まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

社外取締役選任の義務化に反対

2011-11-26 20:48:23 | 商事法務

 

 1128日の日経ビジネスには、会社法改正の動きとして、①社外取締役選任の義務化、②監査・監督委員会制度の導入、及び③子会社役員への代表訴訟を可能にする2段階代表訴訟制度の導入の方向であると記載されています。その中で、社外取締役選任の義務化について述べてみましょう。日経ビジネスでは、「抵抗勢力」だった経団連も、オリンパスと大王製紙の不祥事を前にしては大っぴらに反対を唱えるのは難しいとも記載されています。

 

○ オリンパスには、藤田力也(病院長)、千葉昌信(企業経営者)及び林純一(企業経営者)の各氏3人の社外取締役がいます。また社外監査役も2名います。大王製紙には、3人の社外監査役が就任しています。また、有名なエンロンでも、勿論社外取締役がいました。社外取締役がいても、不祥事は起こりますし、また実態として社外取締役が機能していない。こういった現実をきちんと分析することなく、また米国の制度などを表層的に安易に導入しようとしていると思います。会社法施行規則124条では、社外役員の活動状況として、出席の状況や発言の状況を事業報告書に記載しないといけません。発言の状況などは、「有益な発言」をされたなどと書いています。即ち、これは殆ど決議に影響するような発言をしている人はいないということですね。

 

 

○ 日本では、取締役会の意思決定・監督機能と経営の執行機能は分かれていません。米国では別れていますね。こういった実態もどれだけ調査して、また分析して社外取締役の義務化を会社法に織り込もうとしているのか疑問ですね。米国では、例えばニューヨーク証券取引所(NYSE)Listed Company Manual等で詳細が規定されています。その303A.01には、独立取締役(Independent Directors)の定めがあり、過半数の独立取締役を有しなければならないとしていますね(Listed companies must have a majority of independent directors)。なにも会社法で定めなくても、証券取引所の上場規則などでガバナンスに関する規定を設けてもよいと思います。

 

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 社外取締役の実態については、以下が多いのではないでしょうか。

1) 必ずしも独立取締役ではない。ビジネス・事業に関連する取引先の役員等が多い。

2) 必ずしも毎回出席しない。

3) 事前の配布資料もきちんと読まないし、読んでいる時間も無い。

4) 社外取締役になった企業の実態を十分理解していない。

5) 取締役会に出席しても、殆ど発言しない。お付き合いの一種の参加ですから。ひどいのになると、寝ているのもいますね。

6) 取締役会は、既に決まっていることを、形式的に承認する機関となっており、十分な議論もされないし、社外取締役がどれだけ議事内容を理解しているのか疑問もあります。

 

 オフィシャルな取締役会に、例えば、社内の不正経理の実態を報告するでしょうか?そんなことはありえません。不正は、影で2-3人のトップで行なわれるのです。カネボウにしても、大王製紙にしても、オリンパスにしても、裏で行なわれますね。私は、「社外取締役の義務化」をしても、取締役会の活性化等しないと考えています。

 

 では、どうすれば良いのでしょうか?簡単です。まずは取締役会を活性化させることです。それには、異見をもつ、立場の異なる取締役を選任することです。

(1) 累積投票排除の規定を認めない。即ち、日本の会社の定款には、殆ど「取締役の選任決議は、累積投票によらないものとする」という規定がありますが、上場企業については累積投票排除の定款の定めを認めないことです。

(2) 更に、例えば5%なり10%以上の議決権を保有する株主は、取締役の選任に際し、取締役を指名する義務を負わせることです。<o:p></o:p>

 

 

○ 取締役は、忠実義務や善管注意義務等を負って、その会社の利益を図らないといけない建前になっていますが、これは建前であって、指名したものの利益を重視しますね。従い、各株主の意向を踏まえて取締役会に出席して、発言するのではないでしょうか?まあ、例えば議員でも「全国民を代表する選挙された議員(憲法43条)」等という建前はありますが、実際は支持母体の利益代表者ですね。従い、選任された取締役も、支持母体の株主の利益を念頭において、発言するでしょうから、少しは取締役会が活性化すると思います。

Nov222011_3

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英文契約のAssignment

2011-11-12 20:46:41 | 商事法務

 英文契約の一般条項の一つとしてAssignmentの条項がありますね。例えば以下の様な条文を契約書に入れます。最近は、子会社・関係会社間のリストラ・再編成等多いので、他社に契約をAssignする例もときどき出ています。この契約のAssignmentについて、結構知られていない事がありますので、今回はその話です。

This Agreement may not be assigned by either of the parties hereto to any other person and any such assignment shall be null and void without the consent in writing of the other.

 

 日本では、契約の譲渡といいますと、契約上の地位の譲渡や債権譲渡+債務引受の合わさったものとして行われます。一般的には、契約上の地位の譲渡を行えば、譲渡人は譲渡日前日までの債権債務についての清算まで責任を負い、その後は免責され、債権債務は譲受人の責任であると考えますね。債権譲渡+債務引受の場合は、当事者の意識として免責的債務引き受けが多いのではないでしょうか?

 

 米国法のAssignmentは、上記と異なります。しかし、実際はこのAssignmentは上記の日本法の譲渡と同じと思っている人が多いと思います。米国法のAssignmentは、「権利の移転と義務履行の委託」=”Transfer of rights and delegation of duties”を意味するんですね。即ち、譲渡人はAssignmentにより契約上の権利を喪失しますが、義務の履行については譲受人に、その履行を委託(delegate)するだけで、譲渡人が契約上の義務から免責されることは無いのです。従い、免責する場合は、特約条項といいますか、「契約上の義務は譲受人のみが負担し、譲渡人は免責される」旨を特に明記する必要がありますね。<o:p></o:p>

 

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 Uniform Commercial Code 2-210(3)(4)をそのまま引用してみましょう。

§ 2-210. Delegation of Performance; Assignment of Rights.

 (3) An assignment of "the contract" or of "all my rights under the contract" or an assignment in similar general terms is an assignment of rights and unless the language or the circumstances, as in an assignment for security, indicate the contrary, it is also a delegation of performance of the duties of the assignor.

(4) Unless the circumstances indicate the contrary, a prohibition of assignment of "the contract" is to be construed as barring only the delegation to the assignee of the assignor's performance. <o:p></o:p>

 

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DCF法の企業価値算出は誤り

2011-11-07 01:13:27 | 企業投資

 

 DCF法による企業価値算出は、企業が生み出す毎年の将来収益のうちのフリーキャッシュフロー(FCF)部分を割引率で現在価値にして、その総和で計算しますね。但し、この計算をずっと続ける訳にもいきませんので、6年目以降とか、8年目以降は、一定のFCFが永久に続くという前提(perpetual base)をおいてTV=Terminal Valueを計算して、それを現在価値にします。TVは、等比級数の公式で簡単に計算できますね。

 

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 米国で発達してビジネススクールのCorporate Financeで教えていますので、日本人でもMBAの取得者等は、この計算遊びの手法が、企業価値算出の方法としては正しいと信じ込んで、いろいろな機会で紹介したり、本まで出しています。高等数学を使った金融工学が米国で発達しました、そのなれの果てが100年に一度のリーマンショックですね。相変わらず米国かぶれの人が、政府の審議会での委員等になっています。別に委員になっても良いのですが、「異見」を持つ人、欧州の社会的市場経済の知識・経験を持った人など取り混ぜないと偏った意見になってしまいますね。

 

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 DCFでは、WACCで割引率を算出します。これが誤った考え方であることは、200812日のブログで述べています。ということで、今回は、それ以外について「けち」をつけてみましょう。

 

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 「企業価値(事業価値)=有利子負債+株式価値」とされています。

・非事業用資産があれば、それを企業価値に加えたものが会社総価値。

・また、有利子負債はネット、即ち現預金を引きますね。

企業買収の際に、買収側は、上記の株式価値に基づき株式を取得すると考えるわけですね。株式価値を株主の価値とする訳です。また、負債の肩代わり即ち金融機関の貸付債権を、買収側が債権譲受して親子ローンにする場合等もあります。

 

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○ TV計算の誤り

 例えば5年間の事業計画を策定して、そのFCFを現在価値にしますね。6年以降はTV=Terminal Valueとして、永久成長率を0%とか、自分の気に入る数字が出てこない場合には、この数字を1%成長とかにして数字遊びをします。この場合は、5年間の事業計画をまじめに作っても意味ないですね。この5年間のFCFの額にもよりますが、この部分が企業価値に占める割合は3割あるいは多くて4割、即ちTVの占める割合は6~7割です。このTVの前提は何でしょうか?企業が永久にFCFを生む。即ち、企業は永久に続くという前提です。勿論 割引率により企業価値の中で20年後30年後に占める割合は少ないですけれどもあなたの企業は永久に継続しますか?こんなありもしないことを前提におくこと自体が根本的に誤っているのです。<o:p></o:p>

 

○ 株式価値の誤り

 企業価値には、取引先や従業員といったステークホルダーの価値も含まれているという主張があります。私もそう思います。しかし、これらのステークホルダーには、PLを見れば、原価計算や販売管理費を支払った後のEBITDA等をベースにFCFを計算しているので、こういった主張はナンセンスであるという人がいます。株式価値は株主だけの価値だという主張です。しかし収益は、負債と株主資本を利用して生みます。企業価値の生みの親は負債+純資産ですね。というと「企業価値-有利子負債=株式価値=買収価格」という考え方はおかしくありませんか?。BSの負債を見ると、有利子負債の他に、「支払手形・買掛金・前受金。債務性引当金、退職給付債務、長期未払金等」があります。まあ株主資本は株主の資本と言っても良いかもしれません(私は、BSの「株主資本」という言葉も間違っていると考えていますが、それはまた別途)。しかし、買掛金や退職給付債務が株主の株式価値の一部を構成している合理的な説明を私は聞いたことがありません。私でも分かるように説明してほしいですね。<o:p></o:p>

 

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○ DCF法による企業価値というのは、「これからこれだけ儲けます」。「今後これだけのFCFを生み出す力があります」と、「数字を使ってあたかもそうなるような振りをしてごまかす方法です」。事業が計画・予想通りになる等と考えること自体、空理空論です。こんな馬鹿な考え方がありますか?<o:p></o:p>

 

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企業価値の計算方法には、種々の計算方法がありますが、収益・利益を基本とする方法では、今年度や過去2-3年の実績、今後23年の確実な収益予想に基づくものでなければいけません。企業の価値は現在(今年度+/-2-3年)の社会への貢献度、即ち付加価値額ですね。一年だけの付加価値額では、買収額は当然算出来ません。買収額算出の場合は、この付加価値額のMultipleで行うのが良いと私は考えています。<o:p></o:p>

 

 

 

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英文契約Best Efforts条項は精神条項か?

2011-11-03 13:29:29 | 商事法務

 

 例えばロイヤルティの支払いなどで売上のx%を支払う。最低でもXXドルを支払うよう”make best efforts / endeavours” するという条項を入れる場合がありますね。妥協の産物ですね。ライセンサーが一定額を要求し、ライセンシーは出来るかもしれないけど約束はしたくない。あるいはひどいのになると精神条項として、相手とまとめるために入れておこうということで、最初から守る意思が薄弱の場合もあります。ということで、今回はBest Efforts条項を入れたために、これは義務者により強い義務を課したものであると解釈した米国の判例をご紹介しましょう。

米国以外では、かなり精神条項と受け取られているケースも多いとは思いますが、安易に入れておけば良い。精神条項だからと考えない方がよいという話です。<o:p></o:p>

 

Bloor v. Falstaff Brewing Corp. ,601 F.2d 609 (2d Cir. 1979).のケースですね。

ビールなどを造っていたBloor社は、Ballantineの商標や営業部門の事業をFalstaff社に4百万ドルで売却しました。併せて(ビール工場だけがBloor社に残り、このビールの販売もFalstaff社が行うことになり、)Falstaff社は、1972.4-1978.3迄にFalstaff社が販売するBloor社のビールに付き、1バーレルにつき50セントをRoyalty としてBloor社に支払う事に付き、Falstaff社は、「to use best efforts to promote and maintain a high volume of sales」とし、また販売をやめたときは契約で「 a liquidated damages clause to take effect if Falstaff ceased to distribute Ballantine products.」ということで損害賠償額の予定の規定も入れたわけですね。ですから、販売は続けないと行けないのですが、この販売に手を抜いたわけですね。勿論ビジネスですからいろんな事情があり、赤字販売が続き、利益重視で広告費90%削減、販売網整理統合、リベート廃止などで売上が急減したのですが。まあ、売上高リンクのRoyalty設定も良くなかったのかもしれませんが。<o:p></o:p>

 

○   第一審ニューヨーク南部地区連邦地裁及び控訴審とも、Bloor社の主張を認めて約63万ドルをBloor社に損害賠償するように命じました。Use best efforts条項によりin good faithに行動すること、また、to the extent of its own total capabilitiesに行動しなければならないと判示しています。また、best effortsしたかどうかの基準は、同業他社とも比較して、”average, prudent, comparable”であるかも考えなければならないとしています。即ち、当事者の主観ではなく客観的な基準によるべきだとしているのですね。勿論、赤字営業でしたから「義務履行のために倒産に至るまでのことを要求するものではない」ともしています。

 

 Best Efforts条項を入れたら、ほったらかしにせずに、やはりきちんと努力しないといけないということでしょうね。<o:p></o:p>

 

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