まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

米国の物的担保

2013-04-20 11:05:53 | 商事法務

 

 米国の物的担保です。ご承知の通り、法律上当然に認められる法定担保権と債務者と担保権者間にて契約で生じる約定担保権がありますね。法的担保権としてはLienがあります。日本語では先取留置権とでも言った方が良いでしょう。当初は、占有の取得と継続が条件でしたが、衡平法により占有に関係なく認められるようになったようです。Warehouseman’s LienとかMaritime Lien(Lien for freight)等ですが、Tax Lien等もあります。物的担保としては、① Mortgage、②Deed of Trust (以上が抵当権)、③Pledge(質権)、④Title Retention Sale(所有権留保売買)、⑤Chattel Paper (動産担保証券)が主なものでしょうか。<o:p></o:p>

 

 

 不動産担保権(Security Interest in Real Property) ? 不動産担保は、その地域・土地と人々との取引が基礎としてあるので、各州ごとに発展しており、共通点もありますがどうも各州ごとにいろいろな差異もあるようですね。スキームとしては、Deed of TrustTrustですから3間契約ですが、MortgageMortgagor(債務者)Mortgagee(債権者)間の2者間契約ですね。Trustの発達している米国ですので、Deed of Trustの方式の方が有力なようです。<o:p></o:p>

 <o:p> </o:p>

 

 Deed of Trustでは、Trustor(債務者)Beneficiary(債権者)Trustee(債権者の為にTitleを保有する者=一般的にはTitle Insurance & Trust Company)の3者間で約定されます。Titleは、債務者からTrusteeに移転され、TrusteeTrustorの為にTitleを持つわけですね。債務者がdefaultしたときは、Trusteeが競売により換価処分(Foreclosure)を行います。換価処分には、裁判所の後見無しに競売できる任意換価処分(Foreclosure by Power of Sale)ができる州もあるようですが、裁判所の後見のもとに司法換価処分(Judicial Foreclosure)を行うのが多いようです。<o:p></o:p>

 

 

 動産担保権(Security Interest in Personal Property)については、Uniform Commercial Code(UCC) Article 9に規定されていますUCCは不動産担保には適用されません)。しかし、各州には、従来の法律や慣行もあり、必ずしもUCC通りではないようです。

Article 9は、9-104に定める適用除外を除き、動産又は附従物(Fixture)に対してSecurity Interest(担保権)を設定しようとする全ての取引、及びAccounts又は動産担保証券(Chattel Paper)saleに適用されます。また、委託販売取引(Consignment)/Lease取引でも当事者の意思が担保取引の場合、所有権留保売買(Title Retention Sale)は担保のためと推定されます。但し、連邦制定法による担保権、Landlord Lien、役務・資材提供した者が取得するLien、賃金請求権の移転等には適用されません。<o:p></o:p>

 

 

 担保物(Collateral)- 担保権の対象財産は以下のように分類されます。

 Goods (物品)-消費者用物品、事業用物品(Equipment)、農産物(Farm Products) & Inventory(棚卸資産)です。

 Documents (権原証券)-Bill of Lading(船荷証券)やWarehouse Receipt(倉庫証券)

 Instruments (金銭・投資証券)-小切手、手形、譲渡性預金証書、社債券その他

 Chattel Paper (動産担保証券)-金銭債務と特定商品における担保権の両方を証する書面

 Accounts ? 販売・リースされた物品・提供役務に対する支払請求権で、Instrument/Chattel Paperによって表章されていいないもの。

 General Intangibles (一般無形資産)-Patent, Trade MarkCopyright<o:p></o:p>

 

<o:p> </o:p>

 約定担保権の設定(Creation)は、Security Agreement(担保契約書)に署名するか、担保物が担保権者の占有となることにより成立しますが、第三者に対する対抗力の具備(Perfection)が必要です。この具備には、指定Office(Secretary of State)でのFinancing Statementへの登録、占有等が必要ですが、何もしないでPerfectionとなる場合もあります。Perfectionをしないと第三者に対して優先権の主張ができなくなります。即ち、担保権は発生(attach)しないと、債務者・第三者に対してenforceableとはなりません。また担保権者間では、先にattachした方が優先します。<o:p></o:p>

 

 

 担保権の実行(Enforcement)は、債務者が担保契約書記載の契約違反=defaultをすると担保権者により行われます。担保権者は、Judicial Processによらずに担保物の占有を回復して、9-504(3)の手続きに従い、Commercial reasonableな方法で、事前に債務者に書面による通知を行ったうえで、private or public saleによりCollateralの処分を行います。担保権者は、Enforcementに要した費用や担保契約書に規定する弁護士費用を差し引いた後、担保された債務に充当し、残余があれば劣後の担保権者の債務に充当し、更に余剰があれば債務者に返還されます。

<o:p>

20120421

</o:p>

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

米国独禁法の概要⑤―価格差別等

2013-04-12 23:18:27 | 商事法務

 

