まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

デラウェア会社法の利便性

2015-04-29 20:46:06 | 商事法務
○ 米国では、州ごとに会社法を持ち、大体は模範事業会社法に倣っていますが、その内容が少し違います。どの州の会社法に準拠して会社を設立するかは、発起人が定めることができます。従い、当該の州に登記を行い、裁判を提起された場合等の訴状受理代理人をおけば、本支店・工場をその他の州に保有することができます。その中でデラウェア州が、一番多く利用されています。それは、州会社法制定以来、定款自治を重視しており、発起人・企業側にとり設立・運営の自由度が高い会社法を持っているためです。デラウェア州政府も、法人登記を集めることで、法人税ではなく、法人の手続きに伴う租税収入を目指しているようです。
・従い、会社訴訟の判例が発達し、それを反映した会社法の改正も頻繁に行われており、ますますデラウェア会社法(LLC法も)に米国会社法の基本になっています。
デラウェア州では、厳格で原則陪審制度のコモンローではなく、衡平法裁判制度で、会社法訴訟になれた裁判官の裁定でできるのも、特徴といいますか、デラウェア州を選ぶ理由ですね。

○ デラウェア州を選ぶ理由として、米国では連邦法人税以外に、州の法人所得税が課されるのですが、デラウェア州では、持株会社は、法人所得税が免除されます。また、登記上の事務所を持っていても、州内で営業活動を行わない会社は、デラウェア州税の支払い義務が免除されています。

○ デラウェア州会社法の特徴は、以下等ですね。
・Incorporator(発起人)は1人でよい。会社でも、Partnershipでも発起人になれる。
・自社株式の買入、保有、売却が可能
・株主総会・取締役会を州外で開催可能
・株主総会・取締役会は、書面決議でも可能
・取締役は1人でもよい。
・1人のOfficerが、全ての役職=CEO, Treasurer, Secretaryを兼任できる。
・資本金の下限が無い。
・取締役会に付属定款(By-Laws)の作成・変更権限を与えることができる。

○ 役員の賠償責任
日本の会社法(最初は商法時代)にも、定款や特別決議により役員の責任の制限・免除の規定が認められるようになりました。これも、訴訟多発の米国では、デラウェア州会社法が最初に取り入れた制度だと思います。1986年の会社法改正で、基本定款(Certificate of Incorporation)に、その旨の規定を置けば、取締役・役員は受任者としての注意義務違反から生ずる会社・株主への損害賠償責任を制限できるようになりました(忠実義務違反の責任の免除はありません)


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タイでの会社設立

2015-04-26 22:38:24 | 商事法務
○ タイでの会社設立については、民商法(Thailand Civil and Commercial Code)に規定しています。公開企業については、1992(タイ暦2535)年制定のPublic Limited Companies Act.の規制も受けますが、日系企業の関係では、殆どの場合非公開企業でしょうから、今回は非公開会社の設立手続きについて、概説してみましょう。

○ 会社を設立しようとする場合は、まず投資規制と投資奨励をチェックする必要があります。規制の方は、農業関連・国の安全に係る事業は規制されていますが、製造業については、一般的にあまり規制はありません。むしろ税の減免等の奨励策が用意されていますので、利用できる奨励策は利用すれば良いですが、その後毎年報告義務等が生じます。
・ BOI(タイ投資委員会)は2014年末で奨励策を改定していますので、直近の状況を調べる必要がありますね。BOIの優遇策を利用して、また工場は、IEAT(タイ国工業団地公社)管轄の工業団地を利用すれば便利ですね。IEAT傘下の工業団地会社と交渉して、段取りを付ければ工場セットアップのcheck listもくれます。それに従って、相談しながら行えば良いですからね。リストを見ると、I VAT register process 、II Hand Over & Water Use Application、 III Modify Building、 IV PEA (Provisional Electricity Authority =地方電力公社) process、 V IEAT process等の事項が記載されています。また、これと同時にFactory set up flow chart diagram等もくれますので、それに従って作業を進めればいいのですね。

○ タイで会社を設立するには、当然タイ語で申請書類を作成しないといけませんので、現地のコンサルタントや法律事務所に依頼する必要がありますね。
発起人(Promoter)は、自然人3人以上(全員外国人でOK)でかつ株式1株以上の引受義務があります。創立総会もタイ国内で行う必要があります。株式は、Bahts 100 or 1000の額面株が通常です。残りの発行株は、親会社等が引受ければいいですね。
額面株の1/4以上の株金の払込みが条件です。授権株式方式ではなく、払込みは1/4以上ということです。発行株式は基本定款の記載事項ですから、これを変更・増加させるには、総会を開催して定款変更承認手続きが必要です。

定款は、Memorandum of Association(MOA)とArticles of Association(AOA)です。MOAは1ページぐらいで、第1条会社名、第2条登記地、第3条目的、第4条株主の責任は未払い込み株金に限る旨の規定、第5条発行株式による資本金と額面で除した発行株式数、第6条はPromoterとPromoterの引受け株数が記載されます。

・MOA,AOAを作成し、発起人が署名し、その他必要書類を、タイ国内で創立総会を開催して作成し、当局に出せばその日か翌日までに、会社が設立されCertificate of Incorporation(Affidavit)が出来上がり、会社成立になります。
但し、株金払込みは、会社設立日より15日以内に規制が強化されましたので、すぐにAffidavit等の書類を銀行に提出し銀行口座を開設し払込みができるようにしないといけませんね。

○ 株主は、常時最低3人以上です。しかし日系企業の場合は、発起人は名義だけで、実質は、親会社、それと3人という条件を満たすために、ほか2社を指名して3人の条件を満たします。発起人は、1株を引き受けますが、株式の引受権を、株金払込前に会社に譲渡してしまえば、会社だけで払込ができますね。株券発行は必須ですので、発起人にも1株株券が発行されます。この未払込1株を会社に譲渡すればいいですね。株券は、裏書譲渡方式ではなく、Instrument Transfer (Deed)方式です。ですから、発起人の引き受けた1株の株券は、Cancelされて、譲渡先の会社に、これに代わる株券が発行されます。

○ Directorのうち、日常業務の執行ができるDirectorをAuthorized Directorとして選任する必要があります。他の注意点としては、Auditorを創立総会で指名する必要があります。また報酬も決めないといけません。Auditorは、毎年の定時総会で選任+報酬決定が必要です。

○ 一般的には、Corporate Sealの作成が必要で、契約書を始め種々の書類・銀行関係の書類等に押印します。創立総会開催前までに会社印の作成を手配しておきます。

だいたい、それぐらいでしょうか。

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