まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

Force Majeure (不可抗力)条項について

2013-11-24 21:36:59 | 商事法務

 

 東日本大震災や今回のフィリピンの台風により工場が被災して出荷出来なくなれば、これは誰の目にも明らかな不可抗力(acts of Godで、売主は免責ですね。民法415条(債務不履行による損害賠償) では「債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。」ですから、履行不能になったけれども、債務者に帰責事由が無い場合には、債権者は損害賠償請求をすることができません。<o:p></o:p>

 

 

 UCCでも規定されています。§ 2-615. Excuse by Failure of Presupposed Conditions.

Except so far as a seller may have assumed a greater obligation and subject to the preceding section on substituted performance:<o:p></o:p>

(a) Delay in delivery or non-delivery in whole or in part by a seller who complies with paragraphs (b) and (c) is not a breach of his duty under a contract for sale if performance as agreed has been made impracticable by the occurrence of a contingency the non-occurrence of which was a basic assumption on which the contract was made or by compliance in good faith with any applicable foreign or domestic governmental regulation or order whether or not it later proves to be invalid.

 

(b) Where the causes mentioned in paragraph (a) affect only a part of the seller’s capacity to perform, he must allocate production and deliveries among his customers but may at his option include regular customers not then under contract as well as his own requirements for further manufacture. He may so allocate in any manner which is fair and reasonable.

(c) The seller must notify the buyer seasonably that there will be delay or non-delivery and, when allocation is required under paragraph (b), of the estimated quota thus made available for the buyer.

  

 上記のような規定がありますが、一般的に売主に安易に不可抗力を認めると買主が不利となります。従い、履行不能が生じても法律上当然に免責が認められる場合は、非常に限定されていると言われています。<o:p></o:p>

 

 

 ではどうすれば良いのでしょうか?それは、契約書に出来るだけ多くの例を挙げて不可抗力条項を入れておくことですね。そうすれば、法律で認められている範囲を超えて、契約で不可抗力を認めてもらえる場合も多いと思います。例えば、ポピュラーな不可抗力条項は以下ぐらいではないでしょうか。
 
Either party shall not be liable to the other party for failure or delay in the performance of any of its obligations under this Agreement for the time and to the extent such failure or delay is caused by riot, civil commotions, wars, hostilities between nations, governmental laws, orders or regulations, embargoes, actions by the government or any agency thereof, acts of God, storms, fires, accidents, strikes, sabotages, explosions, or other similar contingencies beyond the reasonable control of the respective parties.<o:p></o:p>

 

 

 最後に同種のother similar contingenciesと書いています。この部分の解釈則は、前者と同種・同類のもののみに限定すべきという解釈則が働きます。従い異種類のものは不可抗力から除外されるので注意が必要ですね。この同類解釈則のことをRule of ejusdem generisと言うと英米法辞典に書いていました。

<o:p></o:p>

Dsc_0290

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

英米の契約書のCorporate Seal

2013-11-09 11:40:25 | 商事法務

○最近は、英文契約書でCorporate Seal(正式な会社印)の押捺された契約書を見なくなりましたね。M&Aの契約書等の重要契約にも押していません。仮に相手が押捺してきても、日本側では会社印は普通は押しませんね。こういう場合は、日本側では会社印(角印・社判)ではなくて、代表取締役印を押せば良いと思います。代表印なら、代表取締役の行為であり、日本では業務に関する一切の裁判上又は(=and/or)裁判外の行為をする権限がありますし、その権限に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができませんのでね(349)<o:p></o:p>

 

<o:p> </o:p>

 

 英米では、代表取締役という機関はありませんね。会社の権能は、定款等の制限に従い、取締役会によって行使されるか、取締役会の授権に従い行使されます。模範事業会社法8.01(b)には、以下のように定めています。

(b) All corporate powers shall be exercised by or under the authority of, and the business and affairs of the corporation managed by or under the direction of, its board of directors, subject to any limitation set forth in the articles of incorporation or in an agreement authorized under section 7.32.<o:p></o:p>

 

<o:p>

</o:p>

 

 ということで、買収契約のRepresentations & Warrantiesの一つの項目として、例えば以下のようなAuthorizationの規定が入るわけですね。

The Seller has full corporate power and authority to execute and deliver this Agreement and to consummate the transactions contemplated hereby, and the execution, delivery and performance of this Agreement by the Seller has been duly authorized by all necessary corporate action of the Seller and this Agreement has constitutes the legal, valid and binding obligations of the Seller, enforceable against the Seller in accordance with its terms.

しかし、もし相手方がCorporate Sealを押してきたら、上記のような文言は不要になります(勿論入れても良いのですが)。<o:p></o:p>

 

<o:p>

</o:p>

 

 Corporate Sealを押すには、英米では取締役会の承認が必要だからですね。この会社印は、会社のOfficerであるSecretaryが管理します。Secretaryは、会社法の定める任務と責任を負いますが、この任務の一つとして、会社の行為が、法令、基本定款・付属定款に合致しているか、きちんとした手続きがなされているかをチェックし確認しなければなりません。つまり取締役会の承認を確認してから、Corporate Sealを押すことになります。Corporate Sealの押された書面は、取締役会によりauthorizeされたものという推定(presumption)を受けるわけです<o:p></o:p>

 

<o:p>

</o:p>

 

 Corporate Sealの押印といても、日本のような朱肉はありません。小豆色のろう(封蝋)をたらして、その上に刻印式のSealを押すわけですね。こんど欧米企業と重要契約を締結するときに、Corporate Sealを押してくれと言って見ては如何でしょうか?<o:p></o:p>

 

Dsc00671_2

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

会社法改正-子会社株式等の譲渡

2013-11-01 00:21:12 | 商事法務

 

 先のブログで、監査・監督委員会設置会社制度の創設は馬鹿げていると言いました。今回は、「親会社による子会社株式等の譲渡」についての「けち」です。法制審議会会社法制部会で決定された要綱案の該当箇所(P14)には、下記のように記載されています。<o:p></o:p>

 

 

 「株式会社は,その子会社の株式又は持分の全部又は一部の譲渡をする場合であって,次のいずれにも該当しないときは,当該譲渡がその効力を生ずる日(以下3において「効力発生日」という。)の前日までに,株主総会の特別決議によって,当該譲渡に係る契約の承認を受けなければならないものとする。<o:p></o:p>

 

  当該譲渡により譲り渡す株式又は持分の帳簿価額が当該株式会社の総資産額として法務省令で定める方法により算定される額の5分の1(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては,その割合)を超えないとき。<o:p></o:p>

 

② 当該株式会社が,効力発生日に,当該子会社の議決権の総数の過半数の議決権を有するとき。<o:p></o:p>

 

 

 現行会社法467条(事業譲渡等の承認等)の規定で、総資産の1/5超の資産を譲渡する場合の特別決議による承認と同じ趣旨で、企業グループ・連結で考えれば株式譲渡等でも同じではないかという事で、会社法改正に盛り込まれたものだと思います。米国の模範事業会社法でも同じような規定をおいています(§12.02)<o:p></o:p>

 

<o:p></o:p>

 

 この要綱案っておかしくないですか?「いずれにも該当しないとき」と言っています。つまり①にも②にも該当しないときという意味ですよね。①では「1/5を超えないとき」と言っていますので「該当しないとき」とは「1/5を超えるとき」ですので、これに加えて②でも該当しないときは総会特別決議が要るということですね。従い、②のケースでも①と同様に、「議決権総数の過半数を有しないとき。」と記載しないといけないと思いますね。即ち、今の「過半数の議決権を有するとき」では、「該当しないとき」は「有しないとき」ですから、10%や20%の場合に総会特別決議が必要となり、50%超の株式譲渡は特別決議不要となりますね。要綱案の書き方が「ちょんぼ」しているのでしょうか?

会社法制部会の委員には、有名大学の多くの教授、有名東京地裁判事等錚々たる人が就任しています。要綱案をきちんと読んでるんでしょうかね?<o:p></o:p>

 

 

 株式による会社支配権の移動は、事業譲渡等と違って、やはり迅速性が必要なのではないでしょうか。確かに独禁法の企業結合の事前届出制度ができて(昔は事後の株式保有報告でしたが)、一定規模以上の場合には、20%/50%超の場合には30(届出日は届出書を公取に持ち込んだ日ではないので要注意)の取得禁止期間が出来ました。子会社株式譲渡で、特別決議が必要となると、大きな企業では総会開催に2ヶ月必要ですし、迅速性が無いですね。また、会社法で定めると小さな企業集団の小さな規模の株式譲渡にも総会特別決議が必要ですね。確かに株主の意向を無視して経営陣が行う危険性はありますが、有力株主には事前説明をして、内諾を得てから行うのがビジネス界の常識ですから、わざわざ会社法で規定することもないと思います。

<o:p> </o:p>

 

 株式譲渡だと抜け道が出来るのではないでしょうか。例えば、100%子会社の売却ですね。まず50%を売却して、翌日に1株を別の会社、あるいは買収企業の関係者個人に第三者割当増資をすれば、旧親会社は50%未満になりますね。いろんな規制が出来ても、いろいろ違法ではない抜け道ができるものです。

<o:p> </o:p>

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする