まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

有価証券減損処理の恣意性

2009-03-29 00:56:55 | 企業投資

     3月決算期が近づいています。有価証券を保有している会社は、決算時の会計処理として保有目的毎の有価証券について、①評価基準に基づく評価差額の処理と②減損処理(売買目的有価証券は①だけ)の2つをどうするか悩むところですね。今回は、有価証券とりわけ株式の減損処理について、自分の勉強のために整理し、併せてその恣意性についても述べて見たいと思います。以下の赤字の部分が、判断といいますか恣意性が入る部分ですね。

時価のある有価証券(日本基準)

売買目的有価証券以外の時価のある有価証券については、①時価が著しく下落し、②回復する見込があると認められる場合を除き、時価をもって評価し評価差額を当期の損失として損益計算書に計上することになっていますね。

     時価の著しい下落50%以上の下落の場合が著しい下落とされていますが、30-50%の下落の場合(=税務上の損金にはならない)でも、会社で基準を作り、これに該当する場合は「著しい下落」ですね。

     回復する見込:(株式の場合)下落が一時的であり、約一年以内に時価が簿価に近い水準まで回復する見込があることを合理的な根拠をもって予測できること。

     まず時価とは、公正な評価額であり、市場(独立当事者間)の取引価格、気配値その他の相場(=市場価格)に基づく価額ですね。市場価格がない場合には、経営者の合理的な見積りに基づく合理的に算定された価額を公正な評価額としますね。

尚、合理的な算定とは、公表されている類似金融資産の市場価格に、利子率・満期日・信用リスク・その他の変動要因を調整する方法、将来キャッシュ・フローの割引現在価値(DCF)を算定する方法、一般に認知されている理論値モデル等を使用する方法であり、合理的見積が困難な場合には、対象金融資産について上の方法に基づき算定された第三者評価の価額を合理的に算定された価額とすることができるとしています。

時価のない有価証券(日本基準)

株式について、当該株式の発行会社の財政状態の悪化により実質価額(一株当たりの純資産額)が著しく低下したときは、相当の減額をなし、当期の損失としなければならないこととなっています。また、市場価格のない株式の実質価額が「著しく低下」とは、株式の実質価額が取得価額に比べて50%程度以上低下した場合をいいますね。尚、子会社・関連会社の場合で、中長期の事業計画を入手し、それにより回復可能性がきちんとした証拠により裏付けられるのであれば、減損処理を行わないことも認められています。時価のない有価証券の場合は、上記②の「回復する見込みのある場合を除き」という条件がありません。

減損処理(米国基準)

米国会計基準ではどのように規定しているのでしょうか。日本でも金融庁の承認を得て、財務諸表を米国会計基準で作成・開示している会社がありますね。

Statement on Auditing Standards (監査基準書)SAS No.92 Applicability 47 Impairment Lossesには以下の様に規定しています。

Regardless of the valuation method used, generally accepted accounting principals might require recognizing in earnings an impairment loss for a decline that is other than temporary.

米国では、日本のように50%等と言う定量基準がありません。日本で米国基準を採用している会社は大企業ですから、日本基準を参照して社内基準を定めているのが一般的ですね。しかし、評価額を米国で一般的なDCF方式で算出している例があります。

日本の税法基準

日本の税務上減損が損金処理できるかどうか、どうなっているのでしょう?法人税基本通達第9章その他の損金第3款に有価証券の評価損の規定があります。

9-1-7 (上場有価証券) 「有価証券の価額が著しく低下したこと」とは、当該有価証券の当該事業年度終了の時における価額がその時の帳簿価額のおおむね50%相当額を下回ることとなり、かつ、近い将来その価額の回復が見込まれないことをいうものとする。

9-1-9(上場有価証券等以外)民事再生手続開始決定等の事実が発生したことの他に、当該事業年度終了の日における当該有価証券の発行法人の1株又は1口当たりの純資産価額が当該有価証券を取得した時の当該発行法人の1株又は1口当たりの純資産価額に比しておおむね50%以上下回ることとなったこと。

減損処理の恣意性

減損処理は、どのように恣意的に行われるのでしょうか?

     投資先が少数で、グループ経営部等が一括管理し、統一した基準を継続的に適用する場合は、それ程の恣意は入らないと思います。しかし、多くの投資先をもっている会社は、主管部を定めて投資先を管理します。減損処理が妥当だと思っても、その部の今期業績が低迷しておれば、まだ減損処理は必要ない等と勝手に理由をつけて先送りされます。当該出資の価額が低下しただけで判断される訳ではありません。別の意図が働きます。

・ 「回復する見込があることを合理的な根拠をもって予測」等という事は、実際無理でしょうね。「回復する見込み」というのは判断です。判断の背後に事情があります。その事情は隠されて、表面上はいろいろ理屈をつけて回復するとか言います。昨年なら、景気も上向き、今後も業績好調と見られていました。でも今は一寸先は闇とも言えますし、昨今の状況は一寸先は奈落の底ということも出来ます。

     将来キャッシュ・フローの割引現在価値」=DCF法ですね。DCF等という計算は、前提の置き方で、いろんな金額を算出出来ます。もっとも意図的・恣意的に、減損額を操作出来る方法ですね。最初に、結論の減損額を思い描き、それに合うように数字を作るわけですね。

・ 「中長期の事業計画」ですから、例外を除いて右肩上がりの数字を作ります。事業計画を作った人なら分かると思いますが、そのように事業がうまくいくわけではありませんね。

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完全子会社化の方法

2009-03-22 12:33:54 | M&A

     完全子会社化の方法にはどの様な方法があるでしょうか。その方法についてまとめて見ましょう。特殊な方法も思いつくものは列挙して見ましょう。少数株主排除とも関係しますが、それらについては以下のブログを御参照下さい。少数株主を排除すれば完全子会社になりますが、その他の方法もありますので整理してみましょう。

株式移転による少数株主排除

http://blog.goo.ne.jp/masaru320/d/20090208

少数株主整理・排除の方法

http://blog.goo.ne.jp/masaru320/d/20080628

     完全子会社化の方法

     株式取得

会社を完全子会社にしたい人が、他株主全員からその持株全部を購入すればいいことですね。一番簡単でポピュラーな方法ですね。

     全部取得条項付種類株式を利用する方法

   全部取得条項付種類株式による少数株主整理↓を御参照ください。

http://blog.goo.ne.jp/masaru320/d/20080708

     取得条項付株式の取得

この方法は、株主が少数のときしかできません。発行する全部の株式を取得条項付株式に変更して、会社が株主全員から全ての株式を取得して、同時に新株主に新たに募集株式を発行する方法が考えられると、葉玉さんの本に書いてありました。この方法は、既存株主の全員の同意(110条)が必要ですし、その株主への対価の支払が必要ですので財源規制(170条⑤)が働きます。キャッシュアウト(分配可能剰余金の減少)も多額になりますが、すぐに資本金・資本剰余金としてお金が入ります。定款変更も必要で複雑な法テクですね。例えば株主A=70%, B=30%のような会社の場合で、Aが100%完全親会社になるような場合しか出来ないでしょうね。

自社株の特定株主からの有償取得の特別決議(その特定株主は議決権無し&Tag Along条項で他の株主も取得請求ができる)で、承認を取る方がよっぽど楽ですね。

既存株主全員が自社株取得を請求すれば良い事ですね(この場合は議決権復活)。そしてその取得日に、新株主に募集新株を発行すればそれで良い事ではないでしょうか。まあ、この方法による完全子会社化は、方法としては空理空論でしょうね。

     新設子会社による吸収合併(現金合併)

この④から⑥までの方法は、所謂対価の柔軟化で、その対価を例えば存続会社の株式ではなく、金銭等(=現金・社債等)で支払う場合は、株主を排除することが可能ですね。

新設の100%完全子会社を設立して、その会社を存続会社として、もう一方の会社を消滅会社として合併し、合併の対価として金銭や親会社の株式を交付する方法ですね。

新設子会社は100%子会社ですから、親会社の思うように手続きを進められます。消滅会社では、合併契約の特別決議承認、反対株主には株式買取請求権(一定の要件の場合は新株予約権者等にも買取請求権)、更に債権者に対して債権者保護手続きが必要。

現金合併の場合は、消滅会社株主は株券提供公告(株券不発行会社は無し)に応じて株券を提出してお金をもらって終わりですね。反対株主も株式買取請求権を行使しても存続会社側の主張は、同じ株式の単価で計算されます。お金をもらうという点では一緒ですが、反対株主は、「公正な価格」で買取請求できます。当然会社側としては、同じ評価額を主張しますので、公正な価格の折り合いはつきません。効力発生日から30日以内に協議が調わないときは、株主又は消滅株式会社(効力発生日後にあっては、吸収合併存続会社)等は、その期間の満了の日後30日以内に、裁判所に対し価格の決定を申立てて決着を計ることになりますね。

     新設完全子会社設立とその会社への吸収分割(対価が金銭)

合併の場合と同じですね。まず新設の100%完全子会社を設立し、その会社を吸収分割承継株式会社とし、吸収分割会社の権利義務を承継する。758条IVホでは「当該金銭等が吸収分割承継株式会社の株式等以外の財産であるときは、当該財産の内容及び数若しくは額又はこれらの算定方法」と記載されています。金銭等を対価にすれば言い訳ですね。原則総会特別決議、反対株主には買取請求権があります。

     株式交換(対価が金銭)

原則として総会特別決議、反対株主には買取請求権があります。株式交換完全子会社の株主に対して親会社の株式や金銭を交付すれば良いですね。親会社の株式を交付すれば、親会社の株主になりますが、株式では無く金銭を交付すれば、子会社の株主は親会社の株主にはなれずお金をもらって排除されます。株式交換では、財源規制の問題はありません。

     株式移転による少数株主排除

この方法による、完全子会社化については、以下のブログを御参照下さい。

http://blog.goo.ne.jp/masaru320/d/20090208

     その他特殊な方法

1)       株式併合方式

例えば、筆頭株主が100株保有し、それ以外の株主が100株未満の保有であるときに、100対1で株式併合を行い、100株を1株にしてしまえば、100株未満保有の株主は、1株未満の保有となります。1株に満たない端数処理としては、235条①に規定されてますね。「株式の併合をすることにより株式の数に一株に満たない端数が生ずるときは、その端数の合計数(その合計数に一に満たない端数が生ずる場合にあっては、これを切り捨てるものとする。)に相当する数の株式を競売し、かつ、その端数に応じてその競売により得られた代金を株主に交付しなければならない。」②では、前条を準用して、「市場価格のある株式については市場価格として法務省令で定める方法により算定される額をもって、市場価格のない株式については裁判所の許可を得て競売以外の方法により、これを売却することができる。」としています。

全株主合意の上にやらないと831①(株主総会等の決議の取消しの訴え)により、著しく不公正ということで、争えば決議が取り消される危険覚悟でやるのでしょうね。

2)       単元株制度の導入(議決権100%)

上の例と同じですね。例えば、50株保有の株主の議決権を取り上げようとする場合は、100株を1単元として、1単元=1個の議決権とすればいいわけですね。しかし、好きなように単元のくくりを決められません。一応、1単元にくくれる株数の上限としては、会社法施行規則34条で、「法第188条第2項に規定する法務省令で定める数は、千とする。」と規定していますので、1万株=1単元にはできませんね。ただ、単元未満の株式数を保有している株主も株主として自益権は保有し続けますね。

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社債利用の株式移転

2009-03-15 01:50:00 | 商事法務

  株式移転とは、ある株式会社が、株主総会特別決議の承認により他の株式会社(株式移転設立完全親会社)の100%子会社(株式移転完全子会社)となる取引ですね。自社の親会社を作る手法です。簡易株式交換はありません。株式交換の場合は、既存の会社ですが、株式移転は新設親会社であり、株式移転の効力発生日に完全親会社が成立します。株式移転計画(2社以上の株式会社が共同して株式移転をする場合には、共同株式移転計画の締結)を作成して取締役会承認、株主総会承認の上、株主宛通知・公告を行い、既存子会社が株券発行会社の場合は株券提出手続き行い取り進めます。反対株主は、公正価格での株式買取請求(806)が出来ますし、買取価格に不満があるときは協議を行い、協議が調わないときは裁判所へ価格の決定の申立ができます。尚、当事会社の財産に変動がないので、債権者保護手続は要求されていません。

     通常は、子会社の株主は、その保有株式を、移転計画で定められた親会社の株式との株式交換比率に基づいて、親会社の株式と交換されて、親会社の株主となります。単純に言えば、子会社株式が、新設の完全親会社の株式と一定の比率で交換されるわけですね。条文では774②ですね。株式移転完全子会社の株主は、株式移転設立完全親会社の成立の日に、前条①VIに掲げる事項についての定めに従い、同項Vの株式の株主となる。としています。

     しかし、未だ良く分からない規定の仕方をした条文があります。773VII等です。株式移転計画で定める事項についての規定です。

- 773VII=「株式移転設立完全親会社が株式移転に際して株式移転完全子会社の株主に対してその株式に代わる当該株式移転設立完全親会社の社債等を交付するときは、当該社債等についての次に掲げる事項

  イ 当該社債等が株式移転設立完全親会社の社債(新株予約権付社債は除く)であるときは、当該社債の種類及び種類ごとの各社債の金額の合計額又はその算定方法

  ロ 当該社債等が株式移転設立完全親会社の新株予約権(新株予約権付社債は除く)であるときは、当該新株予約権の内容及び数又はその算定方法

  ハ 当該社債等が株式移転設立完全親会社の新株予約権付社債であるときは、当該新株予約権付社債についてのイに規定する事項及び当該新株予約権付社債に付された新株予約権についてのロに規定する事項

    IIX号では、「前号に規定する場合には、株式移転完全子会社の株主に対する同号の社債等の割当てに関する事項」と規定しています。

- 774=次の各号に掲げる場合には、株式移転完全子会社の株主は、株式移転設立完全親会社の成立の日に、前条第一項第八号に掲げる事項についての定めに従い、当該各号に定める者となる。」とし、社債権者and/or新株予約権者(新株予約権付社債の場合は両方)になると定めています。

     子会社の株主に、その株式と交換に親会社の社債を一律に割り当てるんですよね。ということは、発行済株式の全部に割り当てると親会社の株主はいなくなります。社債権者だけですね。しかし、773V&IVでは「子会社の株式の株主に対して、親会社の株式を交付しなければならない」としています。即ち、株式の一定割合は、親会社株式に、残りの部分については社債ということを言いたいのでしょうが、そうなら「一部について」という規定の仕方をしてくださいということです。

  同条②1では、種類株式発行会社の種類株式について、「ある種類の株式の株主に対して株式移転設立完全親会社の株式の割当てをしないこととするときは、その旨及び当該株式の種類」と規定しています。例えば、配当優先株式の株主に対して、社債を発行する場合などですね。これならわかりますね。

     どうも規定の仕方がいまいちではないでしょうか。その他にも、株式移転でははっきりしないことがあります。

1)      もし、共同株式移転の内の1社の総会で特別決議が否決されたときは、残りの会社だけで出来るのか?これは、株式移転計画の中に、他方の会社の特別決議で否決されても、単独で株式移転を実行するという内容であれば、出来ないことはないと思いますね。問題は、そういった内容が無い場合ですね。

2)      新設親会社成立の日に、募集株式の発行が出来るのか。即ち、成立の日に第三者が株主となるように、事前に公開会社でない会社は総会特別決議ができるのか、公開会社は取締役会で(成立の日前で取締役会は存在しない段階ですが)公正発行の決議が出来るのか?新設親会社を作るだけなら、出来ないですね。新設親会社の取締役会・株主総会事項ですね。社債ではなく、親会社株式を取得する場合なら、交換比率が極端で無い限り、子会社の株主は親会社の株主となり、その株式保有比率は、1:1で無い限り端数処理される場合もありますが、基本的にはほぼ同一ですね。ですから認めても良さそうに思いますが。

3) その他、親会社の総会の決議事項(定款に規定の無いばあいの、役員報酬額等)を、株式移転の総会のときに、併せて決議できるかも問題になろうかと思います。

○ その他の新設型再編、即ち新設合併・新設分割でも同じことが言えますが、省略します。

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「重要な社外取締役」の嘘―検証が必要

2009-03-08 17:15:52 | 企業一般

     2009.1.26の日経新聞Monday Nikkei法務インサイドに以下のような記事がありました。「社外取締役の議論も白熱してきた。買収防衛に限らず、企業統治の要は取締役の忠実義務。-その対極が保身など取締役の自己利益の追求だ。一方、独立した社外取締役は生え抜き経営者に比べ保身動機が少ない。」「19日午前の金融庁「スタディグループ」の会議でも、上場企業への社外取締役の義務付け、独立性強化、取締役会議長を社外取締役とすることの是非を問う論点メモが配布された。」等と言っています。

米国の社外取締役中心の取締役会の猿真似議論ですね。社外取締役が果たしている機能・現実の検証をすることなく、社外・独立取締役を入れる・増やせば企業統治が改善するという議論は、何を根拠に言っているのでしょうか?

-          日本でもアメリカの真似をして、内部統制制度が実施されています。SOX法制定の原因の一つを作った米国のエンロンの取締役会は、世間に名の売れた大物の社外取締役を中心に構成され、全米でも「ベスト・ボード」と高く評価されていました。事件後エンロンの社外取締役は、議会で証言して、「情報が与えられず経営陣と外部監査人に欺かれた」というような事を言っています。社外取締役が重要な局面で機能を発揮しましたかということです。

-          エンロン事件等一連の事件を契機にしてSOX法が制定されたと言われています。そうかもしれません。しかし内部統制自体の議論は80年代からあり90年代初頭のCOSO(トレッドウェイ委員会支援組織委員会=the Committee of Sponsoring Organizations of the Treadway Commission)の内部統制フレームワークがありました。この事件等を契機として制定された訳ですね。

-          では、エンロン事件等一連の事件で、社外取締役や委員会の機能等が米国の企業でどれだけ役に立っているのか?その辺の検証がされましたか?またそれを踏まえて日本でどれだけの議論がなされましたか?私は、殆ど聞いたことがありません。なぜ社外取締役が重要なのですか?何の実証もされずに、よく重要等と勝手に決めつけますね。また学者先生の中にも、社外取締役を重視している人もいます。何を根拠に言っているのですか?

-          社外取締役など役に立たないとしている、新日鐵やトヨタ自動車の主張に耳を傾けましたか?ということです。

     月に1度の取締役会に、ろくに事前配布書類も読まないで出席する社外取締役がどうして役に立つのでしょう?社外取締役にその会社の事業等分かりません。オフィシャルな取締役会に違法な事など上程されません。西松建設のようにまずい事は裏で処理します。儀式の取締役会です。形骸化しています。会社の水面下で何が起こっているのか等社外取締役にわかる筈ないでしょ。議案の内容もその会社の事業の詳細・背景を理解していない人に例外を除き十分解かる訳ないですね。

     事業報告の内容として、会社法施行規則124条(社外役員を設けた株式会社の特則)4号では、社外役員の活動状況の記載を求めています。

 取締役会への出席の状況

 取締役会における発言の状況

 当該社外役員の意見により当該株式会社の事業の方針又は事業その他の事項に係る決定が変更されたときは、その内容(重要でないものを除く。)

 当該事業年度中に当該株式会社において法令又は定款に違反する事実その他不当な業務の執行(当該社外役員が社外監査役である場合にあっては、不正な業務の執行)が行われた事実(重要でないものを除く。)があるときは、各社外役員が当該事実の発生の予防のために行った行為及び当該事実の発生後の対応として行った行為の概要

     出席状況の記載では、出席率の悪い役員を日経新聞等が報じています。出席しても、事前配布資料を十分検討し、きちんと質問等している社外役員がどれだけいますか?「発言の状況」では、「有益な発言を行った」とか記載されています。「有益な発言」というのは、せいぜい中身の無い世間話、自分の会社や身の回りで過去に起こった事などをコメントした程度です。要するに、ろくな発言をしていないということです。

○ 日経新聞は、「重要な社外取締役」等と言う前に、例えば日経225銘柄でもいいですが、それらの会社の事業報告書を全部チェックして、施行規則124条4号の内容を分類整理して、上記イロハニの内容を調べて欲しいと思います。その調査結果に基づき、現在の状況、あるべき方向性、社外取締役の資格と能力等の議論をきちんとして欲しいと思います。

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取締役の不正行為の差止請求権等

2009-03-01 03:08:25 | 商事法務

     西松建設の元社長等が、裏金作りの外為法違反で逮捕されました。取締役の不正行為ですね。こういった取締役の不正行為により会社に損害が生じるおそれがある場合(事前差止ついては法360条に株主による差止請求権がありますね。1項では、6ヶ月前から株式を保有している株主は取締役が株式会社の目的の範囲外の行為その他法令若しくは定款に違反する行為をし、又はこれらの行為をするおそれがある場合において、当該行為によって当該株式会社に著しい損害が生ずるおそれがあるときは、当該取締役に対し、当該行為をやめることを請求することができる。」としています。また3項では、監査役設置会社・委員会設置会社では、一義的には監査役等による牽制・差止が行われるべしとして「著しい損害」とあるのは、「回復することができない損害」とするとされています。

     著しい損害:私は、条文のコンメンタール等は読んだことがないので、「著しい損害」と「回復することができない損害」の違いなど知りません。「回復することができない損害」のほうが重大な損害という事を言いたいのでしょうが、普通の感覚から言って両者の違いはわかりません。実際上まずそんな区別など出来ないでしょう。また著しい損害が生じれば回復出来ない損害であるのが常識では無いでしょうか。

  3項では、何が言いたいのですかですね?まあ、例えば時価のある有価証券(上場株券等)の減損処理で、①時価が取得価額に比し50%以上減損、②回復する見込みがないという場合に、見込みというのは判断ですから、判断違いで回復ということもあるかもしれません。なにしろ株ですのでね。しかし、著しい損害が回復する等というのは特別な例外を除いてないでしょう。即ち、著しい損害=回復することができない損害ですね。

3項で、回復することができない損害と厳格化したのは、株主による違法行為差止請求権の濫用を牽制する必要があるとも言われています。おかしな理屈です。非監査役設置会社・委員会設置会社以外の会社の場合の説明にはなっていません。

― 株主がこの差止請求権を行使するケースは少ないでしょうね。経営支配権を掌握している株主なら、差止請求権等行使しなくても圧力をかけることができます。「そんなことしたらあんた首だよ」と圧力をかければ良いことですね。少数株主なら、金と費用をかけて差止請求する等、馬鹿馬鹿しくてやりません。支配株主に持株買ってくれと交渉して撤退する事などを考えるでしょう。

     目的の範囲外:監査役の権限は、一般的に法令・定款違反の違法性監査と著しく不当な事項の監査とされていますね。従い、目的の範囲外の行為というのは著しく不当な事項ということになりますね。まあ、著しく不当な事項・行為自体が善管注意義務・忠実義務違反という見解もありますが。しかし、会社の定款の目的では、最後に、「前各号に付随又は関連する一切の事業」などとしています。また政治献金まで目的の範囲内という有名な最高裁の判例(八幡製鉄事件:最大判S45.6.24民集24-6-625)もありますね。西松建設の裏金作りも、違法であることを別にすれば、見方によっては「目的の範囲内」ということですね。その判例では、「一見定款所定の目的と関係がないような行為でも、会社に社会通念上期待ないし要請されるものである限り、これにこたえることは当然なしうべきである」等と言っています。目的の範囲外とは何か分からなくなりますね。

     この条文の実効性:株主が閉鎖社会の会社の中の不正行為を見つけて差し止め出来るんでしょうかね。合弁会社等の少数株主が、自分が指名した役員をインサイダーとして送り込み内部を調べさせるとか、内部通報者をもっている場合でしょうね。株主が立証責任を果たすにたる証拠を握るのはなかなか困難でしょうね。

     385条との関係:一方、監査役による取締役の行為の差止めを規定した385条ではどのように書いているのでしょう?即ち「監査役は、取締役が監査役設置会社の目的の範囲外の行為その他法令若しくは定款に違反する行為をし、又はこれらの行為をするおそれがある場合において、当該行為によって当該監査役設置会社に著しい損害が生ずるおそれがあるときは、当該取締役に対し、当該行為をやめることを請求することができる。」と規定しています。要するに、損害には、「著しい損害」と「回復することができない損害」とがあって、監査役設置会社では、監査役は「著しい損害」、株主は「回復することができない損害」の差止請求権があると区別したいのでしょうが、実際どのように区別すればよいのでしょう。よく分からない規定です。

     上記に関連して、法令・定款違反、著しく不公正な方法により行われる募集新株・募集新株予約権(247)の発行(210条)により、株主に損害等が生じるおそれがある場合については差止請求ができるとしています。新株・新株予約権の第三者への有利発行(役職員に株式報酬型お手盛り1円ストックオプションを付与する場合などを含む)等に利用できるとは思います。株主の持株比率希薄化、1株利益の減少という損害もありますが、不当に安い価格での新株発行ですから、会社に損害が生じる場合にも該当すると思います。

     事後の責任追及については、①会社に損害が生じたときは、取締役はその損害賠償責任を会社に負いますね(423条)。しかし、そんな責任を負う取締役はめったにいないでしょうから、株主代表訴訟が用意されています(847条)。また株主に損害が生じたときは、429条によって取締役への責任追及ができますね。悪意又は重大な過失があったときだけですけれども。

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