まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

剰余金分配規制の誤った視点

2007-11-26 13:44:33 | 商事法務

       神田教授の会社法(7P244)では、「いくらまでの剰余金を配当として株主に分配することを認めるかという配当規制の問題は、会社債権者と株主の利害調整の問題として、会社法の会計規整のなかでのもっとも中心的な規整である。」と述べられています。

・ この考え方に従って剰余金分配規制がされていますし、違法な剰余金分配(=分配可能額を超えた場合)の返還を、債権者が株主に求める規定があります。即ち、463条2項では、「株式会社の債権者は、同項(=前項)の規定により(返還)義務を負う株主に対し、その交付を受けた金銭等の帳簿価額(当該額が当該債権者の株式会社に対して有する債権額を超える場合にあっては、当該債権額)に相当する金銭を支払わせることができる。」と規定しています。

       確かに、株主への配当も債権者への支払いも、原則的にはキャッシュアウトですから、対立する面があることは否定しません。しかし、この対立するものとしての捉え方は会社を経営した事の無い人の発想と考え方で、ピントがぼけた考え方だと思います。

(1)    株主資本は、計算上の金額であり配当の効力発生日・現実の支払日及び債権者への返済日に、現預金があるかどうかがポイントです。支払うお金が現実になければ、株主と債権者の利害調整等と言っても意味がありません。

(2)    債権者への支払いは会社存続の基本条件です。支払いをしない債務者と取引を継続する企業がどこにありますか。普通の経営者(取り込み詐欺をして逃げる前提で悪さをする経営者は別問題、これは犯罪ですからね)なら、債権者への支払いを優先します。不渡り手形等出せば終わりです。支払いのために、困って高利のビジネスローンから資金手当をして債権者に払う経営者もいます。

(3)     債権者への支払いは契約を守ると言うことです。通常は、継続的に発生します。支払い期日は守らなければなりません。即ち支払いは義務であり、この義務を果たさないと会社の存続が危険に晒されます。一方剰余金の配当は、半期毎とか1年に一回に、株主総会の承認機関の承認を取得して行います。その議案を起案するのは経営者です。経営者が起案しなければ、株主が議案提案権を行使して無理矢理行わない限り配当金の支払いは起こりません。つまり、配当の支払いは、支払わない事もできます。

(4)     株主も普通は毎期とか半期毎に、きちんと配当が支払われる事を期待します。即ち、会社の企業存続・事業継続を望んでいます。株主が、債権者への支払い等せずに自分に配当をよこせとは、常識的な株主だと言いません。

学者先生の、空理空論の議論はピントがぼけていると思います。

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剰余金減少による資本金等の増加

2007-11-20 00:16:39 | 商事法務

○ 剰余金減少による資本金・準備金の増加については、会社法450451条に規定されていますね。即ち「総会決議により、株式会社は、剰余金の額を減少して資本金の額・準備金の額を増加することができる。」と規定しています。

一方、計算規則481項では、資本金の額の増加額を定めています。12号では以下のように定めています。

・1号:法448の規定により準備金(資本準備金に限る。)の額を減少する場合は、4481項の資本金とする額に相当する額

・ 2号:法450の規定により剰余金の額を減少する場合は、45011号の減少する剰余金の額(その他資本剰余金に係る額に限る。)に相当する額 

尚、448条は、総会決議により準備金の減少ができるという規定ですね。準備金とだけ言っています。資本準備金と利益準備金とは区別していません。

○ これらの条文の欠陥は以下でしょうか。

会社法では、資本準備金・利益準備金は区別して規定していますが、その上位の重要な概念である剰余金について、資本剰余金・利益剰余金の区別をせず、「剰余金」とだけ言ってしまったこと。これはちょんぼだと思います。

・ 即ち、資本剰余金は、資本準備金とその他資本剰余金からなる。利益剰余金は、利益準備金とその他利益準備金からなるという、基本コンセプトを会社法で定めなかった事ですね。

・ 法448450451条等には、省令委任の文言が無い。その他の条文では結構委任文言があるにも拘わらずですね。

・ 448条では、「準備金」とだけ規定しています。資本準備金とは規定していません。しかし省令の括弧書きで資本準備金とだけ定めています。即ち、利益準備金を減少させて資本金の増加にあてることは出来ないことになりました。何故こんな規定及び規定の仕方をしたのでしょう。どうしてきちんと法で規定しないのですか?省令で法をねじ曲げています。以前の商法の規定とも矛盾します。

○ 商法旧2891項本文では、「資本準備金又ハ利益準備金ハ資本ノ欠損ノ填補ニ充ツル場合ヲ除クノ外之ヲ使用スルコトヲ得ズ但シ第二百九十三条ノ三ニ規定スル場合ハ此ノ限ニ在ラズ」としており、293-3では、「会社ハ取締役会ノ決議ニ依リ準備金ノ全部又ハ一部ヲ資本ニ組入ルルコトヲ得 」と商法にて規定していました。

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譲渡制限株式は種類株?

2007-11-16 11:56:26 | 商事法務

     会社法の108(異なる種類の株式)は種類株について規定しています。しかし、14号には不思議な条項があります。性質の次元が異なる内容にも拘わらず、他と同様に規定しています。なぜこんな定め方をするのでしょうか?

 108条 株式会社は、次に掲げる事項について異なる定めをした内容の異なる二以上の種類の株式を発行することができる。(但書き以下は省略)

 一 剰余金の配当

 二 残余財産の分配

 三 株主総会において議決権を行使することができる事項

 四 譲渡による当該種類の株式の取得について当該株式会社の承認を要すること。

 五 取得請求権付株式

 六 取得条項付株式

 七 全部取得条項付種類株式

 八 株主総会又は取締役会において決議すべき事項のうち、当該決議のほか、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議があることを必要とするもの(拒否権付種類株式=黄金株)

 九 当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会において取締役又は監査役を選任すること。(九号は委員会設置会社及び公開会社は不可。選任と記載されていますが当然解任を含みますね。選任・解任とすれば良いと思うのですけど)

     譲渡制限というのは、普通株や種類株に付加する属性ですよね。上記の様な定め方をした場合は、譲渡制限だけで種類株として成り立つということと解釈ができますね。あるいは普通株に譲渡制限を付加すれば種類株になるという意味となります。

・例えば、株式会社は、A普通株は、譲渡制限無し株式、B普通株(=種類株)は、譲渡制限有り。権利の内容は、譲渡制限を除き、完全に一緒という株式も発行できることになるわけですね。この場合、株主総会はどのようにするのでしょうか?A普通株の株主に対しては、通常の株主総会を開催し、B普通株の株主には別途種類株主総会を開催するのでしょうか?A普通株は譲渡制限無しですから、会社の承認無しに自由に譲渡できます。B普通株を発行する意味がなくなりますね。

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会社法―財産引受と事後設立

2007-11-09 00:38:03 | 商事法務

       会社設立時の規制として変態設立事項が定められています。28条ですね。

28条では、「株式会社を設立する場合には、次の事項は定款に記載・記録しなければ、効力を生じない」として以下を定めています。

 1号 現物出資:金銭以外の財産を出資する者の氏名又は名称、当該財産及びその価額並びにその者に対して割り当てる設立時発行株式の数

 2号 財産引受:株式会社の成立後に譲り受けることを約した財産及びその価額並びにその譲渡人の氏名又は名称

・ 財産引受は、発起人が会社成立前に、その会社の為に、会社の成立を条件として特定の財産を譲り受ける旨の契約を締結することです。「譲り受けることを約し」ですから、通常は売買契約ですね。目的物を過大評価して、発起人と金銭出資の他株主との間の不公平が生じることを防止する規定ですね。

・ 上記趣旨の延長として事後設立の規定がありますね。随分緩和されて検査役の調査を不要として、H2年商法改正前と同じ(20%基準は別)総会の特別決議としました。即ち、46715号では「株式会社の成立後二年以内におけるその成立前から存在する財産であってその事業のために継続して使用するものの取得。(但し、純資産額の20%を超えない場合を除く)」としています。

