まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

取締役の代表権

2007-05-28 00:15:20 | 商事法務

○ 企業間で取引をする場合、契約書の記名・捺印欄に、例えば取締役(調達部長)等と記載されていることがときどきありますね。取引相手方が小さな企業だと代表取締役社長との間の契約書になります。契約相手方に、単に取締役とだけ書いていても、果たして社内で授権されて契約締結の権限があるのかどうかといった事は調べません。普通は、当然権限があるものとして取り引きします。

取引の時に登記簿謄本など調べませんからね。基本契約等を締結するときは、登記簿謄本を提出したり、印鑑証明を出したりすることもありますが、基本契約を締結せずに取引をする場合も多いですね。これが実際の取引の実態ではないでしょうか。

     会社法では、取締役会非設置会社について、349条で「取締役は、株式会社を代表する。」と規定されました。取締役副社長等と記載して有れば、表見代表取締役の規定(354)に従い「株式会社は、当該取締役がした行為について、善意の第三者に対してその責任を負う。」となります。

取締役会非設置会社では、単に名詞に「取締役」とだけ記載されていても、会社を代表します。取締役会設置会社では、「取締役」とだけ記載されていても、会社を代表しません。これが、第三者にすぐにわかるでしょうか。またいちいち調べるでしょうか?

     また、業務執行取締役(ここでは代表権の無い選定業務執行取締役の事とします)というのも規定されています。これまた、相手に、会社から正当に権限が授権されている、当該行為に正当な権限があります等といちいち説明しません。契約書に取締役営業本部長等と表示されていると、相手方は、仮に正当な権限がなくても、授権されていて当然権限があるものと普通は認識します。

     今度の会社法では、代表権があるのかないのか、当該法律行為をする権限が授権されているのか、取引相手先にはよくわからなくなりましたね。勿論、実際上はあまり弊害はないでしょうけどね。日常取引の推進では、そこまでいちいち認識して取引はしませんし、世の中の取引の99%以上は、それでスムーズに済みますからね。でも、何かすっきりしないと言うか、その内に代表権について問題になるような案件が起こるかもしれませんね。

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業務執行取締役の規定は意味不明?

2007-05-25 00:59:51 | 商事法務

○ 会社法363条には、取締役会設置会社の業務執行機関としては、代表取締役=業務執行取締役、及び②代表取締役以外の取締役であって、取締役会決議によって業務を執行する取締役として選定されたもの=選定業務執行取締役、としています。また、これらの取締役は、3ヶ月に一回以上、自己の職務の執行の状況を取締役会に報告しなければならない、としています。

○ 一方362条で、取締役会は、①業務執行の決定 及び②取締役の職務の執行の監督を行う事になっています。即ち、取締役会は業務執行決定権と執行権&職務執行監督権があります。代表取締役は、取締役会の業務執行の決定を受けて、業務執行を行う権限を固有に専属すると考えられています(多数説=並列機関説)

・しかし、会社の日常業務の決定まで何でも取締役会決議では、会社の業務は実際行えませんので、日常業務の決定・執行は、取締役会の承認を得た権限規定などで代表取締役に委ねることが一般的ですね。一般の(代表権を有しない)取締役=選定業務執行取締役に業務執行を委ねることができますし、委ねられた範囲で業務執行することになります。しかし、商法学者は、選定業務執行(or担当)取締役の権限はあくまで対内的な関係で付与されるに過ぎず、対外的に会社を代表する機関はあくまで代表取締役(一切の行為を行う権限有り)であるとされています。

○ 一方354条には、表見代表取締役の規定があり、会社は、代表取締役以外の取締役に社長、副社長その他株式会社を代表する権限を有するものと認められる名称を付した場合には、当該取締役がした行為について、善意(無過失は不要)の第三者に対してその責任を負う=会社の行為となるとしています。

     業務執行とは、会社の事業を遂行するために生じる事務処理であり、営業取引・契約締結・従業員採用等の法律行為、履行の催告・債権譲渡通知等の準法律行為、製品製造・帳簿作成等の事実行為等、会社の業務の遂行の殆どが該当します。

○ 業務執行取締役(ここでは代表取締役以外。以下同じ)の制度がH14に出来ましたが、その発足の背景・理由・役割等について、私は何も知りません。しかし、「なんやこれ?」「何の意味があんの?」と思います。

     商法学者の先生が、これは会社の内部的規律であると言われています。確かに代表取締役は、会社の業務に関する一切の(裁判上and/or裁判外の)の行為をする権限有しており、業務執行取締役は代表権がありませんので、言われる趣旨は理解しますが、やはりこれは会社の実態を軽んじて、形式的というか理屈を押し通すこじつけの考え方ではないのかと思いますね。

・ 簡単な例を言いましょう、人事担当役員が、採用計画を決めて取締役会の承認をもらいます、それに従って対外的に募集・採用試験を実施して採用を決定します。人事担当役員の名前で、採用通知など出すでしょう。同じ事は営業行為について営業担当役員でも言えます。

     調達契約で、仮に代表者の名前の契約書を作成しても、代表取締役がいちいち見ている訳ではありません。大企業では代表取締役の名義の契約書では無く、取締役調達本部長等の名義で契約書は作成されます。即ち、対外的に業務執行を行っているのです。どうしてこの実態が対内的だと言えるのですか。対内的な業務と対外的な業務は、コインの裏表です。同じ取締役が行います。取締役が、私は裏()担当、代表取締役(社長)は表(外)担当とは決めません。

     役員の担当業務は、公表されます。役員の担当業務が正式に取締役会で決まると、各社はニュースリリースで発表しますし、新聞報道にも掲載されます。有価証券報告書にも記載されます。担当業務の決定が業務執行取締役の選定だと思います。登記簿には記載されませんが。

     代表権など無くても、例えば専務取締役 取締役、とか調達本部長という名前が契約書に出てくれば、相手方は、当然その権限があると思います。表見代表取締役(354)等という規定を持ち出すまでもなくてですね。

○ また、3ヶ月に一度は、その業務内容を報告とか言っています。こんなことやってる会社ありますかね。自分の担当案件が出てくれば、必要に応じて都度報告している筈ですし、会社によっては、取締役会ではなく、経営会議に四半期報告ぐらいあげているでしょう。わざわざ、業務執行取締役等という変な事言わなくても、従来から担当が決められ、その範囲の事は、対内的にも・対外的にも当該業務執行取締役が行っているのです。

○ 何のために、こんな規定が出来たのか、私には意味が有るのかよくわかりません。非常勤取締役、代表権の無い取締役会長とか取締役相談役、本社の取締役でも米国法人社長で現地駐在取締役とか、社外取締役等は、業務執行取締役ではないですね。363条1項二号の意味は、私には、既に一般的に行われているのと同様に、「取締役会決議で、担当業務を決めなさい」ぐらいの意味しかないのではないか。それ以外にどんな意味があるのかよくわかりません。

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会社法―役立たない株主の権利

2007-05-17 00:47:56 | 商事法務

・ 会社法に規定されている株主の権利で、(勿論持株比率等で異なりますが)実際上殆ど役立たない権利、無価値な権利、行使してもなかなかうまくゆかない権利等を列挙してみようと思います。しかし、例えば最近株主提案権を行使する事例が出てきましたので、少しは変化の兆しが出てきたのかもしれません。経営者もますます緊張感を持った経営が要求されますね。他にもお気づきの権利があれば、ご教示お願いします。

○ 残余財産分配請求権―存続期間を決めている会社・投資法人(会社型投資ファンド)等を除けば、普通は会社が倒産したときには、一般債権者でも8割・9割の債権カットですね。株主に残余財産分配請求権があっても実際一文も戻って来ませんね。大半のケースで価値無しですね。

○ 累積投票請求権(342)―日本の大半の会社は定款で累積投票を排除していますから、こんな権利があっても請求できませんね。

○ 定款・株主名簿(125条)・総会議事録(318)等の閲覧(債権者もOK―定款は別として、株主名簿の閲覧について、会社法は「所定の場合を除き閲覧を拒むことはができない」と規定しました。従来は請求しても「合理的理由を説明して下さい。説明すれば見せます・見せます」と言って見せない企業が多かったですが、少しは改善しているのでしょうかね。(尚、定款はEDINET見れば公表していますね)。まあ、10%とか20%とか持っている株主には開示しているようですけどね。それだけ持っておれば、また楽天の様に大きく報道されていれば、会社側としては拒否できないですね。

