まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

Delaware LLC法上の役員の義務

2014-01-18 22:59:33 | 商事法務

 

 日本の会社法では、役員には善管注意義務(会社法330条により委任の規定が適用→民法644)が課されており、また忠実義務(会社法355)が課されています。最高裁は、「忠実義務は、民法644条に定める善管注意義務を敷衍し、かつ一層明確にしたもの」(どこが明確やねん!)と得意の言葉遊びで誤魔化しています。<o:p></o:p>

 

 

 米国でも同じような注意義務が取締役に課されています。模範事業会社法では、取締役はFiduciary dutyを負うと直接規定した条文は無いようですが、action not in good faithに対して責任を負うと規定しています。また、New York Business Corporation Actでは、§717 Duty of Directors (a)柱書に以下のように定めています。<o:p></o:p>

(a) A director shall perform his duties as a director, including his duties as a member of any committee of the board upon which he may serve,  in good faith and with that degree of care which an ordinarily prudent person in a like position would use under similar circumstances.  In performing his duties, a director shall be entitled to rely on information, opinions, reports or statements including financial statements and other financial data, in each case prepared or presented by:<o:p></o:p>

 

 

  では、LLCの役員(manager)の義務として、同様な注意義務を負うのでしょうか? 

New York Limited Liability Company Lawでは、§ 409. Duties of managers.として以下のように規定しています。

  (a) A manager shall perform his or her duties as a manager, including his or her duties as a member of any class of managers, in good faith and with that degree of care that an ordinarily prudent person in a like position would use under similar circumstances.

要するに、会社法と同じ義務がLLCの役員に課されています。<o:p></o:p>

 

 では、企業が良く使うDelawareLLC Actでは、Managerの責任はどのように規定しているのでしょうか?

Subchapter XI. Miscellaneous §18-1101. Construction and application of chapter and limited liability company agreementには以下の規定があります。<o:p></o:p>

(d) Unless otherwise provided in a limited liability company agreement, a member or manager or other person shall not be liable to a limited liability company or to another member or manager or to another person that is a party to or is otherwise bound by a limited liability company agreement for breach of fiduciary duty for the member's or manager's or other person's good faith reliance.<o:p></o:p>

 

即ち、出資者(Member)Manager(役員) for the member's or manager's or other person's good faith reliance.についての信認義務違反については責任を負わなくてもよいということですね。つまり例えば自分が事業開発担当で、他に管理担当役員がおり、その人・部下等がぐるになって粉飾決算してもその責任は負わなくてもよいということです。従い、自分が悪意に基づき信認義務違反をしたときは、やはり責任は負うのではないかと私は考えています。<o:p></o:p>

 

また、同条の(a) には、以下の規定があります。 

(a) The rule that statutes in derogation of the common law are to be strictly construed shall have no application to this chapter.

「コモンローを修正した制定法は厳格に解釈されなければならないというルールは、本章には適用されない」と記載されています。実は、この箇所の意味が私にはわかりません。米国Pillsbury Winthrop Shaw Pittmanの秋山New York州弁護士は、「コモンローによって課され得る他の一切の義務にかかわらず、各構成員は、当該契約に従って行為を行う限り、何らの責任も負わないものとされている。」と米国M&A法概説(P170)で述べておられますが、やはりコモンロー上の健全な常識・良識の義務は適用されるのではないかと、私は考えています(そうでないと、やりたい放題ですよね)。<o:p></o:p>

 

 日本の企業がDelawareLLCに出資する場合は、limited liability company agreementには、米国企業会計のGAAPに従った経理を行うこと、Managerの忠実責任、役員の権限と義務等の詳細を規定する必要があるのではないでしょうか。<o:p></o:p>

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

地域統括会社に関する6つの課税問題その2

2014-01-11 15:58:28 | 企業投資

 前回の続き(2)①からです。

 

 (2) ①:香港の法人税率は16.5%ですね。またシンガポールは17%ですね。即ち20%以下です。ですから特定外国子会社等(法人所得税が無い又はあっても税率が20%以下の国に所在する外国子会社)に該当し、タックス・ヘイブン税制が適用され、その子会社の留保所得を株主である日本の親会社等の所得と合算して課税される恐れがあります。しかし、一定の要件を満たす統括会社なら、タックス・ヘイブン税制は適用されません。それは、日本の会社が株式・持分の100%を直接・間接に保有する子会社(統括会社)であり、孫会社(被統括会社)が2社以上で、「統括業務」を行っていることが条件です。

 

 

では、統括業務の定義は何でしょうか?租税特別措置法66条の6③では、「統括業務とは」、「株式等の保有を主たる事業とする特定外国子会社等のうち、当該特定外国子会社等が他の外国法人の事業活動の総合的な管理及び調整を通じてその収益性の向上に資する業務として政令で定めるもの」(税法の規定ですが、租税が安くなれば収益性が向上することもいえますね)であり「統括業務を行うに必要と認められる事務所、店舗、工場その他の固定施設を有し、かつ、その事業の管理、支配及び運営を自ら行つているものである場合で政令で定めるものとしています。これを受けて、施行例39条の17①では、「統括会社と被統括会社との間における契約に基づき行う業務のうち当該被統括会社の事業の方針の決定又は調整に係るものであつて、当該特定外国子会社等が2以上の被統括会社に係る当該業務を一括して行うことによりこれらの被統括会社の収益性の向上に資することとなると認められるもの」であり、「その本店所在地国に統括業務に係る事務所、店舗、工場その他の固定施設及び当該統括業務を行うに必要と認められる当該統括業務に従事する者専ら当該統括業務に従事する者に限り、当該特定外国子会社等の役員を除く。)を有していること」としています。<o:p></o:p>

 

⇒税法の規定は複雑?と言いますか、曖昧いい加減といいましょうか?法律と政令(施行令)が同種用語の言葉言換え・重複したり、循環参照的の言い方をしております。会社法など他の法律でもこういう言い方は良く見かけます。政令でより具体的に記載しようとしても、うまく書けないので、結局法律と同じような言葉を並べて、思い浮かんだ少し別の言葉を追加して誤魔化しているのではないでしょうか。これは、将来法律制定当時想定外のことが出てきたら政令で網をかけようとするずるい立案担当者の考えかもしれません。また、事業をやったことの無い人が政令を書いていますから、法律よりも具体的に何を書けばよいのか想定できないのでしょう。上の例で言えば、法律と政令の違いは、結局統括業務を行っている従事者がいる事ぐらいですかね。また、契約に基づきというのもおかしいですね。統括会社は持株会社ですので、株主権の行使が基本ですね。定款に株主の承認事項とすれば、これもここに言う「契約」に入るのでしょうか?また、適格現物出資は25%以上ですから、49%保有でもOKです。残り51%は合弁パートナーが保有して、結局事業の方針や決定は、相手方パードナーに握られている場合はどうなるのでしょうか。日本企業の合弁は、49%までお金は出さされて、相手にうまくやられている場合もありますからね。<o:p></o:p>

 

 

 (2)②:シンガポールでは地域統括会社を保有して事業展開すれば、税率を15%にするという優遇措置があります。勿論、それには要件があり、これを満たす必要があります。その実質的な要件は以下ですが、詳細はEDB(Singapore Economic Development Board)webに掲載されていますので、それを参照してください。但し、シンガポールでの税率優遇期間は3年(+2年延長可能)なので短いですね。やはり、シンガポールはけちですね。タイの法人税率は通常23%です(タックス・ヘイブン税制は考えなくてもよい税率)。しかし、タイに地域統括会社を設置すれば、タイ国外の関連会社からのサービス収入には、最大15年間免税であり、タイ国内の関連会社からの統括会社サービス収入には最大15年間税率10%が適用されますので、裾野の広い自動車関連産業の会社ではタイに地域統括会社をおいているところもあるようです。<o:p></o:p>

 The applicant should have a substantial level of headquarters activities in Singapore that may include: <o:p></o:p>

     ? Strategic Business Planning and Development <o:p></o:p>

     ? General Management and Administration <o:p></o:p>

     ? Marketing Control, Planning and Brand Management <o:p></o:p>

     ? Intellectual Property Management <o:p></o:p>

     ? Corporate Training and Personnel Management <o:p></o:p>

     ? Research, Development and Test Bedding of New Concepts <o:p></o:p>

     ? Shared Services <o:p></o:p>

     ? Economic or Investment Research and Analysis <o:p></o:p>

     ? Technical Support Services <o:p></o:p>

     ? Sourcing, Procurement and Distribution <o:p></o:p>

     ? Corporate Finance Advisory Services <o:p></o:p>

 

⇒日本の政令を作ったおっさんよりも、きちんと記載しています。具体的ですね。日本もこれぐらい記載して、例えば、これらの項目のうち3つ以上を満たせば、「統括業務」を行っているとしても良いかもしれません。<o:p></o:p>

 

<o:p></o:p>

 (2)③:統括会社所在国と孫会社所在国間に租税条約が締結されているかも注意が必要ですね。特にシンガポールの統括会社に、その保有する複数の子会社(日本から見ると孫会社)の資金繰りを調整する機能を持たす場合等は検討に値します。例えば日本円⇔US$は、円高=ドル安、ドル高=円安となります、同じ方向には動きませんので、孫会社に、例えばUS$と日本円というdual currency の親子ローンを提供すれば、その為替リスクを相殺することも可能ですし、またシンガポールなら資金のやり取りも、ネッテイングで行えるはずです。即ち、銀行にへの計な手数料支払いが減ると思います。だいぶ話がそれましたが、シンガポールと租税条約を締結している国に被統括会社があれば、ローン金利の源泉徴収税を安く出来ます。シンガポールは、日本よりも多く租税条約を76カ国と締結しているそうです。ここでの注意点は、シンガポールはキャピタルゲインと一定の受取配当は非課税ですが、利子は課税されます。一方、香港は、キャピタルゲイン、受取配当、受取利子も非課税です。

 

 

自社の事業の特性、孫会社の分布状況等も考えて税務戦略を練らないといけません。インド等は、タックス・ヘブンのモーリシャス共和国に中間持株会社を作っている投資している欧米企業が結構あります。昔は、租税条約で利子・配当課税が無かったからですね。しかし、税法はころころ変わります。特に新興国の場合はひどいですね。それと税務の執行の段階でも大きく違います。お互いの知恵(悪知恵?)比べでしょうか?

