まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

シビル・ローとコモン・ロー/衡平法

2013-10-19 22:24:15 | 商事法務

 

 世界各国の法体系は、英国が起源のCommon Law(英米法・判例法)とフランス・ドイツ(古くはローマ法)を起源とするCivil Law(大陸法・制定法)に分けられますね(その他に、社会主義法、イスラム法もありますが、一切知りません)。ここでは、公法(Public Law)/刑事法(Criminal Law)との対比で使われるCivil Law(民事法)ではなく、法体系としてのCivil Law等の話です。また、Civil Lawとの対比ではCommon Law (広義)と言われますが、広義のCommon Lawは、狭義のCommon LawEquity(衡平法)に分かれますね。今回は、広義のCommon LawCivil Law、及び狭義のCommon LawEquityの話です。<o:p></o:p>

 

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 Civil Lawは制定法ですから法典があります。ですからわかりやすいですね。勿論法典の各条文の解釈にもいろんな解釈ができる場合がありますので、それを補うのは判例法ということになります。Common Law(広義)は判例法だと言われますが、Civil Lawとの対比で言う場合は、判例法だけでなく制定法も含めた英米法の全体を言います。この場合は判例法というと誤解を招きます。<o:p></o:p>

 

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 Common Lawは、EnglandCommon Law courtが下した判決が集積してできた契約法・不法行為法・不動産法(=Civil Lawで言えば民法典のカバーされる領域)刑事法分野の判例法体系であり、その特徴は陪審審理を用いることと、民事事件では金銭賠償による救済を原則とすることでした。しかし、これでは適切な救済の与えられない場合もあり、衡平と正義の見地から救済を得て当然とするものが、国王に請願し、それが国王の下での統治作用の機関であるLord Chancellor(大法官)に送付され、これが大法官裁判所(court of Chancery)となり、陪審審理を行わず、Injunction(差止命令)やSpecific performance(特定履行)などで救済を計りました。この分野がEquityでありでは信託法が形成・発展しました。<o:p></o:p>

 

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 Common Lawの訴訟とEquityの訴訟は上記の通り別々の裁判所で取り扱われてきました、またCommon Lawは厳格な手続を採用してきたのに対し、Equityの訴訟では比較的柔軟な手続運営がされてきましたが、両方の融合が進み、現在では、両方の訴訟手続に余り違いは無いようですが、今でも、英米法の中でCommon LawEquityの違いは広く認識されており、陪審審理の有無で現実的な違いが生じています。<o:p></o:p>

 

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 米国も、英国からCommon LawEquityを承継しましたが、現在では、連邦裁判所及び大半の州(デラウェア州を除く)で、Common Law訴訟とEquity訴訟の手続は統一されていますが、陪審審理が認められるかという点で、まだ違いが残っているようです。デラウェアの大法官裁判所(Equity裁判所)では、会社、信託、不動産、契約等の訴訟を管轄しています。<o:p></o:p>

 

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 Common Lawは判例法と言われていますが、判例法が確立しているのは上記の通り民事法では民法の分野です。従い、英米には日本の民法典に類するものはありません。しかし、商法典等はあります(統一商法典・会社法等)。だから、判例法の国だからといって、法典のある分野は当然法典優先ですね。つまりこの点は英米法も大陸法も同じなのですね。

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米国でのExclusive Distributorship

2013-10-12 22:41:29 | 商事法務

 

〇 メーカが自社製品を米国で販売するため販売店を起用するときは、米国独禁法(antitrust)に注意を払わないといけないと言われてきました。しかし、最近は(a) Vertical Relationであること、及び(c)競争がきちんと行われている事の2条件を満たしておれば、一般的にRule of Reason(合理の法則)にかなっていると考えられるようになっています。ということで、今回は米国向けExclusive Distributorについての独禁法の話です。<o:p></o:p>

 

 

〇 Exclusive Distributorship AgreementExclusiveの意味は、①取扱地域制限、and/or ②競合品取扱制限ということですね。しかし、かつては、米国企業とのDistributor契約で、こういった条項を入れて契約をすると、米国(連邦&各州の)Anti-trust法に違反する可能性があるといわれてきました。<o:p></o:p>

 

 

〇 ①については1977年のContinental TV v. Sylvania事件連邦最高裁判決で、当然違法(per se illegal)とは言えないが、その経済的効果が弊害をもたらす場合には、Sherman Act 1条に違反する。②については1961Tampa Electric Co. v. Nashville Coal Co.事件の最高裁判決で、こういった取決めが取引・市場の諸要素を実質的に分析した結果、競争を減殺する効果があると判断されたときは、Clayton Act 3条に違反するとされています。<o:p></o:p>

 

 

〇 ということで、これらAnti-trust適用を回避して、実質的効果を狙う方法が案出されました。In the Territory onlyとか not to handle any competitive productsなどという直接的言葉を使用せずに、同様の効果を狙うわけですね。即ち、最低引取数量(Min. Sales Requirement)とか、主要責任(Primary Responsibility)というコンセプトの条項にします。最低引取数量では目標を高くして、他の競合品の取扱余地をなくすようにします。また、主要責任とは、指定地域での販売促進にまず注力すべき責任を規定します。<o:p></o:p>

 

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<Primary Responsibility>

The Distributor shall be responsible for selling the Products primarily in the Territory and failure to develop sales primarily within the Territory shall be ground for termination of this Agreement.<o:p></o:p>

 

 

〇 しかし、19851月に司法省が出した、「垂直的取引制限に関するガイドライン」で、取扱地域制限・競合品取扱制限(=何れも非価格垂直的取引制限)は、売主の市場支配力が余程強く無い限り違法とされないことになりました。また、販売店の販売価格コントロールの慣行についても、かつては違法とされていましたが、現在では合理の法則(Rule of Reason)によって判断され、合理的理由があれば違法でない場合もあるということになっています。<o:p></o:p>

 

 

 尚、欧州委員会も再度201010月に「垂直的制限に関するガイドライン」を公表して「競争を制限する行為であっても、規則に定められた要件を満たす場合には、一般的に競争法の適用から免除される」基準を公表しています。詳しくはJetroのページをご参照下さい。

Dsc00586


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会社法改正-監査・監督委員会設置会社

2013-10-08 21:59:35 | 商事法務

 

〇 また会社法が改正されようとしています。内容は、①企業統治の在り方:(1)取締役会の監督機能:社外取締役の選任、監査・監督委員会設置会社制度(仮称)創設、社外取締役・監査役に関する規律、(2) 会計監査人の選解任等議案の内容決定、(3) 資金調達の場面における企業統治の在り方等、②親子会社に関する規律:多重代表訴訟等、③その他となっているようです。今回は、この中で、監査・監督委員会設置会社制度についての「けち」です。久しぶりの会社法のけちですね。

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〇 (a)監査・監督と、(b)業務の意思決定及び(c)その執行についての機関設計については、以下の3つの方式が支配的ですね。二層制(監査・監督機能を別の組織とする)と一層制(同じ取締役会の中で機能分化を行う)があり、フランスのように、二層制・一層制の両方を定めて選択制にしているところもあります。また、二層構造の場合、ドイツの様に上下関係を設けるところもありますが、旧日本のように、並行的な組織としているものもあります。また、二層構造のドイツの場合、監査役会が監査・監督だけではなく、重要業務の決定にも関与する場合もあります。<o:p></o:p>

 

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  ドイツ方式:株主が監査役会(Aufsichtsrat)の監査役を選任し、監査役会が取締役会(=Vorstand 執行役会ともいわれるときがある)の構成員を選任・解任する二層構造。但し、一定規模以上の会社では、株主以外に従業員が選任する監査役により監査役会が構成される(規模により1/31/2)。会社法と共同決定法等で規定。<o:p></o:p>

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 アメリカ方式:株主が選任する取締役を構成員とする取締役会の中に、各種委員会を設置。その中の一つが監査委員会。NYSE上場規則等で、監査委員会は全員が社外取締役会で構成。日本のような硬直的で中身の乏しい委員会設置会社ではない。会社法は委員会を設置できるとしているが、各社の事情に応じ自由に設置できるが、上場企業には厳しい規則が適用。会社法・上場規則等で規定。執行は執行委員会を設ける場合もあるが、CEO,CFO等が日常業務を行う。<o:p></o:p>

 

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 旧日本方式:株主が取締役・監査役を選任し、規模等に応じて取締役会・監査役会を組織。業務執行は代表取締役制度で対応。監査役の任期を234年等いじっているが、監査役があまり機能していないため、海外の制度も導入。会社法で規定。<o:p></o:p>

 

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〇 機関設計を行う場合、(i)上記の(a)(b)(c)をどのようにするのか、(ii)二層制にするのか一層でよいのか、また二層のときに上下関係を設けるかという視点で、きちんとした考え方を持ち整理して行わなければなりません。しかし、日本の機関設計はどうでしょうか?当初は、ドイツの制度(ドイツの制度はオランダのコミサリスを取り入れ?)にならって監査役を設置したが、ドイツは監査役会へ発展、日本は機能低下で閑散役になって、いろいろ模索が続いているが、きちんとした思想もなく、場当たりの法令改正で、もう制度もめちゃくちゃになってきた。米国の猿まねの委員会設置会社の制度を導入しているが、果たしてどれだけ社外取締役が期待される機能を発揮しているのか疑問も多い。<o:p></o:p>

 

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〇 監査・監督委員会設置会社制度<o:p></o:p>

1) 委員会設置会社は、監査・監督委員会を置いてはならない。別の類型の会社だからとなっています。委員会設置会社には、報酬・指名に加え監査委員会があります。これとは別です。「監査・監督委員会」と「監査委員会」は別ですと言ってます⇒どこが違うねん。同じやないか?(監査役は置かない。取締役会と会計監査人は設置。この委員会は3人以上で組織、過半数は社外取締役と今の監査委員会と同じ。一方で、総会で選任するときは、別決議とか任期は2年とか、細かい違いを作って、無理やり違いを作っているだけですね)。<o:p></o:p>

 

2) 今の委員会設置会社制度で重要な監査委員会を必須にして、その他の委員会は、その会社の自由裁量で定款に定めれば済むことですね。いたずらに制度を複雑にしているだけです。<o:p></o:p>

 

 

3) 委員会設置会社制度はアメリカの制度の形だけの猿まねでした。こんどは、ドイツの制度の猿まねでしょうか?<o:p></o:p>

 

しっかりした思想・考え方を持たない、またつどメンバーが違う委員会(法制審議会会社法制部会委員)の、なんとなく作成した要綱案に流されて、会社法が、ますますぐじゃぐじゃにされているような気がしますね。

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