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まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

会社法の機関分化の発想がおかしい

2010-10-24 17:54:18 | 商事法務

○ 会社法に「けち」をいろいろつけていますが、今回は機関設計についてのけちですね。今度の会社法では、機関設計は、非公開会社(=全株式譲渡制限会社)かどうかという点と、大会社かどうかという点を切り口にしています。即ち、公開会社の場合は、取締役会と監査役(委員会設置会社では不要ですが、会計監査人が必須)が必須ですね。また大会社かどうかという点では、監査役(監査役会を含む。委員会設置会社は不要)と会計監査人を必須にしています。

○ 公開会社では、株式は転々流通し株主も変わるので、しっかり経営しないといけない。だから取締役会・監査役が必須という発想だと思いますが、これはおかしいですね。譲渡制限を設ければ、株主は身内だけに限定できるから、監督・監査機関は設けなくてもOKという発想がおかしいですね。株式会社は物的会社であり、やはり経営を受託した以上は、誤りのない経営をしないといけない。そのためには取締役会と監査役を設けるのを標準とした方が良いのではないかと思います。

○ 非公開会社&非大会社では、取締役のみで株式会社を設立出来ます。即ち機関としては、意思決定機関としての株主総会と、業務執行・代表機関としての取締役だけです。昔の有限会社ですね。これをボトムラインとして、機関設計を出発させています。これがおかしいです。確かに、大企業が100%子会社を作ったり、個人事業主が、個人店舗等を法人成りさせる例も数としては多いですからね。しかし、社会に影響力ある会社の標準として視点では如何なものかですね。上記の標準から出発すべきでしたね。即ち、昔の商法では中会社を基準として、商法特例法で大会社・小会社の例外を定めていました。即ち、標準を設けて上下に例外事項を設けていました。これでよかったのですね。

・ 株主総会と取締役だけでは、会社のガバナンスはどのようにすれば良いのでしょうか?株主が直接取締役を監督するということでしょうか?大企業の子会社なら事実上は出来るかもしれません。親子間で経営指導契約を結ぶ例もあるでしょう。しかし、株主という立場では、株主総会を通じて行使する建前となります。出来るのでしょうか?会社の業務執行の監督、あるいは内部統制は、会社の内部の人しか出来ませんね。社外役員など、会社の内部で何が起こっているか分からないからですね

・ 取締役会が無いという事は、取締役会議事録もありませんね。取締役が決めたことの記録が無いということは、如何なものでしょう。法382条では、監査役は、取締役が不正行為をしたり、そのおそれがあるとき、法令定款違反事実等はその旨取締役に報告しなければならないと規定されています。取締役が一人のときは、そんなことも出来ません。また、他の取締役や監査役がいないときは、取締役が不正行為をしてもわかりませんね。

○ 商法時代の会社は、株主総会、その総会の選任する取締役で構成する取締役会が業務執行の決定と監督を行う。そこで決めた事項の実行及び日常業務の決定と実行は、取締役会が選定する代表取締役(&選定業務執行取締役)が行うという構成でした。監査機関としては、別に監査役がありました。例外を設けても勿論構いませんが、標準を下限・ボトムにして、そこから出発したのは如何なものでしょうか?


全部取得条項付種類株式についての疑問

2010-10-11 15:42:27 | 商事法務

○ 全部取得条項付種類株式については、会社法1711項、10817号等に規定されていますね。即ち、108I⑦には、この種類株式の定義が記載されています。「当該種類の株式について、当該株式会社が株主総会の決議によってその全部を取得すること。」

また171条では、「全部取得条項付種類株式を発行した種類株式発行会社は、株主総会の決議によって、全部取得条項付種類株式の全部を取得することができる。この場合においては、当該株主総会の決議によって、次に掲げる事項を定めなければならない。」として、総会決議の内容について定めていますね。

   この種類株式は、いわゆる100%減資(*)を可能にするために新たに設けられたものですね。即ち、会社再建のため新たな出資者が出てきたときに、出資の条件として、既存株主の株式全部を無償消却(無償なので財源規制461Iの適用無し)するためのものですね。会社更生手続・民事再生手続以外のいわゆる私的整理の場合は、株主全員の同意が必要とされていましたので、全員同意というのも大変なので、2/3多数決の特別決議で出来るようにするためにこの種類株式を創設したわけですね。

* 100%減資は、株式の消却と資本金の額の減少がリンクしていたH13の商法改正前の表現ですね。この改正により額面株式が廃止になり、また株式数と資本の額の関係が遮断されましたので、例えば、「100%旧株消却」とでも言わないとおかしいですね。こういう言葉を使うから多くの人が、株式消却と資本金の減少を未だにリンクしていると誤解しているんですね。

   この種類株式の利用方法としては、いわゆる100%減資の他に、子会社化、あるいは株式交換の迂回ルート(親会社側で手続きが不要になる)等もあるようですね。子会社化については、富山化学工業(株)が富士フイルムホールディングスと大正製薬両者の合弁会社(富士フィルム側の子会社)になるときに使った手法ですね。A種種類株式という、残余財産分配優先株(1株に付き1円だけ優先させる)という適当な株式を技巧的に作って、普通株式に全部取得条項を付して、富士と大正製薬だけが単元株主となるよう、普通株1株に対して優先株を、26,477,353分の1株の割合をもって交付して、1株未満の端数を無理矢理作って、現金交付で普通株の株主を追い出しましたね。

   いわゆる100%減資(*)をするときにこの種類株式が利用できるとされていますが、素直な株主だけなら無償消却に応じるかもしれませんが、そうとも限りませんね。461条1項4号により財源規制(当該会社の株式の場合を除く)がかかっており、また反対株主の買取請求が認められているからですね。

無償消却に不満のある株主が、法117条に基づき、裁判所に価格の決定を申し立てたらどうなるのでしょうか。即ち、裁判所は、価格はゼロ円=無価値だと言えるのか?また、買取請求に係る株式買取は、当該株式の代金支払いの時に、その効力が生ずる(同条5項)とされています。1株1円でも有償です。ということは財源規制がありますので、発行済普通株式の全部を全部取得条項付種類株式にして会社が全部取得する前に、資本金の減少・資本準備金の減少の特別決議と債権者保護手続きして、分配可能剰余金である「その他資本剰余金」を数字上作らないといけません。でも債務超過の会社がその他資本剰余金を作れるのでしょうか? 勿論同じ株主総会で全てを決議できるでしょうけど、債権者保護手続きを済ませ、資本金・資本準備金の減少の効力を発生させてからでないと、全部取得条項付種類株式への転換ができませんね。例えば、資本金100億円、資本準備金50億円で、累積損失200億円なら、マイナスの資本金というわけにも行きません。資本金0円、準備金0円としても、分配可能剰余金である「その他資本剰余金」は作れませんね。新たな株主が増資に応じて、資本金・資本準備金をプラスにして、もう一度、資本金・準備金の減少手続きをしないといけないのでしょうか?

   疑問点を整理すると以下と言うことでしょうか。

この規定のおかしなところは、財源規制をかけたことと、反対株主に買取請求権を与えたことですね。

反対株主の株式買取請求権が行使され、当然会社とは協議が整わないでしょうから裁判所の決定になりますが、裁判所は、買取価格はゼロ円と決定できるのでしょうか。

株式買取価格は一円とでもしたときは財源規制が働く有償取得になる。ということは、債務超過の会社はどのようにして「その他資本剰余金」を作れば良いのでしょうか。

・そもそも、株主全員同意取得の困難性を回避する制度として、この種類株式が出来ましたが、反対株主が徹底抗戦して買取請求したら、この種類株式を創設した意味も半減するのかもしれません。

この種類株式はよくわかりませんね。分かる人がいたら、教えてくれませんか!勿論、お礼は「無償」です。

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