     取締役会議事録の閲覧(371条*。債権者も可、ただ条件が少し違う)―監査役設置会社&委員会設置会社は裁判所の許可が条件ですし、その理由を疎明しないといけません。実際上内部がわからない株主に疎明も難しいかもしれませんね。内部協力者がいれば別ですけど。企業によっては議事録なんか見ても、「案件を十分説明して承認可決」――、これぐらいしか書いてなくて何かわかりますかね?労多くして殆ど意味の無い権利かもしれません。大企業の場合は、議事録よりも、稟議書及びその補足資料等を見ないと意味がないのにね。

*商法時代は、裁判所の許可が条件でした。会社法になって、取締役会設置会社の株主は、いつでも閲覧・謄写可となりました(371-2)。

○ 取締役の違法行為差止請求権(360条。行使前6月保有)―この権利がどの程度行使された事例があるのか、私はよく知りません。派閥抗争・内紛会社、株主運動等で行使例があるとは思いますが。これは単独株主権なので株主なら行使できますね。

○ 議案提案権 (303条:取締役会設置会社の場合:行使前6月保有:1%以上又は300個以上)―昔電力会社の個人株主が共同で提案した事例など、それなりに権利行使の事例はあると思いますが、単に提案だけで可決承認の可能性は、普通の場合はありませんね。でもペンタックスのケースでもスパークスが提案権を行使していますし、その他の事例がだいぶ(といっても全体から見ればほんのちょっと)出てきましたね。2-3年前と様変わりですね。

○ 帳簿閲覧権(433条:3%以上)―商法時代は、会社は、何かとけちをつけて、簡単には見せないようにしていました。これも株主名簿と同じように所定の場合を除き「拒否できない」としましたが、実態はどうでしょうか?少しは改善しているのでしょうか?

○ 株主総会招集権(297条:行使前6月保有:3%以上)―招集はできるが、何十%と持っていないと議案が承認される可能性は少ないですね。最近はいちごアセットが東京鋼鉄の株主総会で委任状争奪戦をして株式交換契約承認決議を否決に追いやりましたが、これはまだまだ例外ですね。嫌がらせで招集権行使という事例はありそうですね。

○ 役員解任訴権―(854条:行使前6月保有:3%以上→譲渡制限会社は別。総会の日から30日以内)―不正の行為、重大な法令・定款違反→普通は株主は、外から見ている訳ですから、分かりませんね。また裁判所への請求ですからね、訴訟中に役員の任期が切れて、重任しなければ訴えの利益がなくなりますね。日本の裁判所のスピードは、どれぐらいでしょうか?人力車並みでしょうか?

 解散判決請求権(833条:10%以上)―株主は有限責任ですね。出資すればそれ以上の責任は負いません。出資金をあきらめてしまえば、それで済みます。火中の栗を拾おうとする株主がどれだけいますかね?また要件が厳格ですからね。どれだけの事例があるのか、私は知りません。

○ 合併・分割・株式交換・移転等の際の事前・事後開示制度―どの程度利用されているのかよく知りません。あまり利用されていないのでは無いでしょうか。

これぐらいでしょうか、他にもありますか?

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M&A DDと個人情報保護

2007-05-15 00:13:49 | M&A

○ 会社買収の際等に、Due Diligence(DD)の一環として対象企業の主要な役職員の詳細を調べるときがありますが、最近は個人情報保護との関係をどの様に考えたら良いのか、悩ましい問題が出てきていますね。特にメーカで主要研究開発者とそのテーマ、あるいはソフトウェア会社の場合等は、主要な役職員の職務経歴書、スキルシート等は、買収を検討する際の重要な情報であり、これをきちんと調べないといけませんね。

○ ところで、個人情報の定義ですが、個人情報保護法第2条では、「個人情報」とは、「生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)をいう。」としています。

     また、一般的に、個人情報保護規定を制定している会社での定義は、もっと詳細に規定していますね。例えば以下ですね。

「個人情報」とは、

(ア)  当社の製品・サービスの個人顧客、当社取引先企業・団体に所属する個人、あるいは、当社の求人に対する応募者等に関する個人的情報、又は、当社の取締役・監査役・従業員(以下「役員・従業員等」)に関する個人的情報であって、

(イ)  それに含まれる、氏名、年齢、生年月日、住所、電話・ファクシミリ番号、メールアドレス等の記述や個人別に付された番号、記号、符号、画像もしくは音声により、当該個人を識別できるものをいう。

尚、当該情報のみでは識別できないが、他の情報と容易に照合でき、それにより当該個人を識別できるものを含むものとする。 

   但し、法人の役員で営業報告書・有価証券報告書等により公表されるもの、及び役職員の責によらざる事由で公知となった情報で当該個人がその公知性に異議を唱えないもの等は除く。 

     尚、個人情報保護法施行令第2条では5000人以下のデータベース保有の会社は、個人情報取扱事業者から除外されていますね。これは小規模事業者へのコスト負担軽減の配慮で、勿論当事者としては個人情報保護に配慮しないといけませんが。

     M&A案件で、売り手側アドバイザーの投資銀行の人が、個人情報は開示できません等と言うことがあります。M&Aで会社を買収することは、スキルを持った有能な人の一挙獲得という場合も多いと思います。人の内容を知る事は非常に重要な場合が多いですね。その投資銀行では、中途採用するときに職務経歴書・スキルシート等を見ないのでしょうか。そんな事あり得ないですよね。自分が採用する人が、何をしてきた人か分からず採用する企業なんてありませんね。

     M&Aのときに、経営者・役員ぐらいまではインタビューするときもありますが、個別の主要従業員までインタビューはしませんし、そういったM&Aが進行していることも、社内では極秘になっているときも多いですね。従い、インタビューは無理でも、せめて職務経歴書・スキルシート等のチェックで、従業員の概要を調べないといけません。

     個人情報保護法では、M&ADDで買収候補企業に個人情報を提供することは、全くの想定外ですね。そうかと言って、DD中に各個人から開示の承諾を一件ずつ取ることも無理ですね。ではどうすれば良いのでしょうか?

     M&Aの場合は、どういった能力のある、あるいは職務経歴のある人の集まりかが重要ですね。ですから、必ずしも誰がどういった能力を持っているか迄は不要なケースが多いです。従い、特定の個人迄識別しなくて良いケースが多いと思います(役員の場合は特定しないといけませんが)。従い、例えば山田太郎さんの職務経歴書は不要ですが、Aさんの職務経歴書は必要で、これで良いわけですね。生年月日も不要ですね。ただ生年ぐらいは必要ですけどね。

・まあ、個人を特定出来る情報部分は伏せて買収候補者に見せるぐらいでしょうか。しかし、勿論、同時に組織図とか各部署の責任体制等も調査しますから、実は照合すれば特定出来るケースが多いのですけどね。買収候補企業は、最初に守秘義務契約書を結んでいますので、この辺は、まああまり情報開示出来ない等と硬直的な事をいうよりも、大人の対応といいますか、フレキシブルな対応も必要になって来ると思いますね。

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会社法―帳簿閲覧権と守秘義務

2007-05-13 00:26:46 | 商事法務

久しぶりに会社法についてです。会社法ってほんとつまんない法律ですね。

     取引先との間で守秘義務契約(NDA)を結び、取引を秘密にしようと決めましたが、株主が帳簿閲覧権を行使して、株主に取引の存在と概要がわかってしまいました。これは守秘義務契約違反になるんでしょうかね?

     会社法433条には、3%以上の議決権を有する株主に会計帳簿の閲覧・謄写等の権利を認めています。2項では一定の場合を除き拒否できないとなっていますので、商法よりはだいぶ前進したかもしれません。 旧商法時代は、閲覧・謄写権を持っていても、その理由を開示しろと言って、実際上見せないよう邪魔することが多かったですからね。

     ここでの疑問です。(開示文書の範囲については広義に解釈するもの=非限定説から狭く解釈するもの=限定説まで諸説がありますが)試算表のみならず総勘定元帳・補助元帳の全部又は一部は通常は開示対象文書でしょう。そこには取引先・請求内容が記載されます。更に証憑まで見せてしまうと、取引概要まで株主にわかってしまうということです。更に支払いを請求書等を発行せず、契約書だけで行うと契約書も開示対象文書になる可能性もあります(限定説では、契約書・信書等は特に会計帳簿の記録材料として使用された場合のみOKとしているようです。判例は限定説が多い。また法人税確定申告書は含まれないとした東京地裁決定H1.6.22判時13153頁などが有るようです)。契約書まで見せてしまうと、個別取引の詳細まで株主にわかってしまいます。

     1) 取引先と厳密な守秘義務契約が存在し、取引概要あるいは内容も秘密にしましょうとか、取引自体も秘密にしましょういう取り決めがあると、守秘義務違反の恐れがありますね。 守秘義務違反の場合の損害賠償等も規定するケースが多いですが。もっとも、守秘義務違反の損害賠償というのは、損害を証明する事が非常に困難ですけどね。

大会社では部署ごとに契約をつめますが、当然会社名で契約します。法務部があっても、膨大な契約間に矛盾が無いか等チェックしませんし、帳簿閲覧権の事まで念頭に置いて守秘義務契約等作成しませんね。ところで冒頭の疑問ですが、個人情報保護法等は、法令で開示が認められているものは開示しても法令違反ではないとしていますので、まあ違反ではないのかもしれませんがね。

2)
 開示が義務づけられる計算書類(株主・債権者・親会社社員の閲覧・謄写等 法437&442条。尚、いわゆる決算公告-440条、は大半の非公開企業ではされていませんね)を除き、会計帳簿・会計に関する資料はその会社の秘密情報です。なぜ、開示を受けた株主に守秘義務を負わせないのでしょう。



帳簿閲覧により、個別取引の概要まで株主にわかってしまいます。そこまで知る権利を株主に与えるなら、守秘義務を当然課すべきですね。帳簿閲覧権を行使しようという人は、必ずしも善良な株主では無いですし、不純な目的もありますからね。


3)
 旧商法時代は、判例及びかなりの学説が、開示理由を具体的に記載する事を要求していたようですね。「取締役の不正行為の疑いに関し調査するため」等は具体性に欠けるという見解です。例えば、「使途秘匿金の明細を調べるため」等の理由ではどうでしょう。会社としては、これらの理由に対し「どうぞどうぞ見て頂戴」といって書類を出せますか?出せませんよね。いろいろけちをつけて見せませんでした.。しかし、こんどの会社法では、一定の事情以外は、閲覧・謄写請求を拒否出来ないとしました。どれだけ改善されているかまだ分かりません。拒否理由に該当する者が、「はい該当します」と言って 請求する者もいないですよね。

請求する株主が本当の理由を具体的にどこまで言えるかも疑問です。また調査する為に開示請求するのであって、調査前にどれだけ具体的な事が言えるかも疑問ですね。

守秘義務と引き替えに、必ずしも具体的な理由がなくても開示請求に応じるようにしないと機能しないと思うのですが。

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 企業価値向上議論の不思議

2007-05-10 00:28:48 | 企業一般

     敵対的買収であっても、企業価値を向上させるものならOKしてこれを容認して買収防衛策を発動しないとか、買収防衛策として、買収されないように企業価値を上げなければならないとか、最近「企業価値の向上」という言葉がはやっています。

     「企業価値とは何か」については、先のBlog↓で述べていますが、私は「社会への貢献度・大きさである」と思います。定性的には、その会社が社会・顧客に有用なものを提供し、これに対して顧客が価値を認めてお金を払う、従い事業として成り立っているということであり、貢献度が大きい会社ほど企業価値が高いと言う事ですね。また、定量的に言えば、その会社の生み出す「付加価値額」ではと思います。(ここでは買収価格としての価値ではありません)。従い、私の考えでは、利益が同額の会社でも従業員への報酬額が多いほど企業価値があると考えています。

http://masaru320.mo-blog.jp/business/2007/01/index.html

     最近の企業価値に関する新聞・雑誌記事を見ていると、ちょっと変な議論が行われている感じがします。即ち以下などの点ですね。

       企業価値は、一朝一夕には向上しない。経営者のビジョン・経営力の下、役職員が額に汗して、努力を通して時間をかけて向上していくもの。ペンタックスの経営陣が急遽、企業価値向上の代替案を作成しているようですけど、そんな短時間で作文しても、それが実現できるのでしょうかね?

       他社を合併・子会社化等で統合して、企業価値が1.5(2未満)になっても、それは企業価値を下げる・毀損することですよね。1+1>2超でないと企業価値が向上したことにならないです。1+1=2だと唯の現状維持ですね。どうも他社を買収するときなどは、自分の会社だけみれば1.5になりそうなので、それで企業価値が向上すると勘違いしている人がいるのではないかと思います。

       買収者が、単に株式を買い占めただけで企業価値がどうして上昇するのですか?単に、株主になっただけですね。企業価値を向上させるには、共同で相乗効果・相互補完のある事業を現実に展開して始めて価値が向上してきますね。買収者が、買収前から相手の内情にも精通しておらずに企業価値向上策が作成できるのですかね。せいぜい、例えば地域的補完関係が見えるばあい等は1+1=2になりますが、これに追加する価値向上の経営戦略を作成しないといけませんけどね。

       企業価値と株主価値(=株価上昇)とは、関連性があるが別物ですね。経営者は企業価値の向上に務める一次的責務がありますね。即ち従業員にやる気をもって働いて貰って、それにきちんと答える報酬を支給し、果敢にあるいは堅実に設備投資を行い、かつ適正利潤を上げ、しっかり株主に配当を行う事が責務であり、その結果株価が上昇することが望ましいが、株価自体の短期的な動きには責任を負える立場にありません。

       買収防衛策発動を検討する「企業価値評価委員会」等の独立社外者等に、本当に企業価値が上がるか等という判断ができるですか?裁判等は一件の事件で、何ヶ月もかけて確定判決がでます。企業の課題は1件では無いですね。どこの企業も山ほど課題を持っています。またどこの会社も、外部から見えない、様々な事情・問題を抱えています。独立社外者が、事業について経験・知識もろくに無い、会社の種々の内情も知らない人たちが、単なる外形的な事業をチェックして会社の企業価値向上の判断を適切に出来るのでしょうか?

⑥ 買収を仕掛けられたときに、企業価値向上策を検討するという経営者がいます。「あほかいな」ですね。経営者としては失格です。あんたは今までどのような経営をしてたのですか?ということです。下から上がってきた書類に判子押してただけですか。取引先に挨拶して、会食してゴルフしてたのですか。まあ、普通の経営者は日々企業価値向上策を考えています。買収攻勢をかけられて、もっと向上策を考えますと言っても簡単に出てくる筈ないでしょう。

     ともかく企業価値があがったとして、企業価値向上の独り占めは良くないですね。ステークホルダー(従業員も含む)と一緒に向上した価値を享受すべきですね。例えば、買収企業が、厳しい企業で人の2倍働かせて給与を1.5倍しか払わない企業の場合(そういう会社よくありますよね。実名は挙げませんが)とか、買収者が被買収企業に乗り込んで、利益を上げる手っ取り早い方策があります。被買収者の人員をカットしたり(例えば、日産にゴーン氏が来て改革が始まった時に、大量に人が辞めましたよね)、また納入業者をいじめ倒して買値をたたいて利益を上昇させる事等です。まあ企業の体質は筋肉質が良いですから、一概には否定しませんが、やりすぎは良くないですね。自分だけ儲けて下請けは青息吐息では、下請けはただ食べるだけです。利益が上がれば、株式市場は歓迎します。株価も上がるでしょう。でもこれが果たして長期的観点にも立った企業価値の向上でしょうか?

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大企業の社外取締役等は機能するか?

