まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

民主党の公開会社法の素案②

2009-10-26 00:52:26 | 企業一般

     2009914日のMonday Nikkeiに民社党の公開会社法の素案が掲載されていました。情報開示、企業統治、企業集団について、ポイントが記載されていました。今回は、そのうちの企業集団についてのコメントを記載します。

     企業集団については、以下が記載してありました。

1)              親会社は子会社の会計制度、内部統制制度の構築と運営に責任を負う。

2)              子会社の重要な意思決定は親会社の株主総会で承認が必要

3)              親会社は子会社取締役による業務執行を指揮

4)              子会社債権者に親会社および親会社取締役に対する損害賠償の請求を容認

5)              親会社株主に子会社役員への代表訴訟提起権を付与

以下、それぞれに付いてのコメントです。

1)             内部統制は、財務報告の信頼性が目的の一つですし、財務報告は当然連結財務諸表ですね。ですからその範囲(連結決算をやりやすくする範囲)で、グループ会社に共通のグループ会計基準等を制定するのが良いでしょう勘定科目等は、大項目・中項目ぐらいまでは、統一した方がいいですね。中項目より下の科目は、自由に子会社で決めないときちんとした財務分析も出来なくなるし、また管理会計の資料も作れませんね。子会社・別会社にしているのは、それなりの理由があります。例えば、親会社は、メーカ、子会社はソフト開発会社等の場合、親会社は、棚卸資産は多いですが、子会社は、あまりないでしょう。子会社は、販売管理費等は細かに記帳する必要があります。

2)             子会社の重要な意思決定を親会社の総会で承認というのは、馬鹿げています。何のために組織を分化しているのか、意味をなくさせます。確かに持株会社が多く出来、その傘下には、従来の上場企業だった会社が100%子会社となっている場合もあります。効率的・機動的な運営が必要な時代です。原則一年に一度しか開催されない親会社の総会での承認等、時代逆行、スピードという重要な競争力を無しにする時代錯誤的発想です。

3)             親会社には、子会社を所管する部署があり、子会社は年に1度ぐらいは経営計画を、親会社に提出し承認を得る事がよく行われています。また、親会社の従業員が子会社の非常勤役員になって、取締役会に出席し、親会社・子会社間のコミュニケーション・親会社の意向伝達が行われています。既に事実上行われている事です。しかし本来は親会社に承認された経営計画の範囲で、子会社取締役が業務を執行すれば良いことです。「親会社が子会社取締役による業務執行を指揮」とは如何なものでしょうか。何のために子会社を作り、そこの経営陣を送っているのでしょうか。子会社の経営に当たっている経営陣に、基本は任せるべきです。子会社の発展を阻害するのは、親会社の干渉、これが多いのです。悪い親は、子会社をダメにしてしまいます。

4)             子会社債権者に親会社に対する損害賠償の請求を容認というのも、馬鹿げています。有責当事者では無い者に、損害賠償を請求とは、どういう発想でしょうか?債権者が債権回収に不安があるなら、親会社に保証してもらえば良いことです。銀行などの融資ですでにやっていることです。力関係の弱い債権者は、保証などしてもらえませんけれども。

5)子会社の役員は、親会社が指名して株主権を行使して選任しています。親会社株主が選任したわけでもないですね。子会社役員への代表訴訟提起権を付与というのは、どういう理屈・根拠で理論付けするのでしょうか、今ひとつよくわかりませんね。

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民主党の公開会社法素案①

2009-10-19 01:15:08 | 企業一般

     2009914日のMonday Nikkeiに民社党の公開会社法の素案が掲載されていました。情報開示、企業統治、企業集団について、ポイントが記載されていました。今回は、そのうちの企業統治についてのコメントを記載します。

     企業統治については、以下が記載してありました。

1)              社外取締役の条件を強化

2)              監査役の一部を従業員代表から選任

3)              監査役の独立性、機能性を強化(監査法人の監査役会等への報告義務)

4)              会計監査人の選任・報酬決定権限を監査役会等に移行

     社外取締役を選任すれば、企業統治が向上するというのは、昨今議論されていますが、そういったことは根拠もありませんし、検証もされていない。月に1度だけ取締役会に出席しても何の役にも立たないことは、既にこのブログでも書いています。

http://blog.goo.ne.jp/masaru320/d/20090308

・ 企業の不祥事は、一部の経営陣が裏で行います。取締役会で議論される筈無いでしょ。

西松建設でもカネボウでのそうです。どうして社外取締役が監督権限を発揮することが出来るのでしょう。むしろ社内事情に通じる、うるさい取締役を作る方が良いのです。

しかも、その取締役の地位を安定させれば良いのです。

まあ、経営者には高度の倫理観が必要ですが、そういう倫理観の無いのが社長になったというのも原因なのですが。

     ポイントがずれています。ポイントとは、社外取締役の選任では無く、誰が取締役を指名するかです。即ち人事権を誰が握るかです。現在は、社長や会長等握っているケースが多いでしょう。取締役の多い会社だと、平の取締役クラスだと、副社長・専務・常務等が推薦する中から取締役を選ぶケースもあるでしょうが、常務・専務・副社長への昇役については、会長・社長が握っていますので、いずれにせよ会長・社長等が直接・間接に取締役を指名する人事権を持っています。いきおい、自分たちに心地よい人しか選びません。これが問題なのです。選ばれる取締役も会長・社長の言いなりの人が多いのが問題なのです。

