まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

種類株式を使った剰余金の独り占め

2012-02-18 13:20:26 | 商事法務

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 また悪いことを考えていますね。今回は種類株式を使った分配可能剰余金の独占ができないか考えて見ました。どうも出来そうですね。勿論経営陣と良好な関係といいますが、経営陣と仲良く(?)していないといけませんけれども。また、剰余金が一杯ないと出来ない相談ですけれども。単純な方法は定款変更して配当優先の種類株式を発行して、少しずつ配当を普通株主に優先して受け取るということでしょうけど、もっとドラスティックな方法はないかと考えて見ました。ご興味ある人は試して見ては如何でしょうか。多分、普通株主から総スカンを食らっていじめられるでしょうね。私は人が良いからしませんけどね?<o:p></o:p>

 

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 普通株と同一の議決権を持つ株式。但し、残余財産分配劣後の種類株式を発行しては如何でしょうか。配当劣後とするのは普通株の株主様にいい顔するわけですね。実際上何の影響もありませんのでね。勿論残余財産分配優先株でも構いませんが。定款変更してこの種類株式を発行できるようにして、自分だけがその株式を全て引き受けるわけですね(種類株式の株主は1人)。そして暫くして、会社にこの自社株式を買い取ってもらって自己株式にします。財源規制即ち分配可能剰余金の金額、また自社株の買取価格とか買取株数などをあらかじめ考慮して、種類株式の発行株数を調整しておけばいいわけですね。<o:p></o:p>

 

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 自社株式の特定株主からの取得については、会社法160条に規定されています。特定株主からの取得は、種類株主総会の特別決議事項ですが、当該決議の議決権がありません(4項)。しかし、但書で「第一項の特定の株主以外の株主の全部が当該株主総会において議決権を行使することができない場合は、この限りでない。」としています。種類株式の株主は1人ですので、他株主が自分の種類株式も買い取って欲しいと請求(いわゆるTag along条項:1~3項)することもできません。「この限りではない」ので、自社株式の買取請求した特定株主だけが議決権を行使して決議・可決することができます。<o:p></o:p>

 

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 一方、種類株主総会の開催ですが、これは322条に規定されています。同条1項柱書では以下のように言っています。「種類株式発行会社が次に掲げる行為をする場合において、ある種類の株式の種類株主に損害を及ぼすおそれがあるときは、当該行為は、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議がなければ、その効力を生じない。」。そして「次に掲げる行為」を見ると、自社株式の取得はありません。本件では、「ある種類の株式の種類株主に損害を及ぼすおそれがあるとき」に該当しますね。普通株式の株主に分配可能な剰余金を独り占めするわけですからね。従い、いわゆる普通株式(種類株式を発行したときは、いわゆる普通株式も種類株式になるというのが会社法の考え方)の株主総会(普通株式の株主様の種類株主総会という言い方をされる場合もあります)の承認決議を取得しないといけませんが、次に掲げる行為は限定列挙で、自社株式の取得の記載がありません。限定列挙の項目には、定款変更、新株・新株予約権の株主割当や会社の合併や再編のときの規定しかありませんのでね。ですから、残余財産分配劣後株式の種類株主総会を開催して決議に承認すれば、会社に買い取ってもらえる訳ですね。勿論会社が成長して株式売却・買取価格を、しっかり上げてもらわないといけませんけれどもね。

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違法行為差止請求権と帳簿閲覧権

2012-02-11 22:46:55 | 商事法務

 

 株主には、取締役の違法行為差止請求権(会社法360条)、代表訴訟提起権(847)や取締役解任請求権(854)等がありますね(これらの権利を総称して「監督是正権」といいます)。代表訴訟は、株主が事後に会社に代わってする取締役に対する責任追及ですが、差止請求権は、株主が事前に会社に代わってする権利ですね。

 

 3601項では、次のように言っています。「(公開会社の場合)6箇月前から引き続き株式を有する株主は、取締役が株式会社の目的の範囲外の行為その他法令若しくは定款に違反する行為をし、又はこれらの行為をするおそれがある場合において、当該行為によって当該株式会社に著しい損害が生ずるおそれがあるときは、当該取締役に対し、当該行為をやめることを請求することができる。」。また通説は、法令・定款に定める具体的な義務に違反する行為だけではなく、善管注意義務・忠実義務という一般的な義務違反の取締役の行為も差止請求ができると解しています。<o:p></o:p>

 

 一方、会社法52節1款会計帳簿433条では、3%以上の議決権を有する株主に「会計帳簿又はこれに関する資料」の閲覧権が認められています。判例では、ここにいう会計帳簿又はこれに関する資料」とは、「総勘定元帳、手形小切手元帳、現金出納帳、売掛金明細補助簿及び会計用の伝票」までとしています。決算報告書は株主に当然送付されているので除外されていますが、結構重要な税務申告書(内訳書付き)、契約書等は除外されています。この規定の限界でしょうね。<o:p></o:p>

 

 差止請求は事前ですので急ぎますね。ですから差止の訴えを本案として、差止の仮処分申請が普通のパターンですね。訴えを起こす以上挙証責任は原告ですね。「法令・定款違反の行為をし、又は行為をする恐れがある」というのは、オリンパスの例でも分かるように、一般的に事前に外部の株主に分かることではないですね。帳簿閲覧権があるといっても、帳簿に記帳されるのは事後、即ち行為が行われた後ですね。学者の中には、「監督是正権を適切に行使しうるためには、会計帳簿閲覧権でもって会社の経理状況を正確に知りうることが必要である」等と不正確なことを言っている人もいますね。即ち、帳簿閲覧権は差止請求には役立たないということです。株主が差止請求できる場合というのは極めて限られた場合でしょうね。会計帳簿閲覧権のみならず、簡便に株主が会社の取締役の行為をチェックできる権利やシステム等ができないものでしょうかね?相変わらず監査役が用をなしていませんからね。<o:p></o:p>

 

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 会社法では、358条で「不正の行為又は法令若しくは定款に違反する重大な事実があることを疑うに足りる事由があるときは、3%以上の議決権ある株主は、当該株式会社の業務及び財産の状況を調査させるため、裁判所に対し、検査役の選任の申立てをすることができる。」としていますが、検査役選任請求等していたら、全く間に合わないですね。まあ、「検査役選任請求」をしたら、それが抑止力になるという効果は少し期待できると思いますけどね。<o:p></o:p>

 

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 ちらちら判例集を見ていたら、今や悪魔企業となった東京電力の判例がありました。東京電力の福島第2原発では、原子炉1機が機器に破損を生じ運転を停止していた。ということで株主が、運転再開差止の訴えを起こし同時に仮処分申請しましたが、争っている間に、資源エネルギー庁(現原子力安全保安院)と原子力安全委員会の検討結果を基に、東電の取締役が運転再開・継続をしてしまったのですね。東京地裁決定平2.12.27(判時137730頁)では、以下のように言っています。

「東電取締役らが、資源エネルギー庁・原子力安全委員会に対し、重要な情報を秘匿したとか、検討結果が基礎としている重要な事実と異なる事実が存在していることを知っているとかの特段の事情が無い限り、代表取締役としての善管注意義務ないし忠実義務に違反する業務執行ということはできない」。こういって、被保全権利に関する疎明がないとして却下されました。株主側で疎明等出来るわけないでしょと言いたいですね。<o:p></o:p>

 

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財産引受の規定は守られているか?

2012-02-01 00:27:46 | 商事法務

 

 今回は新設会社の開業準備行為の一つである財産引受の規定についてです。即ち、設立時の原始定款に以下を記載・記録し、原則として裁判所選任検査役の調査を受けないといけません。会社法28条①号で現物出資、続いて②号で財産引受の規定を設けていますね<o:p></o:p>

 

 現物出資:「金銭以外の財産を出資する者の氏名又は名称、当該財産及びその価額並びにその者に対して割り当てる設立時発行株式の数」<o:p></o:p>

 

 財産引受:「株式会社の成立後に譲り受けることを約した財産及びその価額並びにその譲渡人の氏名又は名称」<o:p></o:p>

 

この財産引受について、多数説・判例は、発起人は設立に必要な行為までしかできず、財産引受は特に必要性が大きいので厳格な要件のもとで法が特に認めたものであると言っていますね。<o:p></o:p>

 

 

 「財産引受の規定は遵守されているか?」と書きました。実態は、守られていませんね。大企業(上場企業)も含めて、この規定を守っていない、あるいは脱法的な事が多く行われています。ではなぜでしょうか? 簡単です。①この規定や事後設立の規定(467I⑤)を知らないからです。また企業の法務部の人もキチンと理解していない人も多いです。内部統制では当然法令遵守が求められています。専門の部署を設けたり、各部門に内部統制の担当者を配置したりしています。でも、肝心のこういった人たちが法令を知らないのですね。②仮に知っていても、あるいはこの規定に抵触するかも知れないと思っても、もし守ったら実務上かなり支障を来すからです。③親会社=発起人の名義で取得しておいて、会社が出来れば譲渡すればいいやと考える訳ですね。事後設立(467条)の特別決議も行いませんね。<o:p></o:p>

 

 

 典型的な具体例を2つ書きましょう。大企業が発起人となり新設子会社を設立するケースですね。<o:p></o:p>

 

1) 新会社のオフィスの賃貸借契約の差入保証金:新規事業を行う場合は、よく新設子会社を設立します。通常は、稟議可決されてからですが、会社はまだできていませんので、親会社が賃貸オフィスを借ります。オフィスの賃貸借は発起人の権限として設立を直接の目的とする行為と考えられています。しかし、実際上オフィスを借りるときは賃借人の登記簿謄本が要求されますが、登記申請前ですからありませんね。一方登記のときには本店所在地を決めておかなければなりません。貸主も借主優位なマーケット状況で、発起人が信用できる場合だと新設子会社が出来るまで待ってくれる場合もありますが、状況によっては、親会社が「立替金」勘定で、差入保証金を入れて併せて家賃を支払います。差入保証金はBSの「投資その他の資産」に表示されます。当然財産ですね。即ち、発起人たる親会社=譲渡人が、新設会社が成立すれば、特定の財産(少なくとも差入保証金部分は財産)を新設会社に譲渡する・新設会社はこれを譲り受ける旨の約束をするわけですね。会社が成立すると、新設会社は親会社から、差入保証金の立替請求書を受領して、立替金等を親会社に支払います。一方、新設子会社ができるとオフィス賃貸借契約は、貸主・借主たる親会社・新設子会社の三者間で、契約上(借主)の地位の新設子会社への移転、あるいは新たに借主を新設子会社にした賃貸借契約を締結するのですね。こういったケースで財産引受の手続き(定款記載&検査役調査)を行っているケースがどれだけあるでしょうか?<o:p></o:p>

 

2) 新設子会社のためのシステム開発:新設子会社が使用するシステムなどを半年以上も前から、親会社側で開発に着手して、その後で新設子会社設立の稟議を通して、サーバー・開発ソフトウェア・購入ソフトウェア等の一式を、親会社(発起人)から新設子会社が購入する場合等ですね。こういった事も結構頻繁に行われています。ひどい場合には、親会社側で生じた関連費用までも、新設子会社に負担させる場合もあるようです。開発したシステムの資産の価額を水増しして費用分までも請求ということだと、まさに目的物の過大評価、過大な価格で新設子会社が購入することになりますね。過大評価防止が立法趣旨のはずなのですがね。<o:p></o:p>

 

 

 現物出資・財産引受・事後設立等の制度は、株主・債権者保護の制度ですね。親会社は株主ですし、債権者も会社成立後暫くは親会社のケースが多いでしょう。要するに、迷惑を被る人は誰もいない訳ですね。従い、無効を主張する人もいません。その内に会社の活動が始まります。そうするともう誰もそんなことは覚えていませんね。こういう実態が結構ありますね。<o:p></o:p>

 

 

 私は、現物出資・財産引受・事後設立等は、登記等による開示制度を充実させるべきだと考えています。例えば、インターネット技術やソフトウェアを現物出資するときに、裁判所選任検査役(よくあるケースは、選任を申請した弁護士等が選任される場合もあります)が、こういったものの価値がわかりますか??<o:p></o:p>

 

 その他発起人が費用未払いの場合に成立した会社が、その債務を引き継ぐかという問題もあります。学説は分かれているようですが、原始定款記載と検査役調査を行ったか否かと債権者保護の視点で見解が分かれています。実務上は、そんな手続きは問題にせず、新設会社が払ってしまう例が多いのではないでしょうか。債権者は、お金が入れば文句は言いませんからね。即ち、開業準備行為について会社法は規定していますが、その規定を遵守している企業は少ないということです。<o:p></o:p>

 

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