2007-05-07 00:21:09 | 企業一般

     取締役会の監督機能強化を目的として、代表取締役などと直接利害関係のない独立した有識者や経営者などを社外取締役等として選任しています。取締役会のメンバーとして株主総会で選任される社外取締役と、買収防衛策発動の要否を検討するときに、取締役会へのアドバイスや答申を行う為、会社の経営陣に依頼され引き受ける独立社外者のアドバイザー等があります。勿論後者は、会社法上の組織ではありませんが。

・ ベンチャー企業やIT関連企業では、その業界で連携できる企業の経営者を社外取締役やアドバイザーとして選任し、ネットワークを広げたり、協力して新規ビジネスを検討したりと役立つことがあるのでは無いかと思います。

・ しかし、大企業で選任されている社外取締役等はどれだけ役だっているのでしょう?疑問ですね。私は、飾り、ポーズ、やらせ、仲良しクラブ、コメンテータが社外取締役等の実態ではないのかと考えています。何の機能があるのでしょうか?どれだけ責任負うのでしょうか(法律的にはかなりの責任を負うことになっていますが、また定款に定めて責任限定契約を締結して登記する等もありますが、そういった話でなく実際上の事)殆ど責任を負わないのではないかと思いますし、都合が悪くなれば辞職も簡単に出来ますしね。

     取締役会に出席して大所高所から、意見を述べる社外取締役がいます。まあそれはそれで良いでしょう。コメンテータとしての役割は果たしていますからね。例えばM&Aの場合、「敵対的買収は止めた方が良いよ」等とは発言できますからね。業務に従事している経営者なら、この会社と組んだら、相性が合うし相互補完・相乗効果があり企業価値が向上するだろうと経験と勘に基づいて直ぐに言えますが、そんな判断は社外取締役には出来ませんね。事務当局が作成した事業ポートフォリオ分析等を参照して不足している分野ぐらいは分かりますが、相性が合うのか等と言うビジネスの機微迄分かる訳ないですよね。

・ 従来の儀式の取締役会、即ち社長に人事を握られ、経営戦略は経営会議で実質決められ、取締役会は、会社法上の決議を行う儀式の場で、殆ど発言もなく承認・承認というよりはましですからね。取締役会に先立ち、議案の資料が配られるのが普通だと思いますが、一般的に、議案を通すために作成されたもので、良いことしか書いてないですね。議案の問題点、リスク分析、長所・短所などをきちんと討議する場にはなっていません。そう言ったことは既に一部の経営者などで実質討議されて、OKになった案件を役会の議題にするわけですから、役会ではYESしか無いでしょ。普通はね。

・ 企業に不祥事等が起こると社外取締役を起用して今後の再発防止を計る、監督機能を強化しますという報道がときどきされています。雪印等は消費者運動をされた方が、また法令違反等のときは弁護士さん等が社外取締役に選任されています。しかし社外取締役を起用すれば、不祥事防止になるのでしょうか。単にポーズを世間に知らせるという役目はあると思いますが。

     アメリカのコーポレートガバナンスの模範とまで言われた会社で、200112月に倒産したエネルギー商社のエンロンには、Stanford大学の教授を始め多数の社外取締役がいました。監査法人はアンダーセンでしたね。何していたのでしょうかこの人達は、一部の悪徳経営者にだまされていたのかもしれませんが。統制をきちんとしている振りをする為のメンバーだったかもしれません。

・ リコール隠蔽の三菱自動車では、昔は三菱重工や三菱商事の役員が社外取締役となっていました。何か不祥事防止に役に立ちましたでしょうか?単なる、相互人事交流、仲良しクラブだったのではないでしょうか。実態はこういった例が多いのではないでしょうか。

○ 社外取締役の他に、最近増えてきたのが、買収防衛策発動の要否を検討する「企業価値評価委員会」ですね。

     2年ほど前、経済産業省・法務省の買収防衛策に関する報告書の中の指針で、会社の経営事項を理解できる独立性の高い取締役等の独立社外者の判断を重視するのがよいと言っています。これも参考にしながら、買収防衛策発動の要否を検討する、独立性が有るかのように仮装した委員会が出来ています。

     例えば楽天が無理やり金の力で株式を買い増ししようとしている片想い先のTBSの場合は、防衛策発動の是非を評価する第三者機関として「企業価値評価特別委員会(委員長・北村毎日新聞社社長)」があります。

     TBSの特別委員会が、「楽天との事業提携は企業価値を大幅に増加させるので、株式追加取得も結構です」等という結論を出すと思っている人いますか。いるわけないですよね。TBSの経営幹部により選任され、多分TBSから報酬ももらうでしょう。TBS相手に弓を引くことなど考えられません。最初から結論が見え見えです。こんな、茶番劇のやらせは無いですよね。株主が指名するならまだしも、現経営陣が指名・選任して、どこが独立社外者なんですかね?

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ペンタックスの対応―その②忘れられてる従業員

2007-05-03 21:49:33 | M&A

     なかなか複雑な構造になってきましたね。4/25の日経新聞では主要株主は以下との事。

スパークス(23.98%)・フィデリティ(12.61%)及びどうもスパークスに同調しそうな株主として他にゴールドマンサックス(4.31%)モルガンスタンレー(2.92%)がいます。4社合わせて40.82%ですね。一方、その他有力株主として、みずほコーポレート(9.31%)、足利銀行(5.08%)、三井アセット信託(1.49%)等が記載されていますが、信託業務による保有株式も入っていますから、議決権行使のときに現経営陣に賛同するか不明ですね。

・ 現経営陣の役員選任案(綿貫社長他5名、社外取締役2-3名。但し、浦野・森両氏の重任は反対)が通らない可能性も相当ありそうですね。委任状争奪戦に向けていろいろ準備しないといけませんね。

     スパークスは、6月の株主総会で、株主提案としてTOB受入派の前社長の浦野氏と前専務の森氏等を役員として選任(重任)し、現社長等の重任には反対の考えの様ですね。

現経営陣にとりスパークスは既に敵対的となっていますね。

     ペンタックスは、11日に企業価値向上の代替案を提示して、スパークスもこれを見極めたいと意向を表明しています。ペンタックスの代替案も悩ましいですね。他の企業との提携交渉はHOYAとの合意により出来ません。即ちペンタックスの経営資源と相互補完・相乗効果のある資源をもっているHOYA以外の会社との連携の話を今は推進出来ませんからね。またそんな超短時間に出来るものでも有りません。相手の有ることですからね。と言うことだと、自社のみの向上策では限界がありますね。配当金を大幅増配するというのも一つの案ですが、これは企業価値の向上策ではありません。株主は喜びますけどね。

     企業価値は誰が向上させる事が出来るのですか?ペンタックスの役職員以外ありません。従業員が汗水たらして働くから企業の価値が向上するのです。事業パートナーの株主なら少しは別ですが、ファイナンシャルインベスターである株主等は、企業価値向上の視点からは何の役にも立ちません。

     今回の混迷で、重要なステークホルダーである従業員がどういった意見をもっているのか見えてきませんね。これが重要ですね。ペンタックスの全従業員とか、あるいは全連結会社の管理職以上とか、従業員の賛否を問うのも一案です。従業員の過半数がTOBに反対ならハッキリHOYATOB反対を表明することです。日本では、まだまだ従業員が反対しているTOBを行うというのは、広報戦略としてHOYAを「悪者」に出来ます。統合の効果も縮減します。モラルにも影響します。一般株主をより多く見方につけることも少しは可能になるかもしれません。

     HOYAの代表執行役は1/22HOYAの決算説明会で、ペンタックスのカメラ事業転売の可能性に言及したと報道されています。統合もする前から、何故こんな無礼な事を言うのですか。配慮がなさすぎます。ペンタックスは日本的経営の日本の企業です。日本の企業合併では、吸収される側への配慮を、例えばお嫁さんを迎え入れる態度で接しないといけません。勿論2-3年後は知りませんが。進駐軍が日本を占領したら、北海道はソ連に売り飛ばすと言ったのですよ。確かに事業ポートフォリオ的にはそうかも知れませんが、そこで働く従業員の事を考えるのが日本の思慮ある経営者です。

     TOBの賛否を問うたときに、従業員の意見も大きく分かれるかもしれませんね。カメラ事業部等は反対者が大半かもしれません。ライフケア事業等は、HOYAの体力を利用して、海外の有力中堅あるいはベンチャー企業などを買収して成長を加速させる事も出来るかもしれません。

     従業員の過半数がTOBに賛成したら、現経営陣としては賛成するしかないですね。しかし、同時にこの統合によって冷や飯を食う部門の人たちを如何に暖かく対応するか、別会社に分割して効率化して生き残りを目指すのか、ペンタックスの経営陣は、大義に基づいてバサッと行う部分と、同時に暖かい配慮も伴ってリストラを行う部分にも目配りをしないといけません。

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