       財産引受と事後設立の規定はどの程度遵守されているのでしょうか?結構守られていないのではないでしょうか。理由は簡単です。こんな規定があると一般には知られていないからですね。会社の法務担当等が、設立登記申請まで協力するところもありますが、協力せず起案部局の人が司法書士に依頼して設立することもあります。

・ 起案部局は、早く事業を立ち上げたいので、発起人としてその会社の為に、相手方と打ち合わせて会社成立後(登記簿謄本が入手してから)契約を変更(買主の契約上の地位を新会社が承継するとか。発起人が購入した資産を新会社が発起人から購入)するなどして事業を始めようとします。

       財産引受:発起人名義で契約して、これを新会社名義に変更する場合の典型的な例としては、オフィスの賃借契約がありますね。でもこれは「譲り受けることを約した財産」ではないですね。「賃借することを約した財産」ですから、まあこの会社法の規定に抵触していないと考えることもできますね。しかし、例えばサーバー・コンピューター・建物付属設備の発注を発起人名義で契約して「譲り受けることを約する」場合がありますね。しかし、納入前に新会社名義に変更し、代金の支払いは新会社で行う例もあります。まあ、この場合はやはり財産引受の規定に抵触するのでしょうね。

       事後設立:新会社で使用する重要な機械設備等で純資産の20%を越えるものもあるでしょう。その場合は総会の特別決議事項となります。しかし、この規定は曖昧です。「その成立前から存在する財産」の解釈が結構フレキシブルだからですね。例えば、土地などは、まあ成立前から存在する財産でしょうね。しかし、発注して製作してもらうものは、成立前とは言えないから別にこの規定の適用があるとは言えないのではないでしょうか。あるいは一群の什器備品でもまとめれば20%超かもしれません。発注も一括で行いますが、減価償却資産に計上するときは、それぞれ個別に記帳しますね。まとめれば20%超の価額でも、個別ならこれを越えないなら、やはり20%とは言えないのではないでしょうか。

       財産引受・事後設立の趣旨と実態が乖離していると思います。特に、事後設立は、別に遵守していようがいまいが、現実には分からないという事情があります。また新会社が設立され、経営陣が入るわけですから経営陣に任せれば良いのではないかと思いますね。財産引受はまだしも、事後設立の規定は無くても良いのではないでしょうか。

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会社法と登記の不整合

2007-11-05 00:16:15 | 商事法務

     今度の会社法は、どれだけ登記の実務を十分理解して、またその整合性を念頭に置いて立案されたのでしょう?疑問ですね。

いろいろな不整合があると思います。この不整合・矛盾は、当然登記の利用者即ち会社側に押しつけられます。困ったものですね。具体例を取り上げてみましょう。

     株式会社の登記については、9113に整理されています。その他組織再編の登記等は921条以下にあります。9113項では30号に渉って登記事項が列記されています。しかし、おなじみの規定が抜けています。107条には譲渡制限株式の規定があります。譲渡制限は、当然登記事項ですね。譲渡制限株式に関する登記の事が抜けているのではないでしょうか?

○具体的な定款規定と登記

 譲渡制限株式について、会社法と登記の不整合を見てみましょう。

【定款の規定例】

A 本会社の株式を譲渡するには、取締役会の承認を得なければならない。

B  本会社の株式又は新株予約権を譲渡するには、取締役会の承認を得なければならない。

C  ① 本会社の株式を譲渡するには、取締役会の承認を得なければならない。

② 本会社の新株予約権を譲渡するには、取締役会の承認を得なければならない。

上記Aは、従来の普通の書きぶりですね。BCは、Aに新株予約権を加えただけで同じ内容です。単に条文を分けただけです。新株予約権は、株式と同様に譲渡制限の定めをすることが出来ます。株式と同様に考えれば良い訳ですね。262条以下には、新株予約権の譲渡の制限の規定があります。上記のB&Cとも、何の瑕疵もない有効な定款の文言です。

     法務局の対応:従来の記載だけを認めます。登記簿には、上記Aのみ即ち「本会社の株式を譲渡するには、取締役会の承認を得なければならない。」だけが記載されます。(会社法では、取締役会だけではなく、株主総会とか代表取締役を承認機関としてもOKとなりましたが)。

Bの定款を作成し、変更登記の添付書類として法務局に提出すると「又は新株予約権」を削除しろと言われます。Cの場合は②を無視して、①だけを登記簿に記載します。

定款変更は株主総会承認事項です。法務局から、削除しろと言われて「はいわかりました。また総会開催して訂正します」等と簡単には言えません(100%子会社なら簡単には言えますけど)。だいいち法務局が、有効な定款の規定を変更しろ等とどうして言えるのですか?そんな権限など与えられていないでしょ。どういうことなんですか?ほんまにええ加減にして欲しいものですね。

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会社法―設立時資本金零の不思議

2007-11-01 00:09:54 | 商事法務

 設立時の資本金の額については、会社法445に規定がありますね。

1項では、設立又は株式の発行に際して株主となる者が払込み又は給付をした財産の額とする。

2・3項では、払込み又は給付に係る額の1/2を超えない額は、資本金として計上しないことができ、その場合は資本準備金として計上しなければならないとしています。

○ これを受けて会社計算規則74に定めがあります。そして括弧内には不思議な文言があります。

1項では、払込み又は給付をした財産の額とは、一号に掲げる額から二号に掲げる額を減じて得た額(零未満である場合にあっては、零)としています。 

一号  次に掲げる額の合計額(零未満である場合にあっては、零) 

イ 払込みを受けた金銭の金額

ロ 給付を受けた金銭以外の財産の給付があった日における当該財産の価額

ハ 払込み又は給付を受けた財産の当該払込み又は給付の直前の帳簿価額の合計額

二号  設立に要した費用の額のうち設立に際して資本金又は資本準備金の額として計上すべき額から減ずるべき額と定めた額 

2項・3項には、設立時の「その他資本剰余金の額」・「利益準備金の額」は、零とする。 としています。

     また4項では、設立時の「その他利益剰余金の額」は、零(1項一号イからハまでに掲げる額の合計額から二号に掲げる額を減じて得た額が零未満である場合にあっては、当該額)とするとしています。 

       いやはや、こんどの会社法には不思議な条項がありますね。

     今度の会社法では、出資単位と株数の制限がなくなりましたので、例えば1株1円で設立時1株を発行することでも会社を成立させる事が出来るようになりました。

会社設立の時には、定款認証料、登記の登録免許税等がかかります。資本金1円ではどうにもなりません。従い、上記1項の「一号マイナス二号」がマイナスになることも理屈上はありえます。この場合は資本金は零としなさいという規定ですね。―― 設立時からマイナスの会社など、何故認める必要があるのか、不思議ですね。もっと現実的な規定にどうしてしなかったのでしょうか?

20-30万円ぐらい会社を作ろうとする者ならあるでしょ。例えば自分のアパートを本店として、学生が作る場合でもアルバイトすれば貯まりますし、なければそれぐらい親族・友人から借りて作れるでしょということです。

     特に不思議な規定は、1項一号の括弧です。「(零未満である場合にあっては、零)」としています。即ち、一号の合計額がマイナスになることを想定しています。二号は費用ですから最初からマイナスですね。

イは「払込みを受けた金銭の金額」ですから、まあマイナスの払込というのは無いでしょう。ということは、ロの給付財産には、積極財産のみならず消極財産即ち負債を含むという意味ですね。例えば、私の住宅ローンの債務を出資して、しかもその負債に対して株式を取得して株主になれるということ。そして、うまく行けば株式を売却して売却益を得る。こんな錬金術ができるんでしょうか?→こんな馬鹿なこと有るわけないですよね!!

・ 上記のマイナスの場合の処理、即ち、設立時から資本金の額がマイナスの会社の場合は、その額を他に持って行きようがないから、その他利益剰余金の額をマイナスにしておきましょうと言うことですが、このマイナスは、誰かが例えば発起人が貸付金として貸与しないといけない訳ですね。お金が湧いてくるわけでもないですし、数字だけ書くわけにも行きませんし、現実にお金が動きますからね。

一体「なんやねん。この規定は!?」ですね。

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