 今回は製品価格の設定についてどのような規制がされているのかを検討してみたいと思います。価格については、Robinson-Patman Act (=RPA)によりClayton Act 2条が修正されています。制定の背景として、米国では大型スーパーが1930年代からできはじめ、この流通業者が強力な購買力を持つことにより、中小業者が圧迫されている状況から救済するために1936年に制定されました。Sherman Antitrust Actでは、取引(競争)を制限する行為は違法として価格協定(Price Fixing)等を違法としていますが、価格設定などには立ち入っていませんが、RPAでは価格設定行為に立ち入って規制をしています。<o:p></o:p>

 

 

 アメリカ法律家協会のWEBでのRPAの紹介には以下のように記載されています。

The RPA was enacted as an amendment to Section 2 of the Clayton Act. Six subsections make up the RPA:

Section 2(a) prohibits certain forms of price discrimination by a seller;

Section 2(b) provides an affirmative defense to discrimination intended to meet competition;

? Section 2(c) prohibits certain brokerage fees and commissions;

? Sections 2(d) and (e) prohibit sellers from discrimination in providing allowances or services to competing customers for promoting the resale of the seller’s products;

? Section 2(f) prohibits buyers from inducing a seller to violate the RPA.

上記の補足は以下です。即ち、(a)では売主による価格差別の禁止、(b)では競争対抗を意図した差別に対する抗弁、(c)ではブローカへの報酬やコミッションの禁止、(d)(e)では売主に対し、差別的なallowance/service提供の禁止、(f)では買主による、売主に対するRPA違反行為の誘引の禁止ですね。<o:p></o:p>

 

<o:p> </o:p>

 上記規制のコアは、Price Discrimination(価格差別)」ですね。では、どういった場合なのか見ていきましょう。

・原則は、一定の状況下で異なる買手間で価格差別を設けることを一般に違法としています。米国では、メーカ等がPrice Listを公表している例が多いですが、この法律の影響かもしれません。

比較される価格は、ほぼ同じ時期に購入した商品(サービスではない)で異なる買手に課されたもので、値引き・リベート等を除いた正味価格です。

・また、価格差別が競争に影響を与えるものであることも条件になっています。競争に影響を与えるレベルとは、販売会社のレベルの他の事業者・取引先、あるいは有利な取扱いを受けた顧客と優遇を受けていない顧客の段階等で生じます。

・低価格に対抗するために対抗値下げをした事業者の価格設定は、善意の場合(というよくわからない言葉がついていますが)には正当化されます。

・その他の正当化事由は、生産終了・閉店セール、賞味期限まじか、数量差、納期差等の場合は、価格差が生じても、合理的理由があるので特に違法になることはありません。<o:p></o:p>

 

<o:p> </o:p>

 具体的事例でみて見ましょう。

1) 売手段階の競争阻害(Primary Line Injury) (Injuryというのは傷害ではなく法益侵害という意味ですね)S1(売手1)は、A製品をB1(買手1)に1個$110で販売、一方S2は、同じA製品をB2$100で販売中。S1が、S2を蹴落としてB2の買主を奪うためB2にだけ$80で販売する場合ですね。<o:p></o:p>

 

2) 買手段階の競争阻害(Secondary Line Injury):S1が、B1/B2とも取引しているが、同じA製品を、B1は(可愛い買手なので?)$80で販売、B2は(おっさん買手なので?)$110で販売すれば価格差別になります。

 

3) 買手の買手段階における競争阻害(Third Line Injury:S1は、大手スーパ$100で販売、卸売業者には$90で販売する場合等ですね。その卸業者は小売業者のスーパ$100で販売するように売主が拘束すると、再販売価格の拘束が生じ、これもAntitrust法違反となります。⇒独禁法の基本原理間の衝突が起こっているのですね。ややこしいですね。

Dsc_0232

<o:p></o:p>

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

米国独禁法の概要④-取引先との契約関係の規制

2013-04-06 22:10:05 | 商事法務

 

 今回は、取引先との契約関係での規制です。反トラスト法上問題になるのは、1) 垂直的非価格制限、2) 垂直的価格制限、3)抱合せ販売、4)排他的取引、5)価格差別、6)垂直的取引拒絶です今回は、まず1)の垂直的非価格制限(vertical non-price restriction)から見てみましょう。但し、垂直的非価格制限は価格制限(再販売価格コントロール)を伴う場合もありますので、一部価格制限についても触れたいと思います。

 

○ 取引の垂直的非価格制限(Vertical non-price restriction)は、①一手販売権(Exclusive Dealing Arrangement)、②競合品の取扱禁止、③地域制限・顧客制限、④抱合せ契約(Tie-in/Tying Contract)、⑤再販売価格維持(Resale price maintenance)の観点から捉えることができます。一般的にはper se illegalではなく、rule of reasonで判断されますが、例外もあります。

① 一手販売権(Exclusive Dealing Arrangement)

  メーカ等のSupplierが製品の販売業者に独占的販売権を与えることは、Supplierが他の販売業者を起用できないという拘束を受けるが、反トラスト法上はRule of reasonにより判断される。当該地域の当事者のシェアーが高くない限り、競争状態は維持されるので、適法になるケースが多いが、裏でSupplier同士が協定を結んだりすれば話は別であるということですね。<o:p></o:p>

 

② 競合品の取扱禁止

 Supplierが、販売業者に対して他社の競合製品を扱わないという条項により販売業者が拘束を受ける。これについては、Rule of reasonにより判断されるが、まずClayton Act 3が適用されることになります。 

Section 3. That it shall be unlawful for any person engaged in commerce, in the course of such commerce, to lease or make a sale or contract for sale of goods, wares, merchandise, machinery, supplies or other commodities, whether patented or unpatented, for use, consumption or resale within the United States or any Territory thereof or the District of Columbia or any insular possession or other place under the jurisdiction of the United States, or fix a price charged therefor, or discount from, or rebate upon, such price, on the condition, agreement or understanding that the lessee or purchaser thereof shall not use or deal in the goods, wares, merchandise, machinery, supplies or other commodities of a competitor or competitors of the lessor or seller, where the effect of such lease, sale, or contract for sale or such condition, agreement or understanding may be to substantially lessen competition or tend to create a monopoly in any line of commerce.

 

・ 結論を先に言いますと、契約書に競合品の取扱禁止条項は入れない方が良いということです。such condition, agreement or understanding may be to substantially lessen competition」と規定しています。では、substantially lessen competitionの判断はどういった観点からされるのでしょうか。それは、1) Quantitative Substantiality Test (数量的実質性テスト)と2) Qualitative Substantiality Test(質的実質性テスト)からなります。 

1) -->

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

米国独禁法の概要③-知的財産と独禁法

2013-04-04 23:05:41 | 商事法務

 

 特許は独占を認めますね。大変なチャレンジと努力の成果ですし、その結果として収益機会の独り占めは認められて当然ですが、特許は公開され、それを超える技術の進歩を促します。だから、特許は、反競争的性格と競争促進的(Pro-competition)の性格がある訳ですね。特許は、反トラスト法(米国独禁法)を排除するのが原則なのですが、特許を利用して競争を制限して不当に利益を独占しようとする動きは、やはり反トラスト法の対象となります。但し、特許等で保護される範囲と反トラスト法で規制する部分の境界が不明確というのが実情ですね。従い、米国司法省&FTCは、「知的財産のライセンスに関する反トラストガイドライン(Antitrust Guidelines for the Licensing of Intellectual Property, Apr. 1995)」を公表しています。暇とご興味のある人は、これを読んで私に教えて下さい。私は、読んでいません。

【1】特許の取得 

特許の取得は、原始取得、承継的取得とグラントバックによる取得の3つがありますね。

 原始取得(Acquisition by Grant from the Patent Office) ? 原則として反トラストの問題は生じませんね。例外的に独占訴訟において特許取得そのものが独占行為とされる余地がないわけではないですが。

 

 承継取得(Acquisition by Purchase) - 特許は当然資産ですから、Clayton Act7条の資産取得による反トラスト規制に服します。そこでは、直接間接の株式取得に加えて、「no person subject to the jurisdiction of the Federal Trade Commission shall acquire the whole or any part of the assets of another person engaged also in commerce or in any activity affecting commerce, where in any line of commerce or in any activity affecting commerce in any section of the country, the effect of such acquisition may be substantially to lessen competition, or to tend to create a monopoly.と規定しています。

米国のシンガーミシンが、日本製のミシンを駆逐する目的で、スイス・イタリアの会社から特許を譲り受けたことがSherman Act 1条のconspiracyになるとされました(United States v. Singer Mfg. Co.-374 U.S.174 1963, Supreme Court 1969

 

 グラントバックによる取得(Acquisition by Grant-Back) ? これは問題になるケースがありますね。グラントバックとは、特許実施契約でLicenseeの改良発明をLicensorに、譲渡又は実施権許諾をする条項です。一種の抱合せ(tie-in)契約ですね。有体物ではないので、Clayton Act 3条は適用されずSherman Act 1条の「合理の原則(rule of reason)」により判断されます。その場合の考慮点は、1) 改良発明と対象製品に対するLicensorの立場、2) Grant-backが当事者の研究開発に与えるインセンティブ・ディスインセンティブ,3) Grant-backが独占的実施権の形態かどうか、4)相互性があるか。即ちLicensorも自らが開発した改良発明をLicenseegrantするかどうか、5)基本特許と改良発明との関連性、6)Grant-back条項の期間は基本特許の期間を超えているかどうか、7)Royaltyの支払義務があるかどうか等により判断されます。

 

2】特許ライセンス(実施許諾)契約

  特許ライセンス契約自体は、特許権の権利行使なので当然問題になりません。反トラスト法上適法です。但し、実施許諾契約が、a) 水平的に競争者間で価格協定、市場分割、あるいは過度な取引制限を行う共謀を行う手段の場合には、反トラスト法が介入します。また、b) 排他性(exclusivity)があるかどうかという点もポイントになりますが、実施許諾にあたり、特許権行使を実施権者に認めるExclusive License(専用実施許諾。勿論この場合も適法)と、特許権行使を実施権者に認めないNonexclusive License(通常実施許諾)にするか

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする