まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

委員会設置会社制度等の破綻―新銀行東京

2008-03-25 00:13:45 | 企業一般

     新銀行東京は、委員会設置会社で取締役は5人、内4人は社外取締役の様ですね。委員会設置会社と社外取締役制度が機能しないという好例(悪例?)ですね。まあ、あきれた対応がなされています。

委員会設置会社は機能しない、また社外取締役等役に立たないことは別のBlogでも記載しています。まあ、委員会設置会社でも、執行役がきちんと従来の従業員昇役の人達で運営されている会社は、取締役会は形でも、会社は代表執行役と執行役が、従来の代表取締役と取締役の機能を発揮していますので機能します。実質はこれらの機関が会社を運営し、形式的な取締役会があっても大丈夫ということですね。しかしながら、新銀行東京の様な、企業文化もなく、歴史・伝統・行動様式も確立していない会社が、アメリカの猿まねである、委員会設置会社や社外取締役制度を導入しても機能しません。しかも、社外取締役は、知事の知り合いの経営者や都庁OBということですから、金融機関としての事業経験・ノウハウ・マネジメント能力を持たない人が、「茶話会」なみの取締役会をやっていたと報道されています。

「社外取締役と企業統治」は下記をご覧下さい。

http://masaru320.mo-blog.jp/business/2007/12/post_8b24.html

「委員会設置会社は機能しているか」は下記をご覧下さい。

http://blog.goo.ne.jp/masaru320/d/20070711

     今の代表執行役が、石原知事のバックをもとにこの銀行のマスタープランを作ったと報道されています。委員会設置会社ですから、当然監査委員会がある筈ですが、監査委員は何をしていたのでしょう?昼寝でもしていたのですかね?旧代表執行役を、知事や現代表執行役は、責任は旧代表執行役にあると非難し、責任を押しつけようとしています。全く無責任ですね。銀行法には、株主の責任も書いているようです。法的に自治体に適用されないということかもしれませんが、趣旨としては同じですね。

     委員会設置会社ですから、取締役会の権限は、重要事項の決定と委員会メンバーの選定・監督と執行役の選任監督等ですね。適任者を選任する義務が有るわけですけど、その義務を忘れ、監督責任を放棄しているのではないでしょうか?

     取締役会は、茶話会と報道されていますが、どんな会議だったのでしょう?常勤役員の代表執行役が、現場・現実を十分把握もしていなかったのではないかと思いますが、課題・問題点もある程度は取締役会に報告した筈です。しかし現場経験がない人達に言っても、問題の芽を摘むことが出来ない、解決のアイデアも出せない、放置が重大な問題になるかもしれないのに対応策等考えないし考えられない。銀行経営の勘どころの無い人達ですから、「まあ、なんとか上手くやって下さい」程度の事しか言わないわけですね。一定額以下の貸し出し債権の査定・審査は行わないし、融資は無担保・無保証、定期預金には相場の何倍もの利息をつけたというのは、明らかに基本を無視した経営です。中小企業に、無担保・無保証で融資するという基本ポリシーは都が作成したのでしょうか?立ち上げのときから基本を無視したと言うことではないでしょうか?

     現経営陣が、リストラ後に外資との提携等と馬鹿なことを言っていますね。アホらしくて聞いてられません。新生銀行(旧長銀)やあおぞら銀行(旧日債銀)の株式譲渡額は10億円でリップルウッドやソフトバンク等に譲渡されました。しかし、国からの金銭贈与額は、各3兆円以上です。外資等がプラスで買収すると思っているのでしょうか?売却するのに多額の持参金をつけなくなるかもしれません。400億円増資しないと、もっと大きな損失が生じる等というような事を言っているようですが、果たしてそうなのでしょうか?溺れる企業は、わらをもつかむどころか、この400億円の増資が出来れば、将来に少し明かりが見えます的な発言を信じるわけには行きません。単なる延命策ではないかと思いますね。

     また、「400億円を毀損させず」というのを条件に追加出資を容認するなどと報道されています。これまた、ぴんとがぼけていますね。追加の資本金というのは、振り込まれたらすぐに現預金になります。この会社は、事業がまだ構造的に赤字ですね。すぐに赤字の補填に使用されるのではないでしょうか。純資産は、そのままということはありません。資産マイナス負債の計算上の金額ですね。毀損させない確実に近い方法は簡単ですね。400億円を事業に使わずに、満期保有の国債でも買うか他行の定期預金でもすれば減らないでしょうけどね?どうするのでしょうね。経営はどうなるのでしょうね。

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会社債権者と株主の利害調整

2008-03-18 02:15:46 | 商事法務

       学者、例えば神田教授は、「剰余金配当・配当規制の問題は、会社債権者と株主の利害調整の問題として、会社法の会計規制のなかでのもっとも中心的な規整である」(神田 会社法 第7版 P244)と言われています。私は、会社を経営した経験から、債権者と株主は必ずしも直接利害が衝突するものではないと考えています。そういう点から言いますと、学者の見解は全くの「的はずれ」です。例えば、現在日経新聞に私の履歴書を連載されている住生活グループ前会長の潮田健次郎さんは、債権者への支払いの資金繰りに大変苦労された記事を書いておられます。株主は登場しません。

       「的はずれ」の理由は以下です。

1)      債権者にお金を払わなければ会社が潰れます。事業が継続出来ません。会社が潰れたら、株主への配当など考えられません。残余財産等ありません。経営者は、取引先への債務の支払い、従業員への給与・ボーナス支払いを、株主への配当よりも遙かに重要で優先します。というか、優先しないと会社が潰れます。

2) 株主に配当しなくても、会社は潰れません。うるさい株主がいて配当が出来ずに「誠に申し訳ない」と言うかもしれませんが、赤字の会社の経営陣は、それどころではないのです。会社業績を回復させるべく、汗をかいています。

3) 会社が儲かっているように蛸配当を行う経営者がいます。例えばカネボウですね。しかし、キャッシュが回るから行う訳です。債権者への資金繰りが出来、その上ごまかして配当ができる資金繰りが出来るから蛸配当を行うのです。債権者への支払いが出来ないのに株主へ支払う事はありません。

4) 株主は、会社に対しては配当を期待します。出来れば継続的な高配当を望みます。つまり会社の継続を望みます。当然です。潰れれば株式は二束三文どころか、普通は無価値です。会社が高業績を上げて、配当もキチンと分配し、株価が上昇することを望みます。

債権者への支払をしなければ、会社は存続出来ない等と言うことは、馬鹿でもわかりますし、利益・分配可能剰余金がなければ、配当が受けられないぐらいの初歩的知識は、大抵の株主は持っています。

5) 株主への支払いは、純利益の20%とか50%とかの少額です。配当性向ですね。回数は、普通は中間と期末の年2回だけです。今度の会社法では、いつでも法令に従った手続きを経れば出来るようになりましたが、まあ、四半期毎行っても年四回です。債権者への支払いは、多額で、通常は毎月末、場合によっては適宜頻繁に行われます。時期・回数・金額は、配当と全く違います。少額の配当金と多額の債権者への支払いを同じレベルで考える発想自体がおかしいです。勿論キャッシュフローという共通点はありますが。

6) 米国での剰余金・配当規制の考え方は、日本と大幅に異なりますね。それについては、「日米の剰余金配当の考え方」として以前Blog↓に書きました。

 http://blog.goo.ne.jp/masaru320/d/20071022

米国では、考え方が非常に単純明快で、実際的です。即ち、「債権者への支払いが出来ないような配当はしてはならない」としています。これは経営者にとって、当たり前の事です。債権者への支払いが出来そうにないのに、配当などする筈ありません。そんなことしたら、会社潰れるじゃんーと言うことですね。

○ 債権者と株主との利害調整の問題は、配当については殆ど問題無いと考えます。あえて言いますと、債権者への支払いと、自己株式(厳密に言うと自社の株式を取得することによって自己株式となる)取得の財源規制との関係で、問題は少しある場合も考えられないこともないですが(96351号とも関連する)、これもあまり問題ないのではと思います。

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企業価値の算出

2008-03-14 23:19:04 | 企業一般

       企業価値とは何かについて、経済産業省の企業価値研究会は、定義をすることを放棄しました。各人の考え方や哲学的要素もあるからということの様です。私は、「企業の存在根拠は社会への貢献であり、価値とは現在のその貢献であり、価値の大きさとは、現在のその企業の貢献度の大きさである」と考えています。これが現在その企業の有する価値です。米国のコーポレートファイナンスで、将来のFCF(Free Cash Flow)を加重平均資本コスト(WACC)等で割り引くDCF(Discounted Cash Flow)等で言う現在価値ではありません。

       では、私のこの貢献度という考えを基に企業価値を定量化するにはどうすれば良いのでしょうか。その算式の一例は以下です。これを付加価値倍率法と呼びたいと思います。付加価値額の計算式は、現在統一されていませんが、大体は以下ですね。

     「付加価値額=人件費+賃借料+ロイヤルティ+租税公課+減価償却費+営業利益等」

     企業価値=付加価値額x Multiple or 付加価値額の前後5年間分(過去2年、当年度及び予想可能な今後2年の金額)-5年分は一例です。力関係、世間相場で7になったりしても良いわけですね。

 

この付加価値額に、例えば企業の寄付金やその他、従業員関連の費用等も含めても良いかと思います。租税公課も社会貢献ですね。このへんの考え方は、私のBlog↓「企業価値とは何か?」で述べています。

http://blog.goo.ne.jp/masaru320/d/20070131

       企業価値あるいは買収価格としての企業のお値段という視点からの企業価値あるいは株主価値の算出には、いろんな方式がありますね。まず、「企業価値=ネットの有利子負債(有利子負債-現預金)+株式時価総額」と考える人も多くいますし、結局株式の100%である時価総額が企業の価値だという人もいますね。ともあれ、主な算出方法を上げてみると以下ぐらいでしょうか。

1)     企業の現在の財産=ストックをベースとする考え方

     純資産価額方式-資源会社や不動産会社などでは、これを基に考えるのも一つの考え方ですが、ソフトウェアの会社、即ち、人の知恵等を基に収益を生む会社では不適切な方式ですね。

     純資産+営業権方式-純資産に、例えば経常利益・純利益の3年・5年分というフローの要素を加えた、昔ながらの分かりやすい方式です。

2)     企業の収益力=キャッシュフローをベースとする考え方

     DCF-計算遊びの世界ですね。

     EBITDAmultiple方式=わかりやすい単純な方式です。

3)     上場企業の財務データと比準して算出する方式

     類似業種比準方式-相続税財産評価基本通達に定める方式や、それの変形方式ですね。

一株当たり配当・純資産・利益を基に算出しますね。

     類似会社比準方式-上記の業種を、特定の2-3の上場企業の財務データと比べて算定する方式ですね。

4)     その他

・例えば、株価収益率や株価純資産倍率なども使えますし、相続税財産評価基本通達等にもありますが配当還元方式等もありますね。

 

       企業価値を考える場合、GoogleJohnson & Johnson(J&J)等が非常に参考になります。例えばGoogleを見てみましょう。Googleは、毎年利益の1%は社会貢献活動に寄付しています。社内には無料の食べ物・飲み物が用意され、カフェ・レストランは無料、ジム設備・洗濯設備も完備、クリーニング・洗車・オイル交換(車社会の米国だから)、ヘアカット、検診等も無料との事です。従業員は、世間一般の会社と比べるととても厚遇されていますね。

     普通の会社なら、これらの費用を使わずに利益を増やせばそれだけ、利益やFCFを増やし企業価値が上昇すると考えます。しかし、日本の典型的な大企業、特にメーカ等については、十分ではないにしても社宅・運動施設・保養所・企業病院等も完備している等、それなりの従業員への福利厚生も行っていますし、必ずしも短期的利益至上主義だとは思いません。また逆にファンド資本主義が進んだ場合、会社の所有者が株主だとしても、株主はファンド、そのファンドは従業員の年金基金が元手ということになれば、従業員に厚遇をしても会社の所有者である株主は、結局循環的に社員が企業を所有ということになれば、それなりに納得してもらえると思います。

     従業員の給与レベルが業界一番とか、福利厚生等が十二分に整った会社と、そういった費用は最小限しか使わないけち会社とを比べた場合、利益だけで企業価値を算出すると、利益至上主義の会社の方が、企業価値が高くなります。これは明らかにおかしいのではないでしょうか。守銭奴の私利私欲で資金を運用している投資家の視点なら別かもしれませんが、私は、利益が多少落ち込んでも、Googleのような会社の方が企業価値は高いと思います。即ち、企業価値の増進に汗水をたらして働いている従業員に優しい企業は、そうでない会社よりも企業価値が高いと考えています。そういった企業の価値は、きちんと測定するべきだと思います。

     従来の企業価値の算出方法には、私の言う企業価値を織り込む発想自体が無いのではないでしょうか。これは如何なものでしょうか? 付加価値倍率法は、こういった価値を織り込むことができる算定方式だと考えます。

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消滅会社退任役員等の退職給付

2008-03-10 23:26:10 | M&A

     吸収合併の場合、被合併会社(消滅会社)の財産は合併会社(存続会社)に包括的に承継され、被合併会社は解散によって消滅しますね。会社法750条では、「存続会社は、効力発生日に、消滅会社の権利義務を承継する。」と規定しています。消滅会社の権利義務ですので、取引先との債権・債務や、保有する固定資産の物権も含みますね。債権・債務には、当然従業員との間に存在する労働契約を含みますね。

・ では、取締役等の役員と消滅会社との関係は、当然承継されるかというとそうではありませんね。役員と会社とは委任契約が締結されていると通常は考えられていますが、この役員・会計監査人との委任契約は、承継されずに別途選任されない限り、消滅会社の解散と同時に消滅すると考えるようですね。そういう意味では、全ての契約関係が自動的に包括承継される訳ではない。例外もあるという事でしょうか。

・ 持分プーリング法が適用される税法上の適格合併の一類型である「共同事業を行うための合併」では、要件の一つとして①事業規模の対等要件又は役員(平取を含まない特定役員)の継続就任要件を課しています。他の要件としては、②事業の相互関連性、③従業員80%以上の移転(*)、④被合併事業継続、⑤合併新株80%以上の継続保有要件(被合併法人の株主が50人未満のとき)等ですね。適格合併自体非常に少ないですし、特定役員以外の就任継続も必ずしも多くない様ですね。消滅会社の会長や社長等は、存続会社の役員になる場合も多いですが、役員数の減員の為、平の取締役等は、一部を除き辞めてもらうということが多いですね。パーチェス法が適用される非適格合併の場合は、役員継続就任要件がありませんので、合併の際に退任する被合併会社の役員は、それなりにいますね。(対外的にはかっこ良いこと言いますが、会長・社長等のずる賢いトップだけが残り、その他の役員は、お金やるから「さようなら」という場合もあるわけですね)

     適格合併で、従業員80%以上移転要件を求めているのは、合併契約のときに、ときどぎ、合併の効力発生までに消滅会社側で、一部不採算事業の整理・売却・従業員整理等して、合併前に身ぎれいにすることなどが、合併契約にて約束される場合があるからでしょうかね。会社法では、全ての権利義務が承継されるとしているのにですね。現実は、会社法と異なり厳しい場合がありますね。

【消滅会社の退職役員・使用人への退職一時金・年金】

・ 合併に際して退職する(退職させられる)使用人の退職一時金は、被合併会社で未払(例えば、合併期日の前日に退職する場合)であっても、被合併会社において債務が確定しているものですので、被合併会社の費用&損金となりますね。合併会社の費用&損金ではないですね。

・ しかし、退職年金については、支給すべき時の費用&損金ですから、年金については、合併会社の費用・損金になることになりますね。法人税基本通達9-2-29ですね。「法人が退職した役員又は使用人に対して支給する退職年金は、当該年金を支給すべき時の損金の額に算入すべきものであるから、当該退職した役員又は使用人に係る年金の総額を計算して未払金等に計上した場合においても、退職の際に退職給与引当金勘定の金額を取り崩しているといないとにかかわらず、当該未払金等に相当する金額を損金の額に算入することはできないことに留意する。」と書いています。

・ 合併会社が、被合併会社の退職役職員の退職年金の給付をしなければならないですから、会社合併のときの合併比率算定のときには、お互い相手の退職給付債務の詳細を調べておかないと大変ですね。でも、これもときには難しいかもしれませんね。普通は、退職年金と退職一時金の選択が可能ですから、例えば救済合併される側が、合併前の人員整理で、割り増し退職金をはずむと、実は結構退職一時金を選択して辞める人も増えますしね。

・ では、役員退職金の処理はどうしたら良いのでしょうか。法人税基本通達9-2-33ですね。「合併に際し退職した当該合併に係る被合併法人の役員に支給する退職給与の額が合併承認総会等において確定されない場合において、被合併法人が退職給与として支給すべき金額を合理的に計算し、合併の日の前日の属する事業年度において未払金として損金経理したときは、これを認める。」としています。また、合併法人の役員となった被合併法人の役員等に対する退職給与も、この規定を準用しています。

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会社法―株主無視の資本金等減少の規定

2008-03-05 23:12:04 | 商事法務

     会社法447条には資本金の額の減少、448条には準備金の額の減少の規定があり、449条には債権者の異議の規定がありますね。447条には以下の様に定めていますね。尚、括弧内は448条の準備金の規定です。

1項 株式会社は、資本金(準備金)の額を減少することができる。この場合は、株主総会の決議によって、①減少する資本金(準備金)の額、②減少する資本金(準備金)の額の全部又は一部を準備金(資本金)とするときは、その旨及び準備金(資本金)とする額、及び③資本金(準備金)の額の減少の効力発生日を定める。 (2項は省略)

3項 株式会社が株式の発行と同時に資本金(準備金)の額を減少する場合において、当該資本金(準備金)の額の減少の効力が生ずる日後の資本金(準備金)の額が当該日前の資本金(準備金)の額を下回らないときにおける第一項の規定の適用については、同項中「株主総会の決議」とあるのは、「取締役の決定(取締役会設置会社は、取締役会決議)」とする。

これに続いて、449条では、例外的な場合を除き、債権者保護手続きを求めています。

     具体例:まさる商事でも良いのですが、一応「まぬけ商事(株)」=取締役会設置会社の例を挙げましょう。公開会社の場合ですね。公開会社でない全株式譲渡制限会社は、第三者割当増資は、総会特別決議ですからね。取締役会決議で第三者割当が実施できる例です。(単位:百万円)

        ①H19.4.1  ②H20.3.31 ③減少・増資

資本金          300         300   150+200=350

資本準備金      200         200       50+200=250

その他利益剰余金  0      △300      0

純資産      500          200    200 + 400=600

発行済株数    500株     500株  500+1000=1500

第三者割当増資            40万円x1000

1株純資産    100万円  40万円     40万円

株主A      250         250         250株(16.7%

株主B      250株    250         250株(16.7%

新株主C                                                           1000(66.7%)

     の時:まぬけ商事の社長・経営陣が、新規有望プロジェクトに乗り出し、大儲けしますと大言壮語を吹きます。

     の時:がばっと勝負したプロジェクトで大ちょんぼ(よくある例ですね)で3億円赤字を出しました。

     の時:まぬけ商事の社長・経営陣は、取締役会決議で第三者割当増資を行い友人のまさる=新株主Cが、第三者割増資を引受、この会社を乗っ取り、既存株主A&Bをないがしろにする。(上の例では2/3取得ですので完全な経営支配権を確立)

     4473項、4483項により株主総会ではなく取締役会決議でできます。以下のように株主の意思を問うチャンスが無くなり、株主利益に影響を及ぼします。またこの減増資のときの債権者保護手続きは、あまり意味がないのではと思います。

1 経営者が、多額の損失を計上しました。企業価値・株主価値・1株当たり純資産あるいは株価等を大きく毀損しました。それにも拘わらず、既存株主が、経営者の経営責任を問う機会である株主総会が開催されないというのはおかしい。

2 既存株主は、第三者割当増資をされれば、持株比率が希薄化します(本件の様に減増資のみならず普通の第三者割当でも当てはまりますが)。上の様な例では経営支配権も、新規株主に奪われます。既存株主の利益に大きな影響を与えます。

3 上記②の時点では債権者保護手続きは求められません。③の時点です。純資産は、基本的には、絶えず変動する資産マイナス負債の現在額を示す計算上の金額であり、資本金・準備金に見合う現預金を会社が持っている訳ではありません。債権者にとり重要なことは、会社が支払い期日に支払う現預金があるかです。上の例では、③の時点で、②の時より資本の充実が計られ現金が入金します(現物出資の場合を除く)。にも拘わらず債権者保護手続きが求められます。この会社は、赤字を出しているから注意して取引しなさいよという警告機能にはなりますが、上のような例の時にまで、債権者にプラスになる事が行われているのに、保護手続きが必要か疑問です。

4473項等の規定は、株主をないがしろにする規定です。数字(金額)が元に戻ればよいだろう等という発想かどうか知りませんが、ちょっと既存株主への配慮が無いのではないでしょうか。

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選定業務執行取締役になぜ対外的権限が無いの

2008-03-01 00:26:46 | 商事法務

       会社法にはおかしな・ちぐはぐな規定がありますが、法36312号に定める、業務担当取締役(代表取締役以外の業務執行取締役を言います。選定業務執行取締役と呼ぶ人もいますので、以下ではその名称を使います)の規定などもその一つですね。業務執行とは何か、なぜおかしいかについては先のBlog業務執行取締役の規定は意味不明?」↓をご参照下さい。

http://blog.goo.ne.jp/masaru320/d/20070525

業務執行とは、一方で社内事務であり他方で社外事務ですね。対内的な業務執行のみというのは一部の管理部門を除きありません。業務執行は通常全て、対内的な執行と対外的な執行が一体として行われます。つまりコインの表裏なのです。例えば、①人事担当役員が、採用計画を社内で詰めて、対外的に採用を行い、採用通知を出す。②調達担当役員が、社内で調達品の集計を行って調達を実施し、調達担当役員の名前で発注する。③営業担当役員が、販売・マーケティング計画を社内で詰めて、マーケティングを実施、販売を行い、営業担当役員の名前で売買契約を締結するなどですね。

       学者は、選定業務執行取締役は、対内的な権限だけを持つものであり、対外的に会社を代表する機関はあくまで代表取締役(一切の行為を行う権限有り)であるとしています。委員会設置会社の場合は、執行役ですね。取締役会設置会社で言えば平取締役みたいなものですね。一応、会社との関係は委任で、取締役会決議により委任された業務執行を決定し、実行します。但し、対外的には代表権は代表執行役だけが有する。―とされています。

       では、選定業務執行取締役や執行役では無く、例えば、ただの営業部長(=使用人)の場合はどのようになるのでしょう。会社法13-14には、表見支配人等の規定があります。しかし、選定業務執行取締役や、委員会設置会社の執行役には会社の代表権はありません。

― 13条(表見支配人)

 会社の本店又は支店の事業の主任者であることを示す名称を付した使用人は、当該本店又は支店の事業に関し、一切の裁判外の行為をする権限を有するものとみなす。ただし、相手方が悪意であったときは、この限りでない。

 

― 14条(ある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人)

 事業に関するある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人は、当該事項に関する一切の裁判外の行為をする権限を有する。(2項は省略)

 尚、15条では、物品の販売等を目的とする店舗の使用人は、その店舗に在る物品の販売等をする権限を有するものとみなすと定めています。

       349条4項では、代表取締役は、株式会社の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有すると定めています。しかし、選定業務執行取締役や執行役は、担当業務を対外的に執行する権限は無いと学者は言っています。14条を見て下さい。例えば営業部長は、営業行為について一切の裁判外の行為をする権限を有するとしています。取締役営業部長なら、使用人兼務という言い方もできますね。取締役の資格では無く、使用人の資格で権限がありますが、営業という業務を任された選定業務執行取締役としては、対内的な権限しかないとなります。これっておかしいと思いませんか??また、例えば常務取締役営業本部長は、(表見代表取締役の規定は適用される可能性はありますが、それは別問題)対外的な権限は無いのでしょうか?そんな馬鹿なこと無いですよね。

― あるいは、平の取締役営業本部長の下に、営業部長を置けば、14条により営業部長は営業に関する一切の(裁判外の)行為をする権限を有します。しかし、その上司の取締役営業本部長は、対内的な権限しか無いというのは如何にもおかしいですね。本来なら、代表取締役の対内的&対外的な業務執行権限の内、営業に関する権限を取締役営業本部長に授権し、更にその権限内で営業部長に授権すべきですよね。あるいは、授権された営業の業務執行権限を取締役営業本部長が、営業部長を補助者として使用し、自ら権限をもって対外的&対内的な行為をすべきですよね。

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