まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

フィリピンでの会社設立

2015-05-26 21:54:15 | 商事法務
○ フィリピンでの会社設立は、アジアではシンガポールと並び簡単ですね。ネガティブリストの業種以外での会社設立では100%外資(土地保有は外国資本40%以下)でもOKですし、書類は英語で作成できるので理解が出来ます。しかし、少し注意すべき点もありますので、その点を述べて見ましょう。

○ フィリピンでの会社設立は、1980年のThe Corporation Code of the Philippinesに従って行われます。会社なので、まず定款を定めないといけませんが、定款も簡単です。基本定款で数ページですが、雛形は会社法の14条(Contents of articles of incorporation)で規定しております。付随定款(By-Laws)でも10ページぐらいです。
基本定款=Articles of Incorporationでは、1条会社名、2条目的、3条本店所在地、4条会社の存続期間、5条発起人の氏名・国籍・住所、6条設立時の取締役の氏名・国籍・住所、7条授権資本の額と株式数・額面、8条では(授権資本の25%以上で)株式引受人の氏名・名称、国籍、引受株数・金額・払込資本額、9条フィリピン国民が一定以上の保有義務のある場合(例えば土地の保有等)の脱法の禁止と株券への明記、10条は、フィリピン人が義務のTreasurerの規定、12条は、証券取引委員会から類似商号で商号使用が認められないときの変更義務の規定です。

○ 注意すべき点としては、発起人は自然人で5名以上15名以下、過半数はフィリピン居住者で最低1株以上の引受です。取締役も最低5名で、過半数がフィリピン居住者で1株以上の株式引受です。かつ取締役が株式を売却したら、取締役の職務は終了(cease to be a director)と会社法(23条)で規定しています。従い、厳密には100%子会社は設立出来ないですね。
会社の役員として、取締役=Min.5名で過半数(3名)は居住者 任期は1年 President(フィリピン居住者), Treasurer(フィリピン居住者。取締役との兼任可。(may or may not be a director))。+ Director、Secretary=居住するフィリピン人となっています。 

○ 会計年度は、原則は暦年と同じで1-12月です。決算確定の定時株主総会は、定款で定めれば良いですが、定めないときはany date in Aprilと会社法で規定(50条)しています。会計年度を定めるときは、税務会計年度との一致でないと不都合・手間が生じます。税務申告は、決算期後その後105日(従い12月決算なら4月中頃)までに内国歳入局=BIRにAudited financial statements提出を必要としています。
○ フィリピンでの会社設立は簡単ですが、Presidentはフィリピンでの居住が条件ですし、取締役の過半数は現地居住ですので、日本の本社の役員が現地法人の社長にはなれないですね。

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英米契約法の$1Consideration

2015-05-10 21:57:18 | 商事法務
○ 英文契約書の本文の前文には、Cosideration(約因)がありますね。例えば、以下ですね。「NOW, THEREFORE, in consideration of the mutual covenants, conditions and agreements set forth herein, and for other good and valuable consideration, the Parties agree as follows:」ところが、こんなへんなものもたまにはあります、“in consideration of one dollar and other valuable consideration….”。Consideration は、対価とか約因とか言われます。簡単に言えば、対価関係ですね。対価関係ですから、普通の常識では、お互いの価値は見合っていないとおかしいのですが、実は、法律的には価値の見合いが無くても、有効なのですね。今回は、そのことについて述べましょう。

○ 英米では、契約が有効に成立(enforceable)するには、Offer=申込とAcceptance=承諾が必要なことは日本と同じですが、これだけでは不十分です。即ち、①捺印証書(deed)という、一定の方式でなされるか、②約因のある合意でなければなりません。①はformal contractとよび、②はinformal contract or simple contractと言います。②の契約を、parol contract(口頭契約)と呼ぶこともあります。これには、変な言い方ですが、parol contract by word of mouth(口頭による口頭契約)とparol contract in writing(書面による口頭契約)があります。「書面による口頭」とは、なんやねん!?あほかいなですね。

○ 約因とは、Promisor(約束を与える者)が受ける権利・利益であり、Promisee(約束を受ける者)の受ける不作為、不利益、損失、責任の事です。物を買ってお金を払えば、契約が成立し同時に履行されますので、これをexecuted consideration(履行約因)です。昔は、この履行約因しか認められなかったのですが、これじゃ現代社会の取引は成り立ちません。従い、英米では双務契約で、売買の約束と代金支払いの約束があれば、相互に約因となりあうことになりました。これを未履行約因(executory consideration)と言いますね。

○ しかし、過去の約因は約因にならないとされています。また、既に存在する債務(以前からある借金等)も約因にはなりません。従い、債務の一部免除を約束して、残金を支払うと言っても、残金の一部は過去の約因となって、法律的効果は生じません。面白いですね。では、期限より1日早く支払うことを約因として半額免除を約束すれば、それがたった1日でも期限の利益を放棄したのだから、経済的価値はともかく、法律的には価値があるとされます。変ですけど、そう考えるらしいです。また、この理屈から1ドルを支払うので、100万円の絵画を渡すという契約も成り立つのですね。

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