まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

海外子会社出向者の行為の本社取締役の責任

2014-05-03 20:07:13 | 企業一般

 

  • 最近は、海外の子会社・合弁会社への出向者が増えており、出向先で現地法令に違反する行為が時々新聞等で報道されるようになりました。中でも、新興国での「お金の使用」が問題になるケースもだんだん増えていますね。明らかに贈収賄のケースもあれば、そこまで行かないファシリテーションペイメントもあります。ファシリテーションペイメントについては、止むを得ない場合も多いですから、可罰的違法性はないということでしょうか。例えば、中国で機械を生産している会社が、日本から中核部品を輸入しようとして、税関の役人が他役人同様金を取ろうとして輸入ストップする例があります。それがないと生産がストップして納入先に大変な迷惑を掛ける等のとき、お金を使わざるを得ないような場合もあります。

     

  • 国によって、例えばタイではBhts3,000を超える利益提供を受けた場合は、公務員側に報告義務がありますし、ベトナムでは200万ドン(約8000円)を超える利益提供をしたら、刑法上の賄賂になります。そうかと言って、この範囲内ならいつでも大丈夫ということも言えないのですが、まあ一つの基準でしょうか。国によっては、裁判官から金を要求される例も多いですね。ある国の裁判官は、両方から金をもらったのですが、敗訴させた方には、お金を返した例もあるようです。

 

 

  • まあ、お金はまずいというので、物を送る場合も多いですね。通常の社会儀礼の範囲なら大丈夫と言えるでしょう。例えば中国では中秋のときに月餅を送る習慣がありますので、それぐらいなら大丈夫ですね。私の知っている不思議な例は、中国のある市で多くの税金を払っている日系企業に、市政府税務局から連絡があり、会社訪問するとのこと、その税務署の職員は、手土産として茶器セットとお茶を、その企業に持ってきました。税務署から贈り物をもらったのですね。

 

 

 

  • 問題は、現場でこういった事が行われている事に無頓着とか、知らない本社役員が多いことです。グループ全体の指針も作っていないケースも多いですね。やはり、グループ全体ルールと、各国の状況を踏まえたローカルルールをきちんと作っておくべきなのですが、これまた簡単ではありませんね。大会社の取締役会は、内部統制システムの構築を決議する義務があります。学者先生のくだらん議論では、この規定について、内部統制システム構築の決定を義務付けるものであり、構築義務までを課すかについては争いがあるようですね。でも、金商法では、連結ベースですので、子会社のみならず関連会社まで含まれることになります。

     

  • 最近は、米国独禁法違反で、現地子会社の役員が懲役刑を受けて服役している例があります。業界体質等百も承知の本社役員の責任が追及されていませんね。昔、M商社の米国子会社出向者がカルテル行為関与で、親会社のM社が米国で罰金を支払い、また民事訴訟でも和解金を支払ったことで株主代表訴訟が起こされましたが、出向者に対する親会社の取締役の監督責任が問題となりました。裁判所は、親会社の取締役は、出向者の違法行為を認識することが可能であったとは言えないとして責任を否定しました。出向者に対する指揮命令は出向先会社であり、出向元の親会社の取締役は、原則として監督責任を負担しないという理屈ですね。トカゲの尻尾きりの理屈が通ったのですね。でも、今は、そんな時代でもなくなりつつあるように思います。

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