まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

株式会社の所有・支配・経営について

2007-07-25 00:33:33 | 企業一般

     GoogleIPOするときに、創業者による「株主への手紙」に以下のような記載があります。ご存じの通り、複数議決権で有名ですね。クラスA普通株は1株1議決権ですが、クラスB普通株は1株10議決権で創業者等が持っていますね。

Google is not a conventional company.から始まって、長期的視野に立った経営の独立性・安定性の為に、we have set up a corporate structure that will make it harder for outside parties to take over or influence Google.’とし、さらに続けて ’The main effect of this structure is likely to leave our team, especially Sergey and me, with increasingly significant control over the company's decisions and fate, as Google shares change hands. After the IPO, Sergey, Eric and I will control 37.6% of the voting power of Google, and the executive management team and directors as a group will control 61.4% of the voting power. New investors will fully share in Google's long term economic future but will have little ability to influence its strategic decisions through their voting rights.’

全文はこちら↓

http://investor.google.com/ipo_letter.html

所有は少しでも、議決権を通じて支配と経営は自分達で行う。ハッキリしていますね。「株主は、うるさいこと言わないでね。会社の決定と運命に対する支配は、自分達が保持します」ということですね。会社は(所有権を持つ)株主のものという考えの米国ではユニークな考えですね。

○ 株式会社の所有(Ownership)と支配(Control)については、Berle & Meansの有名な業績がありますね。即ち「支配無き富の所有及び所有無き富の支配が株式会社発展の論理的帰結として出現する」、そして所有無き富の支配即ち経営者支配が実現しつつあるとしています。尚、支配とは、取締役の選任・解任権の保持を言うとしています。

  米国は日本と異なり個人株主が多いですね。最近は勿論年金基金やMutual fund等の機関投資家が増えていると思いますが。どれぐらいでしょうか、個人50%、機関投資家がメインの法人が50%ぐらいでしょうか。

・ 日本の場合は、個人はどれだけでしょう? 25%ぐらいでしょうか。それ以外は外人投資家(Fund, LLC, 租税回避地法人等)、金融機関・事業法人ですね。3/4が、まあ法人所有と言っていいと思います。ですから上の米国のケースと少し違います。法人支配ですね。しかし、外人投資家を除けば、一般的にお互い様ですから他社の経営に口出しはしません。従い、結局経営者支配が行われる訳ですね。

  

○ 株式会社の所有という意味がよくわかりません。所有(保有)とは、民法的に考えれば、使用・収益・処分が自由に出来るという意味ですね。しかし株式は使用(質権としての利用はある)が出来ません。購入・売却(処分)は出来ますが。収益機能を発揮する権原は所有者にはありません。経営者にお任せです。少数株主権等を行使しても会社は動きません。自分で企業価値を上げる事も出来ません。まあ、神社に行って「株価上がれ」と神頼みするぐらいでしょうか。民法的な所有の概念では説明できません。どのように考えればいいのでしょう。

     大株主で安定株主もいますが、少し保有の個人株主やデイトレーダーも多くいます。デイトレーダーにとっては、事業経営には当然興味はありません、株式を儲けのツールとして利用する瞬間的所有者ですね。デイトレーダーにとっては、株式は馬券みたいなもの、あるいはルーレットみたいなものかもしれません。馬券もルーレットも、馬主・ルーレット会社の所有者になれる訳でもありません。「所有者」だと言われても、すっきりしませんね。

○ 所有に基づく株主としての支配も通常の支配の意味ではありませんね。大株主は別として、年一回の株主総会で議決権を行使するだけです。Yes or Noの選択式ですね。しかも、総会決議事項は、取締役会設置会社では、法令・定款に規定したことだけですね(295)。総会で発言しても、経営者に慇懃無礼に振る舞われて、それで終わりが多いのではないでしょうか。議案に反対しても、現状では大半が賛成で可決されます。つまり一部の大株主を除けば株主による支配はないですね。結局経営者が議案を取締役会承認を経て総会に提出し、それがそのまま通る。また会社の業務執行は当然取締役会・取締役に任されています。即ち、所有もしていないし議決権も持っていないけれども、経営者が支配しているということになりますね。

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会社の類型

2007-07-22 21:16:57 | 企業一般

       一体今度の会社法でどれだけの会社の類型があるのかわかりません。ということで、神田先生の基本書を出してきて見てみました。全部で20ありました。その上、全ての株式会社で、会計参与の設置は任意で可能と書いてあります。

