まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

ペンタックスの混迷―資本拘束条項はほんと?

2007-04-29 21:30:31 | M&A

○ 連休で時間があったので、日経ビジネス(前回の4.23)を見ていたら、HOYA、戦略変更の裏事情―ペンタックス合併に「資本拘束条項」の壁」という記事がありました。

HOYA首脳は「ペンタックスとある企業との契約が合併のネックになった」と話す。「チェンジ・オブ・コントロール(資本拘束条項)」が含まれている模様だ。M&Aに詳しい弁護士さんが「M&Aの増加を背景に、欧米では企業間の契約に盛り込まれることが増えている」と言われたと書いていました。

○ 私は、新聞記事や雑誌記事をちょろちょろ見ているだけですし、全く門外漢の第三者ですから実際どういった契約条項があるのか勿論わかりません。しかし、契約としては有価証券報告書に「経営上の重要契約等」として、以下の技術契約と買収防衛策として信託型ライツプランの新株予約権管理信託契約を三井アセット信託銀行と締結した旨が記載されています。

       技術契約7件の記載があります。米国企業とのデジタルカメラに関する特許実施権の許諾等が5件、豪州企業との共焦点内視鏡の共同開発及び商品化1件、それと日本のキャノンとデジタルカメラ及び銀塩カメラに関する特許実施権のクロスライセンス契約を結んでいます。

キャノンとの契約は、合併されるとデリケートな問題を起こすかも知れませんね。

       「資本拘束条項」というのは不正確といいますか、違うでしょうね。だって合併は駄目で、TOBならOKと言うことですからね。TOBは、本件の場合、普通は役員の選任の議決等ができる過半数を目指しますね。つまり親が変わるわけです。TOBで資本関係が変わるわけです。資本拘束条項があればTOBでも駄目になる筈でしょ。例えば「新たに50%超保有の株主が出現したときには、相手方は本契約を解約できる」等というのが資本拘束条項ですからね。また、ペンタックスは上場企業ですから、株主は絶えず変動しますね。24%保有のスパークスも、12.6%保有のフィデリティも昔から株主であった訳ではありませんね。上場企業で、資本拘束条項というのは考えにくいですね。

日経BPも適当なこと書いてますね。よくあるケースですけどね。

       欧米の本来の「Change in Control Clause」というのは、こういう場合の条項ではありませんね。欧米企業の経営幹部の受任・雇用契約等で、会社が買収されたときは、がっぽりお金を貰える(&辞める)場合の条項です。即ちGolden Parachuteと言われているものです。会社が買収されたときは、買収者が新経営陣を指名します。即ち、旧経営陣は退任・退職ですが、その際にがっぽり退職報酬、ストックオプション、ボーナスの支給を受けると言う規定の事です。経営幹部が自分の地位を脅かされる場合、即ち上場企業では、1/3超とか35%以上を新規株主が取得した場合、非公開会社の場合は50%超を取得された場合などが、Golden Parachuteの発動条件です。

○ では、ある企業との契約が合併のネックになった契約の条項とは何でしょう。私の推測は簡単です。他社と合併したときは、相手方が契約を解除・解約できるという条項があったためだと思います。即ち「次の各号の一に該当するときは、本契約を解除することができる。」等として、契約違反の場合は一定期間を与えて催告したときとか、民事再生、破産、又は会社更生の申立を受け、もしくは自ら申立をしたときの他に、合併したときとか、消滅会社として合併したとき等というような条項があったのでしょう。

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ペンタックスの対応

2007-04-25 16:41:14 | M&A
毎日HOYAとペンタックスの統合混迷について新聞などに報道されています。ということで、またまた調子に乗って、雑談を少ししてみましょう。

○ ペンタックスは、本音は別かもしれませんが、正式にはHOYAの「TOBを真摯に検討する」と回答しました。しかし賛否は明確にしていません。これを受け手HOYAは23日の取締役会で、「ペンタックスの賛同を条件に、TOBを6月以降に実施する準備を進める」と決議したと報道されています。また、経営統合の協議は5月末まで続け、ペンタックス経営陣に友好的なTOBの実現を促すというか圧力をかけることの様です。HOYAは、相変わらず攻勢に出ています。ペンタックスがどの様に対応するか思案のしどころですね。
○ 一部の報道では、TOB価格は一株当たり770円で、ペンタックス全議決権株の過半数の取得を目指すと言われていますが、まあTOBをする以上は過半数を目指すのが当たり前でしょう。
ポイントとしては、以下でしょう。
① 買付予定の株券の数(株式数)に上限を設定したTOBを行うのか。
② ①とも関係しますが、ペンタックスの上場を維持するのかどうか。
③ また、直接ペンタックスには関係ありませんが、770円を引き上げるかと言う点も、TOBに応募する株主・株式数に影響しますね。
④ ペンタックス経営陣の賛同を得られないときに、敵対的TOBをどれだけ行う可能性があるのか。
⑤ TOB成功後のペンタックスの経営陣をどうするのか。また上記②とも関連しますが、ペンタックスの経営の独立性・自主性をどれだけ尊重するのかどうか。(当然、HOYAが人を送り込むでしょう。その人が役員になるには総会決議が必要ですから、臨時総会を開催するか、来期まで待つかですが、いずれにせよ実質かなりの影響力を持つことになります)
○ ペンタックスは、TOBについてどう考えるのか表明しろと求められています。回答としては、賛成、反対、中立、条件付き賛否などいろいろあります。上記①②とも関係しますしね。Yes/Noクイズじゃありませんので、Yes/Noと返事する必要もありません。条件についても、株券等の所有割合に上限を設定するかとか、ペンタックスの役員をHOYAの役員に指名して欲しい(勿論、今年の6月の総会には間に合わないでしょうけど)等というのも考えられますね。基本合意では、ペンタックスの役員2名が合併会社の役員に就任することになっていましたからね。

○ 私だったらどうするかを書いてみましょう。5月の連休明けまでにペンタックス社内の案を固めて、連休明けから水面下の感触を確かめて、末日あたりに目つぶし回答をするというのではどうでしょうか。

