まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

開示されない取締役報酬と規制

2009-02-22 00:30:19 | 企業一般

     日本では、米国企業と異なり、オーナー型企業を除き、一般的には取締役の報酬が極端に高額になることはないですね。日産は、取締役の報酬等をかなり高くしましたが、それでも1人2-3億円ぐらいでしょう(ゴーンさんは数億円?)。明確なコミットメントが求められ、これが達成できなければ、賞与額のみならず役員をはずされかねない風土をゴーンさんが作りました。しかし最近は突然の乱気流・奈落の底の状況でボーナスなどは無しと決めたようですね。

-          理由は簡単です。取締役等の役員は、従業員の中での成功者(能力では無く、うまく立ち回ってなった者や同じ派閥・部門のおかげで運だけでなった者も日本では非常に多い)であり、従業員の昇格の延長線上にある。従い、取締役となっても従業員兼務取締役が多いですし、平取締役から常務・専務の役付取締役へ昇役しても、一挙に報酬等がジャンプするわけでもありません。代表取締役となっても同じですね。ただ、代表取締役社長等は、責任が一挙に重くなりますので、少しはジャンプする場合もあると思いますが。

-          従業員と取締役との間の報酬等について、極端に差を設ければ、殆ど能力的に変わらないが、上司と運に恵まれずに閑職管理職で止まっている多くの同僚・同期からの恨み・嫉妬等に晒されます。そうかと言って、やはり役員になれば、従業員より多くの報酬等を貰います。従って社内でおおっぴらに開示されると、やはり気まずい思いもします。出来るだけ隠す傾向にあります。

  会社法361条①には取締役の報酬等について定めています。即ち、報酬、賞与その他の職務執行の対価として株式会社から受ける財産上の利益(=報酬等)についての次に掲げる事項は、定款に当該事項を定めていないときは、株主総会の決議によって定めることになっています。

 1 報酬等のうち額が確定しているものについては、その額

 2 報酬等のうち額が確定していないものについては、その具体的な算定方法

 3 報酬等のうち金銭でないものについては、その具体的な内容

  しかし、実態としては、多くの企業で取締役・監査役全員の、支給限度額のみを総会決議で承認取得し、個人別支給内容は、取締役会更に代表取締役に委任の上、内規に従って等と言って秘密にしています。条文の趣旨は、個人別の支給額、具体的な算定方法、その他具体的内容を定めるとしているのに、限度額・総枠だけの決め方でも有効と最高裁の企業よりの判例があるためですね。また、これを踏まえて会社法施行規則121IVイ(社外役員は124VIイ)で、事業報告での内容でも、総額表示を容認しているからですね。

  取締役についてはお手盛り防止の報酬額規制(*)として(監査役については取締役からの影響排除の独立性確保のため)、定款に記載又は総会決議ですが、定款に記載する例は殆どありませんので総会決議で承認ですが、最近徐々に多少の改善は見られるものの、個人別明細を秘匿する悪習が改善されていませんね。

* お手盛り防止というよりも、総会で選任されるので選任の条件として総会が決定すると考えるべき(神田 会社法7P189)という見解もありますが、実質は、現経営陣の首脳が後継・新任役員を指名している実態もあり、また、仮にそのように考えるなら、同時に各取締役候補者毎に報酬額を決めるべきですが、これまた実態を反映していませんね。

     一方、委員会設置会社の場合は、総会決議は不要ですね。404③で 報酬委員会は、執行役等(執行役&取締役)の個人別の報酬等の内容を決定するとしています従い、自分達の報酬等は自分で決める訳ですね。お手盛りですね。委員会は過半数の委員が社外取締役なのでお手盛りの危険が軽減される等と言っている人がいますが、大嘘ですね。米国のレーマンブラザーズの会長は数年で400億円、ゴールドマンサックスの会長は500億円の報酬を得ていました。これも報酬委員会が承認しているんでしょ。

-  今のところ、日本で高額ということで問題視されていないのは、上記の通り企業文化・慣行的理由によるものだと思います。社外取締役も、他社の役員が多いですからね。社長に、自分の10倍の報酬あげるよとは言えないですよね。日本では、金持ちへの嫉妬が根深い社会ですからね。

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種類株主の拒否権と総会決議

2009-02-16 00:24:55 | 商事法務

     種類株式、例えば配当優先株等は、一般的に特定少数の者に付与されますね。1人のときも多いですね。議決権の無い優先株式の場合もありますが、内容(議決権や配当)は普通株と同じ、但し残余財産分配権を普通株式よりも優先するというだけで(継続企業の前提のある企業ですので)実質普通株と変わらないものまであります。普通株に、取得請求権をつけて、財源規制のかからない一般株主と同様の普通株への転換条項をつけるときもありますね。いろんなバリエーションの種類株が出てきました。

     一方、会社法では、108IIX拒否権付種類株式を発行できるようになりました。即ち、「株主総会(取締役会設置会社にあっては株主総会又は取締役会、--)において決議すべき事項のうち、当該決議のほか、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議があることを必要とするもの」という規定で発行できるようになりましたね。しかし、わざわざ「拒否権付種類株式」などと言って発行しなくても、定款の規定の仕方にもよりますが、かなりの総会決議事項で、同様の効果即ち拒否権を持つ種類株主が作れると思いますので、今回は、「拒否権付種類株式では無い拒否権のある種類株式」について考えて見ましょう。

  種類株主総会の規定は321以下ですね。322(ある種類の種類株主に損害を及ぼすおそれがある場合の種類株主総会)の柱書では以下の様に規定しています。「種類株式発行会社が次に掲げる行為をする場合において、ある種類の株式の種類株主に損害を及ぼすおそれがあるときは、当該行為は、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議がなければ、その効力を生じない。」続いて13号に亘って「次に掲げる行為」の記載があります。募集新株・新株予約権、株式併合・分割、合併、会社分割、株式交換・移転等が該当行為とされています。(株式分割がなぜ記載されているのかよくわかりませんが)

     種類株主は、通常特定少数に発行されます。もし1人だけに発行されれば、その株主がこの種類株主総会で承認を拒否すれば、拒否権をもつことになりますね。損害を及ぼすおそれという限定が付いていますが、解釈にもよりますが、広く解釈すれば損害を及ぼすおそれの無い場合というのはかなり限定される、即ち殆どのケース種類株主総会で承認を取らないといけませんが、種類株主が1人の場合は、その株主が拒否権を持つことになります。仮に、甲種種類株式を1株10万円でA社が保有し、普通株は100万株x10万円で多くの株主に発行していてもですね。

  例えば、創業社長が甲種種類株式1株を保有し、ベンチャーキャピタルその他には多くの普通株式を募集すれば、お金は少しで、会社をかなりコントロールできるということですね。私も会社を作るときは、こういった種類株を持ちたいですね。もっとも私の場合は出資してくれる奇特な人がいるかわかりませんが?

  上記と関連し、種類株主の総会決議が必要だという規定は、合併、株式交換・移転等の規定のところにもあります。「損害を及ぼすおそれ」という限定はありませんが。吸収合併・株式交換の総会決議の規定は783③ですね。「吸収合併消滅株式会社又は株式交換完全子会社が種類株式発行会社である場合において、合併対価等の全部又は一部が譲渡制限株式等(譲渡制限株式その他これに準ずるものとして法務省令で定めるものをいう。)であるときは、吸収合併又は株式交換は、当該譲渡制限株式等の割当てを受ける種類の株式(譲渡制限株式を除く。)の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議がなければ、その効力を生じない。」(一部省略)

 ここで言う法務省令は、規則186ですね。合併(存続会社、新設会社)・完全親会社の取得条項付株式又は取得条項付新株予約権(いずれも譲渡制限株式に限定)としています。

   なぜ、譲渡制限の無い株式ではいけないのか、私にはよくわかりません。また、「当該譲渡制限株式等の割当てを受ける種類の株式(譲渡制限株式を除く。)」の規定の仕方もよくわかりません。「譲渡制限株式等(譲渡制限株式を除く)」というような書きぶりは他の条文にもありますが、「なんでこんな変な書き方すんね!」という感じですね。

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株式移転による少数株主排除

2009-02-08 21:47:24 | 商事法務

     少数株主整理・排除の方法については、先のブログで書きました。

http://blog.goo.ne.jp/masaru320/d/20080628

先のブログ↑では、主なものとして、①全部取得条項付種類株式を利用する方法、②現金合併方式、③吸収分割方式、④株式併合方式、及び⑤単元株制度の導入を取り上げていますが、今回は株式移転を利用した方法について考えて見ましょう。

少数株主を、整理・排除する方法は、一般的に特別決議の承認が必要ですので、議決権の2/3以上を保有した(横暴な?)株主(株主グループ)しか出来ませんね。少数株主権等持っていても歯が立ちません。資本多数決の論理は、やはり金の力がものをいう世界です。

     では、株式移転を活用した少数株主排除の方法とはどのようにすればよいのでしょうか。

利用する会社法の規定は以下ですね。

1)  234(一に満たない端数の処理)IIX号により、株式移転をする株式会社の株主は、1株未満のときは、一括売却により得た金銭の交付で、株主(社員)権を失います。

2)  773条①V&VIでは、総会承認を取る株式移転計画書では、以下を規定するように定めています。

V   株式移転設立完全親会社が株式移転に際して株式移転完全子会社の株主に対して交付するその株式に代わる当該株式移転設立完全親会社の株式の数又はその数の算定方法並びに当該株式移転設立完全親会社の資本金及び準備金の額に関する事項

VI  株式移転完全子会社の株主に対する前号の株式の割当てに関する事項

3)  一方、会社法は、1株の出資単位の規制がありません。(出資単位の廃止は、旧商法でH13年6月になされていますが)

     一番単純・極端な例をあげましょう。

       A社の純資産5億円 発行済普通株 1万株、1株の価値 5万円/

       株主X= 2/3以上で6,667(66.67%)保有、株主Y3,333(33.33%)保有

       株主Xが、A社取締役に株式移転計画を作成させ、新設の完全親会社(B)の株式の出資単位を1株=25000万円としたらどうなるでしょうか。

       A社株式5,000株がB社株式1株になりますね。この場合、一株未満の端数合計(株主X保有分=1,667  株主Y保有分=3,333株、合計旧株5,000株=)即ちB社株1株を、競売等では売れませんので、裁判所の許可を得て株主Xが購入するわけですね。株主Xは、この株式購入代金25000万円のうち16665万円を株主Yに払えば、自分は完全親会社の全株式=2株の株主になれます。即ち株主Xが会社なら、B社その100%子会社となります。その後はXBAとも100%子会社・孫会社ですから、煮ても焼いても好きなように。即ち、BA社を無増資の吸収合併することも出来ますし、出資単位を切り下げるため株式分割も出来ます。自由ですね?あくどいやり方ですね!

           もし上のケースの場合、B社の出資単位をA社株6,000株相当としたらどうなるのでしょう?1株だけになりますね。残りは0.67(=4000/6000)株となります。端株制度がなくなりました。234条では、「端数の合計数(その合計数に一に満たない端数がある場合にあっては、これを切り捨てるものとする。)に相当する数の株式を競売し」と記載していますが、端数の合計数が1株に達しません。ということは括弧書が適用されます。「これを切り捨てるものとする」と規定しています。

○ これを切り捨てたら、株主Yは激怒でしょうね!!訴訟に発展しますね。831①(株主総会等の決議の取消しの訴え)により、著しく不公正ということで、争えば決議が取り消されるでしょう。上記の例は極端なケースです。しかし、2%とか3%の株主を切り捨てるために交換比率を調整すればどうでしょうか?また、そういった少数株主も、金と時間と労力をかけて訴えで争うでしょうか。結局、はした金をもらって泣き寝入りではないでしょうか?

まあ、今の会社法はこういう悪い使い方も出来るわけですね。

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基準日の規定は欠陥規定

2009-02-01 01:07:41 | 商事法務

  また会社法の規定への「けち」です。全く私は、けちな男です。「けちからん」ですね。(救いようの無い駄洒落?)。会社法124条には、基準日の規定があります。この規定は、学者のなかでもいろいろ批判の多い規定ですね。

     まず1項です。「株式会社は、基準日を定めて、基準日において株主名簿に記載され、又は記録されている株主をその権利を行使することができる者と定めることができる。」と規定しています。「定めなければならない」とは規定していません。「できる」ということは、してもしなくてもよいということです。

→これは、公開会社でない会社・合弁等、株主が少数で特定されており変動のないような会社としては、公告などする意味もありませんのでしなくてもよいという意味にも解釈できますね。

2項も、「基準日を定める場合には、株式会社は、基準日株主が行使することができる権利(基準日から3箇月以内に行使するものに限る。)の内容を定めなければならない。」としています。

定める場合とありますので、定めない場合もあるということですね。定めない場合はどうすれば良いのでしょうか??

     3項は以下ですね。「株式会社は、基準日を定めたときは、当該基準日の2週間前までに、当該基準日及び前項の規定により定めた事項を公告しなければならない。ただし、定款に当該基準日及び当該事項について定めがあるときは、この限りでない。」定時総会の議決権、期末配当・中間配当の基準日は定款に記載しますが、臨時総会等の基準日は定款に規定しませんね。従って、臨時総会を開催するときは、「基準日を定めたときは、基準日及び2項により定めた事項(議決権等の行使可能権利)を公告しなければならない。

→ よくわかりませんね。基準日を定めなければ公告はしなくていいんですかね。3ヶ月以内に行使するものに限るという条件があります。例えば、定款には3月末を基準日として6月の定時総会の議決権を行使すると定めていた場合、11月に臨時総会を開催するときはどうするのでしょうか。基準日を定めない場合は、本来なら総会の日の株主が議決権を持つのでしょうが、実際は招集通知の日の名簿上の株主になるのでしょうか?

     これに関連して、旧商法228-2条には、株券不発行会社について「公告ニ代ヘテ其ノ公告スベキ事項ヲ株主、端株主、株主名簿ニ記載又ハ記録アル質権者及新株ノ引受権又ハ新株予約権ヲ有スル者ニ通知スルコトヲ得 」と規定していました。これまた欠陥規定でしたね。株券不発行会社というのはおかしいですね。規定するなら、全株主を把握している筈の全株式譲渡制限(公開会社でない会社)とすべきだったですね。「公告に代えて通知でも良いです」ということですから、少しはましだったかもしれません。でも株券不発行会社は非常に少なかったから、この規定の恩恵はあまりなかったでしょうね。

・ 今の会社法でも、「公告←→通知」どちらでもよいとしている規定はいろいろあります。一例を挙げれば、804条とか806条にあります。

804④では、「消滅株式会社等は、株主総会の決議の日から2週間以内に、その登録株式質権者及び808③各号に定める新株予約権の登録新株予約権質権者に対し、新設合併等をする旨を通知しなければならない。」としており、⑤では「前項の規定による通知は、公告をもってこれに代えることができる。」としています。

   なぜ、公告又は通知にしなかったのでしょうか?法案書いているうちに忘れた??

     4項はもう最悪の規定です。「基準日株主が行使することができる権利が株主総会又は種類株主総会における議決権である場合には、株式会社は、当該基準日後に株式を取得した者の全部又は一部を当該権利を行使することができる者と定めることができる。ただし、当該株式の基準日株主の権利を害することができない。」としています。1)基準日後の株式取得者に権利行使を認めることと、2) 新株主の全部又は一部に認めたことですね。

・ 1)については、基準日の制度をないがしろにします。2)については株主平等の無視です。株主不平等扱いの規定です。一部の会社シンパの株主だけに恣意的に認めることも出来ます。経済界の一部の都合のよい会社法を求める人達の意見を取り入れたもののようです。困ったものですね。

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