違いはあるにせよ、争いや殺し合いが絶え間なく、どこかで起こってるやないか。
急に、とてつもない力と知恵と慈しみを持ったヒーローが現れて、世界を丸ごと矯正してくれたり治めてくれたりするわけがない。
気がついた人がいて、その人に皆が賛同して、あっという間に悪政が浄化される、やなんてことも起こったためしがない。
そんな簡単なことなら、世界はもっともっと前に、すばらしいもんになってる。

日本は来年でやっと2才。
改革の一歩は踏み出されてる。
もうゼロでもマイナスでもない。
それはもう絶対に確かなこと。
やっとよちよち歩きを始めた日本が、どうやって、どんなふうに育っていくのか、細胞である市民ひとりひとりにかかってる。
残念やけど、多分わたしは、バトンを渡してこの世とおさらばすることになるやろう。
嬉して誇らして、思わず涙がポトポト落ちてくるような瞬間には立ち会えへんやろう。
けども平気。
バトンを渡せることが誇らしい。

市民運動は、善玉細胞の分裂が決め手やと思う。
がんばろな参院選。
今度は前回と違て、めっちゃ準備できるしな、うしししし。