Dsc_0017_2

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

地域統括会社に関する6つの課税問題その1

2014-01-03 09:01:00 | 企業投資

 

 今まで、ばらばらに東南アジア各国に子会社や合弁会社を持っていた、即ち日本本社が株式を保有していたが、本社の一部権限・機能をシンガポール等の100%子会社に委譲し、併せて地域内子会社・合弁会社を地域統括会社の傘下において、効率的に事業の運営・支援のみならず、ファイナンス機能を行うために、日本本社保有の株式を、シンガポール等の100%子会社である地域統括会社に現物出資して、グループ企業の経営を強化していこうという企業が多く出ています。ということで、今回は、香港やタイはややこしくなるので除外して、シンガポールの地域統括会社を中心に税務の話を書いて見ましょう。地域統括会社に、(1) 日本本社保有の既存子会社・合弁会社の株式・持分を譲渡する場合に、 日本での譲渡益課税が発生するかどうか、②譲渡される株式の対象である被出資会社の所在国で課税の問題が生じないか、③地域統括会社所在国での課税問題が生じないか、及び(2) 統括会社の事業により稼得される所得に関し①日本のタックス・ヘイブン(Tax Haven)税制上の問題が無いかどうか、②地域統括会社所在国での優遇税制が適用されるかどうか、③孫となった会社から統括会社が受取るロイヤルティや利子収入等について統括会社所在国と孫会社所在国間に租税条約を締結して税率の軽減がはかられているかどうかという6つの視点から見て見ましょう。尚、その他に移転価格の問題もありますが、今回は除外します。<o:p></o:p>

 

<o:p></o:p>

  

 上記6つの論点・結論は、(1)①は適格現物出資をすれば課税されない(正確には課税の繰り延べ)、②は対象会社の所在国の税制による、③キャピタルゲイン課税の無い国では、キャピタルゲイン・ロスは認識しないので、キャピタルゲインによる受贈益の問題は生じない、(2)①については特定外国子会社等に該当しないような実体を備えた企業ならタックス・ヘイブン税制は適用されない、②所在国での要件を満たせば優遇税率が適用される。③は、統括会社所在国と孫会社所在国間で租税条約が締結されているかによるということです。では、上記(1)③を除いて簡単に見て行きましょう。(長くなりますので、(1)②までで、(2)①からは次回にします。)<o:p></o:p>

 

<o:p></o:p>

  

 (1)①:既存子会社・合弁会社の株式を、統括会社に移転するときに、時価譲渡をすると譲渡益が発生して課税されますが、株式そのものを出資財産として適格現物出資をすれば、簿価⇒簿価にて譲渡され、課税の繰り延べが可能となりますね。要件は、日本企業が25%以上保有している会社の株式を、100%子会社である地域統括会社に譲渡し、現物出資なのでその簿価相当の統括会社株式を統括会社から日本本社へ割当増資をすればよいわけですね。<o:p></o:p>

 

 

 (1)②:対象会社(孫会社)の所在地国で課税されるか要注意ですね。外⇒外で株式譲渡を行っているのに対象会社の所在地国の課税は一見関係なさそうに見えるのですが、あくまでも自国内の企業の株式譲渡によって株主が譲渡益を得たのだから課税権があるのだとするわけですね。株式譲渡の内容を規制当局に対象会社から申告させ、納税義務者たる株式の譲渡者が納税しないときは対象会社に納税義務が課されます。こういった国としては、中国・インド・タイ等があります。また税務申告の際には、中国のように国が認めた評価会社の評価書を要求する場合もあります。一方、譲渡益が発生しないときなら関係なし申告も必要なしと思いがちですが、そこはきちんとチェックの必要があります。上海では申告義務はあるようですが、大連では無いようです。中国は、地域によって運用が違いますからね。では、対象会社の株式の譲渡では譲渡益課税が発生するので、対象会社の株式を持っている(中間)持株会社の株式を譲渡する場合はどうでしょうか。インドでは、Vodafone事件で最高裁はその場合は譲渡益の対象とはならないと判断(高裁レベルでは対象と判断)されましたが、その後2012 Finance Billで、過去50年に遡って間接持分譲渡の場合でも課税されるという、不遡及の原則等どうでもよいという法律を制定している国もありますね。

Dsc_0021


<o:p></o:p>

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする