まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

合併等の事前・事後開示事項の欠陥規定

2012-04-18 20:42:43 | 商事法務

 

○ また久しぶりに会社法の「けち」ですね。合併、会社分割、株式交換・株式移転では、当事会社の承認総会に先立ち事前開示、効力発生日よりは事後開示が求められています。いずれも類似の規定ですので、合併の場合を取り上げ、会社法の欠陥規定を指摘したいと思います。<o:p></o:p>

 

 

【事前開示事項】

 合併等の手続きについては、会社法782条以下に規定がありますね。吸収合併の場合、合併契約等の事前備置書類(*)については、782条に定めています。総会の2週間前の日から備置しなさいと言っています。ご丁寧なことに「(第319条第1=株主全員書面同意による総会決議の省略の場合にあっては、同項の提案があった日)」と括弧書に書いています。ところが、299条の1週間の規定は忘れているのですかね? <o:p></o:p>

 <o:p> </o:p>

299条=株主総会を招集するには、取締役は、株主総会の日の2週間(--公開会社でない株式会社にあっては、1週間(当該株式会社が取締役会設置会社以外の株式会社である場合において、これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間))前までに、株主に対してその通知を発しなければならない。

<o:p> </o:p>

・例えば、施行規則182条(吸収合併消滅会社)に定める事前備置書類(以下の事項の記載書面・記録)

1) 合併対価の相当性に関する事項、2)合併対価について参考となるべき事項、3)合併に係る新株予約権の定めの相当性に関する事項、4)計算書類等に関する事項、5)合併効力発生日以後における吸収合併存続会社の債務の履行の見込みに関する事項、及び6)合併契約等備置開始日後、前各号に掲げる事項に変更が生じたときは、変更後の当該事項.<o:p></o:p>

 

<o:p> </o:p>

 ○ 世の中に一杯ある非公開会社では、1週間前までに総会招集通知を送付します。事前開示書類の備置は、「総会の2週間前の日から」ではなく「招集通知を発する日から」としないとおかしいですね。<o:p></o:p>

 

<o:p> </o:p>

【事後開示事項】(合併の場合。分割・交換等も基本的には同じ)

 合併等に関する書面等の備置及び閲覧等については、法801条及びその詳細は施行規則200条に規定されています。 <o:p></o:p>

 

<o:p> </o:p>

○ 8011項と3項が矛盾しています。1項では「効力発生日後遅滞なく作成」と規定していますが、3項では、1項の書面・記録(=消滅会社の権利義務その他の吸収合併に関する事項として法務省令で定める事項)は「存続会社は、効力発生日から備え置かなければならない」と規定されています。⇒今日(=効力発生日(合併の日))から作成しろ、でも今日から備え置けというのは、どういうことですか?意味不明です。実際は事前にある程度作成しておける書類が多いですが、消滅会社から承継した重要な権利・義務等はきちんと再確認する必要もあり、効力発生日中には無理な事項もありますね。<o:p></o:p>

 

 

・ 施行規則200条(存続会社の事後開示事項)では、1) 吸収合併の効力発生日、2) 消滅会社における785条(=反対株主の株式買取請求) 及び787条(新株予約権買取請求) の並びに789条(債権者異議)の規定による手続の経過、3) 存続会社における797条(反対株主の株式買取請求)及び799条(債権者異議)の規定による手続の経過、4)存続会社が消滅会社から承継した重要な権利義務に関する事項、5)782条(上記)の規定により消滅会社が備置した書面・電磁的記録に記載又は記録がされた事項、6) 921条(合併)の変更登記をした日及び前各号の他、吸収合併に関する重要な事項。<o:p></o:p>

 

<o:p> </o:p>

○ この事後開示書類には、株主・債権者にとって重要で知りたい情報が抜けています。それは合併会社の連結ベース及び単体の開始BS(効力発生日の貸借対照表)です。勿論、これの作成には頑張っても合併後1ヶ月ぐらいはかかりますが、これはぜひ作成した段階で公表・備置すべき事項だと思います。即ち、株主が承認した合併の結果、新体制の合併会社が、どのようなBSでスタートしたのかという、非常に有益な情報が得られます。存続会社では、消滅会社の勘定の膨大な受入記帳がなされます。またその際合併当事会社間、その子会社間で、資本勘定・損益勘定、債権・債務・未実現利益(内部利益)の相殺・消去もしないといけません。一番難しいしまた時間のかかる処理は、年金・退職給付債務です。また資本勘定もパーチェス法によりどういった時価で受け入れたのか等を、前日の各当事会社のBSと比較検討して分析も出来ます。合併の開始BSをぜひ開示して欲しいと思います。<o:p></o:p>

 

<o:p> </o:p>

【開示される合併契約について】

○ 事前備置書類に合併契約等の開示が求められています。重要な資料ですから当然ですが、一般に公表前提の合併契約には、主なことしか記載しません。微妙なこと、その時点で決まっていないこと、極秘事項あるいはは公表したくないことは合併契約には記載しません。即ち、合併契約上は、別途協議合意等として別途覚書等を締結していても公表しないことが随分あります。勿論、秘密事項もありますので、全てを公表しなくてもいいのですが、日本の企業は一般的に隠蔽体質が染み付いていますので、なかなか公表しません。公表してもいいこと、株主・債権者にとって重要なことはきちんと公表してほしいと思います。

 

<o:p> </o:p>

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

企業価値と買収価格

2012-04-13 22:16:47 | M&A

 

 M&Aを行なう人、その関係者などは、企業価値と買収価格の区別をしない人が多いので、今回はその話です。やはり企業価値と買収価格は区別して考えるべきでしょう。

 

<o:p></o:p>

 企業価値の算出方法には、前提が現実を反映していない数字遊びのDCF法、純資産、純資産+のれん、EBITDAmultiple、類似業種比準方式、類似会社比準方式、企業比較法、配当還元、実際の株価、PERPBRとかいろいろあります。しかし私は、その企業が生み出す付加価値額と考えています。この付加価値額からあえて買収価格を算出する場合は、付加価値額のmultiple(前後数年)が良いと思っていますが、こういったことを言っている人はあまりいないようです。まあ、いろんな方法がありますので、特定の方法で算出して、この方法ならこのRange等といくつか並べて、Fairness opinionなどという偽りの言葉を使って、お金を貰う顧客へレポートを出すFA(=Financial Advisor)が多いですね。何がFairnessなんでしょうね。そのレポートの作成の背景・意図・作成者の目論見などを考えればFairnessとは言えませんね。<o:p></o:p>

 

<o:p></o:p>

 

 ところで、企業価値と買収価格の違いをわかりやすい例を示しましょう。例えば上場企業では株価があります。これも一つの企業価値です。しかし、TOBをするときは、この価値では買えません。20%-50%-場合によってはさらにプレミアムがつきます。このTOB価格が買収価格です。株価を企業価値とすれば、企業企業価値が突然20-50%上昇するのはおかしいですね。まあ、これは価値を客観的なものと捉えるか、例えば特定の買収者の相乗効果を勘案した買収価格と捉えるかの違いからも言えることかもしれません。<o:p></o:p>

 

<o:p></o:p>

 

 いくつかの評価機関が作製した企業価値報告書の概要を合併承認総会等の参考書類に記載するときがあります。あたかも買収価格が適正であること装うわけですね。オリンパスのでたらめ買収のときも、それに加担して報告書を作成した弁護士や公認会計士などがいたようです。最初に結論ありきで作製したのでしょう。これは極端な例ですが、多かれ少なかれ第三者の報告書はそういったものです。買収価格を正当化するために「企業価値算出の報告書」は利用されるのですね。ここに混同があります。

 

 買収価格というのは、どうしてその価格になったのか、背景・裏事情が表にでませんし、また、従業員への配慮、政治的考慮もありますので、やはり企業価値とは直接関係ないと考えて欲しいですね。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

米国倒産法11章(Chapter 11)の手続

2012-04-05 01:37:32 | 商事法務

 

 今回は、久しぶりに米国法の話しです。その中で日本でも有名なChapter 11の手続きの概要を書いてみましょう。まず、最初に、キーワードからです。<o:p></o:p>

 

DIP = Debtor in Possession (占有継続債務者)とは、再建型倒産手続である連邦倒産法第11章の手続に入った企業のことです。また、参考までに、「DIPファイナンス」とは、Chapter 11に入った企業(DIP)に対する与信のことですね。DIPは厳密には非管財人型の倒産企業を指しますが、日本では、会社更生法等の手続申立後、計画認可決定前の与信を広くDIPファイナンスと言っている場合があります。<o:p></o:p>

 

<o:p> </o:p>

 

 大きな流れは以下です。<o:p></o:p>

 