       私は、順列・組み合わせは不得意なんですよね。よくこれだけ多い類型を考えましたね。というか、会社法の考え方が分かれば、自然と類型がわかるようにして欲しいですね今のままでは、以下のルールを覚えないといけません。今度の会社法は覚える事が多いですね。こういう会社法は良くないですね。

・ 会社の類型については、326328条に規定があります。

       全ての株式会社は、株主総会と取締役が必要。

       公開会社(=全部株式譲渡制限会社以外の会社)は取締役会が必要。

       取締役会を置いた場合は、監査役・監査役会or三委員会・執行役が必要。但し、例外として大会社以外の全部株式譲渡制限会社で会計参与を除く。

       監査役・監査役会と三委員会・執行役はどちらか選択制。

       三委員会・執行役を置く会社=委員会設置会社以外の大会社で公開会社は監査役会が必要。

       取締役会を置かない場合は、監査役会、三委員会・執行役を置くことはできない。

       大会社では、会計監査人が必要。

       会計監査人を置くためには、監査役・監査役会or三委員会・執行役のいずれかが必要。

       全ての株式会社で、会計参与の設置は任意に可能。

もう、ほんとわかんないですよね。

       大会社&非大会社の2分類にしましたね。商法では、商法特例法で、3分類でしたね。

  大会社は、資本金5億円以上or負債総額200億円以上、小会社は、資本金1億円以下かつ負債総額200億円未満でした。それ以外がいわゆる中会社でしたね。

・ 会社法は有限会社も取り込みました。機関としては、社員総会+取締役+任意で監査役でした。

       会社法を無視して、分かりやすい分類は以下ぐらいでしょうか。

  尚●は、改正前の商法が要求していた類型ですね。

                       

◎ 非公開会社 小会社 ①  取締役              

            ②  取締役+監査役

            ③ ● 取締役会+監査役

        中会社 ① ● 取締役会+監査役

②   取締役会+監査役会

大会社 ①  取締役会+監査役+会計監査人

                           ● 取締役会+監査役会+会計監査人

                           ● 取締役会+三委員会+会計監査人

◎ 公開会社  小会社 ① ● 取締役会+監査役

        中会社 ① ● 取締役会+監査役

                     取締役会+監査役会

                     取締役会+監査役+会計監査人

                     取締役会+監査役会+会計監査人

大会社 ① ● 取締役会+監査役会+会計監査人

② ● 取締役会+三委員会+会計監査人

・非大会社については、会計参与を任意で設置できる。大会社は、会計参与は設置できない。

○ 上記ぐらいだと分かりやすいですよね。大会社・中会社・小会社と会社の大きさによる区別を旧商法時代の3分割に戻したにも拘わらず20が15に減りました。大会社・非大会社の2分割の場合に直すと7つ(20→13)減っています。従来の有限会社は非公開会社の小会社ですね。これだと、順列・組み合わせを考えなくとも、考え方か導き出せるのではないでしょうか。

会計参与は、まあ公認会計士協会と税理士連合会の政治の産物で、どちらも適格者となってますが、非大会社のみ任意設置にしておけば、文句もないのではないでしょうか。

       では、どの類型の会社が消えましたか? このクイズは難問ですね。会社法の先生でもすぐにすらすら言えないんじゃないでしょうか?ご参考までに、消した会社類型は以下です。

       非公開会社 非大会社 ① 取締役+監査役+会計監査人

       取締役会+会計参与

       取締役会+監査役+会計監査人

       取締役会+監査役会+会計監査人

       取締役会+三委員会+会計監査人

大会社 ① 取締役+監査役+会計監査人

○ 公開会社  非大会社 ① 取締役会+三委員会+会計監査人

大会社  無し

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会社法―無秩序な出資単位

2007-07-19 22:55:54 | 商事法務

○ 株式会社の資本金として1円でも会社を設立出来るようになりました。馬鹿げています。現実的にはあり得ないですね。最低資本金制度廃止については、別途また何か書きたいと思います。今回は、出資単位の話です。

○ 資本金1円、発行株式1株、払込価額1円というのも有りになりました。今は、出資単位が自由になりました。即ち、1株1円で10億株発行で10億円というのも出来ますし、逆に1株10億円で1株発行で10億円というのも有りになりました。私は自由だとは思いません。無秩序でめちゃくちゃ&混乱のもとだと思います。会社法で道路を造って上げた、右でも左でも好きなように走れと言う感じです。道路は、ルールを作らないと走れません。

・ 直接関係有りませんが、200512月に起きたみずほ証券の誤発注事件を思い出します。ジェイコム株の売り注文を受託し、担当者がコンピューターに注文を入力する際に、「1株61万円で1株を売る」とすべきところを、誤って「1株1円で61万株を売る」とする注文を出しました。みずほ証券の損害は404億円だそうです。

○ 平成13年の商法改正で、額面株式制度そのものを廃止し、1株当たり純資産額5万円以上という制約を廃止しました。現在の会社法は、これを承継しています。また株式分割も取締役会決議だけで決められるようになりました。

・ 現在は制度が改革されましたが、ライブドアが株式の100分割を行い、株券不足に乗じて株価を高騰させぼろ儲けしました。こういった不正が行われた原因の一つは会社法改正です。法務省や法制審議会などは当然「私は関係有りません」という態度ではないでしょうか。おかしいですね。きちっとルール・秩序を作らないと悪用する人がいるのです。

・ 額面株式制度の廃止も世界的にも珍しいですね。最も英米の額面株式制度も形骸化していますけれどもね。例えば額面$1の株式を発行価額$100にて発行し、$99を資本剰余金にするなどですね。$1とするのは、これに対して一種の資本登録税が課されるため、この税金逃れをするためですね。

○ 株式に関するルールというのは現在以下の2つぐらいでしょうか。

① 日本では、資本準備金には規制があります。資本金・準備金の額について445条に規定されています。払込又は給付額の1/2を超えない額は、資本金として計上しないことができる。これは資本準備金として計上しなければならないとしています。

② 株式の出資単位を小さくすれば、広範な人が投資に参加できるし流通市場も形成しやすい。しかし小さいと事務処理コストがかかり手間で費用も増えるという変な理屈でで単元株制度を設けています。単元株制度では、上限があります。1182項→施行規則34条で最大限1000株としています。全く変な理屈です。単元未満株は普通は流通しませんし購入(投資に参加)出来ません。上記の理屈の前半は誤りですね。議決権もありませんし、その他の権利(共益権)についても定款で規定すれば一定範囲内で制限できます。まあ、昔の単位株制度とその時の端株制度廃止という技術的な要素もあって単元株制度ができたという事情もあるでしょうけどね。

       出資単位についてはやはり多少のルールが必要ではないでしょうか。例えば、以下などですね。

     会社設立時の1株当たりの払込額は、1株につき10万円を下ることを得ず。

     株式分割について、例えば公開会社については、1:4以上の分割は不可にする。即ち、発行可能株式数以内にする。それ以上分割する場合は、株主総会の特別決議で、定款変更=発行可能株式数を増やしてから行う。

     1株あたりの払込額は、1株純資産の価額を下回ることを得ず。

今の放任出資単位の制度は、やはり無秩序すぎると思います。

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Drucker ? 買収成功のSix Rules

2007-07-17 00:13:04 | M&A

前回のテーマの続きです。たまたまDruckerを読んでいたら、買収成功のSix Rulesが載っていました。日本でも米国でも当てはまると思います。彼の1981年の著作です。すごいですね。そんな昔に書いているとは。今も全くその通りですね。私の下手な日本語訳よりも原文の方が良いと思いますのでご紹介します。尚、Druckerの「実践する経営者」(ダイヤモンド社)の第9章に「企業買収を成功させる5つの原則」―成功する買収と失敗する買収 と書いてあります。どういう訳か第1の原則が書いていません。一つ減っています。何故だか知りません。

1. The successful acquisition must be based on business strategy, not financial strategy.

2. The successful acquisition must be based on what the acquirer contributes to the acquisition.

3. The two entities must share a common core of unity, such as markets and marketing, or technology, or core competencies.

4. The acquirer must respect the business, products, and customers of the acquired company, as well as its values.

5. The acquirer must be prepared to provide top management to the acquired business within a fairly short period, a year at most.

6. The successful acquisition must rapidly create visible opportunities for advancement for both the people in the acquiring business and people in the acquired business.

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M&A・リストラ成功の秘訣

2007-07-15 10:50:20 | 企業一般

       企業を買収して、買収された企業が活性化し、赤字会社が黒字会社に蘇ったとか、リストラが成功し企業業績がV字回復した事例がいくつもあります。リストラとか言いますと早期退職とは暗いイメージもありますが、本来は事業の構造を変えることですね。

○ では、成功の秘訣はどういったものでしょうか。KFS=Key Factor for Successは何かですね。私は以下を実行したリーダシップがあり率先垂範する経営者が登場した場合に成功していると思っています。勿論改革には負の側面(自分の部門がなくなったりして不遇な残りの会社人生を送らざるを得ない人がでたり、退職したりするケースも多い)も多々ありますので、そこは表の大義名分と、裏の個別の出来るだけ暖かい配慮も必要だと思いますけれども。

① 企業文化・風土の改革(伝統の一部否定)あるいは進化

  目標の設定

  選択と集中(人・物(資産)・金・技術)

  従業員の潜在力の発揮

       いくつか具体例に見てみましょう。

【松下の中村改革】

     経営の神様・幸之助氏が築かれた伝統・風土・考え方がありました。創業者の呪縛ですね。これを一部否定して進化させたのが成功の秘訣ではなかったかと思います。具体的には以下ぐらいですね。①組織構造改革。幸之助氏の築かれた事業部制を否定しました。②国内流通改革。高度成長期に威力を発揮した既存の流通店舗(町のパパママ電気屋さん)が、大きな足枷になっていましたので、これへの対応明確化、即ちやる気のあるショップ店のみ支援でハッキリメリハリをつけました。③マーケットドリブンの製品開発・製造・販売体制の確立。テレビの世界同時販売なども行うようになりました。④雇用・賃金制度改革。今まで人員削減はタブーでしたが、早期退職を実施しました。年功序列も大きく変更したと思います。⑤グループ企業の再編。いま、最後の日本ビクターの売却を行っています。

【エルピーダの坂本社長】

     日立・NECDRAM事業部門の統合によりメモリーメーカですね。業績不振の同社を、02年11月に就任した坂本社長が立て直しました。今までの企業風土を否定して新しい風土を築きました。今世界一のDRAMメーカを目指しています。従業員のやる気も10倍?アップ。目標もハッキリしています。

     NHKのプロフェッショナル 仕事の流儀↓で紹介されましたね。

http://www.nhk.or.jp/professional/backnumber/070508/index.html

【日産ゴーン改革】

     これについてはいろいろ本が出ていますね。風土を変えた、目標を作ってコミットさせた、元々従業員は優秀ですから、その潜在力をうまく引き出したと言えると思います。但し、納入メーカ、下請け等が疲弊していないか、辞めた人はどうしているのか、そういった痛みも感じないといけませんね。

【日本電産の永守社長】

     赤字の企業を1-2年で黒字化しています。少しカリスマ的になってきましたね。買収の流儀ですが、大体以下のようですね。買収した会社の会長になる。送り込むのは役員1人だけ。足繁く通う。個人筆頭株主になってリスクを負う。経営指導する。指導料は無償。

     「騙されたと思って一年は働いてくれ」と言って引っ張る。人員削減はしない。

     「顧客訪問は3倍」「仕入れコストは2割減」「開発スピードは2倍アップ」「会議は休日」

     6Sの実行=整理・整頓・清掃・清潔・作法・しつけの実行

これじゃ、企業風土も一発で変わりますよね。

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委員会設置会社は機能しているか

2007-07-11 00:24:42 | 企業一般

     取締役会や監査役会が形骸化・機能不全を起こし、また企業不祥事が相次いだ為、米国型のガバナンス機構を導入すべきと言う意見に押されて生まれた制度ですね。

     委員会設置会社では、米国の様に業務執行と監査・監督の役割を明確に分離して、取締役会を監督機関として位置づけ健全な経営を確保しようとするものです。業務執行は執行役に行わせて、取締役会では基本事項の決定と、各委員会の委員の選定・解職、執行役(&代表執行役)の選任(選定)・解任(解職)、及びこれらの者の監督等を行いますね。

     会社法では、指名・監査・報酬委員会(212)を置かなければなりません。各委員会は、3名以上の委員(=取締役)からなり、過半数は社外取締役でないといけません。尚、取締役は原則として業務の執行が出来ませんね(勿論執行役と兼任のときは執行役の地位に基づいて出来ますが)また、監査委員会がありますので監査役(会)はありません(監査委員会の監査は妥当性監査にも及ぶ)。

     取締役会は、経営の基本方針等4161項記載の5つの事項は必ず取締役会で決定し、また、総会招集・総会議案の決定等4164項記載20項目の業務執行の決定は、執行役に委任できませんね。(変な規定の仕方ですね)

     取締役会設置会社の取締役会は、①業務執行の決定、②取締役の職務の執行の監督を行うと規定されていますね(362-2)。業務執行は、代表取締役&選定業務執行取締役(業務担当取締役)が行います。また、監査は監査役(会)が行いますね(違法性監査+著しく不当な場合の妥当性監査)。

【疑問点】

       日本の委員会設置会社では、一部の例外を除いて、取締役と執行役の兼任が多すぎる。業務執行と監査・監督の明確な分離の為に設けた趣旨はどこに行ったのか。まともに委員会が機能しているのでしょうか?

       なぜ、指名・監査・報酬の3委員会のみを規定したのか。米国では、いろんな委員会があり、各社の基本定款・付随定款で規定できる。

       どういう思想で委員会設置会社を日本に持ち込んだのですか?なぜ、形だけ持ち込んで、米国の猿まねをするのですか。経団連に言われたためですか。法制審議会・法務省の人も、なぜ基本原理・思想に戻り、日本の実情を分析・検討し、自分の頭でじっくり考え、日本の会社にあった制度作りに取り組まないのですか。

       日本の既存の取締役会制度(取締役会設置会社)でも、いろいろ工夫の余地があったはずですね。例えば、取締役会を、各社の実情に会わせて複数の委員会を設置するなどですね。経営戦略委員会、投資戦略委員会、人事・報酬委員会、内部統制委員会等を設けて内部統制委員会の過半数を社外取締役にするなど考えられますね。

[米国の委員会制度]

    模範事業会社法8.25には委員会についての規定があります。(a) Unless this Act, the articles of incorporation or the bylaws provide otherwise, a board of directors may create one or more committees and appoint one or more members of the board of directors to serve on any such committee.

     つまり慣行的にいろんな委員会が形成されたのですね。ただ、各社の最大公約数としては監査・指名・報酬委員会の3つとなったようですが、必ず他の委員会がありますね。財務委員会というのも多いですね。NY証取等の上場基準では、監査委員会の委員は全員社外取締役でないといけないとしていると思います。つまり、会社法には、日本と違ってあまり書いてないが、SEC、証券取引所、効率的なガバナンスの関係で、各社各様の委員会が出来上がったのだと思います。

     例えば、GM (General Motors Corp: SIC 3711)の、2007.4.27SECfilingしたForm PRER14A -- Preliminary Proxy Soliciting materials↓には、(本文11ページ等に)以下の委員会が書いています。

Audit, Directors and Corporate Governance, Executive Compensation, Investment Funds, Public Policy

http://www.sec.gov/Archives/edgar/data/40730/000089016307000282/s11-7040pf_prer14a.htm

     東芝(=委員会設置会社)の事業報告書を読みました。例えば、内部統制システム等の記載は随分きちんとしています(殆ど何も書いてない会社もある中で)。同社は、取締役(うち社外取締役)14(4)人、報酬額261百万円(56)、執行役 34人 1,135百万円 となっています。即ち、4人の社外取締役が委員会の委員です。(3人がかけもちです)

     社外取締役の個々の活動状況の箇所は、「外交官として、大学の組織運営者として、法律の専門家として、又は金融の専門家・経営者として」、その後4人とも同じ文言で「幅広い実績と識見に基づき、適宜必要な発言を行いました」と記載してあります。もう少し、具体的に書いて欲しいと言いますか、それとも書くことないのかもしれませんね。

指名委員会委員長は取締役会長の岡村さんです。そらそうですよね、誰を取締役・執行役にすれば良いのか社外取締役にわかる筈ないですよね。監査委員会委員長は東芝出身の取締役の人です。忙しい社外取締役が監査などしていられません。報酬委員会委員長は元外交官の社外取締役です。東芝はきちんとした企業ですから当然従来から内規が整っています。それに従えば良いわけですね。委員会設置会社の社外取締役って何してるんでしょうね。上記の文言からは、事務当局が準備した書類に目を通し、「うんうん」と言って、自動承認している社外取締役の姿が想像されます。

一部の委員会設置会社の委員会も形骸化しているのではないでしょうか。まあ、法律だけの責めにもできませんが、法律にも責任がありますね。

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株式・株主無しの株式会社が可能?

2007-07-09 00:44:32 | 商事法務

       非常識な表題です。そんな馬鹿なこと出来るはず無いでしょと言われますね。だいいち会社法の大前提の株主総会も開催出来ないじゃないかと言われます。しかし、今度の会社法では、会社法の大原則に抵触する可能性がある規定があります。この規定を突き詰めれば株式・株主無しの会社が出来る?かも?

○ 会社法107条第1項では、「株式会社は、その発行する全部の株式の内容として次に掲げる事項を定めることができる。」として各号に譲渡制限・取得請求権付・取得条項付株式について定めています。即ち、全部の株式を取得請求権付・取得条項付株式に出来ますね。

     同条2項では取得請求権付株式について、柱書では、定款で内容を定めなさいと規定して、2号では、取得請求できる旨・その期間、及び引換えに社債・新株予約権・新株予約権付社債を交付するときは、その内容(種類・数・金額・算定方法等)を定めなさいと規定しています。更に「株式等(株式、社債及び新株予約権をいう。)以外の財産を交付するときは、当該財産の内容及び数若しくは額又はこれらの算定方法」と規定しています。取得条項付株式についても、会社が取得できる旨とその事由・日、及び上記と同趣旨の内容を定めなさいと規定されています。

     旧商法では、転換株式として種類株式の一つとしていました(旧商法222-2条)。しかし会社法では、取得請求権・取得条項付株式を、全株式の内容として定め、かつ他に種類株式を発行していない会社は、213項及び108条(種類株式)にて、種類株式発行会社ではなくなりました。即ち、種類株主総会を開催しなくても良いと言うことですね。

       取得請求権付株式は、株主が請求すれば会社が買い取ることを発行のときから約束しますね。通常は、金銭を対価とするでしょう。しかし、別の種類の株式、他社株式、社債その他の財産を対価に出来ます。Exchangeable Bond(他社株転換社債)というのも出来ますね。 例えば、配当優先株を取得請求権付株式にして、取得の対価を普通株にするというのも多いかもしれません。普通株となり配当の負担軽減になるでしょう。

     取得の対価として、株式等以外の財産もOKとしています。何故、金銭、株式(他社株式を含む)及び社債等に限定しなかったのでしょうかね。例えば、資本充実の必要なJALが、配当優先株の取得条項付株式を発行して、取得の対価を優待航空券にすることも可能なわけですね。正月・ゴールデンウィーク・お盆を除いて有効という優待券もだせますね。どうせ飛行機はがらがらでも運航しないといけませんので、JALにとっては優待券を使われてもコストがそんなにアップする訳でもないですね。普通株への変換でもないですから、航空券として使われてしまえば配当負担も生じません。JALとしてはベストの資金調達かもしれませんね。でも、定款変更の特別決議が取れないでしょうね(私なら航空券でも良いですけどね)。それと、JALとしても配当ができる剰余金がなければ取得出来ないですね(剰余金の分配可能額があるときに限り取得可能=1705項。取得請求権付株式でも同様=1661項但し書)

     また、1111項では、「種類株式発行会社がある種類の株式の発行後に定款を変更して当該種類の株式の内容として1081項六号に掲げる事項(取得条項の追加)についての定款の定めを設け、又は当該事項についての定款の変更(当該事項についての定款の定めを廃止するものを除く。)をしようとするときは、当該種類の株式を有する株主全員の同意を得なければならない。」ということで、上場企業では事後的に取得条項を付けるのは現実的には不可能ですね。

○ ともあれ表題の株主・株主無しの株式会社は可能かという奇問に戻れば、株主が少数で、業績が超順調な企業(十分な剰余金の分配可能額がある)が、株式の全部を取得条項付株式として、取得の対価を全て社債か何かにして取得を実行してしまえば、理屈としては可能となります。株主・株式がゼロになります。でもこの場合総会も開催できなくなります。突き詰めて考えれば不思議な規定だと思いますね。

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会社経営―重要なステークホルダー

2007-07-05 00:13:35 | 企業一般

○ 会社は、人・物・金(+技術)によって成り立っていると言われます。しかし、私は、人を前提として、物・金・知恵(技術ノウハウも含む)によって成り立っていると考えています。即ち、会社の全ての基礎は人と考えます。では一番重要な人をどの様に考えれば良いのでしょう。企業を支える人は、3者に分割出来ると思います。あるいは重要なステークホルダーは3者と言っても良いと思います。それは①従業員、②取引先(顧客・仕入先。金融機関等)&③株主ですね。経営陣は、この3者を常にバランス・調和を計りながら、会社を経営する必要があります。昔は株主の比重は殆どなかったですが、最近は他と同様のレベルにまで上がって来ました。経営者は、この3者と常に協力しながら日常のビジネスとともに、中・長期的観点での戦略をもって、しっかりしたビジョンの下に会社を経営しなければなりませんね。

【株主】

        まず③の株主です。昔は、安定株主・持ち合い株主ということで、物言わぬ株主が多かったですね。お互いに株式を持ち合えば、干渉されたくないし干渉しない。お金も相互でお互い様ですからね。しかし、この構造が崩壊しました。それにかわり、この数年ぐらいの間に投資ファンドが台頭して来ました。残念ながら外資系ファンド・外国人株主が多いですね。早く日本の年金基金等をバックにした日本のファンドが勢力を持って欲しいと思います。外資系ファンドが儲けたお金が外国の年金基金の運用に貢献しているというのは如何かと思います。日本のファンドが日本の年金基金に貢献して、われわれの年金の手取りに貢献するのが良いですね。

      ファンドは、運用成績を高めないといけませんので、企業の経営に口を挟みます。ROEが一定率以下で3年続けば役員重任を認めないなどの基準が出来てきています。年金は長期的視点ですので、経営者の視点とも合致します。ただ、口は出しても企業価値の向上には役立ちません。しかし、経営がしっかりしておれば増資のときに応募してくれますし、高株価が維持できれば有利なエクイティファイナンスが出来ますから、きちんと対応しないといけませんね。普段からIR活動をして、機関投資家とも十分コミュニケーションを計らないといけない時代になりました。また、個人株主とも総会後の懇親会や株主通信などでコミュニケーションを計り、買収防衛策にもなる安定株主作りをしましょう。

・ かつては額面50円に対して何円配当等という尺度で配当をしていましたが、時代も変わりました。今はやはりきちんとそれなりの(=株主がある程度納得する)配当性向を公表(公表している会社も多くなりましたが)して、収益のうち応分の利益は、株主にしっかり配当しましょう。

【取引先】

        顧客が購入してくれる製品・役務を提供することが企業の業務です。これによって収益を得ます。顧客がお金を払ってくれないと企業は当然存続できません。自己満足の製品を開発してもお客が居なければ趣味の世界です。しかし、この製品・役務を提供するには自分だけで出来るわけでもありません。原材料やサービス提供の手段を提供してくれる納入業者がいないと事業が成り立ちません。また、納入業者から原材料等を購入しお客さんからお金が入金するまでの運転資金も必要ですし、あるいは設備投資をするには長期借入金も必要となります。これらお客さん・取引先がなければ企業としては存在しません。

・ 取引先とのビジネスを企業の数字という観点から見ると、お客様への売上高から仕入先等への支払いである売上原価を差し引いた金額、即ち(細かいことは省いて一種の)付加価値額が(今度の会社計算規則120条で表示が義務づけされることになった)売上総損益金額ということになりますね。企業としては、メーカと商社、業界によって大きく違いますが、売上総利益率の向上を常に計っていく事が重要ですね。

【従業員】

        企業は、従業員が働くから存続します。原材料に加工を施して製品にしたり、他社から商品の供給を受けてこれを他社に販売するにも従業員が働くから成り立っています。即ち、従業員は付加価値を生みます。役職員が、汗をかいて働くから企業価値が生まれます。投資家が株式を購入しても企業価値など上がりません。従い、収益力に見合った適正な配分を従業員は受ける権利もあるし、経営者としては従業員に応分の給与・賞与を支払わないといけません。儲けたお金を、(将来の投資予定や余裕も大切ですが)利益剰余金として単にため込むというのも如何かと思います。

・ 従業員が享受する報酬+これに法定福利費その他を含めて人件費となります。やはり企業としては、従業員に労働分配率を明示すべきだと思います。あるいは、これの変形としては業績連動賞与ということかもしれません。会社ががっぽり儲けたのに、従業員の賞与はそのままというのか如何でしょうかね?

      労働分配率(=人件費/付加価値額x100)が、例えば30%以下の企業は、経営体質が優良であるなどという議論があります。しかし、これは従業員の報酬を押さえ込んでいるという見方も出来ます。従業員のモラルアップを計るためにも、ハッキリ労働分配率を事前に明示する経営者も出てきて良いのではないでしょうか。

経営者は、配当性向・売上総利益率・労働分配率を念頭に置いて、出来れば目標を公表して経営して欲しいですね。

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M&Aは何故失敗が多いか

2007-07-01 20:28:06 | M&A

     M&Aが相変わらず増加しています。日本企業の関係するM&Aの件数については、M&A仲介会社の(株)レコフが統計をとっています。06(1-12)は、2775件だったとのことです。事業拡大、相乗効果のある分野への進出、生き残りの為の統合、グローバル化等いろいろ理由がありますが、相変わらず失敗が多いですね。

     松下電器は、9011月に米国のMCA社(映画部門はユニバーサルピクチャー)を61億ドル(7800億円)で買収しました。しかし954月に株式の80%をカナダの飲料メーカのシーグラム社に売却しました。失敗の原因は、自由な経営(テレビ会社へのM&Aの自由等)を求めるMCA経営陣と、松下とのコントロールとの間に軋轢があったとされています。責任者の、平田副社長は責任をとって平取に降格されたと記憶しています。その後保有分の20%は増資で希釈化し7.66%となり、06年に売却し提携を解消しました。

     NTTドコモは、98年から01年にかけて、海外の電話事業者に盛んに資本参加しました。総額19000億円ぐらいつかったでしょうか。どれぐらいのお金が消えたのでしょうか1兆数千億円ぐらいでしょうか。そのとき社長さんだった立川敬二さんは現在JAXA=宇宙航空研究開発機構の理事長です。これ程日本のお金を海外に捨てた経営者もいませんね。責任どうなっているのでしょうか?

     DaimlerChrysler ? 98年のビッグM&Aですね。世紀の統合と言われましたね。 今年ついに統合が破綻しました。クライスラーは投資ファンドのCerberusが買収します。投資ファンドが、メーカ経営できるのですかね。Hybrid車、環境、安全等莫大な、優秀な頭脳・お金がかかりますね。

       過去に行われたM&Aでは、6割が失敗、2-3割は泣かず飛ばず、1-2割は成功と言われています。まあ、何が失敗なのか、失敗の定義も難しいですけど。M&Aを数多くこなし、殆ど失敗の無い会社というか、企業価値をどんどん上げている企業があります。日本電産です。先日(4月)も、日立から日本サーボを買収しました。社長は有名な永守重信さんですね。りっぱな経営者だと思います。

○ では、M&Aの失敗の原因は、どんなところにあるのでしょうか?勿論、原因は一つでなくて通常は複合的な原因があります。

① M&Aの対象会社は、一般的に業績が良くない。―買収できる会社は一般的に業績が悪いですね。当たり前ですね。業績の良い会社は買収できません。そうかといって何でも悪いわけではありません。いくつかいい点があります。改善すればとか自分の事業と会わせれば回復すると考えるわけですね。業績が何故悪いのか、製品力か、経営者か、営業力か、どのように改善しようとするのか、改善できる可能性はあるのか、そういった点を買収詳細調査でよく調べましょう。

       役職員のモラルが低下している。―例えば、オーナが会社の利益を個人のポケット(個人の別資産管理会社)に入れている。従業員は、給料分だけ面従腹背で働いている。オーナを見ているので、他幹部とか支店長が、会社の金をねこばばしたり、かすめていたりします。買収企業から派遣の経営陣は、被買収企業の従業員にとっては、進駐軍です。どうせ買収者が食い物にするのでは、自分はどうなるのか等と考えている従業員のモラルアップは容易ではありません。

       相乗効果があると思ったが、なかった、あるいは発揮できなかった。―買収者は、自分の資源と組み合わせて相互補完・相乗効果を発揮しようとします。でも違う事業は手法・文化・発想が異なる場合もあります。また当初は相乗効果が確かにあると考えていたが発揮できない(松下電器のMCA買収等)ことも多いですね。

   

       送り込まれた経営陣に経営能力がなかった。―進駐軍にとり重要なことがあります。進駐軍は最少にすべきです。被買収会社の人・資源を尊重、悪いところを改善ということで、買収先企業の自己回復・成長能力を引き出すことです。買収先を経営する経営者は、実は大変なんです。ふんぞりかえって、親会社風を吹かせていたら、もう駄目ですね。

       企業文化が異なり、すれ違いばかり発生する。―会社が異なれば、行動様式も違います。考え方も違います。文化が違います。相性も大事ですね。違いを認めて共に成長するというのは現実には結構骨の折れることなんですね。

       親会社が、買収先の経営をコントロールしようとした。―親会社が、自分の流儀を押しつける事があります。グループ規則、権限も全部取り上げ親会社伺い。昔の中国の国有企業みたいにお上から言われたことしかやらなくなります。当然将来性は無くなります。

まあ他にもいろいろ原因はあると思いますが、思いついたことを書きました。

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