まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

米国子会社でのPhantom Stock Planの利用

2019-02-01 00:12:20 | 商事法務
○ 米国企業の経営陣は、一般的にStock Optionが授与されます。しかし、日系企業の米国子会社の経営陣には、そういったStock Optionはありません。一定の業績(財務的な定量評価のみならず、中長期的な人材育成、ガバナンス、従業員の支持等の定性評価を盛り込む場合も多い)を挙げたときは、例えば目標達成度に比例する形で純利益のx%の20%, 50%, 75% 100% 等のIncentive bonusとして支給する例が多いのではないでしょうか。

○ 米国人は個人で株式売買を行っている人が多く、株好きですから、架空の株式・株式購入権により疑似的にStock Option制度を採用するのも一案かと思います。CEO等一部の人を除いて、一人一人のEmployment Agreementに記載する手間も省けて、広く従業員に対して行う、自社の株式を利用した報酬制度のうちのひとつですね。

○日本の企業でstock option(募集新株予約権の付与)を役員等に付与している企業は少ないですね。一般的には従業員・役員持株制度です。会社も、一定限度のまでの拠出金に対して奨励金を出してくれます。しかしstock optionも、一部の企業で行われています。付与時の株価の時価で付与している場合と、会社法を恣意的に解釈して、業績達成目標等の設定も行わず、単なる会社での地位だけで、株主総会の特別決議も取得せず1株1円で付与している商社等があります。ごますり茶坊主を育成するカルチャーの商社ですね。

○ 米国企業のStock Optionでは、会社によりForm S-1によるregistrationがSEC(registration statement by the Securities Act of 1933)にされていることを前提に、例えば、一例としてIncentive Stock Option (“ISO”) to purchase up to One Million (1,000,000) shares of Employer’s common stock. The ISO will have an exercise price equal to 85% of the fair market value of the Employer’s common stock on the date of grant.等ですね。時価の85%で買えますのでお得ですね。しかし、経営陣には一回と言うか一年でもらえるわけではないですね。毎年、1-12月の業績目標を達成すれば、1/4ずつ4年間で付与しますよという形などが多いのではないでしょうか。

○日系企業の米国子会社は、当然上場企業でもありませんので、実際の株式付与のStock Option Planは無理ですので、行うとすればPhantom Stock Planということになりますね。従い、役職・責任等に応じて、役員・従業員に付与する仮想の自社株の付与数、行使期間、行使時の価格の算定方法を決めないといけません。Phantom Stockを付与された役職員は、実際の株価の売買や所持時と同じように、一定期間が経過した後で、その時点での株価と付与時の株価の差額を取得したり、配当金を得たりすることができるようにしますね。米国子会社の仮想株ですから、親会社の日本の株式市場の一時的な株価の乱降下は影響されないですね。また、米国子会社の経営陣による、日本の親会社の株価形成への影響度は限定的ですね。

○ Stock Optionは、株価の差額を得るものですから業績が下降すれば差額は得られません。実際の株式なら持ち続けていくことも可能ですが、仮想株ですからどういう条件での付与か、在職が条件なのか、退職後でも権利があるのかなども設計によっては違いますね。

○ Phantom Stockで必須なのは、取得価額と売却価格の算定方法ですね。行使されたら、会社は、その差額の現金支出が発生します。従い、多くのStock Optionを出しておれば、会社としても現金の用意をしておかなくてはいけませんね。株価の算出で一番簡単なのは、株価収益率(PER)ですね。1株当たり利益のmultipleですが、一貫性・継続性を担保するために、①1株当たり利益の算出では、extraordinary の損益は除きますね。また、利益を当期利益ではなく、3-4年の利益を平均化して当年度利益を出すということも行われるようですね。②multipleは、別に上場の類似業種のPERを持って来る必要は無く、一定のmultiple (例えば5とか7とか)を持って来ればいいですね。

Phantom Stock Optionを採用するときは、その設計・仕組みを付与される役職員に説明することが大切だと思います。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする