まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

Firm Offerと撤回(Revocation)

2020-10-02 22:34:24 | 商事法務
契約は、Offer(申込)とAcceptance(承諾)により成立しますね。これは、多分世界に共通だろうと思います。では、確定の、即ち撤回の権利を留保しないでなされたOfferは、撤回できるのでしょうか?3つのケースが考えられます。我々は、常識的に確定申込をしている以上、その期間内は、他に特別の事情が発生しない限りできないと考えると思うのですが、世界的にみると必ずしもそうとは言えないですね。

(1) 申込に拘束性を認めず、承諾があるまでは何時でもこれを撤回できるとする法制。→中南米の国
(2) Consideration(約因・対価)の理論により、申込みにより拘束されるConsiderationがない限り、申込みに拘束性は認めず、仮にFirm Offer(期限を定めた確定申込)であっても、任意にこれを撤回できるとする法制。→英米法系の国(但し、この原則を法令で変更している国もある)
(3) 取引上の要請や申込者の意図より、申込みに拘束力を与え、申込み有効期間中の撤回を許さない法制。勿論この場合でも被申込者から撤回の確認を取れば、勿論撤回はできます。→日本、ドイツ等

上記について、もう少し具体的に見てみましょう。
(1) 私は、昔ある中南米の国営石油公社と取引をしていました。Offerの有効期間は180日という長い期間でした。その当時は、当然申込みの撤回等できないと思ってOfferをしていたのですが、その会社からは、Orderを出す前に当方のOfferはまだ有効かの問い合わせがありました。ということで、申込みも拘束力なしに撤回できる国があるのだと知りました。でも、Offerには念のためThis offer is valid until Dec. 10, 2020 subject to our confirmationぐらいの文言を入れておいた方がいいのかもしれません。

(2) 米国について、UCCの§ 2-205 Firm Offersの規定を見てみましょう。
An offer by a merchant to buy or sell goods in a signed writing which by its terms gives assurance that it will be held open is not revocable, for lack of consideration, during the time stated or if no time is stated for a reasonable time, but in no event may such period of irrevocability exceed three months; but any such term of assurance on a form supplied by the offeree must be separately signed by the offeror.
上記の通り、署名ある書面でない場合には撤回可能Revocableということになりますね。従い、PDFに署名をつけて申込をした場合にはNot revocableになります。従い、例えば相場商品のような価格変動の激しい商品の買申込を、署名なしのメールで1週間の期限でしたときに、相場が急落した場合ので、撤回することもできますね—という理屈にはなります。勿論買主の信用が落ちる可能性もありますが。しかし、メールには発信者の名前は記載します。また、発信者メールの冒頭のFromのところには、自分の名前やニックネームが記載されます。受信側も受信者本人となります。発信者側はSMTP Serverで、受信者側はPOP3 Serverでauthenticationされます。この場合に撤回は有効か、あるいは撤回ができないのか、米国での判例があるのかどうか、私は知りません。
知っている人がいれば、教えてください。
このUCCの規定は、最近のインタネット時代のビジネスの変容に追い付いていない規定ではないでしょうか。

(3) 日本の民法ではどのように規定しているのでしょうか。
民法522-1 契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。
民法 523-1 承諾の期間を定めてした申込みは、撤回することができない。ただし、申込者が撤回をする権利を留保したときは、この限りでないとしていますね。

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