まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

買収企業に求められる劣後債権契約

2019-01-12 01:40:06 | M&A
○ 日本企業が米国企業を買収したときに、被買収企業が銀行取引を行っておればというか、行っていますので、銀行団は、change of control条項の入ったローン契約を結んでいますので、日本企業の買収を承認する、即ちchange of control条項をwaiveしてあげるけれども、その条件として、銀行のローン契約の保証契約を結ぶべきだとか、親子ローンをする場合は、銀行債権と親子ローン債権との、債権の優先劣後の取決めをして、銀行債権が優先する、あるいは親子ローンは劣後ローンである旨ローン契約(Subordination Loan Agreement)に明記し、親子ローン契約は買収企業と被買収企業間の契約であるため、更に銀行と買収会社のローンとの優劣を定める債権者間の契約(Intercreditor Agreement)を結ぶべきだと言ってきます。NY商取上場などの信用力ある日本企業の場合には、保証契約を結ぶ代わりに、「ローン金利を、もっと安せんかい」と、がめつく要求しましょう。大体、日系企業は要求が穏当です。入札方式で高値で買収して、がっぽり株主にお金を支払っているのに、更にその銀行団から要求されます。「しつこくがめつく」が日系企業には欠けていますね。

○ Subordination Loan Agreement 記載のsubordinationの内容は、sub-clauseの条項が5-6個 30-40行ぐらいで、それほど規定は入りませんが、 Intercreditor Agreementには、倒産した場合(Chapter 11)のことや、UCC Article 9 Secured Transactions(=動産担保取引に適用。UCCでほぼ統一されていますが、不動産担保取引は、各州の独自性・歴史的経緯があり、どうも州ごとにいろいろ違いがあるようですので、よくわからないです。)、またUCC Article 3 Negotiable Instrumentの知識なども多少必要なので、やはり日本企業・日本人弁護士にとっては手間のかかる取引ですね。M&A専門の日本人弁護士(NY州弁護士資格も保有の人)も、このあたりの事は、あまり経験の無い人が多いようです。米国企業のM&Aは、Stock Dealの場合は方式が確立していますし、過去の事例の契約書をコピペして、少し修正すればできます。それをあたかもきちんと作成したようなふりをして、ぼったくる(特に米国系法律事務所)のが一般的です。複数の法律事務所から見積もりを取り、しっかりたたいてから起用しましょう。また、弁護士の言う事は何でも信じる人がいます。弁護士でも優秀な経験ある人から、どうしようもない人まで様々です。先生。先生と言って、バカ先生の言うとおりにするのはやめましょう。日本の法律の話ではないです。米国の法律の経験と知識の話です。弁護士にお願いするときに一番重要なのは、優秀な弁護士さんか見極めることですね。

○ では、Subordinated Loan Agreementのsubordinationには、どんなことを記載するのでしょうか。一番簡単な例は、Borrower(被買収会社)が銀行ローン(優先債権)を支払うことが出来なくなったとき、Borrowerに対して支払い不能手続きが開始されたとき、Borrowerがchapter 11やComposition(和議)等の手続きに入ったとき、買収会社のローン債権は、借主の銀行等の債務より劣後すると記載することですね。まあ、例としては、「the obligation to repay the outstanding amount of the Loan(買収会社のローン) shall be subordinated to any indebtedness of the Borrower to any lending or financial institution」等と書きますね。また、親子ローンでは担保を取らないことが多いですが、「The Borrower undertakes not to grant any security interest of any kind in respect of Shareholder's Loan」といった条項もpopularではないでしょうか。

○ これで銀行が納得しない場合には、銀行、買収会社、被買収会社(Borrower)の3者間で Interceditor Agreementを結びます。Borrowerも契約当事者ですが、これはBorrowerに対する銀行債権と親会社債権の債権間の相対的な優劣の取り決めですね。一般的には、以下ぐらいではないないでしょうか。ただ比較的簡単なものから、ぐじゃぐじゃ一杯書いているものまでありますね。比較的簡単なものは、以下ぐらいの条項が記載されます。

1条:Definition=多くの定義が記載されます。例としては、Bankruptcy Code Title 11倒産法のChapter 11から、Senior Creditor, Subordinating Creditor, Debtor, Collateral(=UCC Article 9の担保目的物の事)などですね。

2条 Priority 例えば以下ですね。
Notwithstanding the terms and/or provisions of any agreement or arrangement which either Creditor may now or hereafter have with the Debtor or any rule of law, and irrespective of the time, order, or method of attachment or perfection of any security interest or the recordation or other filing in any public record of any financing statement, any security interests in the Senior Creditor Collateral held by the Senior Creditor, whether or not perfected, are and shall remain senior to any lien now or hereafter held by the Subordinating Creditor and, any present and future guaranties relating to the Senior Creditor Obligations.

長い文章ではないのですが、UCC Article 9の知識が必要ですね。
用語の解説:Debtor=担保権設定者(Borrowerの場合が多い)、attachment=差押えの事ではなく、ここでは担保権の成立のこと。Perfection=担保権の完成の事、filing=登録、financing statement=担保目的物を記載した貸付証書の事(financial statementではないです)、lien= common lawや司法手続きにより成立する担保権の事

3条 Permitted Payments.=劣後債権者、即ち親会社に支払っていい場合ですね。一般的には、金利、元本返済、ローンに関する借主負担の費用です。

4条以下は、種々の規定の仕方があるようですが、1)買収者=親会社は担保設定してはいけない、Security Interestを持ってはいけない、Insolvency/Bankruptcyの場合、いずれも銀行のsenior creditorが優先する旨の記載が続きます。
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