まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

インド会社法の役員報酬規制

2014-04-13 16:02:13 | 商事法務

 

  • 日本では赤字企業の取締役でも不祥事を起こさない限り、きちんと報酬を得ていますね。しかしインドでは利益を稼げない会社の取締役は報酬を得るべきではないとされています。今回は、昨年成立し、今年4月からかなりの部分が施行された、インド The Companies Act,2013の報酬規制について書いて見ましょう。インドの会社の類型としては、公開会社(公開=上場という意味ではない)、非公開会社、みなし公開会社の3種類です。1956年会社法では、100%子会社を除き日本の親会社が上場企業ならインド子会社は、非公開会社であっても「みなし公開会社」とされて、取締役の報酬規制に該当して、これを満たせない場合はインド中央政府の承認を取得しなければならなかったですね。新規に進出した日系自動車部品会社の役員の人は、この中央政府承認を取られた人もいるのではないでしょうか。もっとも日本からの派遣役員は、別途日本払い給与を出向元会社が、日本の口座に振り込むとか、厚生年金保険を日本で継続しておかないといけないとか、いろいろ背後事情もありますが。

     

  • こんどの2013年会社法では、公開会社・非公開会社を問わず、報酬額規制が適用され、原則としてインド政府の承認を取らないといけないのですが、承認取得を要するのは一定額以上の場合だけとされていますので、殆どのケース承認不要になるのではないでしょうか。但し、役員就任前のインドでの居住条件も、公開・非公開会社に両方に適用されるようになりましたので、こちらは政府承認を取得せざるを得なくなりましたね(Section 196 &197 Schedule V Part Iに、取締役の資格として法令違反で判決を受けていない者、21歳以上・70歳未満の者& 居住者であること等を規定があり、Part IIに報酬額規制の詳細があります)

 

 

  • 報酬額規制は、①利益の出ている会社と利益の無い会社、②公開会社なのか非公開会社なのかという切り口で捉えられています。会社法のChapter XIII Appointment and Remuneration of Managerial Personnel Section196以下に規定されています。

     

    • Public Companyの場合は、全取締役(非常勤込み)の報酬額は、当該期の純利益の11%を越えないとされています。Net profitであってgross profitから差し引いてはならないとし、さらにその計算方法まで規定されています(198条以下)。また更に11%以下であっても、常勤取締役(Managing Director, whole-time director等)一人の報酬額は5%以下であり、常勤取締役全員の報酬額は10%以下とするとしています。非常勤取締役への報酬額は1%以下とされています。

       

    • Shedule V Part II Section IIには、利益の無い会社の取締役報酬規制が規定され、(A)(B)いずれか以下限度を超えないときは政府承認不要としています(not exceeding the higher of the limits under (A) or (B)ですが、 (B)は、新設現地法人への取締役就任には関係ないので、以下では(A)のみ記載)

      (Crore=Rp1000,Lakhs=Rp10. Less than a year=Pro rata. 総会特別決議で承認された場合は、2倍までOK)

       

      Effective Capital Yearly Max Remuneration

  1.  Negative or less than 5 crores 30 lakhs

  2. 5 ? 100 42

  3. 100-250 60

  4. 250 corores and above 60 + 0.01 of effective capital in excess of Rs.250 crores

 

 

上記の条件:(i) 指名報酬委員会のある上場企業では、その委員会承認と取締役会決議

(ii) 指名前年度に、金銭債務の支払不履行のないこと。

(iii) 3年超ではない期間の報酬支払いであり、総会特別決議承認を得ること。

(iv) 一定事項(省略)を記載した総会招集通知がなされていること。

 

  • この次のSection (=Schedule V Part II Section III)では、新設会社(7年以内)や更正会社の場合は上記限度額を超えて支払い可能としていますが、同時に厳しい開示条件等もあり、これを守るのは難しいので、Section IIIの適用はあきらめた方が良いでしょう(他の会社から報酬を受けとってはいけないという条件があり、出向元企業が、現地での報酬との差額を負担して日本で払っている場合等です)。

     

  • 上記のSection II & IIIの報酬額は、以下を除外できるという規定がSection IVに定められています。- 厚生年金(Provident Fund contribution)保険料、任期終了時の有給休暇の買取。更に、外国人(expatriate)の場合は、子供教育手当、外国在子供教育の休暇手当、海外休暇手当(home countryへのleave travel concession)等を除外してよいとしていますが、上限や、飛行機はEconomyだとかいろいろ制限が課されていますので、詳細をチェックしたい方は、会社法原文をご覧下さい。

     

  • 報酬額は、Auditor or Secretarycertify して且つ会社登記局(Registrar)への報告書中の記載事項でfiling しなければならないことになっています。

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他社株転換社債(EB)について

2014-04-04 00:27:37 | 株式関連

 

  • 他社株式交換権付社債(Exchangeable Bond=EB)とは、株式関連仕組債のうち、償還金の代わり株式で返還されるものを言いますね。特徴としては、償還時に指定された特定株の株価によって償還条件が変動する債券ですね。ITバブルの頃、証券会社がいかにも儲かりそうな言葉で宣伝して、多くの人が多額の損失を蒙ったため、なりをひそめました。この社債は、株式への交換価格の上限が設定されており、それ以上の利益(+利息)は得られませんが、株式に転換されれば株価はいくらでも下がる可能性があり、ハイリスク・ローリターンで証券会社だけが儲かる仕組債と言えます。今回は、この基本的仕組みについて一例を交えて考えて見ましょう。

     

  • 日本の上場企業(IPOを考えている会社の場合も含む)の大株主が、例えば、株価1万円の株式10万株=10億円相当の株式をCaymanSPC(Special purpose company)に譲渡します。

    そのSPCとは、第三者(銀行等)に委託して例えばCharity TrustとしてUS$1,000ぐらいのチョー過小資本で、当該株式を保有する目的のために、直前に設立されたSPCです。

    SPCは、株式購入代金10億円を株主に支払いますが、株式購入と同時に、一定の期日・条件(IPOを目指す会社の株式の場合には、IPO価格で株式に転換する等の条件)が整えば株式に転換する条件の社債を発行します。この社債を証券会社は投資家に販売するわけですね。

     

  • では、SPCが購入した株式はと言えば、信託銀行に寄託されますね。もし、このEBの購入者が1社の場合には、その購入者のために寄託された株式を譲渡担保とすることも出来ます。従い、SPCが当該上場株券の登録株主ですが、譲渡担保ですから社債購入者が所有権を有するということになりますね。

 

契約という観点から上記を見ると、

1) 社債購入者は、社債引受(Subscription Agreement)契約を締結します。

2) 譲渡担保も取得できるなら譲渡担保契約(Assignment Charge Agreement=英国法系ですのでCharge=担保という意味)も結ぶことになります。 

3) SPCは信託銀行に株式を寄託しますので、株式寄託契約(Custody Agreement)を結ぶことになります。

4) SPCは、その発行する他社株式転換権付社債の金利支払事務・管理等を信託銀行に委託しますので、これについて財務代理人契約(Financial Agency Agreement)を締結します。

 

各当事者の国・場所の事を書いていませんが、上記スキームを国際税務戦略に沿って行いますので、かなり複雑なスキームになります。まあ、EBへの投資家で儲かったという人・会社は聞いたことがありません。この種仕組債は、これをアレンジする証券会社と証券会社系の銀行のみが儲かる仕組みでしょうね.

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