まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

米国の確定拠出年金(401k)について

2014-07-21 00:19:47 | 企業一般

 

  • 確定給付年金(Defined Benefit Plan=DB)が、低金利、運用難、積立不足等で行き詰まり、米国の確定拠出年金制度をまねて、2001(H13)に日本でも確定拠出年金(Defined Contribution Plan=DC) =日本版401kが始まりました。確定拠出年金法(平成13年法律第88号)に規定されています。企業型年金と個人型年金があります。概要は厚生労働者のホームページ等に整理されて記載されています。掛金は、企業型では、原則事業主拠出ですね。規約に定めれば加入者拠出も可能ですが、これは従来、企業が負担していた退職給与引当金制度を組み替えたためのようですね。運営主体は事業主ですが、実際は運営管理・資産管理機関に運営・資産管理を委託します。個人型では、掛金は本人拠出のみで、運営主体は国民年金基金連合会となっていますが、銀行・信託銀行・生損保等の運営管理機関に委託します。何れも限度額まで税制優遇があります。

     

  • 米国では、確定拠出年金法等という法律はありませんが、ERISAEmployee Retirement Income Security Act=従業員退職所得保障法)というのがあります。企業年金連合会のホームページの用語集によれば、「1974年に制定された企業年金制度や福利厚生制度の設計や運営を統一的に規定する連邦法。企業年金については、制度に加入している従業員の受給権を保護することを目的としており、(1)加入員や行政サイドに対する情報開示、(2)制度への加入資格や受給権付与の最低基準、(3)年金資産の最低積立基準の設定、(4)制度の管理・運営者の受託者責任、(5)制度終了保険、などが規定されている。」と用語解説がされています。

     

  • 米国では、①企業が制度設計して、②運用商品の選択肢を用意③個人勘定(IRA = Individual Retirement Account)の手数料を、企業and/or個人で負担④従業員へ説明・定期報告を行うもので、掛金の拠出は、加入者本人が原則であり、それに企業がContribution (=Matching Contribution)するという構造です。その掛金の積立金に、税制優遇を与えているのが、401(k)です。Internal Revenue Code Subtitle A- Income Taxes (§§1-1564 )401(k) Cash or deferred arrangementsの事ですね。暇な方は、下記のURLに行って読んで見ては如何でしょうか。読み始めると直ぐに嫌になりますよ。IRSwebサーフィンしていたら、401(k) Plans for Small Businessという資料がありましたので添付しておきます。私も、これからこれを勉強する予定?→多分勉強しません。

    http://www.law.cornell.edu/uscode/text/26/401

     

    上記で、運用商品で選択肢を用意と言いましたが、この運用商品の一つに自社株購入Planがあります。ですから企業によっては、401(k)/ESOP Plan(Employee Stock Ownership Plan)と呼んでいるところがありますね。従業員が、拠出金(税前所得からだが、課税後の給与からも拠出することが可能=これをRoth Optionと言います)を出し、会社がMatching Contributionを出しますので、日本流に言えば、補助金付持株会でしょうか。勿論、時価買い付けですし、証券会社の手数料もしっかり取られます(IRS Ruleで取ることになっている)。

     

  • 401(k)に規定している税制優遇とは、①企業拠出金が一定限度まで損金算入、②運用収益が非課税、③企業拠出金の従業員への課税が給付時まで繰延、ということです。Tax law limitは、現在$17,500 (50歳以上は+α)。基本的には、59.1/2歳(住居手当・障害等のときもOK)から、税制優遇条件で引き出せますが、+10%の追加の税金を支払えば、いつでも引き出しOKのようです。

     

  • 給与を支給されて、そこから拠出ということになりますと、ついつい使ってしまうのが常ですね。従い、従業員になったら、企業側で、Automatic enrollment(自動加入制度)で加入してもらって、自動で掛金が毎年アップしていくAutomatic Escalationを採用している企業が増えているようです。勿論、本人が、escalationは嫌だと言えば、escalationstopします。自己拠出でしかも個人口座ですから、本人の意向で、拠出額も運用も選べる制度ですね。

「p4222.pdf」をダウンロード

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インドネシア会社法の監査役会

2014-07-09 22:41:26 | 商事法務

 

  • ドイツでは監査役会が強い権限を持っていますね。監査役会の権限を規定すれば取締役会の決定事項もキャンセルできます。昔、ダイムラーベンツが三菱自動車に出資することを承認した取締役会の決議を否決しましたね。この監査役会の制度はオランダの民法典や商法典を、参考にしたのではないかと思っておりますが、同じオランダ商法典を参考にして作成された会社法としてインドネシア会社法にも監査役会(Board of Commissioners)の制度があります。今回は、その監査役会の話です。インドネシア企業との合弁契約をいくつか見ましたが、この監査役会を、日本の実質権限を持たない飾りだけの監査役会と同視して、殆ど権限を持たせずに、株主総会で選任されるという形式をまねて監査役会を組成している契約がありますね。本来の趣旨は違うんですよね。

     

  • インドネシア会社法のBoard of Commissioners(=コミサリス(Komisaris)会)の規定は、108条から121条に規定されています。日本の監査役(監査役会)の機能は、勿論監査ですが、中身は取締役の業務執行が法令・定款に違反又は著しく不当かをチェックし指摘することですね。しかし、コミサリス会の職務は、会社の目的に沿った形で経営方針や経営の実行を監督(supervise)し、また取締役会へアドバイスする事だとしています。日本の監査役会よりもはるかに広範な権限を有します。職務遂行に当たっては、good faith & prudentな行動を求められ、監督業務執行に完全な責任(full of responsibility)を負いますし、過失責任も負います。また日本の監査役は、独立して判断(独任制)できますが、コミサリス会は単独では行動できません。コミサリス会決議に従った行動が求められますし、責任は連帯責任(jointly and severally)となります。員数は、1人以上で2人以上のときは監査役会を組成します。

     

  • では具体的にどういった権限を持つかは、定款で定めないと仏作って魂入れずなんですが、実はあんまり皆さん魂を入れていないようです。具体的には定款で定めれば良いのですが、定めていない例が多いようですね。1171項は、次のように定めています。「Articles of Association may determine the grant of authority to Boards of Commissioners to give approval or assistance to Boards of Directors in the performance of certain legal actions.」。理由としては、取締役会の上に、取締役会を監督・アドバイスする機関を作ると、機関に屋上屋を重ねるという感じだからでしょうか。また、取締役も監査役も株主総会で選任されますし、二重の手続きを踏むのは面倒だからでしょうね。

     

  • でも折角こういった制度もありますし、取締役会レベルではなく、高度の政治的な判断などはコミサリス会で決められるようにしてはどうかと思います。では、コミサリスには誰が適任なのでしょうか?合弁会社なら合弁会社の株主の会社の会長などでしょうね。合弁契約が5050%で、取締役の指名人数も同数のときなどは、Dead Lockになる議題などもありますね。そういったときはコミサリス会の判断を仰ぐというのは如何でしょうか?

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FAのFairness OpinionはUnfair

2014-07-01 23:25:06 | M&A

 

  • 東証は201310月より従来の開示ルールを変更してMBO等に関する適時開示内容の充実等について」(東証上会第752号)を上場会社に義務付けました。これに従い、上場会社がMBO等に関する(特に株価等の金額について)意見表明を行う場合や上場会社が支配株主等と組織再編を行う場合にはバリュエーションの前提等の開示が求められます。MBOを行う当該会社の経営陣あるいは支配株主と、少数・一般株主との間に利益相反構造及び情報の非対称性が存在するというのが理由です。これにより、MBO等にあたって意見を表明する場合に第三者算定機関から取得したFairness Opinionを取得するケースが増えてきていますね。

     

  • 上記の東証の開示ルールの変更は、アメリカの猿真似ですね。即ち、 米国におけるMBO取引では、「Fairness Opinion」の取得とその内容の開示が求められています。Fairness Opinion」は、「企業価値・株式価値算定書」等と異なり、第三者が組織再編やM&Aの当事者に対し、買収・売却価格や合併・交換比率について、財務的見地から公正であることを意見表明するものですね。MBO取引のみならず買収・売却案件等でも、第三者からFairness Opinionをとる例が徐々に増えてきています。しかし、問題は客観的な第三者の意見表明ではないことですね。

     

  • 例えば、トヨタ自動車が関連会社の関東自動車工業を子会社するときに、身内の企業間のM&Aなので、公正妥当であることを示す必要があるからですねFairness Opinionを出したのは、関東自動車のFAである三菱UFJモルガンスタンレー証券ですね。また、住友商事等がジュピターテレコムの株券等に公開買い付けを行ったときは、ジュピターテレコムを、FAとして三菱UFJモルガンスタンレーを起用しました。同じFAから株式価値算定書とフェアネスオピニオンを取得しています。

     

  • 皆さんは、こういったFairness OpinionFairだと思われますか?僕は、マッチポンプというか子供だましの、米国の悪弊の追随だと思いますね。即ち、MBOの場合は、当事者の会社もFAもマッチポンプだということです。例えば、経営者がFAを起用します。MBOは、少数株主・一般株主とは情報格差のある、会社の内部情報熟知者が、自ら買収価格を決めて、あるいは支配株主と、少数株主を無視して、その価格で買収・売却するのは不公正であるという考え方に基づいています。従い、第三者であるFAを起用して適正を装う買収価格を算出させます。その上同じFAFairness Opinionを出させます。上場企業のMBOは、株価がありますので、市場株価分析が納得の行く一つの価格ですね。経営陣が、情報操作をしない限りですね。しかし、支配株主と株価を決めても、それは資本の論理ですね。少数株主保護等といわれていますが、所詮は持株比率が多い株主をどれだけ抑えられるかですね。それで勝負ありです。少数株主には、裁判で争う道も開かれているのですからね。

     

  • FAは、自ら株価算定して、自らが算定した株価は妥当で公正であるといいます。自分で評価額を計算しておいて、経営陣をその価格に誘導しておいて、その会社役員の行った価格の経営判断は公正であると意見表明するのですね。こんな茶番劇がありますか!子供だましですよね。

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