まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

株式買収契約(一部取得)と合弁契約

2018-11-05 22:30:33 | M&A
○ 買収契約(Share Purchase Agreement=SPA)で株式の一部(過半数等)を売主から取得する場合、株式の取得日、即ちClosing Dateに当該会社に関する合弁契約(Joint Venture Agreement or Shareholders’ Agreement =JVA)の効力が発生しますね。即ち、例えば株式70%取得のとき、残り30%保有の株主との合弁契約がclosing dateにスタートします。SPAは、当然株式取得が目的の契約ですが、事後的な条項、例えばIndemnificationは、取得後2年とか3年とか存続しますので、SPAがclosing dateにJVAにとって代わるわけではないですね。普通は、SPAに付属書類(Transaction Documentsという事が多い)としてclosing dateに締結するJVA等が添付(変更予定の定款も添付されるときもある)されます。

○ 合弁契約の効力が発生する日を基準として、合弁会社の準備のための作業がSPAに記載されます。対象会社では、旧経営陣の一部の辞任と、臨時株主総会の開催と新任取締役の指名・就任、取締役会を開催して新しいCEO, COO,CFO等の選定を行いますね。従い、closing dateには、売主は、これらの作業(Closing conditionsとかcovenants before Closing等という)を行った旨の書類をTransaction Documentsとして買主に交付します。

Closing Dateは株式譲渡実行日ですから、その日に①株式譲渡の実行を行います。株券が裏書譲渡の有価証券の場合(米国等)には、裏書して株券現物を交付(単なる株主証明書のときは、会社に交付して消却するとか、各国の会社法によって違います。)しますね。これとの関連で言えば②株金受領の領収書を売主から取得します。また、譲渡の関連で、③株主名簿への新株主記載の請求書(会社に提出するケースも多い。米国では、Request to Register Transfer of the Shares。国によって方式と必要書類が異なります)等の交付、④Closingの条件が満たされたことを証明する書類(賃借土地の登記未登記の場合の登記したことを証明する書類。国により勿論違います)、⑤SPAに規定した売主の行った表明・保証条項は、全ての重要な点でClosing date現在真実・正確であるとの売主の証明書、⑥その他SPAで規定された書類等ですね。

この他に合弁会社の効力発生の作業を行います。具体的には、⑦株主総会議事録、⑧取締役会議事録、⑨JVA(売主側署名)、⑩買収側がCEOを派遣しないときには、旧経営陣のCEO存続の雇用契約書の署名などですね。新役員の登記などは、closing dateに完了はできないので、登記に必要な書類等を渡すわけですね。日本のSPAを見ていたら、closing dateに売主・買主は、それぞれ代表者の資格証明書及び印鑑証明書を相互に交付するという条項がありました。弁護士作成のSPAは、ときどきピントがぼけたのがあります。SPA締結のときに相互交付しておけば良いことですね。

○ Closing dateより効力が生じるJVAでも、Green fieldから立ち上げるJVAと内容はあまり変わりませんが、当然違う部分もあります。まず、新会社設立及びその関連事項(工場建設等)、事業立ち上げの株主からの支援の条項等は無いですね。総会特別決議事項、取締役会の構成(人数)、指名権(CEO, CFO etc.)、取締役会特別決議事項、株主の協力の部分等は普通のJVAと同じ部分ですね。ゼロから立ち上げるJVAでもcall/put optionが入るときもありますが、違う部分として、取得しなかった残りの株式をどのようにするかの条項が入るときがあります。即ち、この株式に関して、put/call option、その場合の行使期間・価格・価格の決め方等ですね。通常は、残りの株式一括のput/callです。一部取得の場合だと、相変わらず合弁ですのでね。即ち、これは合弁解消事項を記載する訳ですね。

○ 残りの株式を将来取得することを決めている場合には、行使期間や価格算定方式をきちんと決めておかないともめますね。方式としては、70%取得時のときの取得価格に指標となる金利(税引き後)を加える方式、残りの株式取得前12か月間のEBITDA multipleによりEnterprise Valueを算出し、Net Debt (= Debt minus Cash (including cash equivalent)) 差引Equity Valueを算出、これに持分割合を掛けて算出する方法等が、一般的ではないでしょうか。あるいは、両方式を規定して、いずれか高い方と規定する場合もありますね。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« Indemnity Clauseについて | トップ | 米国企業=別の州の会社にす... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

M&A」カテゴリの最新記事