 程度の低い会長・社長は、派閥を形成して役員会を牛耳ります。結構大きな大企業でも露骨な身内優遇人事を行っている会社があります。実力で役員になった訳ではなく、部長が社長・会長になったので、同じ部署の部下で小間使いをやっていたのが常務になったりします。そういう会社もあるのです。

     取締役は、総会で株主により選任されますね。株主が選任するのに、株主が指名していないのが問題なのです。では、どのようにすれば良いのでしょうか?以下のような方策は如何でしょうか。

1)      累積投票制度の定款による排除を認めない。即ち、役員選任は累積投票で行う。

2)      執行役員の担当分野と業績詳細の事業報告書による開示:最近は、委員会設置会社でなくても、(執行役ではなく)執行役員制度を設けている会社が増えています。使用人になりますが、重要な使用人の担当分野と業績を、事業報告書で開示する。

3)      10%以上の議決権保有株主に、取締役選任候補者の指名を義務づける。つまり、上記2)は、その参考資料ですね。

4) 役員報酬は、少なくとも算定方式を総会で承認を得る。(即ち人事権と報酬を株主が握るということですね)

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会社分割のピンぼけ規定

2009-10-10 23:19:07 | 商事法務

     またまた会社法に対する「けち」ですね。会社分割の規定についてです。新設分割でも同じですので、吸収分割の規定を引用します。

       757条:会社は、吸収分割をすることができる。この場合においては、当該会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を当該会社から承継する会社(吸収分割承継会社)との間で、吸収分割契約を締結しなければならない。

       758条1項二号:承継する資産、債務、雇用契約その他の権利義務

       758条1項四号:承継会社が分割に際して分割会社に対してその事業に関する権利義務の全部又は一部に代わる金銭等を交付するときは、当該金銭等について、株式の数又はその数の算定方法並びに資本金及び資本準備金に額に関する事項等

       一方467条には事業譲渡の規定があります。この規定では「事業の譲渡」と言っています。「事業に関して有する権利義務の全部又は一部」等とは言っていません。

○ 会社分割でも、実質は事業譲渡と同じですね。方式が違うだけで中身は一緒です。勿論手続的な違いはあります。

― 事業譲渡では譲渡資産・負債には個別承継手続が必要ですね。しかし債権者保護手続は不要です。従業員は転籍ですね。

― 会社分割では資産・債務・雇用契約は包括的に移転します。債権者保護手続が必要となります。従業員の承継には労働契約承継法(=会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律(平成十二年法律第百三号)が適用されます。

       「事業に関して有する権利義務の全部又は一部」というのが全くのピンぼけです。事業というものは、人・物(資産等)・金(資本金や負債)・情報・技術等が有機的一体となって機能する単位の事です。権利義務だけで成り立っているものではありません。有機的一体となって、人が動き、知恵が生まれ、ノウハウが出来、収益を生む素地ができるのです。権利義務の一部なら、機械一個でも権利義務の一部です。これでも会社分割ができるという規定の仕方になっています。事業というものは、個別の権利の総和を超える、1+1が3になるものなのです。

○ 権利義務の全部又は一部に代わる=対価として株式を交付する」というのも全くピントがぼけています。権利義務の対価として金銭等が交付されるのではありません。

   有機的一体となった事業を評価して、それに対して株式等が交付されるのです。権利義務は事業の構成要素ですが、要素の全部ではありません。うまくいかず赤字の垂れ流しというのもありますが、事業というのは、権利義務を越える価値が生じるのです。収益力があるなら、それに相応しい評価が得られます。取引先関係・信用も引き継ぐケースが多いでしょう。権利義務に対して金銭等が交付されるのであれば、それは単なる資産(権利マイナス負債・義務=ネット資産)の譲渡の対価でしかありません。

       権利義務を越える価値とは何でしょうか。まあ営業権といいますか、「のれん」ですね。営業権とは、企業の長年にわたる伝統と社会的信用、立地条件、特殊な製造技術及び特殊の取引関係の存在並びにそれらの独占性等を総合した、他の企業を上回る企業収益を獲得することができる無形の財産的価値を有する事実関係」(最判S.51.7.13

私の目からみると、会社分割の規定は非常におかしいですね。もっときちんと規定できないものでしょうかね。

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株式買取請求と公正な価格

2009-10-01 23:39:52 | 商事法務

○ 反対株主が会社に株式買取請求できるのは以下の場合ですね。買取請求されたら会社は公正な価格で買い取らなければなりません。旧商法では「決議ナカリセバ其ノ有スベカリシ公正ナル価格」(旧商法2452)となっていましたが、反対株主の中には、合併(企業再編)に反対する場合もあるが、合併には賛成ではあるが対価として交付される財産に不満足である者もいるのでという理由で、「公正な価格」に変更されました。

1) 事業譲渡等(469)

2) 企業再編(合併・会社分割・株式交換・株式移転)

3) 株式の譲渡を制限する定款変更(1161)

上記の中で、通常、合併の場合は消滅会社の株主は存続会社の株式、株式交換・移転の場合は、完全親会社の株式を取得しますね。また対価の柔軟化が適用されるのは、吸収型再編ですから、吸収合併、吸収分割、株式交換ですね。

今、話を簡単にするために株券を上場している、①上場企業同士の合併、あるいは②合併に先立ちTOBを行って議決権株式の過半数を取得の上合併する場合の反対株主の買取請求権と公正な価格について考えて見ましょう。

○ 合併当事会社同士(親子関係等に無い独立当事者間)が、同じベースで同じ時点で企業価値算定を行って合併比率を算定しますね。まあ、「同じベース」での企業価値算定も実際はきちんとするのは非常に難しいのですが、一応正当な評価であるような振りをした第三者の評価に基づいて結局は「えいやー」で決めますね。上場株券ですから、合併比率に応じて鞘当てが行われて株価が上下します。これが合併の効果を織り込んだ価格となりますね。ですから、株主は、合併を織り込んだ価格で株式を売却し、現金化できます。その他、例えば現金合併即ち、消滅会社の株主に1株当たりY円を交付というのもありえますね。

○ さて本題の「公正な価格」について考えてみましょう。

① 合併比率が公表され、その比率を反映して株価が形成されます。この比率を株主が特別決議で承認します。現金合併の場合はその株式買取価格ですね。もし、裁判所がこの株価以外の価格を公正な価格とした場合、特別決議で承認された比率に基づく株価というのは、公正な株価・価格ではないのですかね?

・ 上場株券ですからマーケット価格がありますので、反対株主はマーケットで売ればいいんですね。流動性に問題がなければですが。でも楽天のように大量に持ってしまうと売れません。売ろうとすると株価急落ですし、大量保有報告で売却もわかってしまいますからね。→反対株主の買取請求権というのは、マーケットで株式を売却出来ない人を救う制度でしょうか?

② マーケット価格は公正な価格でしょうか?マーケット価格というのは、その会社の経営・企業価値向上に責任を負わない(負う能力も資格もない)投資家・株主が、自己の利益を追求して、即ち儲けようとして日々売買を行う事により形成されている価格です。勿論例外的に楽天のように経営支配権取得目的で買い付ける場合もありますが。従い、役職員が汗水流して維持増進を計っている企業の価値(*)とは違います。このマーケット価格がどうして公正な価格でしょうか?

* 企業価値―有利子負債=株主価値(時価総額)という考えもありますが、ここでは企業価値=株主価値

・ 株式買取請求がされると、会社と反対株主との間で、価格の決定の協議を行いますね。会社としては、合併比率を織り込んだマーケット価格しか主張出来ませんね。当然協議は整いませんので裁判所に対して「公正な価格」の決定を申し立てるわけですね。

     企業再編に先立ち、TOBで株式を取得する場合、最近は通常、買付者はマーケットの価格の最低でも2-3割アップの価格を提示します。7割アップというのもありました。マーケット価格はTOB発表とともにTOB価格に鞘当てされます。多くの株主(例えば議決権の過半数を有する株主)がTOBに応募しTOBが成功して、その後の株主総会で合併・株式交換の承認決議を取る際に、反対株主が出てきても、会社としてはTOB以外の価格を主張できないでしょう。公開買付者が決めた価格です。会社が決めた価格では無いですね。TOB価格も一つの価格です。通常の合併なら、そんなプレミアム価格にはならない場合が多いでしょう。経営支配権を獲得し経営に責任を負う株主とは異なり、売り飛ばして逃げる株主でも2-3割アップの価格で現金化出来るわけですね。

     株価にはいろんな株価があります。裁判所が決定する価格を公正な価格と言うかどうかは別として、これも一つの株価ですね。ただ、裁判所の決定は強制力を持ちますが。 裁判所が決定する価格で重要な条件があります。それは株主平等ということですね。買取請求した人に対してだけ有利、あるいは不利な価格はダメということですね。裁判所には、価格の決定申立がなされたら、公平な価格を決めて欲しいと思います。

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