まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

M&AでのFAと弁護士の能力

2014-08-24 01:27:53 | M&A

 

  • 今回は、米国企業の売却案件での、FAと弁護士の能力についての話です。米国企業の売却では、米国企業はSeller’s Rep.を起用しますし、上場企業がらみですと一般的に入札になりますね。この場合を想定して、日本のFA (Financial Advisor)と一流と思われている法律事務所の弁護士の能力についてのコメントです。 

  • FA、投資銀行のM&A部門とブティックのアドバイザーがいます。一般的に金の世界の人ですから一生懸命やってくれるところもありますが、能力的には今一が多いですね。投資銀行の場合は、業界の証券アナリストから業界事情・当該対象企業のことも聞けるのですが(ファイアーウォールとか言っている場合もありますが、それは建前ですね)、ブティックのM&Aアドバイザーからは業界情報は聞けません。その割には、報酬体系は、投資銀行と同じです。精緻な計算・分析はしてくれますが、所詮は計算係&雑用&(監査法人等を含めた)取り纏め係です。売り手Rep.が有力投資銀行の場合は、こちらも米系の有力投資銀行を起用しましょう。米国New Yorkで、お互いM&Aを遣り合っていますので腕力がありますし、貸し借りもあるでしょう。ブティックのアドバイザーは、言って見ればちびっ子ギャングですね。腕力がありません。大きなM&A Dealのときは腕力が要ります。

     

  • 顧客は、FAの言うことを真に受けてはいけません。リスクも負いません。勿論入札では勝たないと意味ありませんので、「勝てる値段」を算出しようとします。EBITDAMultiple + アルファですね。こんな計算簡単ですが、あたかもプロの仕事の様に見せかけるのは得意ですね。EBITDAMultipleの上限に、DCFの計算遊びの数字を持ってきて、あたかも適切なValuationであるかのように装います。それと注意点は、FAは自分の意向で案件を進めます。従い、顧客には必ずしも本当のことを言わない場合があります。本当は自分の意向なのに、売り手・売り手Rep.がこういっていると言って、案件を進めようとすることもありますね。要注意ですね。

     

  • 弁護士は、普通パートナーを指揮官として、34人のチームを組みます。顧客との会議では責任者が発言しますが、本当に顧客のためを考えた提案をする弁護士は、殆どいません。M&A専門と法律事務所の経歴に記載してあっても、顧客にとり優秀な人には、なかなかめぐり合いません。

     

  • 売却案件では、売主側がDefinitive Agreement (DA)のドラフトを出してきます。当然売主に有利な条項(手続き的な部分を除く)ばかりですし、中には結構trickyな条項をありますから注意が必要です。日本側弁護士が、このdraftmark-upをしますが、弁護士を頼りにしてはいけません。弁護士の中には、この条項は財務関連・税務関連だから監査法人に聞けとか、修正が多いと不利に扱われますよとか、。カウンターしないほうが良いですよ等と、どっちの向いて発言しているのか疑いたくなるような弁護士もいます。

     

  • 責任者の弁護士は、DAドラフト等読まずに、会議で発言します。DAを読んで修正するのは若手の仕事だからですね。条文のHeadingを見れば、大体何が書いてあるか等すぐに分かりますからね。ですから、時々DAに照らせば、ピンボケの発言をします。DAに記載のRep.& Warranty以外は、「No Warranty」という条項があっても削除しません。また、一流法律事務所だからと言って、きちんとカウンター・修正をするわけではありません。全て、細かい指示をしないと、後で落とし穴に嵌められます。また契約交渉でも注意が必要です。私は、かつて米系法律事務所の弁護士2(Partner & Associate)と一緒に、相手と交渉をしたことがありますが、2人の弁護士は、ずっと黙って座っていました。お金泥棒ですね。

     

  • FA&弁護士とも、知見のない分野があります。それは従業員の福利厚生・退職給付の分野です。売り手が、従業員の勤務年数通算の規定をDA draftに入れてきても、全くその重要性に気づきません。当然、何の指摘もない。こちらから逐一指示を出さないといけません。

     

  • 要するに、FAも弁護士も、素人の人から見れば、頼りがいのあるように見えるのですが、通り一遍で、案件が成立すると、責任も負わずに去っていきます。後処理は買収した企業がしなければなりません。

 

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Escrow Agreementについて

2014-08-14 01:20:53 | 商事法務

 

  • 日本では、一部土地取引などを除きあまりポピュラーではありませんが、信託の発達した英米では結構見られる取引にEscrow Agreementがありますので、今回は、そのEscrow Agreementについてです。では、どんなケースで見られるでしょうか。

     

 

  1. M&Aの例えばAsset Purchaseでは、当然closing date(譲渡実行日)にはPurchase Priceは確定しません。Closing dateに、Asset & Liabilitiesを譲渡しますが、流動資産・負債はいつも動いていますので、事後的にClosing dateの譲渡資産・負債を確定し事後にAdjustment行います。しかし売主は、やはりClosing dateに譲渡代金を要求しますね。一方買主は、払いすぎるわけにも行きません。お金が一旦売主に払い込めば簡単には戻してもらえない可能性があります。従い、予定譲渡金額が約1億ドルなら5%5百万ドルをEscrow Agentである銀行に口座を開設して、その口座を通じて事後調整を行う場合があります。このときには、売主・買主間のM&A契約で、Escrow Agreement(買収契約本文で明記して、Exhibitとして添付)規定する場合が多いです。

     

  2. 例が多いのが不動産取引ですね。日本でも、更地にしてから購入するという条件がある場合には、譲渡の実行が先になります。売主としては更地にしたけど、買主がもうやめたでは「どういうことか!」となりますので、大きな取引には時々利用されます。大きな取引に限られているのはEscrow Agent(信託銀行)の手数料・費用が結構高いからです。50億円の取引なら、下手をすると1000万円ぐらいはかかります。これには銀行の手数料に加えて、土地取引の内容を弁護士がチェックする、そういった費用もかかるからですね。英米では、売主は不動産権利証(title deed)を、買主側は購入代金+諸経費をEscrow Agent(銀行)に預託して、条件が成就したときに、銀行が権利証と代金・諸経費の引渡しを同時履行する内容のEscrow契約を結びます。

 

    3.その他の例としては、穀物の売主が買主に穀物を収穫時期が来たら引き渡すと  いう契約で、買主が売主に、穀物栽培・成育代金を融資する場合などにもEscrowが使われます。

 

  • Escrow Agreementの内容

  1. Escrow契約の内容を見てみましょう。契約の構成は、①銀行のEscrowの標準約款(Escrow Agreementの内容)、と② 当該案件用のEscrow Agreementです。売買当事者と銀行間の3社契約で、Agreementだけの場合と、覚書+取引保全信託契約証書の2つの内容の契約を結ぶ場合があるようです。①の標準約款の内容はカットして、②の主な内容です。

     

  2. 契約の内容:

    買主は、委託者&収益受益者であり、売主が元本受益者、銀行が受託者ですね。元本が引渡予定金額ですね。預金ですから利息が生じますが、利息まで相手に渡しては払いすぎになるので、その部分は委託者が収益の受益者になります。

    ・銀行で口座を開設する(既にその銀行に口座を持っている場合が多いので、その口座から、新規に開設するEscrow口座に代金を振り替えする場合が多い)

    ・銀行に信託報酬を払いますので、その信託報酬の計算方法の規定。

    条件が成就したとき等の銀行のレポートの送付先・通知先を規定

    ・その他の内容は、基本的に全て約款通りとなります。

     

    これぐらいでしょうか。

 

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日米の事業譲渡契約の違い

2014-08-10 22:19:29 | M&A

 

  • M&A契約の一形態として事業譲渡がありますね。最近の日本では会社分割の制度ができたこともあり、事業譲渡契約が減少しているのかもしれません。米国では、リストラが盛んですので、不採算部門の売却ということで事業譲渡(Business Transfer,買主から見ればAsset PurchaseといってもAssetのみではなく、その事業に従事している従業員とともに譲渡)契約は、それなりにあるようです。ということで、今回は日米の事業譲渡契約の違いを述べてみましょう。手続きとしては、独禁法の届け出は日米ともに行います。

 

  • 主な違い

  1. 契約書の量:日本の契約書のボリュームは、せいぜい10ページぐらいでしょうか?

    別にこの事業譲渡契約に限りませんが、米国のAsset Purchase契約書のボリュームは、

    詳細なDisclosure Scheduleなどが付きますので、本文50-70ページ&付属書類が数十ページ付きます。全部で120-140ページぐらいでしょうか。米国の弁護士さんは、以前のAsset Purchaseの契約書のcopy & paste60-70%作っているのに、よくもうかりますね。

     

  2. 譲渡対象資産・負債:日本では、譲渡対象資産・負債を契約書に記載します。その詳細を別紙につけることはしませんね。ところが、米国のAsset Purchase契約では、譲渡対象事業は当然明記しますが、同時に譲渡対象から除外される、Excluded Asset & Liabilitiesを記載します。

     

  3. 表明・保証:最近の日本の事業譲渡契約も米国の影響を受けているから、譲渡資産等について表明・保証を入れるようになったでしょうか?昔、私は結構日本でも事業譲渡を行いましたが、その当時の契約書には表明・保証条項は、あまりありませんでした。あっても総論的な包括的な条項を7-8個ぐらい書いておけば、関係者は納得していました。米港ではそうは行きません。詳細に規定します。数ページから10ページぐらいでしょうか。まあ、その表明保証には、会社がきちんと成立していて、またサイン権限者は権限ありとか、どうでもよい規定もいくつも入りますね。事業と譲渡する売主の表明保証が買主には重要ですが、買主も表明保証をします。この買主の表明保証で一番重要なのは、きちんと払う金は持っていますよというものです。米国などはファンドが買収する例も多いですから、買収を決めてから、出資者にcapital callなどしてお金を集める場合もありますからね。

 

 

  4. Straddle Period:この規定は日本の事業譲渡契約では見たことがない規定ですが、米国のAsset Purchase契約では、結構普通に見る条項ですね。Straddle即ち、両足を広げるという意味ですね。事業譲渡の実行日までの税金は譲渡者が、その後の税金は譲受者が負担する条項です。結構厳密に決ますね。M&Aの買収価額自体、エイヤーとラフに決めておいて、その他は厳密に決める、これが特徴ですね。即ち、買収価格は、上位2ケタ、即ち32億ドルとか71百万ドルとか決めるのですが、契約では細かいことをぐじゃぐじゃ決まますね。 

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