まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

内部統制は機能しているか

2011-12-10 21:53:10 | 企業一般

 

○ 会社業務の監督・監査する機関は、取締役会・監査役会等がありますね。これに加えて、システムとして内部統制があります。会社法36246を受けて施行規則1001項に規定され、また金融商品取引法第24条の4の4にて、内部統制報告書の提出を義務づけ、同法193条の2では内部統制報告書の監査法人による監査証明が規定されています。日本の内部統制は、米国のSarbane-Oxley Act of 2002SOX法)を、日本に適用するために少し簡便化し一部修正・追加したものですね。基本的には、日本の得意の米国のまねですね。<o:p></o:p>

 

○ 内部統制が実施され、多少は改善が計られたようですが、実態はどうでしょうか?大企業では、内部統制の担当部局を作って実施に向けた体制を整備しました。そして、その企業特有のビジネス、過去に社外に公表された不祥事等を踏まえて、今後は起こさないような規定の整備をしました。また簡単なパンフレットを作成して全社員に配ったところもあるようです。しかし、規定の整備は文書の作成ですね。文章力に長けた人がドラフトして、責任者の承認を得て制定しました。規定は制定すれば普及するものでは無いですね。絶えず研修・意識喚起などしないといけません。そこまでキチンとしている会社は、どうもあまり無さそうです。パンフレットは配布されても、すぐに机の中にしまってそれっきりです。きちっと読んでいる人は、社内で閑職に追いやられて、業務をあまりしない人ですね。これが実態ではないでしょうか?<o:p></o:p>

 

○ 不祥事を起こした企業を見ると、「規定はきちんと整備されていた」というのが多いですね。オリンパスもそうでしょう。大企業などは膨大な規定があります。そんなものいちいち読んでる人はいませんし、自分の仕事に直接関係無ければ、社内でどんな規定があるのかも知らないのが実情です。<o:p></o:p>

 

○ 海外でも同じでしょうね。SOX法は、エンロン事件・ワールドコム事件などを契機として制定されました。その後はどうでしょうか? 形式的には守られているかもしれません。しかし、サブプライムローンのお祭り騒ぎが終了し、米国ではリーマンショックが起こりました。守銭奴のゴールドマン・サックスなどは、営業の社内メール(2007.6.22のある営業マンのメール)で、「かす取引(Shitty deal)」と言いながら、投資家に推奨販売していました。金融工学・高等数学を利用した、目つぶしと誤魔化しを施して、ローンブローカー、商業銀行・投資銀行、格付機関等が「ぐる」になって集団無責任体制を作り、住宅価格が右肩上がりの前提でしか成り立たないスキームのハイリスク商品があたかも優良投資適格商品であるように化粧させて、そして破裂。最後のババは機関投資家等が掴みました。日本でも土地神話を前提に右肩上がりのバブル経済がありましたね。<o:p></o:p>

 

NYSE Listed Company Manual 303A.10には、Code of Business Conduct and Ethicsが規定されています。ゴールドマン等は、これを踏まえて、当然種々りっぱな社内規定を制定していた事でしょう。しかし、営業の一線・現場は、そんなことお構いなしに暴走してしまいましたね。<o:p></o:p>

 

 ○ オリンパスでは、取締役会(+「社外取締役」)・監査役会・内部統制のいずれも機能しなかったですね。経営トップと監査役の確信犯ですからね。社内の機関、規定の制定もさることながら、経営者・経営陣が自己規律し高度の倫理観を有する事が非常に大事だと思いますね。そして、経営者は常にその企業理念・経営姿勢を、管理職に徹底することが大事だと思います。内部統制報告書等のために内部統制を行うのでは無く、社会の公器として社会にキチンと貢献する会社として、末永く健全な成長をするためにですね。

 

Nov_17_23_2011

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なぜデラウェア州会社法なのか

2011-12-01 22:22:43 | 商事法務

 

 昔、私がコンサルタントみたいなことをやっていたときに、ある中堅企業から米国で会社を作りたいと言われました。ということで設立準拠法をデラウェア州として会社設立手続きをしました。勿論実質的な本店所在地は別の場所でした。また、米国の上場会社の半分以上はDelaware州の会社だと思います。なぜ登記地をデラウェア州として、デラウェア州会社法を準拠法として会社を設立するのでしょうか?今回は、その理由の解説です。<o:p></o:p>

 

 米国の会社法は州法により定められていますね。従い州法により内容が異なります。上場企業等の株式等の証券の発行・開示については連邦証券法、公開買付についてはWilliams Act of 1968、また最近では内部統制のSOX法、即ちSarbanes-Oxley Act of 2002等は連邦法ですね。<o:p></o:p>

 

 まず、どの州の会社法に準拠して会社を設立するかは発起人(Incorporator)が自由に選択できます。手続的な要件(登記+訴状受領の代理人等)を満たせば、本支店・工場等をどの州に設けようが自由ですね。<o:p></o:p>

 

 ではなぜデラウェア州が選ばれるのでしょうか?

1) 1899年の制定以来、株主・取締役の自治を重視した柔軟なものであり、発起人にとって便利だったからですね。<o:p></o:p>

 

2) デラウェア州は、東海岸に面した全米でもロードアイランド州次いで小さな州ですが、起業家にとって都合の良い法律を作って、企業誘致を計り、会社設立手続きにともなう租税収入を増やそうとしたわけですね。ただ、会社にとっては営業税等の州税を払わされてはメリットが無いわけですから、州内で営業しなければ州税の支払い義務も免除されますね。<o:p></o:p>

 

3) 他の州もデラウェア州のまねをして会社法の規定を緩和していますし、日本の会社法も緩和されていますが、デラウェア州法の特徴は、以下等ですね。

  発起人は1人でもよい。勿論会社でも個人でもPartnership等でもよい。

  資本金の下限が無い。

  株主総会・取締役会は、州外で開催可能。

  株主総会・取締役会は、実際に開催することなく、書面上の全員一致により決議可能。

  取締役は1人でもよい。

  1人のOfficerが、全ての役職(CEO, Treasurer, Secretary)を兼任できる。

  取締役会に付随定款(By-laws)の作成・変更権限を付与できる。

  自社株式の購入、自己株式の保有・売却が可能。

 役員(Directors & Officers)は、Duty of Loyalty(忠実義務)Duty of Care(善管注意義務)を負っていますね。米国の株主は、すぐに役員に損害賠償を請求する代表訴訟を起こしますが、基本定款(Certificate of Incorporation)にその旨の規定を置けば、役員の受任者としての注意義務違反から生じる会社・株主に対する損害賠償の責任を制限することも可能1986年改正)<o:p></o:p>

 

多くの会社がデラウェア州会社法の法人ですので、当然判例の蓄積も多いですね。即ち、事件例が多いということは、問題が起きれば判例を調べれば予見可能性が大きくなるという事ですね。<o:p></o:p>

 

 デラウェア州の会社法を巡る、その他の特徴は以下ですね。

1) デラウェア州の裁判所は、他の大多数の州と異なり、二審制を採用しています。第1審が、デラウェア衡平法裁判所(Delaware Court of Chancery)であり、第2審が最終判断を下すデラウェア最高裁判所(Delaware Supreme Court)ですね。正義と衡平の見地から柔軟な裁判を行います。多くの州では事実問題を認定する小陪審(petit jury)がありますが、デラウェア州では裁判官が判断を行います。

2) デラウェア州会社法の影響力が大きくなり、州毎に異なる弁護士といえども会社法はデラウェア州会社法を知っています。ただ、実際に蓄積された諸問題の判例や理論的な問題の解決を計るため、毎年細かな会社法改正が行われているようですね。→というわけで、キチンとキャッチアップ出来ないので、私がつまみ食いで読む会社法は、模範事業会社法です。<o:p></o:p>

 

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