まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

日本のM&A契約-表明保証のどうでもよい条項

2021-12-16 00:11:15 | M&A
日本の株式取得のM&A契約は、30年前ぐらいまでは非常に簡単で、株式の取得・価格とその実行のことなどが記載されているだけで、極端なケースでは、財務諸表が公正妥当な会計処理の基準に則って作成されていること、簿外負債はないこと等についての言及・記載もなかったですね。一方、米国などでのM&A契約では、詳細に条件が記載されます。一番重要な規定は売主の対象会社についての事実の表明と保証や、クロージング前後の誓約事項(Covenants)、表明保証違反のときの補償等の条項ですね。DDを実施したが、具体的なリスク自体は発見できなかったとき等に際し、表明・保証違反を構成しないようにDisclosure Schedule等を作成しますね。

この20年ぐらい、日本でも米国等の詳細なM&A契約の影響を受けて、米国で勉強した日本人弁護士などが、米国並みの詳細なM&A契約を作るというか、日本語に翻訳して真似をするようになりました。M&Aが得意でない弁護士などは、他の案件で入手した表明・保証の条項等を条文に詳細記入せずに、別紙で張り付けています。まあ、張り付けるのは契約書の構成をわかりやすくできるので、良い面もあるのですが、契約書本文と言葉使いが異なり、齟齬をきたす部分もある場合がありますね。
きちんと読まずに、また修正もきちんとせずに、コピー&ペーストしたのが見え見えですね。

最近の日本のM&A契約は、表明保証条項については、米国の猿真似条項が多く、どうでもよい条項迄記載する。米国では、表明保証と一体のDisclosure Scheduleがありますが、それが無い場合が多いと感じています。

米国のM&A契約のRepresentations & Warrantiesは、例えば20-30項目ぐらいありますね。ところが、重要な項目というのは、まあ10項目ぐらいで、後はいたずらに長いですね。
どうでもよい不要の条項の例を2-3挙げてみましょう。

〇どうでもよい①:「売主は、本契約を適法かつ有効に締結し、これを履行するために必要な権限及び権能を有していること。」⇒米国では、日常業務はCEOが行いますが、M&A契約では取締役会承認が必要ですね。ですからこういった条項も必要でしょう。しかし、日本では代表取締役が契約締結します。従い、「本契約は適法かつ有効」等と記載する必要はない。M&Aに限らず、重要取引先の基本契約等の重要契約で、「本契約は有効です」等と記載しますか?また本契約は、違法で無効ですと記載しますか?あほな規定ですね。

〇どうでもよい②:「売主による本契約の締結及び履行は、(i)売主又は対象会社に適用ある法令等に違反するものではなく、(ii)売主及び対象会社の定款その他の社内規則に違反するものではなく、(iii)対象会社が当事者となっている契約等について、債務不履行事由等を構成するものではなく、(iv)司法•行政機関等の判断に違反するものではなく、かつ、(v)対象会社の事業又は資産に対して担保権その他の負担を生じせしめる結果となるものではないこと。」⇒これも米国のM&A契約には、一般的に入る表明・保証ですね。まあ、あまり意味がないでしょうね。

〇どうでもよい③:「売主は、本契約の締結及び履行のために必要とされる司法•行政機関等からの許認可•承認等の取得、司法•行政機関等に対する報告•届出等その他適用ある法令等上の手続を、全て当該法令等の規定に従い適法かつ適正に履践済みである。」⇒この規程は、不備ですね最後に「又はクロージング日までに履践できるものであること。」と付け加えないといけませんね。きちんとしたM&A契約では、closingまでに行うべきCovenantsとしてはいりますね。M&A契約を締結した後、米国では Anti-trustのfilingが必要ですし、日本でも該当する場合は、公取への届出が必要になりますね。契約締結の時に履践済み等という意味不明の文言が入っている契約ドラフトがありました。

〇どうでもよい④:「対象会社が当事者である契約等は全て適法かつ有効に締結されており、かかる契約は、各契約当事者の適法、有効かつ法的拘束力のある義務を構成し、かつ、かかる義務は、当該契約の各条項に従い各契約当事者に対して執行可能であること。」⇒まともな会社なら当たり前ですね。

こんなところでしょうか。

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