まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

無議決権株式の株主の総会参与権

2010-03-22 23:03:46 | 商事法務

  議決権というのは、広義の議決権と狭義の議決権がありますね。一般的には狭義の議決権を言いますね。広義の議決権とは、広義の総会参与権の事を言い、この総会参与権は、①総会招集通知を受ける権利、②総会に出席する権利、③総会で発言する権利、④議決権等(これに加えて総会で情報の提供を受ける権利等、議決権の周辺の権利を含みます)を包括的に含んだ権利の事を言いますね。狭義の総会参与権とは上記の①から③ですね。

  一方、無議決権株式の株主には、総会招集通知(299条)が不要であると、多くの学者・先生方が言われているようです。その根拠と言えば、法2982項のようですね。同条では株主総会招集の決定について定めていますが、2項では、「取締役は、株主(株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株主を除く。)の数が千人以上である場合には、前項第三号に掲げる事項を定めなければならない。」また、前項第三号は「株主総会に出席しない株主が書面によって議決権を行使することができることとするときは、その旨」と規定されています。

  2991項では、「株主総会を招集するには、取締役は、株主総会の日の二週間前までに、株主に対してその通知を発しなければならない。」と規定されています。

「株主に対して」と記載されています。「(当該株主総会にて議決権を行使できない株主を除く)」とは記載されていません。どうして無議決権株式の株主には招集通知を送らないのですか?優先株式を上場している伊藤園は、(議決権のある)普通株の株主のみ招集通知を送っているのでしょうね。無議決権株式の株主にも、招集通知を送って、出席したい株主には来てもらって、議決権ある株主と無議決権株式の株主と分別すればいいだけですね。「株主総会」ですから株主にオープンにするのが健全な常識であり、情報公開・説明義務(義務にまでするかとか、細かい事を法学者は言いがちですけどね)が、会社が取るべき基本的姿勢であり、会社法も後押しするのが、当然だと思うのですがね。

  無議決権株式の株主には、株主提案権、株主総会招集権、総会の検査役選任請求権等、議決権の存在を前提としている権利は行使できないのは仕方が無いにしても、総会招集通知を受け、出席し、発言する権利は当然認められるべきですね。

無議決権株式の株主(2-3人の特定少数で、多数の、例えば配当優先株等を保有している場合は除く)にとっては、年に一度の経営陣との情報・意見交換の機会ですね。こういう機会を当然株主の全てに与えるべきですね。

  学者が、議決権行使に興味がない株主なので、総会参与権等与えなくても良いと考えること自体が誤りなのです。株主総会では、議長(社長の場合が多いですね)が、どんな人で、どういう議事進行をしているのか、丁寧に・誠意をもって株主の質問に答えているのか、事務当局の書いた文章を棒読みしているのか、どういった株主が出席しているのか、労働組合の株主が来て、経営陣と対立しているのか、この社長になって10年以上業績低迷とか(この社長なら、もう会社の将来性無しだと感覚的に分かりますね。)、環境のせいにして言い訳している社長とか、まあいろいろですね。上場企業の社長と言っても、しっかりしているのから、どうしてこの人が社長?やってんのまでいろいろいるのです。実際の株主総会に出席すれば、招集通知や決議通知のような書面では分からない有益な情報が得られるのです。なぜこういう貴重な機会を奪う解釈をするのかですね。

  大体、会社の組織運営、構造、機関、ガバナンス等、会社の内実を知らないで、会社法を研究している会社法学者が多すぎます。だから、ピンボケ・的外れの指摘が多いのです。またまた、会社法改正議論がスタートしますね。4月下旬法制審議会に会社法制部会が発足するようです。会社の実態・内実を知らない学者で構成されるんでしょうね。困ったものですね。

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代表取締役・取締役・使用人の権限

2010-03-14 19:24:43 | 商事法務

○ 今回は、代表取締役・取締役・使用人の権限について考えて見ましょう。取締役会設置会社の前提です。久しぶりに会社法「けち」シリーズの一つです。

1) 代表取締役の権限:法349項では「代表取締役は、株式会社の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。」また5項では「前項の権限に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。」と規定しています。

2)  使用人の権限:使用人の権限については(支配人の代理権については、法11条に「その事業について一切の裁判上・裁判外の行為をする権限を有している」としていますが、一般的ではないので省略)、法14条に規定しています。1項では「事業に関するある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人は、当該事項に関する一切の裁判外の行為をする権限を有する。2項では、前項に規定する使用人の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。」と規定していますね。例えば購買部長は、購買についての権限がありますね。実際は、社内の権限規定で、一定額以上は、取締役とか、副社長とかと決められていますね。

3)  取締役の権限:取締役会設置会社の取締役の権限については、363条1項に規定されていますね。即ち、1項 次に掲げる取締役は、取締役会設置会社の業務を執行する。

   代表取締役

   代表取締役以外の取締役であって、取締役会の決議によって取締役会設置会社の業務を執行する取締役として選定されたもの(以下「業務執行取締役」といいます)

 

  取締役は、取締役会の構成員であり、取締役会はその決議により業務執行に関する会社の意思決定機関であり、その決定を執行する執行機関を選定(=業務執行取締役。委員会設置会社の執行役の場合は「選任」)し、かつその職務執行を監督する権能を有していますね。

