まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

意味の無い監査役の調査対象の規定

2010-11-28 22:20:59 | 商事法務

○ 会社法384では、監査役の株主総会に対する報告義務として「監査役は、取締役が株主総会に提出しようとする議案、書類その他法務省令で定めるものを調査しなければならない。この場合において、法令若しくは定款に違反し、又は著しく不当な事項があると認めるときは、その調査の結果を株主総会に報告しなければならない。」としています。

○ 監査役の権限&責務は、381条で規定していますね。即ち、「監査役は、取締役の職務の執行を監査する。」と規定し、382条では「監査役は、取締役が不正の行為をし、若しくは当該行為をするおそれがあると認めるとき、又は法令若しくは定款に違反する事実若しくは著しく不当な事実があると認めるときは、遅滞なく、その旨を取締役(取締役会設置会社にあっては、取締役会)に報告しなければならない。」と規定しています。従い、監査役の監査の対象は、取締役の全ての業務執行ですね。業務執行とは、会社のためにする社内的・対外的な活動の一切ですね。ですから、取締役の職務執行には、株主総会の開催・運営、議案、株主へ送付・通知する書類等も含みますね。即ち384条の規定が無くても、監査役の監査対象になりますね。384条の存在意義は、あえて言いますと「法令若しくは定款に違反し、又は著しく不当な事項があると認めるときは、その調査の結果を株主総会に報告しなければならない。」というところですかね。法令・定款違反が無くても、慣行として、また一種の形式的儀式として、「違反事項・不当な事項はありません」と株主総会の冒頭に監査役が、調査結果を報告している例が多いですね。

○ 384条では、「議案、書類その他法務省令で定めるもの」について監査役に調査を課しています。即ち、総会のときは、議案、計算書類、事業報告 (議決権を有する株主が1000名以上の場合は、参考書類・議決権行使書面等)の書類も調査しましょうということですね。

    では「法務省令で定めるもの」とは何でしょうか? 施行規則106条ですね。「法384j条に規定する法務省令で定めるものは、電磁的記録その他の資料とする。」→一体何なんですかね、この規定は。無くてもどうでも良い規定ですね。何が言いたいのでしょうかね?

○ まあ、あえて、言いますと法299株主総会の招集の通知の規定で、招集通知は、書面でしなければならない(同条2)としていますが、3項で、「取締役は、前項の書面による通知の発出に代えて、政令で定めるところにより、株主の承諾を得て、電磁的方法により通知を発することができる。この場合において、当該取締役は、同項の書面による通知を発したものとみなす。」と記載されていますので、この電磁的方法により発せられた通知も調査しなさいということだと思うのですが、まあ施行規則106条は、殆どナンセンスの規定だと思いますね。

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議決権制限株式の発行数制限は意味無し

2010-11-16 22:30:52 | 商事法務

○ 法115条では、議決権制限株式の発行数制限の規定があります。即ち種類株式発行会社が公開会社である場合において、株主総会において議決権を行使することができる事項について制限のある種類の株式(=「議決権制限株式」)の数が発行済株式の総数の2分の1を超えるに至ったときは、株式会社は、直ちに、議決権制限株式の数を発行済株式の総数の2分の1以下にするための必要な措置をとらなければならない。」と規定しています。一方、法308条では、株式一株につき、一個の議決権を有するとして一株一議決権の原則を規定していますね。 ですから、議決権制限と言っても、株式一株に対して、半分の0.5個の議決権にしましょうというのは無しですね。

○  私は、前提が同じでないとこんな規定は意味が無いのではないかと思います。不思議な規定です。今の会社法では、例えば10億円の資本調達をするのに、株式数の制限はありません。即ち、以下のような事ができますね。

・普通株 発行価額   5万円 発行株式数 10,000株 調達額 5億円

・種類株 発行価額 500万円 発行株式数    100株  調達額5億円

(無議決権株)

法の規定では、議決権制限株式の数(上の例では100)が、発行済株式の総数(10,100)の2分の1以下にしなさいと規定しています。即ち、議決権制限株式の発行価額を高くして、発行数を抑えてしまえば、この規定のほとんど意味はありません。上の例で、発行価額を100倍にして普通株式・無議決権株式の発行株式数を、それぞれ100分の1にすることも可能ですね。

○ 無議決権株式で重要なことは何でしょうか?株式数でしょうか?そうではありませんね。議決権が無いから株式数・議決権個数や持株比率は重要ではありません。重要なことは、配当優先狙いの優先株なら配当ですね。あるいは「普通株式への転換請求権」を付して、転換後の議決権がどうなるかですね。上の例で言えば、種類株式1株につき100株の割合で普通株式を交付することですね。この転換比率なら種類株100株が転換されて普通株10,000株になりますね。

    無議決権株式のみ引き受けては、ものが言えない。発言権を確保したいという株主には、上の例で言えば、同じ株主に普通株の募集新株発行を行えば良いですし、また権利内容は普通株と同一として+少しだけ残余財産分配優先(債務超過になれば、残余財産分配の優先権等付けても、分配など現実的には無いですけど)を加味して、種類株式を作り募集新株を割り当てれば良いですね。

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臨時計算書類制度は利用されているか?

2010-11-07 21:30:32 | 商事法務

  臨時計算書類の規定は、441条ですね。株式会社は、最終事業年度の直後の事業年度に臨時決算日を定め、その日の貸借対照表及び臨時決算日の属する事業年度の初日から臨時決算日までの期間に係る損益計算書を作成することができる。この臨時計算書類は監査役又は会計監査人の監査を受けなければならないですね。取締役会設置会社においては、臨時計算書類(監査を受けたもの)は、取締役会の承認を受けなければならない、と規定しています。

  この臨時計算書類の制度はどれだけ利用されているのでしょうかあまり利用価値はないでしょうね。まあ、これに基づき四半期決算をきちんとしても良いですが、上場企業は金融商品取引法に基づき四半期報告制度が導入されていますので、そちらに拘束されますね。ただ、四半期報告書は、原則として連結ベースでの開示のみが求められていますが。

  この制度は、勿論任意ですから作成は自由ですが、作成したら臨時決算日までの期間損益及び自己株式の処分対価額が分配可能額に算入されるだけですね。前年度=最終事業年度の計算書類で確定した剰余金から期末配当を支払った残額の枠を超えない限り、期中の分配をするのに臨時計算書類を作成する必要もありません。定款の記載が条件ですが、取締役会の決議により中間配当(金銭に限る)も出来ますしね。

  臨時計算書類の作成は、いつでも出来そうですが、そうではないですね。最終事業年度については、224号に定義があり、当該(最も遅い)事業年度の計算書類の承認がなされない限り、臨時決算日を定めることはできません。従い、会計監査人設置会社である取締役会設置会社では、(会計監査人の適正意見・監査役の相当意見は出るでしょうから)最終事業年度の取締役会決議が例えば6月総会の前の5月になされれば、最初の臨時決算日は、通常は月次決算ベースですから、早くて5月末日ですね。でも上場会社は四半期決算報告制度がありますから、5月末、6月末と毎月臨時計算書類を作ることなど考えられません。

  まあ、未上場企業で、含み益がっぽりの土地が売れたので、今月臨時決算書類を作成して株主還元しようというときには出来ますが、別に1-2カ月ぐらいすぐに立ちますからね。会社法の規定も、こんな変な規定では無く、任意の四半期決算制度ぐらいでよかったのではないでしょうか。金融商品取引法では四半期報告制度ですからね。会社法での臨時計算書類制度と、整合性というか、もう少し、統一的に出来ないものですかね。

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監査役の機能強化と内部統制等

2010-11-01 00:23:15 | 商事法務

○ 内部統制の責任者は経営者にあり、取締役会はその整備及び運用に係る基本方針を決定するというのが、内部統制の考え方ですね。それを受けて金融商品取引法(24条の42)では、有価証券報告書と併せて、会社(代表取締役)に確認書の提出を求めています。金商法では、「有価証券報告書の記載内容が金融商品取引法令に基づき適正であることを確認した旨を記載した確認書」と規定しています。また、①財務報告の信頼性、②業務執行の効率性、③法令遵守、④資産の保全を目的とした一連の手続きである内部統制についてはその報告書(監査法人の監査付き)も提出しなければならないですね(金商法24条の44)。

○ 一方監査役について、原則は、会計監査を含む会社の業務全般の監査が権限でもあり、また同時に義務ですね。そしてその権限と義務に基づいて、違法性監査・妥当性監査を行います。法令に基づき、適正であるかどうかまではともかく、少なくとも違法性は無い事、即ち遵法であることの確認は監査役の責任ですね。日本には監査役制度があります。上記のように、金商法の確認書、財務報告の信頼性、法令遵守のチェックは監査役の仕事・責任ですね。しかし、実態として監査役が外部から見える仕事はしていないですね。残念ながら。

○ 外部から見える監査役の仕事は何でしょう。それは監査報告書ですね。この監査報告書は、相変わらず昔から同じような決まり文句の記載です。勿論法令違反のある場合は違いますが。監査結果に関する通常の記載は以下です。昔と違うのは、内部統制システムが導入されたので、その記載が加わった程度です。

(1) 事業報告等の監査結果

1) 事業報告およびその附属明細書は、法令および定款に従い、会社の状況を正しく示しているものと認めます。

2)取締役の職務の執行に関する不正の行為または法令もしくは定款に違反する重大な事実は認められません。

3) 内部統制システムに関する取締役会決議の内容は相当であると認めます。また、当該内部統制システムに関する取締役の職務の執行についても、指摘すべき事項は認められません。

(2) 計算書類およびその附属明細書の監査結果

会計監査人xxの監査の方法および結果は相当であると認めます。

(3) 連結計算書類の監査結果

会計監査人xxの監査の方法および結果は相当であると認めます。

  どうして監査役制度を有しているのに、監査役にその責任と義務を発揮すべき機会を与えないのでしょう。金商法の確認書は監査役に出させても良いかもしれません。また内部統制のうち財務報告の信頼性、法令遵守についての内部統制報告書は、監査役が作成すべきものではないでしょうか。

  内部統制制度は米国のSOX法を、一部緩和して、少し味付け(ITへの対応等)を加えてそのまま導入したものです。米国の会社では、監査役の制度がありませんが、日本は監査役制度があります。きちんと日本の制度・制度の違いを検討して、日本の状況を十分踏まえて、日本に移植し導入を図るべきものだったにもかかわらず、米国基準が世界標準だという誤った考えと米国の猿まね根性の、日本の政府(法務省・金融庁)・審議会(企業会計審議会)・学者・企業経営陣の悪い癖がでたものです。内部統制の4つの目的は、日本では、財務報告の信頼性と法令遵守のチェックは監査役の責任、業務執行の効率性と資産の保全は取締役の責任とすべきだと思いますね。

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