まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

無報酬社外役員と法人税法22条2項との関係

2010-05-31 00:56:06 | 商事法務
○ 今回は、無報酬の社外役員の役務提供と税法の規定との関係について考えて見ましょう。
もし考え方がおかしければ、ご教示お願いします。
会社法施行規則124条(社外役員を設けた株式会社の特則) 6号では、事業報告の内容の中に、社外役員の報酬等について以下を記載することを求めています。しかし、社外役員がいるにも拘わらず何も記載していない上場企業もあります。理由として、社外役員は株主企業の従業員であり、報酬は無しなので書かないと勝手に解釈して記載していないということではと思います。

・  また、NTTドコモは、4名の社外役員がいますが、社外役員の報酬等の総額としては、3名で69百円(1人当り2300万円。すごいですね。)と記載されています。即ち1名は無報酬なんですね。その1名は、多分親会社NTTの経営企画部門の部長ですね。記載としては下記の6号のハなのでしょうか?(全部ではないのでイではない)わかりませんね。施行規則どおりの表示ではないですね。

6   当該事業年度に係る社外役員の報酬等について、次のイからハまでに掲げる場合の区分に応じ、当該イからハまでに定める事項
イ 社外役員の全部につき報酬等の総額を掲げることとする場合=社外役員の報酬等の総額及び員数
ロ 社外役員の全部につき当該社外役員ごとの報酬等の額を掲げることとする場合=当該社外役員ごとの報酬等の額
ハ 社外役員の一部につき当該社外役員ごとの報酬等の額を掲げることとする場合=当該社外役員ごとの報酬等の額並びにその他の社外役員についての報酬等の総額及び員数

○ 一方、法人税法22条2項には以下の様に規定しています。「内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の益金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、資産の販売、有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による資産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のものに係る当該事業年度の収益の額とする。」

・ 即ち、これは以下の考え方によるものですね。役務の無償提供があった場合には、その役務の経済的価値が提供者から相手方に移転し、これにより当該役務のもつ経済的価値が実現し、この価値相当額を当該取引に係る収益として益金の額に算入し、その役務提供のために生じた費用を損金の額に算入したうえ、その役務の提供が無償のときは役務の時価相当額を、その性格に応じ相手方に対する寄付金、給与、交際費、その他の費用等として処理する。」というのが税務当局の考え方ですね。

○ 無報酬の役員と言うと、大企業が設立した子会社には多くの無報酬役員がいますね。親会社が指名・選任した取締役ですね。月1回ぐらいの取締役会に出席し、その会社の事業等の意思決定に参画します(まあ、中には株主・親会社の立場でしか発言しない人とか、唯の雑談ぐらいしかしない非常勤取締役も多いですけどね。)。本来なら、当該会社の為に働いているわけですから、当該会社が役員に報酬を払うべきですが、払っていませんね。一方、無報酬役員を選任した親会社から見れば、無償で、使用人等をして役務を当該会社に提供しているわけですね。

・ 上記考え方に依れば、無報酬役員も当該会社の業務に貢献している訳ですから、収益・費用を計上し、税務上益金・損金を認識するということですね。ところが現実には、無償で役務を子会社等に提供しても課税問題等起こっていませんね。どうしてなんでしょうかね。

○ 答えは簡単ですね。役務提供は無形であり、収益・費用を認識することが簡単には出来ないからですね。会計実務でそういった収益・費用を認識している会社は殆ど無いと思います。ということは、税務署としては捕捉が無理なので、結果として課税問題が生じていないというのが実情ではないでしょうか。

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総会での説明義務と会社の守秘義務・重要事実

2010-05-21 00:38:30 | 商事法務
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会社法314条には、株主総会での取締役等の説明義務が規定されています。即ち、取締役等は、株主総会において、株主から特定の事項について説明を求められた場合には、当該事項について必要な説明をしなければならない。但し、①当該事項が株主総会の目的である事項に関しないものである場合、②その説明をすることにより株主の共同の利益を著しく害する場合、③その他正当な理由がある場合として法務省令で定める場合は、この限りでないとしています。そして、施行規則71条には、-1 説明をするために調査をすることが必要である場合、-2 説明をすることにより株式会社その他の者(当該株主を除く。)の権利を侵害することとなる場合、-3 株主が実質的に同一の事項について繰り返して説明を求める場合 ④ 説明をしないことにつき正当な理由がある場合、と定めています。<o:p></o:p>

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 説明義務が問題になるのは、主として企業秘密との関連ですね。取締役等は、自社の秘密を守る義務がありますから。でも、314条には「企業秘密の事項については、この限りでは無い」とは直接的に定めていませんね。どうして直接定めないのでしょうか? 学者は、企業秘密について説明義務を負わないことは、上記②を根拠としているようです。「共同の利益」という言葉がやはりお好みと言いますか、便利な言葉ですね。私は④の一般条項の正当理由に含めれば良いのではないかと思います。

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 総会に出席してくれた株主様だけに、「とっておきの研究開発の中間成果を少し話しましょう」と言って秘密事項を株主に説明することが、どうして株主共同の利益を著しく害するのですか?害するのでは無く、まさに株主の利益ですよね。(総会に出席しないで議決権行使書で返事した人は損しますが。これは出席しない方が悪いと整理しないとね)。株主は、お金を投じてその会社の株主になっているのです。株式を持たない人とは違います。自分の会社にお金を出してくれているのに、一般の第三者と同じ扱いでいいのですか?これこそ不公平な発想です。第三者の権利を害しない限り、少しは秘密事項を話して貰いたいですね。でも実際は、素人には「とっておき」の話でも、プロの世界・業界内部ではある程度分かっているぐらいの情報まででしょうね。総会には、競争会社の人もいるかもしれませんから。なお、会社が第三者と秘密保持契約を締結している場合などは、上記③-2で良いですね。秘密保持に関し第三者に開示しない義務を負っていますからね。

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 上場企業の場合は、金融商品取引法インサイダー取引の重要事実等に該当するかどうかが(総会で開示説明せずに秘密保持する)一つの基準になりますね。重要事実の決定等が行われて公表されるまではインサイダーは上場株券等の取引が禁止されますね。取引規制なのですが、やはり重要事実等は株主総会といえども言えませんね。重要事実とは、①決定事実、②発生事実、③決算変動、④包括条項として、運営・業務・財産に関する重要事実であって投資家の投資判断に著しい影響を及ぼすもの、⑤子会社の重要事実ですね。公表については定義があります。(a) 有価証券報告書(半期・四半期・臨時を含む)に記載されて公表、(b) 2以上の報道機関に対し公開されてから12時間が経過したとき、(c) 取引所に通知され、取引所のホームページ上で公開されたとき(CH15年改正で導入)ですね。

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 でも、重要事実になっていないことは総会で説明できますね。研究中の新技術の分野、企業のビジネスに対する考え方・方向性、企業文化等は言えますね。勿論重要事実に成りそうな事項は言えませんけどね。株主総会の議長は、差し支えないことは積極的に開示・説明して欲しいですね。企業の書類に、なんでもかんでも「秘密」と書いているのを見ますが、一方情報共有とか会議などで、みんなに喋って知っているのも多いですね。「これは秘密なんですけど」と言って、人にどんどん言う人が多すぎます。取引先に迷惑のかかる事は言えませんが、秘密だと言ってもホントの秘密と、多くの人が知っている「秘密」も多いのですね。

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資本の三原則と資本取引・損益取引

2010-05-05 23:48:39 | 商事法務

  会社の資本に関して、会社法では三原則があると言われています。即ち、①資本充実の原則、②資本維持の原則、③資本不変の原則、④資本確定の原則ですね。三原則といって四つある?のはおかしいですね。人によって分類方法が違うからですね。①②を併せて、資本充実・維持の原則という言い方もします。但し、④の資本確定の原則は、資本金の額を定款の記載事項として確定し、これに見合う財産の拠出をもって会社を設立あるいは増資することを意味します。会社設立時に、定款の附則として「設立に際して出資される財産の価額」として、「設立時資本金の額は、金xx億円(資本準備金の額は、金x億円)」などと記載しますが、これとは意味合いが違います。その後は、定款の記載事項ではありませんね。登記事項ですけれどもね。この原則は今の会社法には採用されていないので④は除かれます。ということで、資本に関する三原則ですね。

     資本充実の原則:資本金の額に相当する財産が実際に会社に拠出されることです ね。株主は有限責任(104)ですので、会社財産が債権者の引当となるので、株主の出資財産を払い戻すことを原則禁止する等の規制等も意味します(②の原則と一体として捉える方もいます)。現物出資の検査役調査、発起人・取締役の不足額填補責任もこの原則の現れですね

     資本維持の原則:「資本金の額に相当する財産が実際に会社に維持されることをいう」とされています。こんなことないですよね。赤字の会社は一杯あります。実際に財産を維持しようとしても、事業がうまくいかなければ出来ないですね。資本金は元手です。維持できるかは会社の損益次第です。財務会計の資本取引と損益取引を混同した考え方です。この資本維持の原則は、人によって少し考え方が違うようです。もうこんな原則は無いという方もいます。でも、まあ「剰余金の配当や自社株取得の際の財源規制の原則」のことを言うと一応考えておきましょう。

     資本不変の原則:資本金の額の減少を会社の自由にさせないという原則ですね。勿論法定の手続き(特別決議+債権者保護手続等)を踏めばできますが。まあ、変な呼び方ですね。「不変」なんて。不変なら増加の場合も規制するのですか?そうではないですね。もっとしゃれた呼び方ないでしょうかね?

  上記の原則は、財務会計の視点で言えば資本取引ですね。財務会計では、資本取引と損益取引は明確に区別されています。企業会計原則三では「資本取引と損益取引とを明瞭に区別し、特に資本剰余金と利益剰余金とを混同してはならない。」としています。元手と利益を混同しては、正しい会計情報では無く利害関係者の判断を誤らせてしまうということですね。

  資本の三原則も資本取引も、資本が動いたときだけの話ということですね。資本の金額表示は毎日変動しませんからね。日常の企業活動は損益取引ですね。企業に常時適用される原則ではなく、資本の変動のある時だけ支配する原則だということです。ですから増資で資本を充実しても、直ぐに大損出せば、お金はなくなりますし、資本は維持されないですね。資本金の額という数字は、そのままですけどね。

○ 純資産の額は、今の会社法では、単なる資産マイナス負債の計算上の金額表示です。その中で資本金・準備金の金額は、配当・自社株取得の財源規制の際に維持すべき純資産の最低額を示す計数の役割しか果たしていません。勿論、会社のキャッシュフローとは関係の無い事項ですから、キャッシュが足りなければ、調達しないといけません。

  会社は、いったん資本金を元手に事業を始めれば損益取引とキャッシュフローで動いています。資本充実の原則で債権者の引当といいましたが、上記通り資本取引というある時点のBSの取引であり、継続・循環取引の債権者というPLの損益取引が混同されています。例えば、資本金(増資金)が払い込まれても、使途が決まっておれば、その債権者への支払いには充てられますが、他の債権者の引当にはなりません。債権者は、自分が卸売りした製品を、その会社が販売すれば、その売掛金を担保にして回収を計ることも出来ます。資本充実と言っても、お金が入っても直ぐに使ってしまった場合は、債権者の引当にはなりません。

  H21年改正の会社計算規則、251項、2921号では、資本金の増加の原資を、資本準備金・その他資本剰余金に限定せず、利益の資本組み入れを再度(昔の商法の通り)認めています。会社法では、「一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従うものとする」(法431/614条)という規定がありますが、どうも、会社法は、原則がふらふらしたり、原則の混同があるのではないでしょうか。

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