1) 手続開始:債務者企業からの裁判所へのFilingにより開始するのが多いです。Voluntary型ですね。債権者からでもFilingができるInvoluntary型もありますが、債務者が異議を唱えれば裁判所は倒産状態かどうかの審査を行ないます。<o:p></o:p>

 

<o:p> </o:p>

 

2) 申立から手続開始までの債務者の保護Automatic Stayが適用されます。“Automatic Stay Stayの期間は最大90日未満)“とは全ての関係企業等が直接的・間接的に倒産手続を妨げることを禁止するもの(362)で、倒産時点のEstate(倒産財団資産)の減少を防ぐことを目的とした倒産者に与えられる規定です。Chapter11の申立(Petition)と同時に、債権者の債権回収行為一切がは禁止されます。債務者の全世界の財産を対象にしています。勿論、Automatic Stayの対象外の行為(Negotiable Securities=流通証券等)」も法定されています。<o:p></o:p>

 

  Automatic Stayと共に、裁判所は救済命令を出します。<o:p></o:p>

 

<o:p> </o:p>

 

3) 開始決定と債務者(倒産企業):倒産企業(DIP)は原則として業務執行権・財産管理権を失いません。勿論、裁判所はDIPを調査するために調査員を選任できます。利害関係者は要求により経営陣に詐欺・不誠実・無能力・重大な経営過誤等あれば、Trusteeを選任しなければなりません。 <o:p></o:p>

 

<o:p> </o:p>

 

4) 再建計画(Reorganization Plan)の策定DIPが主体になって作成しますが、Trusteeが選任されればTrusteeが作成します。それでも策定できないときは、Filing18ヶ月以降は債権者が作成できます。<o:p></o:p>

 

<o:p> </o:p>

 

5) 再建計画の承認:Class(担保付債権者とか無担保債権者等)の債権者の債権額の<o:p></o:p>

 

2/3又は債権者集会出席の債権者の債権額の1/2で承認されます。また、株主は出資額の2 / 3で承認です。<o:p></o:p>

 

<o:p> </o:p>

 

6) 裁判所の関与:原則DIP が主導的に債権者委員会と交渉しながら取り進めますが、必要手続きや協議が整わないときは裁判所が決定を下します。<o:p></o:p>

 

<o:p> </o:p>

 

再建計画が承認されれば、それに従い実行します(Substantial Consummation)。否決されれば、破産手続きであるChapter 7に移行したり、計画の再提出を行なったりします。<o:p></o:p>

 

<o:p> </o:p>

 

○ 上記が主な流れですが、いくつかのポイントについて補足します。<o:p></o:p>

 

(a) Relief from StayAutomatic Stayの債権者に対する影響が大きいため、担保権者等は裁判所に救済の申立(Relief from Stay)、即ちAutomatic Stayの終了、あるいはAutomatic Stayに条件を付け加えることを申し立てることが出来ます。<o:p></o:p>

 

<o:p> </o:p>

 

(b) 債権者委員会の組成:倒産企業の状況説明の為、救済命令後2040日の間に、債権者集会が開催されます。US Trusteeがアレンジします(US Trusteeはいわゆる管財人ではありません)。同集会では宣誓した上でDIPからの説明があり、Trustee(管財人)の要否について議論されるとともに、債権者委員会の委員の選任が行われます。

<o:p></o:p>

 

Class毎の債権者委員会=Classes of Creditors’committee]<o:p></o:p>

  

  1. Unsecured   Creditors committee:無担保債権者委員会 (必須)
        
    社債権者を含め全てのUnsecured Creditorsを代表するものです。
     
  2. Secured  Creditors’committee :被担保債権者委員会 (任意)
  3. Stockholders’committee      (任意)
  4. その他の委員会:年金関連ファンドやsubordinated bond等の保有者の委員会等です。(状況による)<o:p></o:p>
  5.  

 

<o:p> </o:p>

 

・ 債権者委員会の権限<o:p></o:p>

  

  1. 倒産手続や債権計画案についてDIPと相談する。 
  2. Trusteeが選任されていない場合のDIP作成の再建計画、財政状態等について調査する。
  3. 再建計画案の策定に参加し、策定された計画案について他の債権者等に対してアドバイスをする。債権者等の同意を募集して裁判所に提出する。
  4. Trustee或いはExaminer(調査員)の選出依頼。
  5. 債権者等の利益に適合する役務を提供する。

      6. 裁判所の許可を得た上で、倒産財団のために訴訟を提起することができる。
(Preference=偏頗譲渡やFraudulent Conveyances =詐欺的譲渡等に対し、DIPが不合理に追求しない場合。)

 

<o:p></o:p>

     

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

中国の有限公司の持分譲渡

2012-04-01 08:27:59 | 株式関連

  

○ 中国で有限公司を設立する場合、日本や欧米各国などの準則主義(法の定める手続きを踏めば設立)と異なり、許認可機関の許認可(=免許主義)が必要です。投資金額により異なり、大きな会社(5000US$以上の総投資額)の場合は、国家発展改革委員会ですが、勿論例外はありますが、一般的には省級(大都市では市政府)の商務部門が許認可権をもっています。許認可されると批准証書が発行され設立の許認可がおりますが、会社の目的の営業を行なうには営業許可証(ビジネスライセンス)が必要です。日本(海外)企業の100%子会社は、外商独資企業と呼ばれます。

<o:p></o:p>

<o:p></o:p>

○ では、日本の親会社が中国に100%子会社の有限公司を持っており、この持分を日本(中国外)の他社に譲渡する場合を考えて見ましょう。中国の会社の持分譲渡ですから、中国の?人民共和国公司法が適用されますね。独資から合弁会社にするわけです。外商合資になります。

<o:p></o:p>

<o:p></o:p>

○ 先進国や租税回避地を設立地とする会社との大きな違いは、①管理監督機関の許認可が下りなりと効力を生じない。②たとえ中国外の当事者間(非居住者間)で持分譲渡を行なっても、譲渡益が売主に発生したら、中国の税務局により10%の譲渡益課税が発生することです(この分は、後で日本で税額控除が受けられる)。<o:p></o:p>

<o:p></o:p>

 

○ 中国の有限公司を設立したことの有る人なら分かりますが、中国は、なんでも許認可の国です。会社の設立のみならず、持分の譲渡も管理監督機関の許可が必要です。<o:p></o:p>

一番の特徴は、当事者が持分譲渡契約を締結しても、持分譲渡の効力は何も発生しないのですね。何時発生するかと言えば、持分譲渡の許可申請書類を作成して、これを管理監督機関に許可申請し、その許可が下りた日が持分譲渡の効力発生日です。具体的には、批准証書が再交付されますが、そこに記載された日です。批准証書には持分保有者の名称が記載されます。そこには投資者名称、その投資者の設立地、出資額などが記載されます。<o:p></o:p>

この批准証書が出されれば、中国で必須の営業許可証等は、その批准証書に従って変更されますが、それだけではありません。税務登記証、統計登記証等の変更等も必要です。<o:p></o:p>

<o:p></o:p>

 

 持分譲渡の申請書類は、省・市政府の商務部門と工商局に提出しますが、主な書類を列挙してみましょう。但し、中国では省や市によって、少し許認可申請書類が違いますので、結局その都度市政府等の担当部局に行って聞かないと、許認可申請書類の詳細はわかりませんね。<o:p></o:p>

 申請書、持分保有者の決議書、董事会決議書、新定款、持分譲渡契約書、旧批准証書、営業許可証、資本検査報告書、財務監査報告書、現在の定款、それと持分の買主が購入するお金があることを証明する書類(銀行の残高証明書等)、買主の登記簿謄本(当然中文への翻訳が必要&日本の中国領事館での査証必要ですので、法務局で入手して、その登記官が在職中の権限に基づいたものであるとの法務局長の証明書、その法務局長の証明書は正しいとする外務省領事部の証明書を踏まえて中国大使館領事部に査証の申請を行います)等ですね。<o:p></o:p>

<o:p></o:p>

 

○ 持分譲渡で売主に譲渡益が発生するときは、中国の当該会社の所在地を管轄する税務署に、譲渡益の10%を納税する義務が売主に生じます。しかし、実効性に疑問もありますし、運用が必ずしもその通り行われておりませんが買主(お金を払うほう)に売主の譲渡益課税の税額の源泉徴収義務があり、当事会社である中国の会社はその納税に協力する義務もあります。以下の国家税??局の通知をご参照下さい。<o:p></o:p>

?于印?《非居民企?所得税源泉扣?管理??法》的通知<o:p></o:p>

<o:p></o:p>

 

 まあ、大変な手間・労力・コストがかかります。<o:p></o:p>

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする