まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

会社法の社債の定義とユーロ円建社債等

2012-12-23 12:57:44 | 企業投資

 

 社債とは、「通常は、公衆に対する起債によって生じた会社に対する多数に分割された債権であって、それについて通常有価証券(社債券)が発行されるもの」と講学上言われています。通常ですから、これで良いんじゃ無いでしょうか。ところが法学者というのは、すぐに定義に拘りたがります。そして、定義に該当すれば会社法第四編の社債の規定を適用して、社債管理者の設置義務とか社債権者集会がどうだこうだと議論・解釈します。ということで、商法では定義がなかったのですが、会社法の立法担当者は、223号で、「この法律の規定により会社が行う割当てにより発生する当該会社を債務者とする金銭債権であって、676条各号に掲げる事項についての定めに従い償還されるものをいう」という、苦し紛れの意味不明の定義をしました。つまり、社債とは「676条各号に掲げる事項」=社債の内容として決めた事項が社債であると言ったわけですね。ということで、またまた学者が、これはおかしいと言っています。<o:p></o:p>

 

 金融というのは、変幻自在ですね。定義を決めてもそれに当てはまらないものを作り出します。CPは、もともと米国では、Certificate of Depositが流通証券となり、資金調達に利用されたが、日本では手形形式で導入されたと理解しています。それが進化して電子CPとなった。また、貸出債権も、債権譲渡特例法等を使えば振替社債と似たようなものになった。いずれも多額かつ同一内容の分割された金銭債務を多数の者に負担するという点では社債に似ていますね。金融というのは、自由な動きが好きですから、規制のない市場、税金を払わない工夫が出来るように動きます。ですから東京の金融市場はこの20年ずっと地盤沈下です。<o:p></o:p>

 

 大企業などは、金融技術と世界的ネットワークのある証券会社と組んで、ユーロ円建転換社債型新株予約権付社債(=ユーロ円建CB)等を発行します。準拠法は英国法です。立法担当者は、「外国法に準拠して発行される債券」は、223号に該当しないと解説しています。この解説に対しても学者は、従来の学説と全く異なるとか言っていろいろ言ってますね。まあこの分野は実務が先行する分野だと思います。ただ英国法と言っても、日本企業の発行ですから、社債の内容=募集社債に関する事項(Terms and Conditions of theBonds)は、会社法の規定にそうように記載した方が分かりやすいですね。社債権者は、例外を除き、所詮事前に段取りをつけた日本の金融機関等の機関投資家ですからね。<o:p></o:p>

 

 

 昭和電工が2009(H21).9.29の取締役会で決めてプレスリリースした社債は、ハイブリッドファイナンスと称して、2014年満期ユーロ円建転換社債型新株予約権付社債(劣後特約付)=ユーロ円CBの発行及び当社海外特別目的子会社によるユーロ円建交換権付永久優先出資証券の発行」を行っています。昭和電工が普通株式22,000円で100%子会社をCaymanに設立して、ユーロ円建CB240億円をそのCayman会社に割当発行すると同時に、Cayman会社が、みずほコーポレート銀行等に240億円の優先出資証券を割当発行して引き受けてもらうというスキームです。特別目的子会社で100%子会社ですね。法135条では子会社は、親会社株式を取得してはならないと定めていますが、CBなら良いのでしょうか??よく分かりません。実質全てコントロールしている100%子会社が、優先出資証券を発行します。もうここまでやられると日本の会社法は出る幕がありませんね。<o:p></o:p>

 

 

 昭和電工のCayman法人は100%子会社ですから、外国子会社合算税制(タックス・対策税制)に該当しますね。合算課税が課される外国関係会社は、日本企業(居住者および内国法人)によって発行済株式等の50%超を直接・間接に保有されており、その特定外国子会社等の発行済株式等の10%以上の株式等を直接・間接に保有する内国法人(&同族株主グループ)ですから、このCayman法人に該当します。まあ、昭和電工の場合Cayman法人は、コストセンターのVehicleとして設立したので、タックス・ヘイブン税制は考慮に入れなくて良かったのかもしれません。この税制回避の為に、第三国の第三者に契約で完全に経営支配できるダミー会社を作ってもらって、そこにEB (Exchangable Bond。以下にてその会社が取得する株式と交換する他社株転換社債)を発行させ、日本の会社が保有する株式をダミー会社に割当発行あるいは既存株主から取得させて、そのダミー会社がEBを日本の投資家に割当発行(追って、一定の算式で計算した転換率等で、条件が整ったときに転換)する方法もあります。実務は、日本の学者先生がキャッチアップ出来ない程のスピードで進んでいると言うことでしょうか。

Dsc_0154_3

<o:p></o:p>

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

インドの会社法の概要

2012-12-09 22:18:09 | 商事法務

 

 最近は少し低調になったかもしれませんが、投資先・事業地としてインドを考える企業も多いと思います。ということで、今回は、インドの会社法の概要を調べて勉強ノート代わりにまとめました。外資の規制も、ネガティブリストに無い業種については100%出資までOKですから、12億人のマーケットを狙って進出する企業も継続的に出てくると思います。<o:p></o:p>

 

<o:p></o:p>

 

 会社の種類:英国の会社法の影響を受けていますね。①公開会社・非公開会社、②有限責任会社・無限責任会社、③株式会社(Company Limited by Shares)・保証会社の種類があります。これの組み合わせですね。但し、保証会社に無限責任会社は無いですね。また保証有限責任会社(Company Limited by Guarantee) は、芸術・科学等の非営利目的で設立されるのが普通ですので、英国と一緒ですね。<o:p></o:p>

 

<o:p></o:p>

 

 以下では、日本企業の一般的な進出形態である、非公開株式有限責任会社の概要を記載してみましょう。但し、日本の上場会社が100%保有すれば非公開会社ですが、現地企業等と合弁にすると「みなし公開会社」となりますので注意が必要です。

 

1) 非公開会社(Private Limited):株式の譲渡制限+株主(発起人=Promoter)2名以上50人以内+株式・社債の公募禁止<o:p></o:p>

 

 

2) 設立・資本等:準則主義で発起人が署名・認証済みの基本定款(Memorandum of Association)と付属定款(Articles of Association)を会社登記所(Registrar of Company)に登録して登記所から設立証明署(Certificate of Incorporation)を取得すれば会社成立。発起人は2名以上必要ですから、実質100%子会社を設立する場合は、昔日本で行われていたような形式的な株主を少なくとも1名作らないといけません(従い形式的には100%子会社は作れない。尚、インド会社法では、名目的株主=nominal shareholderというのは、利益配当受益権を第三者(株主で無くてもOK)に与えて共益権=議決権等を行使する株主を指します。形式的と名目的を区別しています)。また、商号は、類似商号の関係上登記所の承認が必要ですね。基本定款・付属定款とも登記所への登録が必要で、定款変更は総会特別決議事項。但し、授権資本の増額は、付属定款で認めておれば総会普通決議事項。最低資本金制度があり、10万ルピー(1ルピー=約1.5円)。現物出資も可能。但し、非居住者が一定額以上の現物出資を行う場合は、外国為替管理局の承認が必要。授権資本内での増資は、第三者割当増資も含めて取締役会決議で可能。新株引受権(Preemptive Right)は、付属定款に記載されている限り有効。<o:p></o:p>

 

<o:p></o:p>

 

3) 株式・払込等:額面株式のみで、配当優先・残余財産分配等の優先株式を発行できるが、優先株式には議決権が無い。但し、配当優先の場合で配当が無い場合には議決権が生じる。払込は、日本の場合は全額ですが、付属定款や取締役会で決定すれば分割払込が可能。<o:p></o:p>

 

<o:p></o:p>

 

4) 株主総会:定足数は議決権の数では無く、株主の人数(頭数)ですので注意が必要。非公開会社では2人以上の株主の出席です(ですから、A,B,C3人の株主が、それぞれ90%、5%、5%を保有している場合、BC=10%株主が総会に出席し90%株主のAが欠席すれば、Aの意思は決議に反映されない)。従い、株主は2人以上という規定になっていますが、名目的株主を作る場合には注意が必要。また代理主席は可能。決議は、出席株主の挙手(showing hands)により行われるのが原則で、普通決議は出席株主の過半数、特別決議は3/4以上の賛成で可決。挙手であり保有議決権では無いので、投票=議決権ベースで行えるようにしておくことが大切。即ち、定款で、定足数は議決権ベースで計算する旨の規定及び総会決議は投票で行う旨の規定を設けないといけない。要注意項目です。また株主の頭数も一定数以上確保しておく必要があります。<o:p></o:p>

 

特別決議事項(正確には3/4以上では無く「反対票の3倍を下回らない(not less than three times)賛成票」)は、基本定款・付属定款の変更、自社株式の取得、商号変更、合併、減資、解散等ですね。また、普通決議事項で、賛否同数・デッドロックの場合には、議長に決定権が与えられている。<o:p></o:p>

 

<o:p></o:p>

 

5) 取締役・取締役会:取締役は、原則として総会普通決議で選任&解任。員数は非公開会社は2人以上で任期に制限無し。任期途中で辞任の場合等は、取締役会により残期間の取締役を選任。また、3ヶ月以上取締役会が開催される場所に居ないときは、取締役会は、代理取締役(alternate director)を、付属定款又は総会決議で選任できる。(普通は付属定款に規定されている)

取締役会は、3ヶ月毎に開催。権限は、法令&定款で総会決議事項とされている以外の事項で、業務執行の全てに付き決定できる。定足数は、開催時点の全取締役の1/3以上、又は2人以上のいずれか多い方の出席が必要で、決議方法は出席取締役の過半数を基準とするのが一般的。<o:p></o:p>

 

<o:p></o:p>

 

6) 監査役:法定機関で、公認会計士であること。定時総会毎に選任。人数は1人以上。<o:p></o:p>

 

 現地の弁護士を起用して会社を設立すると思いますが、株主総会は上記ですから、渡される標準的な基本定款・付属定款をきちんと読んでチェックすることが重要ですね。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする