まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

米国の取締役会の委員会

2011-07-23 20:28:50 | 商事法務

○ 前回は中途半端な委員会設置会社制度について記載しました。日本は米国の制度のまねをし、指名・監査・報酬委員会を設置しています。では、米国の取締役会の委員会はどうなっているのでしょうか?<o:p></o:p>

 

 模範事業会社法の8.25条を見てみましょう。それによれば、取締役会は1つ以上の委員会を設置し、取締役の1名又はそれ以上の取締役を、その委員会の委員として選定することが出来るとしています。特に、指名・監査・報酬委員会を設置しなさいとは規定していません。また、日本の会社法では、400条で各委員会は委員(=取締役)3人以上で組織し、かつ各委員会の委員の過半数は、社外取締役でなければならないと定めています。即ち、米国では特にどういった委員会を設置しなさいという規定は無く、慣行的に種々の委員会が出来たのですね。各州の会社法で詳細が規定されているわけではありません。また、この慣行を踏まえ、New York証券取引所では、上場基準(上場会社マニュアルのセクション303A)として コーポレートガバナンスの一環として各種委員会・委員の人数・独立取締役等を定めています。<o:p></o:p>

 

○ 模範事業会社法§ 8.25. COMMITTEES

(a) Unless this Act, the articles of incorporation or the bylaws provide otherwise, a board of directors may create one or more committees and appoint one or more members of the board of directors to serve on any such committee.

(b) Unless this Act otherwise provides, the creation of a committee and appointment of members to it must be approved by the greater of (1) a majority of all the directors in office when the action is taken or (2) the number of directors required by the articles of incorporation or bylaws to take action under section 8.24. (C)は省略

(d) To the extent specified by the board of directors or in the articles of incorporation or bylaws, each committee may exercise the powers of the board of directors under section 8.01.

(e) 利益配当・付随定款変更・総会付議案件等の重要事項は、取締役会のみの権限であり委譲(delegate)出来ない旨の規定(詳細省略)<o:p></o:p>

 

 米国では、委員会の数には制限がないので、いくつも設置できます。大規模な会社では、執行委員会(executive committee)、財務委員会(finance committee)、監査委員会(audit committee)、指名委員会(nominating committee)、報酬委員会(compensation committee)等を設置しています。ただ、監査委員会の設置を強制している州もあるようです。委員会の委員は社外取締役(outside director。最近は独立取締役)でなければならないという規定もありません。しかし、米国の大規模な会社では、取締役の過半数は社外取締役ですので、業務の執行についての執行委員会は社内取締役(inside director)によって構成されても(というか社内取締役でないと業務執行できない)、一般的には、監査委員会、指名委員会、報酬委員会は、社外取締役で構成されるのが普通になっています。日本は、この3つの委員会を法律で規定し、過半数は社外取締役としたわけですね。<o:p></o:p>

 

 では、New York証券取引所の上場会社マュアル(303A)に定めるガバナンスでは、どのようになっているのでしょうか。それは以下の通りです。

1) 取締役会の過半数は独立取締役(同マニュアルに定める独立性の要件を満たす)でなければならない。

2) 監査委員会は、3名以上の独立取締役だけで構成されなければならない。

3) 独立取締役のみからなる、指名(推薦)委員会・コーポレートガバナンス委員会を設置すること。

4) 報酬委員会についても、独立取締役のみで構成すること。

5) その他、一般的には、ストックオプションによる役員報酬については、株主総会の承認を得ること。<o:p></o:p>

 

日本には日本の事情があるので会社法で修正していますね。ガバナンスをどうするかというのは、なかなか厄介な問題ですね。<o:p></o:p>

 

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中途半端な委員会設置会社の制度

2011-07-18 21:58:26 | 商事法務

 久しぶりに会社法「けち」シリーズです。ご承知の通り委員会設置会社の制度は、  米国型のコーポレートガバナンス制度の物まねですね。旧商法特例法で委員会等設置会社の制度ができて暫くたちますが、取締役が代表執行役や執行役を兼任しています。監査委員会のみならず指名・報酬委員会の委員は、過半数を社外取締役にしないといけませんが、この要件を満たせば取締役は兼任ができます。監査役設置会社の監査役と委員会設置会社の監査委員の違いを整理すると以下でしょうか。

1) 監査役設置会社の取締役は当然監査役との兼任は禁止されていますが、委員会設置会社では監査委員は取締役の中から人選される

2) 監査役の任期は4ですが、監査委員は取締役なので任期は1年

3) 監査役は法令・定款違法と著しく不当な事項の監査ですが、監査委員は妥当性についても監査できる(と解されている)。

4) 監査役は独任制の機関であるが、監査委員の権限は監査委員会が選定した者が行使する。

 上記通り、よくこれだけ矛盾する内容を同じ会社法に入れ込んだものですね。例えば、監査役の任期は、その地位の強化と安定化の為に4年にまで延長されましたね。一方監査委員は1年。要するに、委員会設置会社と監査役設置会社とは矛盾するというか、相反する方向が逆の考え方です。世界の大半の制度は、いずれか一方の制度なのに、日本では中途半端で2つの制度を設けてどっちつかずなのです。

即ち、①二元モデル=取締役会とは別に業務執行を監督する機関(監査役)を設けて、株主総会が監査役を選任するものと、②モニタリングモデル=社外取締役を中心として、執行機関の業務執行を監督するモデルですね。二元モデルの典型はドイツですね。監査役会が取締役の選任・解任権限を有します。

<o:p> </o:p>

 ○ 米国の制度の物まねと言いましたが、別に米国の各州の会社法で委員会設置が決められ  ている訳でもありません。会社法上は委員会を設置する事ができるとしています。むしろ会社法では無く、証券取引所の上場規則の影響だと思います。またSOX法では、監査委員会は独立取締役のみにより構成するとされていますので、そういった影響もありますね。米国では独立取締役です。日本では形式的な要件を満たせばよい社外取締役ですね。これも中途半端な考え方です。その会社の事業に精通している訳でもない、少し有名な弁護士、学者、官僚出身者等が多いですね。あるいは取引先の代表取締役を社外取締役にしている例もあります。忙しい人も多いです。まともに社外取締役の職務を遂行出来るとは思いませんね。有名人を持ってくれば良いというものではありません。形作って中身不明、どういう方向で進むのかも不明、十分な議論も無しに制度をまねたという感じです。現在会社法改正が再度議論されています。日本政府と同じような朝令暮改・迷走はやめて欲しいですね。

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日米の株主代表訴訟(Derivative Litigation)

2011-07-10 18:29:19 | 商事法務

  今回は日米の株主代表訴訟(Derivative Litigationについてです。取締役が会社に対して負う善管注意義務に違反(日本)・信任義務(fiduciary duty・米国)に違反することにより会社に対して責任を負う場合、会社が当該取締役に責任を追及する場合は、日本では監査役(監査役設置会社の場合)が会社を代表します(3861項)。しかし、役員仲間である日本ではこういった訴訟は実現性に乏しいですね。ということで、株主により責任を追及する機会が与えられています。日本でも米国でも、株主は、会社に対してまず提訴請求しなければならないとされていますが、そのとき会社を代表するのは、日本では株主総会により定められた者ですが、監査役設置会社の場合には監査役ですね(3862)。しかし、ご承知の通り米国では監査役はいません。ということで、どういう仕組みになっているのでしょうか。

【日本の場合】

原則として、株主(公開会社の場合は6ヶ月前から継続して株式を有する株主)は、まず会社(当該会社の監査役)に書面等をもって訴えの提起を請求(8471)し、60日待ってなお会社が訴えを提起しないときは、株主は自ら提起しうる(8473)としています。ただし、60日待っていると会社に回復できないような損害が生じる恐れがある場合(取締役が財産を隠匿したりしている)には直ちに訴えを提起できます。被告は、当然責任を追及される取締役又は取締役であった者ですね。ではいかなる責任について代表訴訟を提起しうるかについては、多数説は取締役の会社に対する責任一般であるとしています。また、この責任追及の訴えが提起されたときは、他の株主又は当該会社もその訴訟に参加することが出来ます(8491)

【米国の場合】

会社が訴訟を提起するか否かの決定は取締役会の権限ですね。その決定には経営判断原則(Business Judgment Rule)が摘要されます。しかし、取締役が信認義務を果たさず、経営判断原則を適用することが出来ない場合には、株主代表訴訟が認められます。

監査役がいない米国の会社の場合は、まず取締役会に会社自ら訴訟を提起するよう請求することが原則になっています。しかし制度の大枠は、米国も日本も同じですね。というか、日本が(例によって)まねをしたのでしょうか。

模範事業会社法では、Chapter 7 Shareholdersの権利として、7.40以下にDERIVATIVE PROCEEDINGSとして規定されています。

7.41 STANDING

A shareholder may not commence or maintain a derivative proceeding unless the shareholder: (1) was a shareholder of the corporation at the time of the act or omission complained of or became a shareholder through transfer by operation of law from one who was a shareholder at that time; and (2) fairly and adequately represents the interests of the corporation in enforcing the right of the corporation.

§ 7.42. DEMAND

No shareholder may commence a derivative proceeding until: (1) a written demand has been made upon the corporation to take suitable action; and (2) 90 days have expired from the date the demand was made unless the shareholder has earlier been notified that the demand has been rejected by the corporation or unless irreparable injury to the corporation would result by waiting for the expiration of the 90-day period.

上記は模範事業会社法ですが、デラウェア州会社法では、この事前請求が意味の無い場合(futile)は免除されるということになっているようです。

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米国での再販売価格維持行為の許容範囲

2011-07-03 16:27:50 | 商事法務

  米国独禁法と言いますと、厳しいということで有名ですが、緩和されている分野もあるようです。価格に関する協定は全て違法(per se illegal)とされていましたが、再販売価格維持行為(resale price maintenance=RPM)については、合理の原則(rule of reason)により判断され、競争制限的で無い場合は違法では無いという米国最高裁判決も出ていますので、今回はその話です。

  Sherman Act § 1. Trusts, etc., in restraint of trade illegal; penalty Every contract, combination in the form of trust or otherwise, or conspiracy, in restraint of trade or commerce among the several States, or with foreign nations, is declared to be illegal. Every person who shall make any contract or engage in any combination or conspiracy hereby declared to be illegal shall be deemed guilty of a felony(重罪), and, on conviction thereof (有罪として), shall be punished by fine not exceeding $100,000,000 if a corporation, or, if any other person, $1,000,000, or by imprisonment not exceeding 10 years, or by both said punishments, in the discretion of the court. http://www.law.cornell.edu/uscode/uscode15/usc_sec_15_00000001----000-.html

  米国独禁法では、一定の行為はそれ自体悪質であるため、実際に競争を制限しているか否かを認定するまでもなく当然に違法(per se illegal)とされています。価格協定はその典型であり、競争関係にある同業者と行う水平的取引制限(horizontal restraint)のみならず、流通の上下間で行う垂直的取引制限(Vertical restraint)、中でも価格制限(price restraint)は違法性が高いとされます。

  しかし、RPMでも一概に競争が制限されるものではなく、競争を促進する効果もある場合があると。即ち善玉RPMと悪玉RPMがあって、限定的ですが善玉RPMなら、競争促進的な性格も持っており、これは独禁法違反では無いのではないかと以前から主張されていましたが、これが最高裁判所によって認められた訳ですね(州の独禁法で認められるか別問題ですが)。まあ、ビジネスは単純に○×クイズで回答は出ないですから、現実的には善玉・悪玉の区別は難しい場合も多いと思いますが。

  まず、合理の原則とは何かですが、RPMは、製造業者が販売業者の販売価格をつり上げるために行われるというよりも、販売業者に適正なマージンを保証することにより当該商品の販売活動に注力せしめることを目的とするのが普通であって、他の製造業者との競争(interbrand competition)が促進されるという効果が期待できる。従い、行為の目的・種類・効果等を分析して不当に取引を制限する場合は違法であるが競争が促進される場合は合法とする「合理の原則(rule of reason)により判断されるべきであるというものです。

  Rule of reasonを認めたケースは以下ですね。Wikipediaによると以下の様に言っています。Leegin Creative Leather Products, Inc. v. PSKS, Inc., 551 U.S. 877 (2007), is a US antitrust case in which the United States Supreme Court reversed the 96-year-old doctrine that vertical price restraints were illegal per se under Section 1 of the Sherman Act, replacing the older doctrine with the rule of reason. このケースでは本件のMinimum Resale price maintenance即ち最低再販売価格維持行為は違法では無いとの判決です。

  では親子会社間でのではどのように考えれば良いでしょうか。特に100%子会社との間でSherman Act1条違反の共謀は成り立つでしょうか。これについては19846月に従来の判例を変更して、「親会社とその100%子会社は異なった経済的利益を追求する異なった経済単位とみるべきではなく、従ってSherman Act1条上はsingle integrated enterpriseと見るべきでありその間では共謀は成立しえない」という判決を最高裁が出しました。暇な方はこちら↓をご覧下さい。私も読んでいません。

U.S. Supreme Court Copperweld v. Independence Tube, 467 U.S. 752 (1984) http://supreme.justia.com/us/467/752/case.html

20110629

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