まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

全部取得条項付種類株式による少数株主整理

2008-07-08 00:34:00 | M&A

       100%減資をやりやすくするために設けられた制度趣旨()とは異なり、現実的には、SPCを組成して、少数株主を排除して、その100%完全子会社化する方法として利用されていますね。対価の柔軟化も、SPCを組成して行えば、少数株主を排除できます。総会議案提案権・招集権とか帳簿閲覧権等少数株主権という権利もありますが、1%3%以上保有しても現実的には殆ど何の力も持ち得ませんね。単独又は共同で2/3以上の議決権を確保すれば、「なんでもできる」ようになりました。

* この種類株式の利用として、議決権制限株式として敵対的買収防衛策のアイデアも言われているようですが、私は知りません。ご興味のある方は、葉玉匡美「議決権制限株式を利用した買収防衛策」旬刊商事法務174228(2005)に記載されているようですので、それをご参照下さい。

       今回は、SPCを組成して、普通株式の2/3以上を取得したSPCが、対象会社の普通株式を、全部取得条項付種類株式を利用して、別の種類の株式に転換し(当該会社の株式ですから46114号の分配可能額の規制=財源規制がかかりません)、その際の転換比率を調整することにより、SPC以外の少数株主の保有株を、全て1株に満たない端数となるように決定して、端数部分について金銭を交付することにより排除して、100%完全子会社にする方法について考えてみましょう。

       108条の種類株式の規定の17号では、「当該種類の株式について、当該株式会社が株主総会の決議によってその全部を取得すること」とされています。2項7号では、発行可能種類株式総数に加えて、次に掲げる事項を定款で定めることとしています。

  イ 第171条1項1号に規定する取得対価の価額の決定の方法

  ロ 株主総会決議をすることができるか否かについての条件を定めるときは、その条件

  ・171条から173条では、全部取得条項付種類株式の取得について定めていますね。

       具体的な手続きは以下の通りとなります。2回の定款変更1回の普通株主による種類株主総会の特別決議と、1回の全部取得条項付種類株式取得の為の総会特別決議ですが、これらの決議は1回の株主総会で行う事が出来ると解されていますので、1回の株主総会でまとめて出来ますね。それと、既存の普通株式は、まだ株券発行会社のため株券が発行されていますので、株券提出手続きが必要ですね。

       まず最初の定款変更ですね。定款変更の効力発生は即日ですね。種類株式を発行可能にするためですね。通常の株主総会の特別決議による承認と普通株主による種類株主総会の特別決議による承認(1112)を取得します(反対株主の公正価格による株式買取請求権11612号及び裁判所への取得価格決定申立権172条1項)。

1)      発行可能株式総数を変更します。例えば、「当会社の発行可能株式総数は400万株とし、このうち普通株式は3,999,900株、甲種種類株式100株とする」とするわけですね。

2)      同時に、甲種種類株式の内容を定めます。普通は、残余財産の分配額を適当に定めます。現在の普通株が、全部甲種種類株に転換されますから、無議決権株にするわけには行きませんし、また配当優先株にしても、この甲種種類株だけになりますので、あまり意味がありません。また譲渡制限株にする必要はありません。株主が1社になりますのでね。

3)      更に、種類株主総会の規定を設ける必要がありますね。基本的には、普通株の総会の規定(招集権者・議長・議決権の代理行使・議事録の規定等)を準用すれば良いですね。また、種類株主総会の決議は、324条に規定されています。

       2回目の定款変更ですね。これも上記①の総会と同時に承認をとりますが、効力の発生は、全部取得条項付種類株式全部の取得日&株式交付の効力発生日となります。通常は、株券提出手続き(219条:株券提出公告及び株主・登録株式質権者への通知)に1カ月かかりますので、その後の日を定めますね。具体的な定款の定めの例としては、以下のような感じでしょうか。「(全部取得条項)当会社が発行する普通株式は、当会社が株主総会の決議によってその全部を取得できるものとする。当会社が普通株式の全部を取得する場合には、普通株式の取得と引換に、普通株式1株につき甲種種類株式を10万分の1株の割合をもって交付する。」即ち、10万株未満を保有している株主は、追い出される訳ですね。

③ 全部取得条項付種類株式取得のための株主総会特別決議ですね。171条に規定されています。総会では、取締役は、取得することを必要とする理由を説明し、「当該取得対価が当該株式会社の株式であるときは、当該株式の種類及び種類ごとの数又はその数の算定方法」及び「全部取得条項付種類株式の取得日」等を決定します。

  1株に満たない端数がある場合の処理は、234条に規定されています。裁判所の許可を得て2/3以上保有のSPCへ売却され、SPCが、その端数を買い取ることにより、少数株主を排除する事になります。


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