まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

三角合併による米国企業の買収

2017-10-13 23:17:52 | M&A
○ 日本でも三角合併ができるようになりました。三角合併とは、子会社と合併対象会社間の吸収合併のうち、消滅会社の株主に対して存続会社の親会社(親会社の国籍は日本以外でもOK)の株式や金銭を交付する合併をいいますね。また、合併に反対する株主には、株式買取請求権(Appraisal Right)が与えられます。日本における三角合併第1号はシティグループによる日興コーディアルグループの買収ですね。その後、何件かあるようです。

○ 今回の話は、米国企業の買収を、米国に合併のための目的会社(Vehicle)を(買収対象会社と同じ州・会社法で)設立し、その会社と対象企業とを合併させることにより買収する方法についてです。日本企業でも、今は粉飾・上場廃止・救済合併されたアクセスが、Palmsource Inc.という会社を買収するときに、APOLLO MERGER SUB, INC.という買収目的会社を設立し、Palmsourceを存続会社として、即ち逆三角合併(Reverse Triangular Merger)という手法で買収しましたね。買収の為に設立した会社が存続会社(Surviving Company)になる場合は、普通の三角合併(Forward Triangular Merger)ですね。

○ 米国では、この買収目的会社に親会社の自己株式を現物出資する形式で設立されるのが一般的です。ペーパー会社で、資産は親会社の株式のみが多いですね。消滅会社の株主は、存続会社の株式を受け取るのが普通ですが、Forwardの三角合併の場合は、消滅会社の株主は、現物出資された親会社の株式(上場株券)を受け取ります。形式的にみると株式交換と同じですね。しかし、Forward三角合併では、Target Companyは、合併により消滅してしまいます。

三角合併が好まれる理由としては、①買収対象企業を100%買収できる点ですね。即ち、合併反対株主の保有株を、強制的に買収する側の親会社の株式と交換させることができるからですね。合併反対株主といちいち交渉する手間が無くなるというか、そんなことやってられません。また合併反対株主が、ごねてその株主だけに、有利な条件を出すわけには行かないからですね。同一条件でないと公平性・株主平等が無くなります。
100%買収でないと、少数株主権を行使されて、経営の邪魔をされると、経営にも差支えが出てきます。②米国企業にとり、買収目的会社を設立して合併する他の理由としては、自分(親会社)と合併する場合は、親会社の合併承認株主総会での承認が必要ですが、そんなこともしておられないですね。買収目的会社の100%株主は、親会社ですから、手続きが格段に簡便です。また、子会社を合併させることで、Legal Liabilitiesを軽減することもある程度可能になりますね。ただ、子会社合併の承認は、親会社の取締役会だけで決定できないケースも、親会社が上場企業の場合には規制によりあるようです。

逆三角合併もよく行われますね。合併のVehicleとしての子会社を作っておきながら、合併の際に、この子会社を消滅会社にします。なぜでしょうか?これにはいろいろな理由が考えられますね。消滅会社の資産・負債・契約関係は、法律上は承継されるといっても、存続会社は、消滅会社の資産・負債を時価評価して受入記帳をしないといけません。Vehicleなら資産も単純なので、この受入記帳も非常に簡単ですね。それと種々の契約(ライセンス契約等も含む)で、合併の場合には、「契約解除することができる」という条項が入っている場合もあります。また合併だと言っても、消滅会社保有の許認可の承継には手続きが必要な場合があります。その場合、今までの会社が存続会社なら、相手方・当局も契約解除に動かない、許認可の承継手続が不要な場合もあります。しかし、何と言っても便利というか、新設会社ではすぐに出来ないことがあります。それは従業員関係の福利厚生ですね。例えば、IRC401kの確定拠出年金制度です。この制度は、会社が設計して年金受託運営会社と契約、運用の種類・選択等の従業員への説明会開催、会社のMatching Contribution(これが税法上損金処理できる)も説明する必要があります。こういった年金制度立ち上げには、普通は1年かかります。合併Vehicleの会社には、この制度がありません。従い、逆三角合併の方が良いのですね。
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合併と税金

2017-10-02 21:10:50 | M&A
○ 企業間の合併については、当然各国の会社法等で規定していますので、その企業の所在国の会社法の規定によりますね。呼び方もMerger Agreementと言ったり、米国ではPopularなAgreement and Plan of Mergerと言ったり、スペイン・ポルトガル系ではMerger Protocol (合併の正当事由を記載しないといけないので、Protocol and Justification of Mergerの方が、popularでしょうか)と言ったりします。
買収の場合ですが、株主が多い会社のときは、多くの株主と株式譲受契約を何本も結ばないといけない場合もあります。一部の反対株主がいたり法外な価格を要求されたりしたら株式取得もスムーズにできません。反対株主が残存していると経営にも支障をきたします。その場合、新設子会社を作って、その子会社とTarget企業を合併させるTriangular Merger(三角合併で、新設子会社がsurvivingのForwardとその逆のReverseなどあります)の手法により買収を行う場合があります。しかし、重要なことは、勿論買収・合併の目的・意義ですが、合併当事者企業のみならず、合併承認総会で株主の承認をスムーズに取得するには税金問題をクリアーする必要がありますし、合併スキームにも影響します。ということで、今回は合併と税金について記載してみましょう。

○ 企業間の合併で、結構問題になるのは税金ですね。これは日本でも外国でも同じです。
日本での合併の際の課税関係は、①消滅会社の資産・負債が簿価で存続会社に承継できるか、②逆に言いますと存続法人が承継する消滅会社の資産・負債を簿価で承継できるかということと、消滅会社の繰越欠損金の引継ができるかということ、③存続会社の株式を、消滅会社の株式に代わり受け取る消滅会社の株主にみなし配当が計上されるか等ですね。存続会社の株主は、影響はありません。
合併の類型としては、①100%子会社との親子合併、②50%超100%未満の子会社との合併、③第三者と共同事業を営むための合併があります。それぞれ税金の生じない(存続会社が簿価で消滅会社の資産・負債を受入)適格合併と課税関係の生じる非適格合併があります。
詳細は、国税庁のWEBや、監査法人の解説を見ればわかりますね。一般的には、Cash Merger=存続会社の株式を消滅会社の株主に交付する現金合併の場合には、適格合併は認められないですね。
ここでの注意点は、日本では確定決算主義なので財務会計の簿価は、通常税務会計の簿価と同じなのですが、海外では、財務会計の簿価と税務会計の簿価は違う場合があるということですね。

○ 米国企業間の合併でも、やはり課税されるかは大きな問題ですね。特に、株主様の地位の高い米国ですからね。米国では、Internal Revenue CodeのSection 368(a)に該当すれば、組織再編として税金は課税(再編そのものに対する課税)されないようですね。こういった合併は“tax-free” reorganizationと呼ばれています。課税されないというのは、企業再編時の話であり、正確にはtax-freeではなく、(含み益のある場合は通常有利な)課税の繰延Tax-deferralですね(資産が減損しているときはtax-freeの再編を行わない方が良い場合も多い)。
2015年に合併したKraft-Heinzもtax-free合併ですね。Kraftは、Kraft Foodsから分離した上場企業であるKraft Foods Group Inc.ですね。Heinzは、3G CapitalとBerksher Hathawayにより、delisting & went privateされた会社ですね。合併後の会社Kraft Heinzは、旧Kraftの株主が49%を保有、残りの51%をHeinzの株主であった3G CapitalとBerksherが保有しました。3GとBerksherはKraft株主の賛同を得るため、合併にあたって合計100億ドルを追加出資。Kraft株主は$16.5/Shareの特別配当を受け取りました。

Kraft-Heinzの合併で、会社はこんなことを言っていますね。「the subsequent merger and the special cash dividend of $16.50 per share of Kraft common stock received by the holders of record of the issued and outstanding shares of Kraft common stock as of immediately prior to the effective time of the merger (the “special dividend”) relevant to a particular holder and, in particular, may not address U.S. federal income tax considerations applicable to former holders of Kraft common stock subject to special treatment under U.S. Federal income tax law. Former holders of Kraft common stock should also review the discussion under the heading “Material U.S. Federal Income Tax Consequences” in the registration statement filed on Form S-4. The terms “merger” and “subsequent merger” have the respective meanings ascribed to them in the registration statement filed on Form S-4.」

○ 合併には税金はつきものですね。外国では、日本のような確定決算主義を取ってい ない国も多いですね。ですから税務会計は、必ずしも財務会計とはリンクしていません。
IFRSと日本の会計基準の大きな違いは、のれんは償却(amortize)できるかですね。IFRS採用の国では財務会計上は償却できませんが、税金逃れを目的としたものではだめですが、合併に正当事由があれば税務上は暖簾を償却できる場合があります。

やはり、合併を検討する際は、いずれの国でも税金問題は、重要ですね。
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