まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

会社法の悪しき特徴

2007-08-23 09:38:47 | 商事法務

会社法を読んでいると、ちょっとおかしいのではないかと疑問に感じる点、こんな書き方をしなくても良いのではないかとか、どこまできちんと検討したのかと言う箇所が多いですね。ということで、それらの点を書いてみたいと思います。即ち、会社法の悪い特徴等を列挙したいと思います

       会社の実態、現実をどこまできちんと調査・検討した上で、会社法の現代化を検討したのか疑問。=法務省の担当者の方は、優秀で真面目かもしれませんが、基本動作、即ち、日本の会社の実態、各種機関の機能の程度、経営者支配の現実、募集株式発行の現状・機能等を、会社法改正のときに、どれだけ調査・研究したのですか。特別取締役制度等全くピントがぼけていますね。現場・現実の調査・分析・検討は基本動作です。法務省の役所の中の会議室だけで、会社法を作るものではありません。

       現実を踏まえて、望ましい会社法とはどうあるべきか、十分に検討したのか疑問。=例えば、無機能化している監査役(会)対策として、米国で一般的に委員会設置会社の形式だけをまねたり、米国SOX法のまねをして内部統制を導入したりと、その場しのぎ対策にばかり追われている感じです。ドイツの共同決定法、監査制度のありかたとか基本に立ち返って、どういった制度を作っていくのか検討したのでしょうか?

日本発で、海外の諸国も日本の会社法を見習うような制度を作る気概はないのでしょうか?

       海外、主として米国の制度・州会社法などの制度を導入しているが、日本への移植が適切か十分に検討したか疑問。=買収防衛策、内部統制、委員会設置会社等は、米国の猿まねです。米国では、別に三委員会だけある訳ではありません。殆どの会社が三委員会(報酬、指名、監査)はありますが、それ以外の種々の委員会があります。また社外役員制度も導入していますが、日本でキチンと機能するか、種々検討したのでしょうか。トヨタ等純血主義を貫いています(法令で遵守すべき社外役員は選任していますが)。

       原理原則をしっかり検討して、それに従って会社法を制定したのか疑問。原理が異なる規定を平気で入れている。=例えば株主平等原則の規定(109条)のところに、いきなり人的会社の要素を持ち込み不平等OKの規定を入れたりして、一体どういう考えに基づいて入れたのですか。有限会社法に規定があったので、何も考えずに入れたのですか。これじゃ、今度の会社法は総花的で、思想も無く原理原則無視じゃないですか。

       理屈・理論で考えられる規定を盛り込んでいるが、現実的にはまず考えられない規定を盛り込んでいる。いたずらに複雑にして重複的規定をふんだんに入れて、難解にしている。=例えば、組織再編制度を、大幅に横断化しました。縦横の横断だけならまだしも、斜めの横断まで可能にする必要がどこにあるのですか。こんな規定は無駄です。株式会社と持分会社間の組織変更を可能にしておけば良いのです。まず、持分会社を株式会社に組織変更(横の横断)してから組織再編(縦の横断)をすれば良いのです。複雑怪奇で、現実的にはまず考えられない規定など設ける必要はありません。会社法は、数学の順列・組合せ的な発想で規定するものではありません。

       当事者の自治を重視する姿勢かもしれないが、秩序を作るという基本的姿勢が欠如している。=例えば、会社の類型は20種類あります。それに会計参与を任意で設置できます。なぜ、理論的に考えれば、考え方がわかれば自然に分かるようにしないのですか。定款自治の拡大といっても、とうちゃん・かあちゃん会社から上場している大企業まで、会社はいろいろです。大会社の分類は残りましたが、小・中会社の分類は消えました。資本金・負債総額という単純な分類で良いのかの点もありますが、大・中・小、株式全部譲渡制限会社(公開会社でない会社)・公開会社ぐらいの切り口で、秩序だった類型を作って欲しかったという感じです。

       技巧的な規定が多く、考え方・それに盛り込まれた思想が分からない。=例えば、会社計算規則74条(株式会社の設立時の株主資本) では、「--株式会社を設立する場合における株式会社の設立時に行う株式の発行に係る法445条1項に規定する株主となる者が当該株式会社に対して払込み又は給付をした財産の額とは、第一号に掲げる額から第二号に掲げる額を減じて得た額(零未満である場合にあっては、零)とする。」と記載あります。「零未満である場合にあっては、零」とはなんなんですか。設立時から債務超過であってもやむを得ない、その場合は資本金ゼロで良いですということです。計算式上はそうなるのでしょう。でも、こんなあり得ない規定をどうして定めるのですか?

会社法って、何の重厚さも感じられないし、読めば読むほど、頭に来ますね!!

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会社法―株主不平等の定め

2007-08-21 00:15:31 | 商事法務

     株主平等原則に従い、株主は、その資格に基づく法律関係について、有する株式の数に応じて平等に扱われなければならないとされています。この原則は、会社法の1091項で明文化されました。即ち、「株式会社は、株主を、その有する株式の内容及び数に応じて、平等に取り扱わなければならない。」と規定しています。しかし、その後の2項で、株主を不平等に扱っても良いですよということで、法の認めた株主平等原則の例外を許容しています。

・ 同条2項では「前項の規定にかかわらず、公開会社でない株式会社は、第105条第1項各号(剰余金の配当・残余財産の分配を受ける権利、総会での議決権)に掲げる権利に関する事項について、株主ごとに異なる取扱いを行う旨を定款で定めることができる。」とし、3項で「同項の株主が有する株式を同項の権利に関する事項について内容の異なる種類の株式とみなして、この編及び第五編の規定を適用する。」と規定しています。

         即ち、例えば甲種普通株は知り合い用で1株1議決権、乙種AB普通株は親戚用で、親戚のAさん、同じく親戚だけれども少し遠縁のBさんには、それぞれ1株5議決権、1株2議決権を与えましょうということが出来るようになりました。配当優先も、配当優先株式(種類株)を発行しなくとも出来るようになりました。

・ 全く変な規定ですね。これは種類株ではなく、その株主一身専属的な規定のようですね。特定の株主が保有しているときだけ有効として、その人の保有がなくなったときには、特殊な権利はなくなり、新たな株主は甲種普通株の株主に自動的になり、普通の株主になるらしいです。

○ 株式会社は、物的会社であり人的会社ではありませんね。有限会社で認められていた制度を導入したらしいですけど、理解に苦しみます。なぜこんな株式会社の原理・原則に反することを、こんなふうに(簡単に?)規定するのでしょうか。その必要性が実態に即してきちんと検証されたのでしょうか?別に、合同会社等で自由に決めれば良いのではないでしょうか。わざわざ株式会社にこんな定めをする理由がよくわかりません。

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経営者による会社支配

2007-08-17 00:40:35 | 企業一般

 支配的株主がいない大企業・上場企業が前提です。

○ 役員は株主総会の決議によって選任することになっていますね(329)。実質は違っていても、形式的であっても「総会で選任すればよい」というのがこの規定の趣旨でしょうか?本来なら有力株主が役員候補を指名して、総会の議案にしてもらって総会決議をするというのが趣旨だと理解しますが、会社法は「役員候補者の指名」については何ら触れていません。

○ 総会も形式的なら取締役会も形式的ですね。ご承知の様に、会長・会長を歴任した相談役、社長等が後継社長や副社長等(代表取締役)を指名します。決めたら、まず各人を呼んで申し渡した後、取締役会決議をして社内外に正式発表です。

○ 企業同士の株式持ち合いでは、お互い相手の会社の内政干渉・人事介入は当然しません。安定株主の事を昔は、stableとは言わずSilent Shareholder等と呼んでいた例もありましたね。寝ているのでしょうか?最近は多少ものを言う株主が登場していますね。外国の機関投資家が増えましたしね。それでもまだ大多数の有力株主は何も言いません。投資の為に少しの株式を保有している個人株主は、議決権行使に関心もありません。上場企業で、株主が提案権等を行使して役員選任を迫った例がどれだけあるでしょうか。勿論最近のM&Aで楽天の様に役員派遣を迫っている例もありますが、まだ新聞のニュースになるぐらいだから少ない例外ですね。

○ カネボウの粉飾等は、実力社長と副社長の独走だったようです。仮に気づいていても人事権を握られています。なかなか楯突くことができません。取締役会が活発・活性化しない原因の一つに、会社法の建前とは異なり、取締役の中に序列があることですね。社長・会長の顔色をみて、その意向に従った行動をとる役員が結構いるということです。会社・従業員の為では無く、会長・社長の為に行動する人ですね。会社は、社長のものではありません。

○ 牽制機能として、監査役制度の強化を計って来ました。監査役会を設けたり、年数を伸ばしたりしました。しかし効果は発揮されていません。また、社外取締役選任を求めたり、委員会設置会社の制度を設けたり、いろいろ工夫していますが、相変わらずなかなか変わりませんね。人事権を握っている社長なりが、かなり会社を牛耳れると言うことですね。

経営者支配(総会・取締役会・監査役(会)の無機能化)が横行しています。

○ やはりもっと物言う株主が増えることが重要なのでしょうね。その点最近はうるさいファンドなどがでてきましたので経営陣も少しは緊張感を強いられますね。株主だけでは無く、従業員やステークホールダー、更に業種によっては消費者の声も企業の経営姿勢をただす重要なものだと思いますね。

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会社再編のスケジュール

2007-08-14 00:45:39 | M&A

       会社の組織再編のスケジュールを考える場合、最近はやはり、効力発生日迄に、最低間に合わすべきシステムの統合をどのようにするかが大切&大変ですが、システムの事はさておき、法令上の手続きという視点で、どれぐらいの期間が必要か見てみましょう。結論を言うと、株主総会承認日より、合併期日等の効力発生日迄には、最低2ヶ月、余裕をみれば3ヶ月必要ですね。

       会社法7831項・7951項に変な規定があります。吸収合併契約等の承認等の規定です。即ち、「消滅株式会社等(795条は「存続株式会社等」)は、効力発生日の前日までに、株主総会の(特別)決議によって、吸収合併契約等の承認を受けなければならない。」とあります。「効力発生日の前日までに、」が不要というか、かえって誤解を招く文言ですね。商法旧408条には、そんな文言はなかったですね。なぜこんな変な文言をいれたのでしょうか?

・ 効力発生日、例えば合併期日を101日として、総会の承認は930日までに取ればよいというのが規定ですが、これでは効力発生日までに行うべき手続きが完了しませんね。登記も出来ません。確かに商法時代は、合併の効力発生は登記でしたが、今度の会社法では、当事者が契約で決めた合併期日を効力発生日にしました。しかし登記は、効力発生日後にしないといけませんね。

      

一方、会社法では、別途、債権者保護手続き・株券提供公告等を要求しています。その他独禁法の企業結合の届出、証券取引法(金融商品取引法)の届出書・通知書等も必要です(今は事後ですが株式所有報告も必要です)きちんと手続きを完了しないと組織再編は実行出来ないですね。なにしろ、登記の添付書類として提示して、手続きがきちんと完了したことを証明しないといけないですからね。

       債権者保護手続き(株式交換・移転の場合は、例外的に必要となるケースもありますが、基本的には不要)・株券提供公告は、総会で承認決議を得てから行いますね。効力発生日の1ヶ月前迄にしなければいけないですね。例えば、官報での法定公告のアレンジは、掲載日の10日ぐらい前までにしておかないといけません。東京都の場合は、東京都官報販売所=東京官書普及(株)にコンタクトして行いますね。

       企業結合の届出の添付書類には株主総会の議事録写し等が必要です(事情があれば、議事録写しは後からでもOK)し、届出は、合併などの期日の30日前迄に提出が必要です。30日前迄にと定められていますが、実際は45日ぐらい必要です。届出書に記載するマーケットの分母をどのように考えるかは、公取に行って打ち合わせないと記載できません。また、届出の提出日が届出日ではありません。書類を提出したときに、届出日を教えてくれます。だいたい、翌週ぐらいです。その日から30日の待機期間が始まります。

○ 株券提出の公告については、219にまとめていますね。「当該行為の効力が生ずる日までに当該株券発行会社に対し当該各号に定める株式に係る株券を提出しなければならない旨を当該日の一箇月前までに、公告し、かつ、当該株式の株主及びその登録株式質権者には、各別にこれを通知しなければならない。」(但し、株券不発行の場合は勿論不要)としています。組織再編については、6-8号に規定され合併(消滅会社側)、株式交換・株式移転の場合に行うよう定められています。

 

○ 債権者の異議については、消滅会社側は7892に規定されていますね。但し書に「第四号の期間は、一箇月を下ることができない。」とし、4号に「債権者が一定の期間内に異議を述べることができる旨」と規定しています。存続会社側は、7992ですね。

こういった規定を設けながら、なんで前日までに等と言うのでしょうか。

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現物出資の規制

2007-08-10 00:07:57 | 商事法務

     現物出資に関する規制については207条に規定されています。昔と比べると随分緩和されました。原則は、裁判所の選任する検査役の調査(同条1-5項)で現物出資財産の価額の調査をして、適正な価額を算出して、この価額に対して株式の割当を行います。原則の適用除外として、同条9項では、弁護士・公認会計士・税理士(法人を含む)から、その価額が相当であることについての証明(不動産の場合は、当該証明及び不動産鑑定士の鑑定評価を付ける)を受けた場合には、証明を受けた現物出資財産の価額に対して株式の割当を行えるとしていますね。

     この規定の趣旨は、資産の過大評価をして水増しされた多くの株式を取得して例えば支配権を維持したりする者と、他の金銭出資をした株主との間の不公平を防ぐ趣旨と、水膨れの資産が形成されて債権者を欺くのを防ぐ趣旨ですね。

     ここでの疑問は以下です。

       弁護士等が、資産を正当に評価する能力があるのでしょうか?私は、無いのではないかと思います。例えば、特許権等どのように評価するのでしょうか。結局は、当事者が提出した資料を見て、おかしなところが無いかチェックするぐらいで、価額そのものが適切かどうかを評価する能力は無いのではと思います。

       現物出資財産の価額は、その財産を利用しうる能力のある人にとっては価値がありますが、そういった能力のない人にとっては価値がないということです。即ち、豚に真珠です。北海道の原野は、その土地を利用してリゾート開発をしようとする人にとっては意味がありますが、一般の人には、何の役にも立ちません。特許も同じです。その特許を使って、製品を作ろうとする人には価値がありますが、別に不要な人には何の価値もありません。

       現物出資財産の価値は乱降下する場合がある。不動産鑑定士の不動産鑑定評価も、同じ土地でも大きく異なる場合も多いですね。市場価格のある有価証券も、下手をすれば、すぐに半値になってしまう場合もありますね。

     重要なことは、現物出資財産を利用して、その会社の経営陣が収益をあげられるかどうかです。収益を上げられれば、キャッシュが入ってきますので、債権者(金銭債権の債権者)は、約定通り金銭の回収が出来ます。取引の継続も出来るようになるでしょう。

そうかといって、やはり金銭出資の株主との不公平は残ります。この点どの様に考えれば良いのでしょうか。

     私は、今の現物出資の規制を廃して、現物出資の内容と価額・割当株式の種類・数を登記事項にすべきと思います。現物出資を受ける企業は、普通は未上場企業ですし株式は公開されていません。企業・事業関係者やベンチャーキャピタル等のプロの投資家が株式を取得します。これら出資者・投資家は、登記簿の記載を契機として、経営陣から現物出資の内容詳細を調査すれば良いのです。その会社に関わりを持つ人・持とうとする人が納得すれば良い話だと思います。事業に関係の無い弁護士等の証明書がどれだけ訳に立つのですかと言いたいですね。

(まあ、米国などの様に、専門のappraisal companyが、キチンとしたレポートと証明書を出す制度なら、弁護士等よりは少しはましかもしれませんが)

     現物出資との関連で、財産引受と事後設立があります。ある財産を会社成立後に譲り受ける旨、発起人が契約することを財産引受(282号、33条等)と言いますね。このときに規制も現物出資の場合と同じですね。また、財産引受の潜脱を防ぐため事後設立の規制があります。即ち、会社成立前から存在する財産で事業の為に継続使用するものを、設立登記後2年内に、純資産の20%超にあたる対価で取得する場合には、総会の特別決議を要求しています(46715号、309211)。この財産引受・事後設立というのは、あまり知られていないこともあり必ずしも遵守されていないと思われます。特に、事後設立ですね。

・ 事後設立は、H2商法改正前は特別決議でしたが、時代錯誤的改正で、検査役の調査を要求するようになりました。有名大企業の子会社でも、不動産はなじみの鑑定士に評価を頼んで、そのまま弁護士に証明書を書いてもらい、その他の固定資産(機械装置等)は、リース会社を絡ませて、新設子会社に大規模営業譲渡(事業譲渡)を行った例もあります。今回の会社法で、以前の特別決議に戻りましたね。

 現物出資・財産引受・事後設立の規制は、今ひとつピントがずれているのではないかと思います。

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譲渡制限株式―過半数譲渡は承認不要に

2007-08-07 00:14:03 | 商事法務

○ 譲渡制限株式(ここでは普通株が前提です)を譲渡しようとするときは、承認機関(取締役会等)の承認が必要ですね(136)。請求を受けた会社は、請求から2週間以内に、承認可否の決定通知を譲渡等承認請求者に通知しないといけません(1392項)。通知がなければ承認したとみなされますね(145条)。請求者は、承認が得られない場合には、買取人を指定するよう請求できますね(138条1号ハ)。会社は、自己株式として買取るか、買取人を指定しないといけません。買取人は供託したり(純資産/株x株数の額の供託)、価格交渉して協議が整えばそれでよし、協議不調のときの裁判所への価格決定請求等の手続きをします(141-145)。じゃまくさいですね。

50%超譲渡は承認を不要とすべき】

     過半数の株式を譲渡するときに、どうして取締役会等の承認が必要なのでしょう?不要だと思いますね。「当該株式会社(取締役会等)の承認を必要とする。但し、議決権ある株式の過半数の譲渡の場合は、この限りではない」とすべきですね。

     勿論、大半の場合は取締役会等は承認するでしょう。過半数の譲渡とともに経営支配権が新株主に委譲されます。旧経営陣の(全部又は一部の)退陣と新役員の選任を株式の譲渡の際に、総会を開催して行う例も多いですよね。

     承認機関を、取締役会や代表取締役ではなく、上位の機関である株主総会とすれば、50%超保有の株主が普通は譲渡等承認請求者ですから、当然承認されますよね。

【理由1:過半数譲渡は事業の売却・買収である。当事者のM&Aの合意を尊重すべし】

     過半数の譲渡の場合に、「買取人を指名します。価格が折り合わないので裁判所に価格決定の請求をします。」こんなめちゃくちゃな決め方はありませんね。これは事業の売却・買収です。指定買取人は、勿論関係者でしょうけれども、事業はそんな簡単に買えるものではありません。重大な責任を負います。即ち今後役員を指名して経営支配するとともに、連結対象(40%以上でも条件が整えばなりますが)ですから連結ベースで経営責任が生じます(親子で取引を行ったり、融資・保証等いろいろ関係してきます。)詳細なデユーディリジェンスを行い、買収に値する事業か、今後事業を行うべきか、行える経営者は見つかるか、会社の価値・株式売買価格を幾らとすべきか、会社のビジョン・将来の方向性をどうすべきか、支払う金はあるか、無い場合はどのように調達できるか、調達出来るまでどれだけ時間がかかるか等、こういった点を詳細に検討する必要があります。指定買取人がいきなり指定されて買える筈ありませんね(勿論例外を否定しませんが)。

     当初の取得予定者は、事業買収者ですから、上記を検討の結果、何ヶ月もかけてやっと売主と合意。その結果株式を譲渡しようと、売主から会社に譲渡承認を申請したら、保身を計る現経営者が承認を拒否したという場合などが考えられますね。過半数の株式を持つ株主の行為を、経営者が承認しないのもおかしな話ですね。経営者は、いつのまに株主よりも偉くなったのですか?

     裁判所が価格を決定等と書いていますが、財務諸表が粉飾だったり、後から簿外負債が出てきて、裁判所が決めた売買価格が不適切だったら裁判所が責任負ってくれるのですか、損害を賠償してくれるのですか?そんな事あり得ないですね。裁判所は、詳細なデユーディリジェンスをして価格を決めるのですか?裁判所にそんな能力はありません。

・ 当事者間で株式譲渡契約を締結する必要がありますが、株式譲渡の他に、詳細な事実の表明、約諾事項・保証(譲渡の前に現株主をして経営陣に行わしめること等も含む)、事実が相違したとき、約諾事項を守らないとき等の解除・損害賠償等を規定する必要があります。価格を決めて譲渡代金の支払いだけを行えばよいというものではありません。過半数譲渡は、株式の譲渡という意味以上に事業の譲渡です。当事者の事業譲渡の意思を尊重すべきですね。

【理由2:会社が承認しないときは、譲渡人は経営陣を解任して、新経営陣をして承認させることができる】

     過半数の株式を譲渡しようとする者は、普通は譲渡に反対する取締役をもともと指名した株主の場合が多いですよね。現取締役を見放したか、それとも金に困って株式売却するのか、事業ポートフォリオ組み替えとか売却の理由はいろいろでしょうけど、ともかく株式を売却し、事業を売却します。

     経営陣にとっては、自分を指名・選任してくれた株主がいなくなります。経営委任をした者がいなくなれば、受任者たる経営陣が経営を継続するには、新株主から信任を受けて受任される必要があります。即ち新株主を当然承認するのが前提となります。もしごねて、承認をしないなら、譲渡人(株主)は株主総会を開催して、現経営陣を解任(今度の会社法で特別決議から普通決議になりましたね)して、暫定経営陣を指名・選任して、取締役会等で譲渡承認をすることができます。譲渡承認をしない代表取締役・取締役会で反対する取締役は、承認しないならまあ辞任して下さいということでしょうか。

     現経営陣は、承認を拒否して、一次的延命と保身は出来るかもしれませんが、これは悪あがきですね。(実は、実際上もし悪あがきをしようと思えば、かなりできますね。例えば、譲渡人が株主による総会招集(承認をしない取締役の解任の総会)をしようと思えば、代表取締役に招集を請求します。しかし、これも無視すれば、株主が裁判所の許可を得て自分で招集しないといけません。大変な手間ですね。)

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成功するベンチャー企業投資

2007-08-03 00:21:20 | 企業投資

     投資には、大きく分けて自ら事業を行う事業投資と、ベンチャーキャピタル(VC)がキャピタルゲインを狙って投資するVC投資がありますね。今回は、VCのファイナンシャル投資家の視点に立って、成功するベンチャー企業投資のポイント&投資をしようと意思決定する要素は何か、思うところを書いてみましょう。VC投資については、最近いくつか本が出ているようですね。私は殆ど読んだことがありません。理由は簡単です。読む必要がないからです。まあ、読んだからといって成功するVC投資ができる訳でもないと思いますね。

○ 成功するVC投資のポイントは、いろいろあると思います。それぞれのVCで過去の経験を踏まえたチェックリストやノウハウマニュアル等を作成していると思います。しかし、成功の確率はどれぐらいでしょうか?それによって、変な投資は多少防げるかもしれませんが、それほど成功確率が上昇しているようには見えないですね。

  ポートフォリオですから、まあ10件投資して、2件上場すれば成功でしょうね。3件上場すれば大成功ですね。

-  2件上場すれば、十分なリターンが得られると思います。投資全体の内部収益率(IRR)10%とか15%ぐらいになるでしょう。即ち、例えば、10件で10億円投資して、2-3件が駄目で全損、2-3件は低迷でリビングデッド(Living Dead)、2-3件が泣かず飛ばずと言う状況、即ち次回のファンドで承継しようか、他に転売しようかという状況、そして2-3件が晴れて成功ですね。この2-3件の成功案件で、投資総額の10億円の内部収益率が10-15%になるということですね。

     ベンチャー投資のポイントは以下ぐらいではないかと思います。

     大きな経済・景気のトレンドに乗る。即ち、今のような景気の良いときに投資をするのではなくて、景気が悪いときに投資をすることですね。即ち、ITバブルがはじけた、2001-04年ぐらいに投資をして、今年ぐらいにIPOを目指す会社に投資をすることですね。不況時にそれなり頑張ってる会社は筋肉質でしぶといですからね。今は、種々の要因があって新興市場は低迷していますが、例えば昨年上場したmixi等は、上場時の時価総額が2000億円にもなりました。Lock-upとか、小型株、流動性不足とかいろいろありますから、最高値のときに売却できるものでもないですし、IPO時の売り出しを逃せば収益がすぐに実現できるかなかなか難しいですけれども、投資の方は不景気のときに底堅くしましょうということですね。

(最近は、投資資金が後ろからどんどん押し寄せてきて、ともかく投資しないとというファンドもあるかもしれませんが、投資を暫く休むということも重要ですね

     経営者は信用出来るか・きちんと働いているか、その器量の大きさはどれぐらいかですね。例えば、資料提出をお願いしたときに、きちんと期限通り出してくれるか。言ったことをきちんと守るか。こつこつ情熱を持って働いているかをきちんと見ることですね。また人物の大きさ器量は、その会社が大きくなるかのバロメータにもなるのではと思います。VCからお金が入ったら、急に自分の金のように新規事業とかお金の使い方を変える人がいますが、こういう経営者の会社には、お金を入れてはいけないですね。入れてからでは遅すぎます。よく経営者を見ないといけません。

     会社の従業員は活気を持って働いているか。伸びる予感を肌で感じる。投資を検討している会社には、何回も行って、従業員がどの様に働いているか。明るいか?積極的か。

経営者とどの様に接しているか等を実感として感じる事ですね。それによってこの会社は伸びると感じ事も出来れば、ちょっとそこまで行かないのではと感じることもありますね。

勿論実務的には、事業内容・財務諸表・税務申告書を見せてもらったり、取引先へのインタビュー、業界動向の調査分析等も必要ですけれども、こういった事務的な事もさることながら、結構重要なポイントは、上記の様な点だと思います。

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無機能監査役会の原因

2007-08-01 00:39:25 | 企業一般

     相変わらず監査役・監査役会が機能を発揮していません。企業不祥事が起こるたびに、監査役制度の強化が計られてきましたが一向に改善されていないように思います。原因はどこにあるのでしょうか。主な原因は会社法の対応が悪いからです。会社法の工夫次第である程度改善されると思うのですが、過去の改正・強化の動きは、全くピンぼけが多いと思います。

     資格と権限:

       資格:監査される取締役等の影響を受けないように独立性が求められています。3352項で、取締役・従業員ではならず、子会社の役員・従業員を兼ねてはいけないと規定されています。また3項で、監査役会設置会社の監査役は3人以上で、半数以上は社外監査役ですね。(H.5改正で大会社について監査役会を設けて、3人以上とし1人以上は社外監査役。H.13改正で半数以上)

       権限・義務:381条―385条に規定されていますね。尚、権限は各自独立して行使できる独任制機関ですね。

-         取締役の職務の執行を監査(S.49年改正から)し、監査報告を作成。尚、監査の範囲は、適法性(違法性)監査と「著しく不当という限定的な範囲の妥当性監査ですね」(この点いろいろ議論のあるところですが)

-         調査権:取締役等・従業員に事業報告を求め、自ら業務・財産の調査をする権限を保有。子会社調査権も有り。

-         取締役への報告義務:取締役が不正の行為をし、又はその恐れがあると認めるとき、又は法令若しくは定款に違反する事実若しくは著しく不当な事実があると認めるときは、遅滞なく取締役会に報告。

-         取締役会への出席義務と必要有る場合の意見陳述義務(H.13改正からですね)

-         株主総会に対する報告義務や、目的範囲外の行為その他法令・定款に違反する行為をし、又はこれらの行為をするおそれがある場合、当該行為によって著しい損害が生ずるおそれがあるときは、差止請求することが可能。

       任期:原則4年になりました(336-1H.5改正で23年、H.13改正で4年になりましたね。

     上記の現行制度・考え方・規定には大きな欠陥があると思います。

       取締役会出席義務取締役会の議案で、今から違法な事を行いますから承認して下さい等というバカなことをいう役員がどこにいますか?議案としては、適法・妥当な議案として出します。違法な部分があってもその部分は隠しておきます。悪いことは、見えないようにこっそり裏で行います。これが通常の行動です。勿論取締役会に出席すればどういう意思決定がされているかわかりますし、それ自体は結構な事ですが、出席しているだけでどうして監査が出来るのですか?出来るはずないでしょ。

       4年の任期:任期を長くすることが何が機能強化・独立性に重要なのですか?監査役を実質指名するのは現社長・会長が多いですよね。選任は形式的には総会ですけれども。副社長が社長になり社長が会長になるケースが多いですね。しかも一般的に重任で、社長在任4年なり6年なりです。仮にある監査役が就任して2年で、自分を実質指名してくれた社長が退任しても会長になるケースも多いですね。会社法が期待する、長期的視点で、現経営陣の顔色を見ることなく独立性をもって等と言うことは、任期の操作で期待できるものではありません。

       社外監査役:社外監査役にすれば、独立性もあり現役員の顔色を見なくてもよいということで社外監査役重視になっています。業務の事がちんぷんかんぷんの社外監査役に何がわかるのですか?取締役会開催と同時に監査役会を開催して、常勤監査役の話を聞いているだけが関の山です。社外監査役が弁護士なら法律的な事、公認会計士なら財務・会計・税務的な事は、コメントとしては勿論言えますが、これなら別に顧問弁護士・会計監査人と同じです。

     施行規則124条では、事業報告等の内容の一部に、社外役員の“活躍の状況”等の記載を求めています。キャノンの106(H.18.12.31)事業報告書(↓参照)P.28(PDF16/29)を見てみましょう。弁護士の大江さんは「取締役会および監査役会にほとんど出席しました。取締役会においては、必要に応じ、弁護士としての専門的見地から発言を行っております。」と記載されていますが、公認会計士の清水さん、穴倉について、前半は上記と同じですが、その後「取締役会においては、発言を行っておりません」と記載されています。まあ、監査役会では少しは、「うんとかすんとか」言われたとは思いますが?

社外監査役3名に支払われた報酬は、44百万円です。一体、何なんですかこれは!!

    ↓

http://www.canon.co.jp/ir/report/pdf/report2006.pdf

     監査役(会)が機能するための制度

     監査役会の下部機関に監査部門を作る。大企業では数十人必要ですね。監査役は数人です。常勤監査役がときどき幹部にインタビューして違法行為を見つけられるものではありません。組織的に監査を専門とする部門を作り、継続的にチェックすれば、少しは見つかるのではないでしょうか。業務を熟知している人を配置することですね。営業取引・一般の取引で、例えば取引先と組めばどういった操作が可能か分かっている人が良いですね。内部統制に関連して、施行規則1052項で、取締役()は、監査役の職務執行のための必要な体制の整備に留意とはしていますが、監査について触れているところはないですね。

     監査役は、年初に監査計画書を作成、これを監査部に実行させて、定期的に報告を受けることですね。

     職務遂行段階から職務関係書類(伺書類等)は監査部に回付されるようにする。事後の違法性監査よりも重要なことは事前予防ですよね。まあ、これは内部統制と連携をとってすれば良いと思います。

     社外監査役は、上記②の報告について意見を述べる義務を負う。今の社外監査役は、ハッキリ言って当該会社の書類などきちんと読んでいません。秘書役から手渡される取締役会の資料に目を通すぐらいでしょう。社外監査役もきちんとはたらかせましょう。

今の監査役会は独立性があるのではなく、孤立無援です。数人で何が出来るのですか?監査を実行する部門・スタッフを制度上作らないで監査が義務といわれても出来ませんね。上記で、少しぐらい良くなり多少機能を発揮するかもしれません。

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