まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

新設分割の欠陥規定

2009-09-22 09:25:04 | 商事法務

○ 新設分割の制度はあまり利用されていないのではないかと、先にブログで書きました。今回は、この新設分割の規定に「けち」をつけてみたいと思います。法763条では新設分割計画を規定しています。

763条の柱書では、新設分割会社は、新設分割計画において、次に掲げる事項を定めなければならないとし、各事項を定めています。

II  前号に掲げるもののほか、新設分割設立株式会社の定款で定める事項

V  新設分割設立株式会社が新設分割会社から承継する権利義務に関する事項

VI  新設分割設立株式会社が新設分割に際して新設分割会社に対して交付するその事業に関する権利義務の全部又は一部に代わる当該新設分割設立株式会社の株式の数又はその数の算定方法並びに当該新設分割設立株式会社の資本金及び準備金の額に関する事項

IIX  新設分割設立株式会社が新設分割に際して新設分割会社に対してその事業に関する権利義務の全部又は一部に代わる当該新設分割設立株式会社の社債等を交付するときは、当該社債等についての次に掲げる事項

 当該社債等が新設分割設立株式会社の社債であるときは、当該社債の種類及び種類ごとの各社債の金額の合計額又はその算定方法

     ここでの疑問等は、以下ですね。

     上記VI号で権利義務の全部又は一部に代わる株式の数と規定されています。株式の数は零=資本金零でも良いのか、やはり、1株、例えば1円でも払い込まなければならないのか。あるいは1株0円でも発行できるのか?計算規則81条では分割型新設分割で「資本金額(零以上の額に限る)」と書いているところを見ると零でもよさそうですが。でもやはりおかしいですね。資本=事業の元手ですからね、一文も出さないと元手になりません。やはり、1株1円、あるいは1万株1円とかにならないとね。

     権利義務の全部に代わり(株式ではなく)社債等を交付したときどうなるのか、即ち、株式会社なのに発行済み株式が無し、資本金・純資産なしで、負債だけの会社になりますね。株主もいませんね。社債権者はいますが。

     会社法では資本金及び備金の額に関するとだけ記載しているが、会社計算規則では資本剰余金等について記載している(計算規則80/81条)。どうして会社法に記載していないものを規則で規定するのか?こんなことができるというのなら規則で会社法をねじ曲げることができますね。(この規定だけでなく他でもありそうですが)即ち、例えば計算規則80条では、設立時株主払込資本額=資本金額+資本準備金額+資本剰余金額とし、利益準備金額&利益剰余金=零と規定しています。

これらの規定をどのように考えれば良いのか、未だによく分かりません。

200909211218000

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準備金減少の規定は遵守されているのか?

2009-09-13 23:13:30 | 商事法務

表題は少し不正確ですね。短くしたからですね。正確に言いますと「準備金の額の減少決議に伴う債権者保護手続は遵守されているのか?」と言うことですね。

       448条には準備金の額の減少の規定があります。即ち、以下ですね。

① 株式会社は、準備金の額を減少することができる。この場合においては、株主総会の決議によって、次に掲げる事項を定めなければならない。

 I  減少する準備金の額

 II 減少する準備金の額の全部又は一部を資本金とするときは、その旨及び資本金とする額

 III 準備金の額の減少がその効力を生ずる日

○ この規定との関係で、449条では債権者保護手続が規定されていますね。

  株式会社が資本金又は準備金(以下この条において「資本金等」という。)の額を減少する場合(減少する準備金の額の全部を資本金とする場合を除く。)には、当該株式会社の債権者は、当該株式会社に対し、資本金等の額の減少について異議を述べることができる。ただし、準備金の額のみを減少する場合であって、定時総会で欠損金額までの減少の場合を除いていますが。

② 債権者が異議を述べることができる場合には、減少の内容などを官報に公告し、かつ、知れている債権者には、各別にこれを催告しなければならない。但し、異議申述期間は、一箇月を下ることができない。

③  前項の規定にかかわらず、株式会社が同項の規定による公告を、官報のほか日刊新聞紙・電子公告によりするときは各別の催告は不要とする。

       一方ご承知の通り、資本金の額は登記事項ですね。資本金の額の減少のときは、変更登記をしないといけません。登記には添付書類が必要です。それには、債権者名簿や、異議申述公告をした掲載紙、各別の場合には債権者異議申述催告書の見本などですね。しかし、準備金は登記事項ではありません。即ち添付書類の用意は不要です。登記によって規制されていないと守らない会社も出てきますね。

○ まあ、公告方法が官報の会社は、各別の催告ですから債権者が多い会社は手数がかかりますね。これをすり抜ける手だては簡単です。準備金減少の決議の直前の総会議案として、公告方法を日刊新聞に変更しその時点から定款変更の効力発生としてしまえば、日刊新聞紙により公告をし、かつ官報で公告すれば各別の催告が不要となります。普通は、信用調査会社を除けば、新聞・官報による公告など見ていませんからね。

つまり、債権者保護手続がきちんと取られた上で準備金が減少したかどうかは分からないわけですね

○ 債権者にとって重要な事は、純資産ではありませんね。現・預金とキャッシュフローですね。まあ債権者保護制度などあまり機能していないといいますか、あんまり役に立つ制度ではないですね。

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内部統制と監査役

2009-09-07 23:18:12 | 商事法務

       監査役は、取締役の職務の執行を監査する機関ですね。職務・権限=義務は、業務全般(会計監査を含む)の監査であり、内容は会計監査と業務監査ですね。監査とは、業務執行の法令・定款違反または著しい不当性の有無をチェックし指摘する事ですね。

       一方、内部統制の目的は、①業務の有効性及び効率性、②財務報告の信頼性、③事業活動に関わる法令等の遵守、並びに④資産の保全の4つの目的が達成されているとの合理的な保証を得るために、業務に組み込まれ、組織内の全ての者によって遂行されるプロセスをいい、統制環境・リスクの評価と対応、統制活動、情報と伝達、モニタリング及びITへの対応の6つの基本的要素から構成されるとされています。

・ また、内部統制の整備・運用については、取締役会が決定した基本方針に基づき経営者(組織の代表者=代表取締役)は、内部統制を整備及び運用する役割と責任があるとしています。監査役(&監査委員会)は、取締役の職務の執行に対する監査の一環として、独立した立場から、内部統制の整備及び運用状況を監視、検証する役割と責任を有しているとしています。

       日本の内部統制制度は米国SOX法の、猿まね簡易化修正版ですね。ご承知の通り、米国の企業には監査役はいません。日本には監査役制度があります。監査役は上記の通り権限と義務を負っています。内部統制の目的との関連で言えば、②の財務報告の信頼性確保と監査、③の事業活動に関わる法令等の遵守チェックが監査役の仕事となります。なぜせっかく監査役制度があり、監査役がいるのに、脇役へと監査役を追いやるのでしょうか。なぜ内部統制を日本版に焼き直すときに、もっと日本の会社と米国企業との構造的な違い等を十分検討しなかったのでしょうか。だから、私は猿まね簡易化修正版というのです。

       監査役については、任期を長くしたり、取締役会の出席義務等も導入したりして機能強化に取り組んできましたが、うまく行っていません。監査役会では半数以上を社外監査役としました。一ヶ月に一度ぐらいしか会社に来ない社外監査役など実態としては何の監査もしていません。取締役会にでて、少しコメントしているだけです。

       監査役にもう少し働いて貰わないといけないですね。その一つの契機が内部統制制度だったと思います。内部統制構築で、取締役は監査役の意見を聞いて構築するとか、監査役と協力して構築すべきであるとかすべきだったですね。またまた監査役が無視されました。特に会計監査人が設置されている会社では、監査役の会計監査は、会計監査人にお任せです。監査報告書には、「会計監査人が適正な監査を行っているか監視・検証し、その職務執行状況について報告を受け、必要に応じ説明を求めました」ぐらいの事しか書いていません。監査結果については、「監査法人の監査の方法及び結果は相当」としか書いていませんね。

       会社法立案担当者も監査役をないがしろにしている嫌いがありますね。会計監査人設置会社に、業務監査権限を有する監査役・監査役会を設置しなければならないとしたのは、監査役等は会計監査人の選解任に関する議案についての同意権等を有しており、この制度により会計監査人の独立性が担保されるからとしています。(一問一答 新・会社法112ページ)。会計監査人設置会社の監査役の機能は同意権ですか?なぜもっと働かせないのですか。機能を与えて活性化しようとしないのですか?監査役制度の無機能化をいつまで、空洞化、形骸化、放置するつもりなのでしょうか?