1) TOBは上限を設定して、20%とか(Max.25%未満)迄なら賛成する。――というのは如何でしょうか。このパーセントじゃHOYAは怒るかもしれませんね。単なる持分法適用会社ですからね。1/3未満というのも手です。これでもペンタックスの経営に相当の影響力を持ちますが、この持株比率ではHOYAも納得しないでしょう。次の所有比率は40%ですね。これで連結子会社になるかですが、すぐにはならないのではないでしょうか。40%で連結にするには条件がありますからね。しかし早晩連結子会社になるでしょう。確かルノーは日産の株式を、最初は希薄化ベースで1/3ぐらい割当増資を引き受けたのはないでしょうか。今は44.3%ぐらいまで増やした様ですが。
→上限25%未満なら賛成。40%未満なら中立。40%以上は反対というのも手です。合併即ち結婚は破談になりました。TOBという私の養子になれというのは命令には従いたくないけれども、兄弟のちぎりぐらいなら賛成しましょうというアイデアです。

2) 対等の精神なら、ペンタックスもHOYAの株式保有の提案をするのも手です。ルノーが日産株を44.3%まで増やすときに、日産はルノー株の15%を取得すると発表しましたが、実際15%取得したか私は知りません。勿論この場合は、上記1)との関連と、①会社法135条1項の子会社の親会社株式取得禁止、及び②会社法308条1項括弧書の株式相互保有の場合の議決権停止規定の事も念頭に置かないといけませんので、取得しても意味が無いという意見もあるでしょう。またペンタックスの体力でどれだけ取得できるかも課題ですが。上記1)の条件と組み合わせて、株式相互保有を提案するのはHOYAにとって、想定外の反応で、ペンタックスの反撃としてはアイデアの一つだと思います。2-3%や4-5%取得しても議決に影響有る株式保有割合でもありませんので、提携・連携の印として多少保有したいと、ちょっとは真剣みを持っていいだすのも良いかも知れません。

3) 上場維持を条件とする。即ち経営の独立性・自主性を尊重するということです。HOYAの露骨な介入を防げます。取得株式に上限を設けてもらうという事ですね。TOB→株式交換→100%子会社化を防ぐと言うことです。

4) ペンタックスの今後の経営陣の選任について、HOYAが指名する人数を制限することです。

5) HOYA本体への役員派遣、受入の人数などの条件でHOYAのコミットを取ることです。株式相互保有の場合は、議決権が無くなってしまいますが、人材交流で対等の精神を貫くという方法もあります。

・HOYAがYes or Noで簡単に結論を出せる提案は稚拙です。HOYAが、悩んで役会でも議論が分かれるぎりぎり+αぐらいの提案をして、この点は受けられないが、まあ80パーセントぐらいは、やむなしということでしぶしぶ受ける提案をすべきだと思います。

・ HOYAは、TOBの条件としてペンタックスの経営陣の賛同を条件としています。当然そうですね。敵対的だと買収者と買われた者という事が鮮明ですから、従業員のモラルにも悪影響を与えます。統合効果が減少します。ペンタックスは、敵対的買収に備えて、事前防衛策として信託型ライツプランを導入していますね。安易に賛同等言ってしまえば、これの発動が出来なくなります。買収防衛策を発動するかどうかを、ファンド株主に対してもHOYAに対しても当分本件については言及しないことが重要です。(HOYAはこれを知っているから、賛同を条件にしたのでしょう。勿論、ファンド株主は防衛策発動に反対するのはないでしょうか)

○ もしHOYAが提案を拒否して、敵対的TOBに進む可能性が出てきたら、これはもう徹底的に争うしか手が無いですね。当然買収防衛策発動も視野に入れないといけませんが、ファンド株主から邪魔が入るかもしれませんが。ペンタックスの経営を圧迫する要因になりかねませんが、従業員の給与体系・退職給付債務等をHOYA以上に上げるとか、取締役決議で出来る範囲の企業再編・変更を行う事も手ですね。

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株主の質による分類

2007-04-22 00:41:26 | 企業一般

株式会社にはいろんな株主が登場します。今回は、持株比率でなく、株主の質による分類を考えてみましょう。

     【持株比率と経営支配力】

株主は、一般に議決権のある株式の持株比率・持株数でランク付けされます。当然、資本多数決ですから持株が経営支配権の強さを示しますからね。ただし、2社の合弁会社の場合と、多数の株主が分布する公開会社の場合とは、経営支配力あるいは経営に影響力を与える持分は異なります。いろんなケースがあります。特に上場企業の場合は、他に持株比率が有力な株主がいない場合は、30%ぐらいの持株比率でも、経営をかなりコントロール出来ます。

         仮に30%の保有比率でも、社長を実質的に指名することも出来る場合があります。取引も多いと、企業会計では持分の連結対象にはなりますが、連結の対象にはなりません。しかし、出資比率(金)、人、取引(物)を通じて相当の支配力を持つことになります。

・ では、見方を変えて質による分類をしてみると、どの様になるでしょう。

     【株主の質】

株主の質としては、上等、中等、下等、及び下の下の株主の4種類に分類できると思います。上場企業の経営陣は、株主構成にも配慮して、上等の株主を増やす努力を不断から怠らないようにしておかないと、いつの間にかファンドの持株比率が増えて、気がつくと株主価値を増やせというような要望が来ることになります。株主価値を増やすとは、即ち株価を上げることと配当を増やすことですね。株価が上昇すると、売り飛ばされる可能性が高くなるわけですね。

1)       上等の株主一番望ましい株主は、企業価値を上がられるリソースを持っている株主です。即ち、一緒に合弁事業などを推進し、企業収益をあげることですね。企業価値を上げる事が出来る唯一の方法は、その会社の役職員が汗を流して事業を拡大し収益向上を図ることであり、株主は企業価値を上げることは出来ません。一緒に事業を行い、収益を持ってくることによってあげるわけですね。また、銀行などは融資をしてくれますので、上等の株主かもしれませんが、事業が困難になったときには、自行の利益を当然優先しますので、上等から下等にランク落ちする可能性もありますね。また、株式の持ち合いが進むと、資本の空洞化の批判も出てくるかもしれません。

2)       中等の株主:企業価値の向上には直ぐに貢献はしませんが、会社の応援団ですね。消費財販売の会社などの個人株主が、その会社の製品を好み購入するとか、事業を気に入って株式を保有することも含まれます。直ぐにキャピタルゲインを追求することもなく、配当収入でお小遣いを得ることで有る程度満足して、長期・安定株主となる層ですね。相互に株式を持ち合って、お互い内政不干渉というのも、この部類だと思います。

3)       下等の株主ファンドはこの下等の株主です。ファンドは株主価値を上げろとか要求します。ファンドのおかげで株価は上昇したり、下支さえされたり、あるいは下落するかもしれませんが、これはファンの運用利回りの為ですからね。要求する割には、企業価値の上昇に貢献しません。企業価値を上昇させる、ノウハウ・能力を一般的には持っていません。経営に何の影響力も持たない、数単元のみしか持たない個人株主もこの分類に入ると思いますが、この部分が流動株部分ですからこれは仕方がないかと思います。

4)       下の下の株主会社に敵対的な株主ですね。昔は総会屋が典型的なケースでしたね。最近はだいぶ影が薄くなって来ましたが、まだ存在していると思いますね。またビジネスの競争者などもこの部類に入る場合もあります。また敵対的な買収者、即ち、グリーンメイラーn等も子の分類にはいりますね。

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ペンタックスとHOYAとの統合迷走―③スパークスの行動原理等

2007-04-19 00:24:34 | 企業一般

○ 日経新聞によると、ペンタックスはHOYATOBを真摯に検討するが60日間猶予を求める模様と報道されています。両社首脳会談後、HOYAの担当者は「協議の進め方について真摯な提案をもらった。詳細は話せない」と述べ、また「HOYAの鈴木代表は持ち帰って検討する」と答えたということのようです。 一方、ペンタックス側は「TOBの提案について回答したが、内容は話せない。HOYAとは統合について協議を続けていく」と言っています。ペンタックスとしては、ともかく持久戦に持ち込んで、じっくり考えるとともに、関係者の理解を得て進めようということだと思います。

       TOBならいつでも出来ますからね。HOYATOBをやるにしても6月末頃から行うと言っていましたし、別に焦る必要も無いでしょう。これは定時総会で定款変更してから行うという意味でしょうから、HOYAとしては、予定通り定款変更(目的の追加等だと思いますが)はするのではないかと思います。ペンタックス側の定時総会は、合併契約承認決議がなくなりましたね。

・ HOYA23日の取締役会でTOBを決議すると、ペンタックス側がその賛否を表明しなければならなくなりますね。HOYAはペンタックス経営陣の意向を尊重しない、有る意味で敵対的TOBというのも、まだまだ日本では印象が悪いし、ペンタックスの従業員のモラルへの悪影響等が懸念されます。「統合を継続協議」ということになるのではないかと予想します。

       ペンタックス株式の約24%を保有するファンドであるスパークスはTOBに好意を示すと同時に、ペンタックスには「HOYAとの話を反古にするのであれば、HOYAの提案と同等以上の株主価値向上提案をHOYAの提案と同等のスピード感でもって市場に示す義務が現経営陣にある」と言っていましたね。スパークスの狙いは、保有株の下落による損失を回避すると同時にリターン回収のため一発で売却できる絶好の機会を確保することにあるとみられますね。24%も持ってしまうと売るのも大変ですからね。

       17日にスパークス幹部はペンタックスの綿貫社長と会談しました。内容は明らかになっていませんが、ペンタックスからは、「方向性としては変わらないが、関係者とも十分協議して企業価値向上を目指すので、ちょっと待ってくれ」というような事を伝えたのかもしれません。スパークスの運用スタイルは、村上ファンドの様にインテリやくざの脅迫ではなく「投資先企業との協調対話を重視」しているようですので、ペンタックスの対応に少しは理解を示したのではないでしょうか。いずれにせよスパークスは24%を保有する大株主ですので、その意向が、今回の統合の行方を左右しかねないですね。

【スパークスの行動原理】ペンタックスとしては、自社の経営・方向性に大きな影響力をもつスパークスの行動原理をやはり理解しておく必要があるでしょう。

      スパークスは、狩猟民族です。獲物を追って動きます。獲物を捉えて食べてしまうと、次に食べ物を探すために動きます。どこに動けば次の獲物が見つかるか、見つけて、うまく食べるにはどうすればよいか知恵を働かせます。即ち、しっかり儲かるチャンスがあれば売り飛ばして逃げて、次に行ってしまうと言うことです。一方、ペンタックスは農耕民族です。畑を持っています。畑を一生懸命耕して優良な作物を作ろうとします。医療関連事業などは上等な耕作地でしょう。農民は、仮にやせた土地を持っていても、簡単に耕作放棄して逃げるわけには行きません。知恵を出して耕さないといけません。今の事業を整理統合・集約も行いながら充実・拡大・進化させるしか手がないですね。

      ファンドは株主価値を追求します。株主価値即ち、株価の上昇が価値です。そして上昇すれば売却します。一方ペンタックス・HOYAは、企業価値の増大を追求します。企業価値が上がれば、一般的には株価も上昇しますが視点が違います。

      ファンドの後ろには、投資収益の極大化を求めるがめつい投資家がいます。これの要求に応えないといけません。ファンドはRisk Takeして投資をします。そして売却してTakeします。一方HOYA・ペンタックスは、顧客に喜んで貰える製品・サービスを提供します。そういった製品・サービスをGiveして、対価を得ます。即ちGivenです。スパークスは、Risk Take & Takeで動きますが、ペンタックスなどはGive & Givenがビジネスの原理です。

      ファンドは短距離型ですが、メーカはマラソン型です。HOYAがペンタックスを統合すれば企業価値が上昇するでしょう。従い、企業価値が上昇するなら、スパークスはペンタックスの株をTOB等で売却せずに長く持っておく方が理屈にかなっています。しかし、ファンドは近視眼的ですからTOBに応じて利益の実現を目指します。メーカは研究開発計画を立てて要素技術の丹念な開発・積み重ねからスタートします。5年―10年の長さで事業を育てないといけません。

      ファンドは単純利回りの世界。メーカは多面的・長期的な複雑系です。ファンドは利回りとかIRR(内部収益率)で何%達成したかという尺度が一本です。これの極大化を目指します。しかし、メーカは、現在は赤字でも将来大きく成長が期待できる事は育てないといけません。またメーカのエンジニアは、者作りの喜びがあります。自分の作ったものが人の役に立つ、社会に貢献する喜びがあります。数字だけの世界ではありません。

ペンタックスの経営陣にとっては、ファンドは別世界の文化と行動様式をもっています。ファンドが有力株主となっている以上、その行動原理をよく理解しておくのがよいと思います。

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ペンタックスとHOYAとの統合迷走―その②

2007-04-15 00:44:06 | 企業一般

・どういう訳か、私のブログへのアクセスが急に増えました。ということで調子に乗って、その②として続きを少し書いてみたいと思います。

     HOYA410日の発表文によると、「ペンタックスの一部株主の状況及び第三者との契約関係の状況等を考慮して、合併は困難と判断した。これの代替的方法として、TOBを検討したいとしています」。一部株主の状況というのはよくわかりませんが、合併比率ペンタックス株式1株につき、HOYA株式0.158株という比率に不満をもつペンタックスの複数の有力株主がいると言うことかも知れません、契約関係と言われても、事情を知らない者には分かりません。代表取締役が解職されたからとも書けませんし、ペンタックス側も表面的には基本合意を守っている形になっているのでしょう。

○ 状況については、以下の様ですね

・ 両社のトップが来週半ばにも会談する見通し。

      HOYAはペンタックスに対して11日にTOBを受け入れるかどうかを問いただす質問状を送付したが、13日にペンタックスが「経営統合は今後とも検討を進める」と回答。

      TOBではペンタックス株の買取価格は1株770円で、6月下旬ぐらいから実施予定。

     HOYATOB:

     TOBというのは、金の力でペンタックスの株主から株式を購入して、自分の軍門に下らせるものです。ペンタックスの現経営陣にとっては、不愉快な事かもしれません。なにしろ腕力(金力)を見せつけられるというか、札束で頬をたたかれた上で、株主に蒔かれてしまいます、TOBがうまく行けば、HOYAが経営支配権を取ります。その時、現経営陣は解任される可能性がありますね。解任は総会の普通決議で出来るようになりましたしね。まあ、せいぜい現在の任期で終了かもしれません。

     子会社にして、その後株式交換で、文句のある株主を追い払って(支配服従関係である)100%子会社化して、無増資の親子合併でも考えているのかもしれません。こういう方式では、統合の効果が減殺されます。1+1=1.5以下にしかなりかねません。1+1=3以上の目指さないといけません。

・ドライなやり方です。確かに半導体業界で鍛えられていますからね。また、社外取締役という、いやになったら逃げられる立場の人は、合理的・理詰めで考えるのかもしれません。IBMの椎名さんは当然米国的な発想でしょうし、キッコーマンの茂木さんは、日本人の米国大学院MBAの走りの人です。日産の塙氏は、ルノーに日産を売った人、リクルートのばりばりのやり手の河野さん。先進的というか米国の悪影響を一杯受けている元通産省出身の児玉さんもいますからね。

     ペンタックスの対応

     ペンタックス側は、混乱でHOYAとの約束が守れないので、多少後ろめたいでしょうね(公表文以外の、基本合意の内容がどういったものかは知りませんし。法律的拘束力を持った文言になっていたのか、あるいは拘束力があっても事情変更の条項なども入っていたのか勿論私は知りませんが)、しかし、HOYATOBをしてまで、ペンタックスを欲しがっています。つまり、ペンタックスは強みを持っているのです。ペンタックスの経営陣は、これうまく逆手にとってHOYAに対する交渉力の向上に繋げないといけません。

     押されっぱなしのペンタックスですが、HOYA側を攻める材料を見つけるべきです。12.21基本合意発表文の8には、「やむをえない状況が生じた場合は、両社協議の上、日程又は統合形態の変更により、両社の経営統合の実現を目指します」としています。やむをえない状況を生じさせたのはペンタックス側かもしれませんが、「両社協議の上、統合形態の変更」と記載有ります。TOBについて、両社協議したのですか?一方的にTOBを検討すると表明しているのはHOYAではないのですか。協議もきちんとせずに、TOBを受け入れるか返答しろとは、横柄・傲慢なやり方です。本来なら決まるまで秘密裏にしないといけないのに、もうマスコミに見られっぱなしです。

     ペンタックスの現経営陣は、HOYAに速やかに逆提案をすべきです。反撃です。先に私が言いました、株式移転等もアイデアだと思います。両社共同で株式移転計画を作成してはどうでしょうか?先の合併比率に拘束されると、ペンタックスの株主の株式移転設立完全親会社の持分・持株が薄くなりますから、比率の調整をする必要があるかもしれません。TOBに賛成してこれが成功すれば、現役員は退任です。現役員にとって重要なのは、反撃・攻撃です。出来るだけ、ペンタックスに有利な条件を、自分の保身では無く、従業員の為にHOYAから引き出すことです。

     株主の一部が企業価値向上の代替案とかと言っているようですが、まあ、ペンタックスがどうなろうが自分の利益を追求するファンドですからね。ペンタックスの今の従業員が統合によってハッピーになれる案とは何か、それの方が重要です。ファンドも一応株主などで無視できませんが、ファンドが30%持っているとして、後の70%は事業会社や一般株主ですね。全部は無理ですが多くの株主の支持を集める代替案を示す必要があると思います。また、広報対応も重要ですね。ペンタックスの積極性を対外的にもきちんと示すことも必要です。

     統合すればペンタックスの従業員にとっては、労働強化になるでしょう。しかし、日本電産に買収された会社を研究してみてはどうでしょう。どんどん復活しています。元気になっています。従業員のやる気がどんどん出てきているようです。

     ペンタックスの新社長と社長を選定した役員にとって、従業員が元気になる。そうすれば即ち企業価値が向上する。企業価値が向上すれば株主もハッピーになる。そういった統合の方式を知恵を出して、逆にHOYAにぶつけて欲しいと思います。

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ペンタックスとHOYAとの統合迷走について

2007-04-12 00:21:05 | M&A

       私は、最近の新聞記事しか読んでいませんが、統合が暗礁に乗り上げた原因を、外部から勝手なコメントをすれば、以下のような感じでしょうか。

       原因としては①ボタンの掛け違い、②統合手法の誤り、③意識・思惑の違い、④吸収合併されるペンタックス(消滅会社)側へのHOYAの配慮不足、⑤ペンタックス経営陣のコミュニケーション不足、及び⑥ペンタックス経営陣の合併に対する無知だと思います。

       もし、私がこのM&Aの設計者なら、違った手法を取ったでしょう。やり方としては、両社で株式移転して持株会社を作り、両社とも一旦100%子会社にする。2-3年かけてよく両社の社内を見て重複事業部門の統合を吸収分割等の方法でする。またこの2-3年で両社の人の交流を図り、あわせて給与・退職給付制度などの統合を目指します。今の合併は、HOYA側で総会決議の不要な簡易再編ですが、この場合はHOYA側でも総会の特別決議が必要となりますけれども。

       両社の基本合意(H18.12.21公表文)によれば、役員人事・合併比率・組織再編計画等迄記載してあります。この公表はちょっとまずい感じです。こんな発表ではうまくいくものも、うまくいかなくなります。一応基本合意の冒頭には、「対等の精神」というリップサービス的な言葉は記載されていますが、やはりHOYA側としては、ペンタックスを吸収合併するという意識、取り込む意識が強いのではないでしょうか。

・ 基本合意は、統合に向けた意義・プラスサイドの面を強調して、社内外に会社統合への賛同を醸成する事が重要です。本音が出そうな役員人事・人数や合併比率の部分は、少し曖昧にして、4月に締結予定だった合併契約書に記載すれば良いことですね。今回の件は、消滅会社側の役職員の気持ちを考えないドライなやり方がうまく機能しなかったと言うことです。

       重要なことは、吸収合併される側の、顔を立てる事。暖かい配慮を行わないと日本の古い体質のメーカの場合は、うまく行かないということです。また拙速に走っては行けません。即ち、2-3年の長さで考えないといけません。2-3年もたてば消滅会社側は、いつの間にか、バラバラにされる例が実は多いのですが、理想的には、消滅会社側の役職員のモラルアップを計り、これを刺激としてHOYA側も、ますます頑張るというような雰囲気というかモラル形成を目指すということです。(本当にそうなれば良いのですが、実際は大半がそうはなりません。しかしHOYAとしては、少なくとも1-2年はそのふりをしないといけないということです。

○ 役員人事が最悪です。基本合意の発表文によれば、社外取締役5名、社内取締役5名(HOYA3名、ペンタックス2)とされています。今回社長を解職された浦野氏が会長予定と記載されています。後一人は、今回専務を解役された森専務がなる予定だったのでしょう。他の6人の役員は取締役解任・切り捨てですね。これじゃ反乱が起こりますよね。今回の取締役会での解職・解役劇で、5人(+みずほ出身役員1人)の鬱積・蓄積した恨みが噴出したのかもしれません。HOYA(=委員会設置会社)側は、現在の社外取締役5名(IBMの椎名氏、キッコーマンの茂木氏、日産の塙氏、リクルートの河野氏、通産出身の児玉氏→米国式のドライな発想をする人たちだと思いますね)と社内取締役3名で、そのままですからね。HOYAももう少し、ペンタックスの役員のメンツを立てないとね。少なくとも統合して暫くの間はね。

       ペンタックスの今回の取締役会では、解職された社長が発言して、引き続き「統合検討する」旨の決議がされたようですね。株主への配慮もあるでしょうけど、5人組も後ろめたさがあったので、この決議がされたのだと想像します。というのも、先の12月の基本合意のときに、当然取締役会が開催されて賛成決議がされている訳ですからね。そのとき、この5人組はそのとき何をしていたのでしょう?それ以前から統合の検討作業に加わっていた人(今度の社長)もいるとの事なのにね。また取締役会できちんと議論したのでしょうか。あれよあれよという感じで、社長主導の役会で押し切られたのでしょうか?

       いきなり合併というのは良くないですね。いろいろ問題が発生します。この点については、このBlogで先に言いましたので、そちらをご参照下さい。

HOYAは委員会設置会社ですし、ペンタックスは地味でまじめなメーカという感じですので、会社の組織体制・社風・文化がかなり違うでしょう。いきなり水と油を混ぜてはいけませんね。ペンタックスは12月のときに、経営陣はきちんと議論したのでしょうか?よくコミュニケーションしたのでしょうか?多分、しなかったでしょう。納得性がないまま進んで、不満が蓄積して今回爆発した感じです。

http://blog.goo.ne.jp/masaru320/d/20070321

       合併には、光の部分と影の部分があります。特にペンタックス側に影の部分が出てきます。今回は6人の取締役(+HOYAは委員会設置会社なのでペンタックスの監査役も全員)が退任予定となりましたが、それ以下の執行役員や部課長クラスも「冷や飯組」がやはり大量に発生します。12月の時点で、HOYAの役員になる2人は除いて、その他役員は、そういった事をきちんと認識しなかったのでしょうか。ちょっと鈍感な気がしますね。

○ いずれにせよ、これからどうなるのでしょう。一旦「けち」がつくとなかなかうまく進みません。統合検討等と言ってごまかしていますが、合併の破談はときどき起こります。

しかし、2-3年後、もしペンタックスの業績が芳しくなく落ち込むと、惨めなことになる可能性もないとは言えません。将来の事を考えると、事業的にはやはり統合が良いのではないでしょうか。そのためには、HOYAがペンタックスをもっと尊重する姿勢と誠意を示し、ペンタックスがこれに答えて統合を目指すのが良いのではないでしょうか。

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ベンチャー企業の人材採用

2007-04-11 00:34:03 | 企業一般

     数人の仕事仲間で事業を始めても、会社の維持・運営・管理には、種々の違った能力のある人が集まらないとうまく行きません。また事業が少しうまく行き始めたときや、継続的な仕事を受注したときなどは、人材が足りなくなります。ベンチャー企業では良い人材はなかなか集まりません。どうすれば集められるでしょうか?

○ 経理の人の採用は比較的簡単ですね。気を付けなければいけないのは、大企業の経理しか知らない人は必ずしも役立たない事が多いと言うことですね。特に、大会社で原価計算等を専門で長くやってきた人は、融通も利かないとか自分の慣れた方法以外はやれない人がいますから注意しましょう。経理ソフトが発達していますから、難しくないのですけど。

     経理の人でも、中小企業で経理を行っていた人の方が役立ちます。給与計算・社会保険・労働保険の計算とかの事務なども併せてできる人などが良いですね。まだ経理の人を雇う程の規模でも無いときは、アウトソースが出来ますね。そういった事務引受の会社は山ほどありますね。

     例えばエンジニアの採用の場合はどうでしょうか。ハッキリ言ってなかなか難しいですね。会社を作ったときに、その記事が新聞に載ったら、まずコンタクトしてくる会社があります。求人情報誌の会社です。ベンチャー企業では、「出来る人を1-2人」欲しいというのが多いのではないでしょうか。求人情報誌に高いお金(小さな記事でも数十万円)を出しても、まず欲しい人は来ませんね。掲載した日の翌日から応募者がどっと来ます。そして3-4日間ほど、応募がありますが、翌週になれば求人情報誌の翌週号が出ますので、それ以降の応募は無くなります。応募者のなかから欲しいという経歴の人は殆どいません。30人ほど応募が有って、面接しても良いと言う人は1-2人です。でも、技術は、一般に狭くて深い知識が要りますし、少し得意分野がずれていたり、別に悪くは無いのですが、やはりいまいちで採用に踏み切れません。20-30人ぐらいを採用するなら採用出来る人は1-2人いますが、なにしろ小さなベンチャー企業で即戦力ですから1-2人の採用となると、なかなか決められません。

・ WEB等を通じて求人を出すときがあります。掲載期間も何ヶ月にすることも、お金次第で出来ます。求人情報誌は、次号が出れば終わりですが、WEBの求人は、それを見た人が、ぽちぽちと応募してくれます。これは効果的なときがあります。応募者も何人にもなれば、その中には面接してみたいという人も出てきます。求人情報誌は一発型ですが、こちらはじっくり型です。

○ 人材紹介会社からコンタクトがある場合があります。しかし、紹介会社の紹介者はピントがぼけていることもしばしばです。ときには面談したいと思う人もいますが、1年に1―2人ぐらいです。採用したいときは、紹介会社への成功報酬として年収の30%の紹介料を払わないといけませんが、これは仕方がないですね。

     会社も2-3年経過して、業界でも少し名前が売れてくると、直接応募も時々あります。中には優秀な人もいます。あるいは、知人ルートで紹介されて雇うとかのときもあります。

     その他の方法としては、学生(大学生、院生)等をアルバイトとして雇って、その中から、これはと言う人に声をかけることです。能力もアルバイトの時にチェック出来ますので良い方法ですが、学生側から断られる場合もよくありますね。優秀な人ほど、求めている会社が多いですからね。

     結局、いろんなルート・方法で手を尽くして探さないと、いい人は見つかりません。時間も手間も、またお金もかかります。堅実なベンチャー企業なら1年で1人ぐらい採用出来るのがやっとではないでしょうか。受注の高低等は、アウトソースのボリュームで調節して、固定費の発生する人材採用は、会社の収益が確実に安定するまで、無理をしないで、必要最低数を守り、じっくり・いろんな方法で探す事だと思います。

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株券不発行会社の株式譲渡

2007-04-09 16:38:34 | 株式関連
○ 昔の商法では「会社成立後・新株払込期日後遅滞なく株券を発行する事を要す(旧商法226条)」とか、「株式を譲渡するには株券を交付する事を要す(旧商法205条)」というような規定がありましたが、H16年に大改正が行われ、株券廃止会社とすることが出来るようになりました。会社法では、更に株券不発行が原則とされ、発行するときは定款にその旨の定めをして発行することになりましたね。

○ 従来、未上場企業では、株式の変動も少ないため、あまり株券は発行されていませんでした。しかし、株式譲渡の際は、株券を作成して(手抜きのときは、文房具屋さんで株券のひな形を買ってきて、必要事項を記載して)交付していました。あるいは、この株券作成も手間と厭うときは、不所持申出書(株主→会社)とその不所持申出受理通知書(会社→株主)等のオリジナルを、譲受人に渡して株式譲渡としていましたね。

○ しかし、株券不発行が原則とされましたので、今後は株券不発行会社が多くなると思われます。また、従来の株券発行会社も実際は株券を発行していないのに、登記簿に株券を発行している旨、職権で書かれちゃいましたしね、「こりゃちょとまずい」と思う会社も出てくるでしょうから、定款から株券発行の規定を削除するなり、株券は不発行とする旨の定款の規定を設けて、登記の変更を行う会社も出てくると思います。

・ そして、その内に株式譲渡が出てきます。そうした場合、即ち株券不発行会社の株式の譲渡はどうしたらいいのでしょうか。株券不発行会社の株式譲渡を実際どの様に安全に行うかを考える必要がありますね。

○ 株券不発行会社の定款の規程等:
株券不発行会社の定款には、多分以下の様な規程があると思います。
・「名義書換を請求するには、株主又はその一般承継人と株式の取得者が共同して、所定の書式(*)による請求書に署名又は記名押印し、これを提出しなければならない。」
・「株主は,本会社に対し,株主名簿に記載された事項を証明した書面の交付を請求することができる。」(この規程が無くても証明書発行請求すれば良いですけどね)

○ 株式譲渡の手続き:
現在どういった慣行が形成されつつあるのか知りませんが、通常は以下ぐらいではないでしょうか。
1) 事前に株式譲渡契約書を締結
2) 譲渡人等から、会社の取締役会等に譲渡承認申請
3) 譲渡日に譲渡人は名義書換請求書(本会社宛*)に株主届出印を押印して譲受人に交付
4) 譲渡日に代金を支払い
5) 譲受人が記名押印して名義書換請求書を本会社に提出
6) 本会社は、株主名簿に記載・記録し、株主証明書(=株主名簿記載事項証明書)を譲受人に発行

* この請求書の記載事項:譲渡株式の種類・数等。譲渡人は、本会社の株式を譲受人に譲渡したので名義書換してほしい旨。譲受人は、譲渡人から譲り受けたので名義書換を請求する旨。

上記の3)&4)を同時に行っても良いですし、3)-6)を同日に行ってもよいですね。
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中国の行方―矛盾と不安

2007-04-06 00:36:14 | 社会・経済

       私は、これからは米中2強時代が到来して、日本は沈むのではないかという思いと、ひょっとしたら中国は混乱に陥るのではないか、その時日本は大混乱になるのではないか、いつかはそうなるのではという不安をもっています。皆さんは如何でしょうか。

○ 中国は、政治的には共産党一党独裁ですが、経済的には自由主義経済と同じようになって来ました。政治面では活動の自由がありませんし、インターネットは許可制で外人はインターネット事業は出来ません。Blog等は、政府と企業側の二重の検閲があり、政治的な事や政府を批判する事を書くと削除されます。それでも散見されるため、更に強化しようという動きになっています。

一党独裁で、政治的な自由が無く検閲・監視社会、しかし経済的には自由主義というのはシンガポールが典型的ですが、シンガポールは人口が350万人。中国は13億人ですから統治支配原理が一緒では成り立ちません。

       中央政府と地方政府とが必ずしも統一した政策を実行するわけでもありません。

北京が、小売業は許可制で原則認めない等と言っているうちに、広東省政府のOKを取って、どんどん進出してしまったフランス カルフール等もあります。中央集権のコントロールが地方まで利いていません。北京政府というのも強そうで、必ずしも基盤がいまいちの感じです。上海閥とかいろいろ対立等があるようですね。

       経済力の比較を見てみましょう。米国CIAThe World Factbookからの引用でGDPを見てみましょう。(2006年概算ベース)

          購買力平価  公式為替   購買力平価/人 人口(億人)

全世界 US$65兆    US$46.7     US$10,000     65

中国    10兆      2.5兆    7,600      13.14

USA    12.98兆   13.22兆    43,500       2.98

日本     4.22兆    4.91兆        33,100     1.27

https://www.cia.gov/cia/publications/factbook/index.html

・購買力平価で見た場合、中国は既に日本の2.37倍になっています。

・公式為替レートで見たGDP06年の実績、10年と30年の予想順位

06年 1) 米国 2) 日本 3) ドイツ(2.89) 4)中国 

10年 1) 米国 2) 中国 3) 日本     4) ドイツ

30年 1) 中国 2) 米国 3) 日本     4) ドイツ

       中国にはいろんな矛盾があります。どうなるのでしょうか?

     中国経済は年率2桁成長が続いていますが、多くの矛盾が一杯です。こんな高率な成長がいつまでも続くわけないですよね。いつかは終わります。何時終わるのでしょう?上海万博の後すぐでしょうか?それとももう少し後でしょうか?

     輸出の数十%は外資系企業で、上場している中国企業は赤字企業が多い。

     (企業できちんと働いてくれるホワイトカラーという意味での)人手不足、電力不足、燃料不足、交通渋滞、環境汚染、

     経済格差への不満―沿海と内陸の格差拡大、また沿海部の都市での新富裕層の台頭と庶民の格差(お金持ちはますますお金持ちになりますね。いろいろ仲間うちで儲けるネットワークがあるからですね)

     輸出産業と農業の格差、民族系企業と外資の格差

       13億人の所得分布(公式為替レートベース)

     沿海-1億人:世帯年収200万円以上

     内陸主要都市&沿海準主要都市-2億人:世帯年収70-80万円

     内陸準主要都市&沿海農村-3億人:世帯年収20-30万円

     内陸農村-7億人:世帯年収10万円以下

       昨今の、原油、稀少金属、鉄鉱石、石炭、穀物等の原材料の世界的な高騰は、がぶ飲み中国の影響が甚大ですね。一方、米国や日本は、電機製品・繊維製品始め、食料品、その他かなりの製品が中国依存です。100円ショップ、ユニクロ、プリンター、身の回りの品は、かなり多くのものが中国から来ます。

中国に何かあったら日本はどうなるのでしょうか?

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会社再編の事後開示

2007-04-04 16:35:26 | 商事法務
○ 会社再編の事後開示についてです。例えば吸収合併については801条に規定されています。791条の吸収分割又は株式交換等でも同趣旨の規定があります。

○ 801条1項では、存続会社は、効力発生日(合併期日)後遅滞なく、承継した消滅会社の権利義務その他施行規則で定める事項を記載・記録した書面・記録を作成。3&4項で存続会社は、これを効力発生日から6ヶ月間備置。株主・債権者は、閲覧請求・謄本・抄本の交付請求可としています。6ヶ月は合併無効の訴えの期間と符合させるためですね。

○ 旧商法では、株式交換について商法360条で、交換の日に、その日の完全子会社の純資産額、完全親会社に移転した完全子会社の株式数等を記載した書面等を、また合併について 商法414-2条で合併手続の経過、合併の日、消滅会社からの承継財産の価額及債務の額等を記載した書面等を、合併の日から6ヶ月備置し、株主・債権者の閲覧・謄写請求に応じるようにしておくことが規定されていました。 この条文の趣旨は資本増加額が限度額内にあるかどうかを株主等が知ることが出来るようにするためであり、「純資産額」等と規定されているにも拘わらず概算額表示でOKという解釈でした。「概算」という解釈もおかしかったですね。推定額とか予定額でしょと言いたいですね。大企業なら、その日の純資産額をその日概算なんてありえないでしょということです。

○ 施行規則(200条)では、さすがに「純資産額」等という変なことは言わなくなりました。基本的には、反対株主の株式・新株予約権の買取請求や、債権者異議手続の経過等を開示すればよくなりました。200条6号の「変更の登記をした日」以外の情報開示の準備は、効力発生日までに出来るようになりました。

・ 実際上、債権者異議は殆どないと思います(私の経験では)。別に異議が出ても、早晩債務を履行しなければならないので、一般的には大勢に影響ありません。また株式買取の請求も件数的には少ないでしょう。また仮に請求されても、少し自己株式が増えるぐらいでしょう。なにしろ組織再編は特別決議で承認されている訳ですからね。もし1/3ぐらいの大量の買取請求をされれば同7号の「その他重要事項」として書けば良いことです。

○ しかし法801条等の規定は、以下の2点についておかしいと思います。
① 1項と3項が矛盾している。
② 株主・債権者が一番欲しいあるいは有益と思われる情報の開示が抜けていると思います。


1)1項では、「効力発生日後遅滞なく、書面等を作成しなければならない。」としていますが、同3項では、1項でこれから作成する書面等を、効力発生日から六箇月間、備置しなければならないとしている事です。今日から作る書類を今日から備置しろというのは、どういう意味ですか?そんなこと出来るのですか?これを読めば普通の人はおかしいと思うのではないでしょうか?私にはよく意味が分かりません。(「発生日後」であり、「発生日以後」ではないので、発生日を含まないという細かいところもありますが、これはどうでも良いです。)

2) 株主・債権者が欲しいあるいは有益な情報とは、合併期日の開始BSです。勿論開始BS作成には時間(監査まできちんとすれば2ヶ月ぐらい)がかかります。また、開示されるBSでは細かな情報は記載されませんが、「のれん」が一体どうなったのか等関心の有るところです。どんなBSで合併した会社が事業をスタートしたのかです。吸収合併存続株式会社の、消滅会社からの合併受入資産の取得価額について、日本でもパーチェス法がメイン(プーリング法は、あまり無いですね。)となりました。少し時間がかかっても、合併期日の開始BSを開示するのが、株主・債権者への開示・説明責任ではないでしょうか。 開始BSが作成されれば、株主には送付してもいいくらいだと思います。

○  事後開示の制度は良いと思いますが、合併期日から開示出来るもの、一定期間経過
(例えば2ヶ月ぐらい経過しないと用意できないもの)に開示できるものをきちんと区別して規定するのが良いと思います。
(合併期日=効力発生日から開示できるものは、それ以前に決まっていることしか開示できないですね。)

○  昔(H9改正前)は、合併報告総会(吸収合併の場合)・創立総会(新設合併の場合)を、例え ば10月1日が合併期日であれば、11月末頃開いていましたね。(その後登記で、登記の日 が効力発生日という変な制度でした。)報告総会で開始BSが株主に報告されていたかは知 りませんが、株主総会の特別決議で承認を受けた事項ですから、結果報告書ぐらい、閲覧・ 謄写請求されなくても、株主して欲しいと思います。
まあ、それはともかく、事後開示の情報としては、有益情報が抜けています。

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事業譲渡の競業禁止規定について

2007-04-02 00:15:57 | 商事法務

       会社法には、事業譲渡のとき、気を付けないといけない規定と言いますか、時代遅れと言いますか、変な規定がありますね。事業の譲渡をした場合の競業の避止・禁止の規定です。

○ 会社法21(旧商法25)には、事業譲渡会社は、当事者の別段の意思表示がない限り、同一市町村及び隣接市町村内においては、譲渡日から20年間同一事業を行ってはならないと定めています。

1)     同一というのも難しいですね。洋食屋さんを譲渡して、日本料理屋さんを始めた場合は、同種で同一顧客層を対象とした事業ですが、顧客が毎日洋食を食べる訳でもないですしね。対象物(商品・役務)は何か、その分母をどの様に考えるか、メーカか商社か、流通段階のどのステージか、対象顧客層は誰か等を総合的に判断して、まあ、常識的に決めると言うことでしょうか。

2)     インターネットによる事業を行っている会社はどうなるのでしょう?例えばインターネットである物を販売していた会社が事業を譲渡して、インターネットで他の物を販売し始めたときはどうなるのでしょうか。この場合同一市町村・隣接市町村ってどういう意味に解釈すれば良いのでしょうか?

3)     コンビニを数店舗保有しているオーナが1店舗譲渡したときと、大規模ショッピングセンターを譲渡したとき、同一・隣接市町村をどのように考えればよいのでしょうか?商圏の大きさが事業により全然違います。

4)    20年というのは今の時間感覚から言えば、ちょっと長すぎる、まあせいぜい5年ぐらいで良かったのではないでしょうか。せっかく現代化された会社法ですが、この規定のスピード感覚・時間の流れの感覚は明治時代の発想のように思います。

○ この規定を見て思うのは、これが「典型的に」あてはまるのは、今ではかなり限定的になったのではないかということです。例えば田舎の老舗の料亭・旅館・造り酒屋等を譲渡した場合等がその例かと思います。

○ 事業の種類にもよりますが、最近はますます地域・土地密着性が薄れています。小さなベンチャー企業でも、同じ市町村でビジネスという発想は最早ないのではないでしょうか。また地域密着性のある小売業等でも、市町村から一地方へ、地域へ、全国に、そして世界に拡大(例えばイオン等)し、さらに国境を越えたグローバル企業になります。この規定は何か、土地縛りの昔ながらの臭いがする規定ですね。

○ いずれにせよ、任意規定ですから、事業譲渡のときは、当事者間できちんと決めた方が良いですね。

○ 尚、余談ながら、会社法467条以下に事業譲渡等の規定がありますね。効力発生日の前日までに、株主総会決議により契約承認を受ければよくなりました。でも公正取引委員会への事業等の譲受けの届出制度(譲受会社が届出義務者)に該当する場合は、届出義務と相変わらず30日の待機期間を要求しています。理由があれば届出書提出と同時に出さなくてもOKですが、総会議事録の写し等も添付書類の一つとして必要ですね。

○ マーケットの把握について、地域の範囲(例えば横浜市で大規模ハンバーガーチェーンを展開している企業が事業売却したとき、地域として横浜市で考えるのか神奈川県で考えるのか、あるいは首都圏と考えるのか)と分母(ハンバーガーチェーンで考えるのか、洋風外食というくくりで考えるのか、外食というくくりで考えるのか等)は公取に行って相談しないと記入できませんし、届出受理日は、届出書を持ち込んだ提出日ではありませんので、スケジューリングは注意したいですね。

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