まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

大量保有報告書の記載事項の強化を

2012-11-23 15:33:48 | 企業一般

 

○ 有価証券報告書に記載される上位10社の大株主の状況が、この十数年の間に一変 しましたね。例えば、「日本トラスティ・サービス信託銀行株式会社(信託口)、ステートストリートバンクアンドトラストカンパニー(常任代理人 香港上海銀行東京支店)、モックスレイ・アンド・カンパニー・エルエルシー(常任代理人 株式会社三井住友銀行)」などと表示されて、ファンドなのか、LLCならそのLLCの保有者(あるいはGP)等誰が保有しているのか、意思決定は誰が行っているのかわかりません。日本の5%ルールに基づく大量保有報告書では「提出者(大量保有者)」の記載を要求していますが、究極の保有者等の記載は要求されていませんね。やはりこれは欠陥ではないでしょうか?

 

 5%ルールも歴史が浅いですね。これの制定のきっかけは1987年に起きた「タテホ化学工業事件」ですね。同社が債券先物取引で約300億円の損失を被った事件ですが、当時同社に融資していた阪神相互銀行(当時)が、タテホの巨額損失発生が公表される前日に保有株のほとんどを売却してしまったことが発端です。<o:p></o:p>

 

. 当時の証券取引法第58条第1号にも不正取引行為禁止の規定があったのですが、(現在の金融商品取引法第157条第1号)、それまでこの条文により起訴された事例はなかったと思います。つまり日本ではインサイダー取引はやり放題だったのですね。馬鹿を見るのは、情報を入手できない個人投資家等でした。しかし外国人投資家も増えてきており、海外からの批判もあり、海外から批判されるとすぐに行動を起こす政策当局により、翌年1988年には証券取引法改正を行い内部者取引規制が導入されました。そして、1990年には市場の公平性・透明性を高め、投資家保護を計る観点から、株券等の大量の取得、保有、譲渡に関する情報を迅速に投資家に開示する事を目的として、株券等の大量保有の状況に関する開示(いわゆる5%ルール)ができたわけですね。制度制定当時は、取得日から5日以内というのは必ずしも守られていない様な事例もあったように思いますが、その後の改正も踏まえ、最近ではきちんと定着しているようです。しかし、問題は誰が取得者なのか、今の大量保有報告では分からないのです。<o:p></o:p>

 

 

 では米国ではどのようになっているのでしょう。5%ルールは、いわゆるWilliams Actにより5%ルールが制定されました。これは、1934年制定の証券取引所法(Securities Exchange Act of 1934)の1968年の改正の事ですね。従い1934年証券取引所法の13(d)を見ればわかります。証券取引所法は米国証券取引委員会(Securities and Exchange Commission :SEC)WEBに行けばダウンロード出来ますが、膨大すぎて読んでられませんし、よく分かりませんし、読み始めたらすぐに寝ることができますね。学者等が日本語で本を出版されているので、それを読んだ方が良いですね。<o:p></o:p>

 

 買収者(グループの場合はそのグループ)が、発行者の特定種類の証券(any equity security of a class)を直接・間接を問わず取得したときは、取得日から10日以内(日本は5日以内)にSchedule 13Dを、発行会社、SEC、当該証券の上場取引所に届け出なければいけません。ここまでは日本と変わらないのですが、13Dを見ると、日本の報告書と違って、買収者の役員・取締役に加えて、その買収者の親会社の役員・取締役等(any person controlling, controlled by)も記載しないといけません。つまり、背後に誰が居るのかがわかるのですね。具体例として、例えばGE Capital Equity Investments, Inc.(“GE Capital”) が証券を取得したら、GE Capitalの役員・取締役のみならず、GENERAL ELECTRIC COMPANYの役員・取締役まで記載しないといけないのですね。だから、普通は背後に誰が居るのか分かるのです。日本でも、ともかく背後に誰が居るのか分かるようにして欲しいですね。

 

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移転価格税制について

2012-11-17 13:45:41 | 企業一般

 海外にある子会社との間の取引価格が正常でないとき、即ち独立企業間価格(Arm’s length price)でないときは、移転価格税制が適用されて、正常な価格とされる金額との差額に対して推定課税がされますね。昔は、米国子会社との間の取引価格について問題となる例がありました。しかし、日本の輸出入で中国が貿易相手国の一番になりました。移転価格税制の対象となる国外関連者は、日本の税制上は、ダミーなどを使った場合は別として、50%以上(以上であり、超ではないです)を保有する外国法人ですが、中国側の扱いは必ずしも50%以上を保有されている中国法人ではないようです。相手が中国なので、よく分からないですが。いずれにせよ、対中国子会社との取引では、独立企業間価格で行う事が大切です。というか、中国側からみれば、中国法人がしっかり儲けていれば、文句は言わないということでしょう。というのも、日本では大企業の問題というか、中小企業まで税務当局も調べてられないですが、中国では結構中小企業まで調べられるということですね。今回は移転価格税制についてです。

 移転価格税制とは、関連者間にて独立企業間価格で取引が行われていない場合には、独立企業間価格で行われたものとみなして所得を更正する税制ですね。注意すべき点は、適用対象・関連者の範囲・対象取引等が国により異なるということです。ですから、日本の国税庁の移転価格事務運営要領(H13.6.1制定。直近改正H23.10.27)」などを見ても、相手国では相手国の基準でこれを決めてしまうということです。<o:p></o:p>

 

 

 日本の移転価格税制の適用範囲は以下ですね。 

1) 適用対象:日本の法人税の納税義務のある法人。

2) 関連者の範囲:当該法人が50%以上の株式・持分等の出資を有するなどの「特殊の関係」にある外国法人(=国外関連者:租税特別措置法66条の4

3) 対象取引:国外関連者との取引のみを対象

 

 諸外国では移転価格の文書化の明文規定があるようですが、日本では以下ですね。「独立企業間価格を算定するために必要と認められる書類として財務省令で定めるもの」を遅滞なく提示又は提出しなかった場合は、税務署の調査官に①独立企業間価格を推定して所得金額を決定し更正を行う(推定課税)、及び②国外関連取引と同種の事業を行う非関連者に対して質問検査(=Secret Comparable)を行う権限が付与されます。日本では、財務省令で定められた書類を事前に用意していなくても罰則はありませんが、移転価格更正が行われる場合には加算税が課税されますので、用意はしておいた方がいいですね。財務省令で定められた書類とは、「国外関連取引に係る資産の明細及び役務の内容を記載した書類」ですね。

 

 中国では、多分場所によって違うと思うのですが、50%以上を親会社が保有していなくても移転価格の対象となる場合があるようです。中国の税務局は、企業に「いらっしゃい いらっしゃい」しているので、税制優遇などもあるのですが、それ以外は一般的には、結構がめついですからね。要注意ですね。中国では、まず税務局が企業に対して移転価格レポートを提出しなさいという依頼があるようです。他社の同業・同種取引の利益率などは、簡単にはわかりません。一般的にはコンサルタント(大手監査法人等)を起用して、自分の移転価格の内容と、同業他社の移転価格の内容、平均利益率等の詳細報告書を税務局に提出しているようです。要するに、普段から、第三者との取引価格と同じ価格で取引しておかないといけないということでしょう。要注意ですね。

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Doing BusinessとPE問題

2012-11-04 21:23:21 | 企業一般

 

 英米系及び日本の法人(設立準拠法主義を取っている場合)では、本店等の所在地で全世界所得に対し課税されるとともに、国外所得はその発生した国でも、その国での源泉所得に対して課税されます。即ち、ある国において外国企業が、支店や子会社ではなくても事業を行った場合は、基本的にはその国の国内の税法に従って、

(1) その国に所得の源泉があるか、

(2) その国で課税対象となる事業を行っているか、

(3) その国に事業を行う為の何らかの拠点を有しているか

等の基準から、課税か非課税かの判定が行われるが、二国間で二重課税防止のための租税条約を締結している場合には、租税条約上の既定が、国内税法に優先して適用されることになりますね。

 

 租税条約上、事業所得はPE(Permanent Establishment=恒久的施設)がある場合のみ課税されるというのが原則となっており、国内法上、課税要件を満たしていても、外国企業は租税条約上のPE(=租税条約で定義される)がなければ課税されません原則と言いました、中国のようにPEが無くても、中国企業の持分(株式)を売却してキャピタルゲインを得れば、当該外国企業そのものが、中国でPEを持たなくても課税するという例もあります。インドでもそういった例があるようです。<o:p></o:p>

 

 Doing Business(=事業を行っている)というのは、外国企業がその国において、商品販売、物流、動産・不動産賃貸等を行い、その国の課税対象となる事業を行うことを言います。では何が、Doing Businessかは、当該国の税法をもとに判断しますが、単なる駐在員等の情報収集・連絡事務所、商品購入、株式投資等を行うだけでは、Doing Businessにはならないと考えられています。しかし、中国は株式・持分投資の譲渡益にも課税します。中国では国際的な課税の常識は通用しません。<o:p></o:p>

 

 PEとは、ある国において事業を行う上での拠点であり、支店・事務所、工場、一定期間を超える工事現場、外国企業の為に活動を行う代理人等を言います。尚、中国では会社法上は支店設置ができることになっていますが、現在まで銀行・保険会社以外で支店設置の許可を下ろしたことは無いと思います。Doing Businessとの関係ですが、普通は拠点を持ちますが、別に出張ベースでもビジネスが出来ますし、現地に現地企業の代理人を設けても、自らPEを持たずに事業はできますね。<o:p></o:p>

 

 PEは、租税条約で定義されますが、運用が問題で、グレーの場合はPEだとして課税される可能性があります。以下いくつか例を挙げましょう。 

(1) 相手国での在庫・リース資産を本国企業が持つ場合:在庫・リース資産そのものはPEにはなりませんが、その在庫・リース資産を常時管理する事務所や代理人がいれば、それがPEとみなされる。

(2) 工事監督者の長期派遣

(3) パートナーシップが相手国で事業を行っている場合、そのパートナーシップが参加者のPEとされる場合。

(4) 現地法人を、単なる販売代理店(ブローカ)として起用して、自ら販売代理店をコントールする場合、あるいは代理店の販売リスクを本国企業が保証している場合。

 

 大体以上ぐらいでしょうか。

コメント (2)
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