○ 3622項②で、「取締役会は、取締役の職務の執行の監督を行う」とされています。つまり、取締役は職務を執行するのです。にも拘らずその権限について会社法には規定がありません。不思議ですね。使用人について権限を有するという規定があるのにね。

  学者は、業務執行取締役については、対内的な業務執行だけを行うと言っています。不思議な見解です。普通の会社は、社外取締役を除き業務を執行しますね。職掌を決めます。人事担当取締役とか、購買担当取締役等ですね。例えば人事担当取締役は、採用通知を出したり、社員募集パンフレット・DVDを作成したり、人事厚生事務-給与計算・交通費・出張費精算事務等を子会社・アウトソース先と契約を締結します。社内向けの業務執行と社外向けの業務執行は、コインの裏表なのです。社内向けと社外向けの業務執行を区別する発想自体、会社の実態を全く理解していない見解です。

○ 従い、取締役についても、「事業に関するある種類又は特定の事項の委任を受けた業務執行取締役は、当該事項に関する一切の裁判外の行為をする権限を有する。」という規定を設けるべきですね。副社長・専務・常務等は、表見代表取締役の規定で現実はカバーされるかもしれませんが、代表する権限は無い訳ですね。表見ですからね。なんでこんな整合性の無い規定の仕方をしたり、また業務を対内的・対外的とか、分離できないものを分離して、変な解釈をしているのが、ちょっとおかしいのではないでしょうか。

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株主と債権者とは利害が対立するか?

2010-03-07 09:18:20 | 企業一般

  「株主と債権者との利害は対立するか?」ですが、対立しないというのが私の考えです。会社法には債権者保護の規定がいろいろあります。企業再編のときなどの債権者保護手続きというのは、保護の機能というより、債権者への挨拶状みたいなものですね。その程度の機能しか現実的には発揮していないということです。会社法では、株主と債権者の利害調整について、いろいろ規定を設けていますが、どの程度そういった規定が現実に機能しているか、きっちり(法務省などは)調べているのでしょうか?会社法の最大の欠点は、種々の規定がきちんと機能しているか、その検証がなされていないということです。問題になっているところだけ改正されて、あまり機能していないが実害もないので、機能しているのではなく、単に放置されている規定があるのですね。

   学者、例えば神田教授は、「剰余金配当・配当規制の問題は、会社債権者と株主の利害調整の問題として、会社法の会計規制のなかでのもっとも中心的な規整である」(神田 会社法 第7版 P244)と言われています。全く失当(的はずれ・ピンボケ)の見解です。

・また、今の会社法は資本金の減少と株式数の減少の関係が遮断されています。従い、株主資本というのは、ただの数字です(資産合計から負債合計を差し引いたもの)。この点は、多くの人がきちんと理解していません。(正確に理解するのが必須の、企業再生支援委員長の瀬戸英雄氏も理解していない。→2010.1.31のブログ参照)。

・会社法では、剰余金配当・自己株取得等について財源規制があります。これまた数字でとらえています。会社の現実のキャッシュフローという重要な視点では捉えていませんね。米国の会社法(例えば、模範事業会社法)では、資金繰り・キャッシュフローという視点から、考え方が非常に単純明快で実際的です。即ち、「債権者への支払いが出来ないような配当はしてはならない」としています。

   債権者と株主を対立するものとして捉えていることがおかしいのです。違いを述べてみましょう。いずれもキャッシュフローという点では共通していますが。

 

【債権者】

損益取引です。売掛金保有者・金融機関(特に流動負債部分は)は、資金繰り・営業循環の問題です。

・債権確保は、連帯保証人を立ててもらうとか、何らかの担保を取得できるかというのが債権者保護・債権の確実性の問題です。会社法の債権者保護手続き、即ち債権者異議申述催告書や公告は、単なる債権者への「お知らせ」です。(債権者保護手続き等と言うの  は誤りです。債権者への通知手続きというべきです)

  債権ですから、債務者は返済の義務があります。

  債権者にお金を払わなければ会社が潰れます。事業の継続出来ません。会社が潰れたら、株主への配当など考えられません。残余財産もありません。経営者は、取引先への債務の支払い、従業員への給与・ボーナス支払いを、株主への配当よりも重要なものとして優先します。というか、優先しないと、取引してもらえませんし、会社が潰れます。

  債権者への支払いは、多額で、通常は毎月月末、場合によっては適宜頻繁に行われます。時期・回数・金額は、配当と全く違います。少額の配当金と多額の債権者への支払いを同じレベルで考える発想自体がおかしいのです。

【株主】

  資本取引です。損益取引ではありません。

  配当は、経営陣の裁量・判断が働きます。株主の期待通りに配当する義務はありません。剰余金配当の原資ができるのに、しないケースも日本の企業ではおおいですね(剰余金配当しませんという「おわびのレター」だけですね。即ち「おわび」で済みます。)

  キャピタルゲインは、会社と株主との関係ではありません。

  株主に配当しなくても、会社は潰れません。株主は、会社に対しては配当を期待します。出来れば継続的な高配当を望みます。つまり会社の継続が前提です。会社を継続させるには、当然債権者への支払いが大前提です。

  株主への剰余金の分配額は、売上や運転資金に比べて少額です。純利益の20%とか50%とかですね。配当の回数は、普通は中間と期末の年2回だけです。

株主と債権者の利害は、原則として対立しないというのが私の考えです。

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