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学者型技術者&どぶ板型技術者

2009-09-01 01:08:16 | 社会・経済

       今回は、ちょっと変わって技術者の話です。私は技術者ではありませんが、技術の事業化会社の役員(常勤の代表取締役)を数年やったことがありますので、その経験なども踏まえて、技術者像を書いてみようかと思います。

○ 技術者は2種類に分けられると思います。学者型技術者どぶ板型技術者です。

  学者型技術者は、先端技術の研究を行い、学術論文を発表して学会で認められたり、大学の先生と共同研究したりします。でも先端技術ではお金になりません。ビジネスとしては成り立たないのですね。この先端技術が実際に世の中に広まり役に立つのは、7,8年から15年先の話ですしかも、花が咲くのは千三つとはいいませんが、百に3つぐらいでしょうか。でも大当たりは千三つぐらいかもしれません。

こういった先端技術を事業化しようとしても無理ですね。せいぜい政府の独立行政法人からの仕事や研究所との共同研究ぐらいしかビジネスになりません。継続性もマーケットもありません。先端技術や特許の事業化というのも道は千里で、先が見えません。

産業革新機構が出来ました。新銀行東京は見境無くでたらめ融資をしましたね。産業革新機構は、どういった投資をするのでしょうね。ベンチャー企業へのお金という点では、融資でも出資でもリスクマネーとしては殆どかわりませんね。

「機構の成否を握るのは先端技術の目利き能力」であり、能見社長は「出資企業や創業支援推進機構や新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)などと協力して取り組んでいる」と言われています。どうしてこういった組織に目利き能力があるのでしょうかね。あるわけないでしょ。

また、投資銀行やファンドで投資経験を積んだ人材を採用しているようですね。まあ彼らは、「とらたぬ投資計算」は得意ですが、技術会社への投資眼というのは、人によって少し違いますが、おおざっぱに言えば「下手な鉄砲でも数打ちゃ当たる」ですからね。産業革新機構も、融資ではなくEquity投資で第2の新銀行東京みたいになるのでしょうかね?私が役員をやっていた会社にもベンチャーキャピタルからいろいろアプローチもありましたが、WEBを読んで理解もできないファンドマネジャーには会いませんでしたね。時間の無駄ですからね。もっともfinancial investorを入れるつもりは最初からなかったですけどね。

目利きが出来る人とは企業の一線で活躍してお客さんと接している技術者ですね。時代の方向性を感じ取ることができる人です。NEDOで研究論文書いたり読んでいる学者型技術者には無理でしょうね。例えば、デジタルカメラの目である半導体のCCD(Charge Coupled Device)の将来性にいち早く目を付け人材・資金を投入したソニー元社長の岩間和夫みたいな人ですね。CCDの発明自体は日本ではありません。米国のベル研究所が69年に発明しました。 しかしソニーは70年から研究開発を開始し78年にやっとCCDカメラの開発に成功しました。8年がかりです。大変な苦労です。

東芝でフラッシュメモリーが発明されたとき、誰が注目しましたか?あるいはAT&Tでトランジスタが発明されたとき誰が注目しましたか。AT&T20世紀で最も革新的で価値ある発明の使用権をタダ同然の2万5千ドルで売りましたね。目利きと言われる人の言うことなど殆ど当たりません。

       どぶ板型技術者について言いましょう。こういった技術者が技術関連ビジネスを作り、広めるんですね。時間軸としては、それでも初期の製品が完成してマーケットに受け入れられ始めるには、まあ3年ぐらいはかかりますね。

どぶ板型技術者は、基本的には顧客志向です。顧客のところに行って自社技術・製品の売り込みをします。でも、簡単に採用などされません。予算も今あるわけでもないですね。

顧客の声に耳を傾け、地道に改良します。しかも特定顧客だけの無理難題を聞いたら汎用性がなくなります。こつこつ製品の改良を重ねて、2-3年ぐらい立てば、トンネルの出口が見えます。そして徐々に製品を買ってくれる顧客が出てきます。

どぶ板型技術者の用いる技術は先端技術ではありません既存技術の組み合わせと改良です。ですから、顧客にも受け入れやすいのです。自分だけではなくいろんな技術の得意分野をもった技術者が必要ですがキー技術者がいれば、その人の下が数人-10人ぐらいは、普通の能力の技術者を雇えます。そういうグループを徐々に広げて行けば、少しは雇用にも貢献します。どぶ板型技術者が顧客の声をもとに改良すれば、顧客に喜んでもらえます。喜んでもらえるということは、社会の中で必要とされるのです。即ち、それに対してお金を払う人が出てくる即ちビジネスとして成り立つということですね。

どぶ板型技術者を見つけて、製品改良の資金を提供するのがベンチャーキャピタリストの役目です。

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